2010年11月12日

Os Mutantes『Os Mutantes』

ブラジリアン・サイケ名盤のデビュー作☆Os Mutantes『Os Mutantes』
Os Mutantes
発表年:1968年
ez的ジャンル:ブラジリアン・サイケ
気分は... :独特のサイケ・ワールドがたまりません!

今回はブラジルを代表するロック・グループOs Mutantesによるサイケなデビュー・アルバム『Os Mutantes』(1968年)です。

Os Mutantesは1965年にサンパウロで結成されたブラジルのロック・グループ。

結成時のメンバーはArnaldo Baptista(vo、key、b)、Sergio Dias(vo、g)の兄弟と女性メンバーRita Lee(vo、fl、per)の3名。1966年にシングル「Suicida」でデビューし、1968年にはサイケ・ポップなデビュー・アルバム『Os Mutantes』をリリースします。

同じ1968年にはCaetano Veloso、Gilberto Gil/Tom Ze/Nara Leao/Gal Costaらと共に、ブラジル音楽シーンに衝撃を与えたトロピカリアの金字塔的アルバム『Tropicalia: ou Panis Et Circencis』をリリースしています。

1969年に2ndアルバム『Mutantes』をリリース。その後、Liminha(b)が加入し、3rdアルバム『A Divina Comedia ou Ando Meio Desligado』(1970年)をリリースします。さらにDinho Leme(ds)が加入してグループは5人編成となり、4thアルバム『Jardim Eletrico』(1971年)、5thアルバム『Mutantes e Seus Cometas no Pais do Baurets』(1972年)をリリースします。

しかし、『Mutantes e Seus Cometas no Pais do Baurets』を最後にRita Leeがグループを脱退し、ソロへ転向します。その後、Rita Leeはブラジル・ロックの女王の地位を確立していきます。

Os Mutantesはメンバー交代を繰り返しながら存続しますが1978年に解散しています。2006年にArnaldo Baptista、Sergio Diasを中心に再結成され、2009年には35年ぶりのスタジオ・アルバム『Haih Or Amortecedor』をリリースしています。

ブラジルのグループですが、ブラジル音楽好きよりもサイケ/ロック好きからの支持が高いグループですね。

特に今日紹介するデビュー作『Os Mutantes』はブラジリアン・サイケの名盤として再評価の高い1枚ですね。当然ながら英米のサイケ・ロックの影響を受けた1枚ですが、ブラジル人ロック・グループならではの、と言うかOs Mutantesにしか出来ない、独特のサイケ・ワールドを創り上げている点が素晴らしいですね。

『Tropicalia: ou Panis Et Circencis』(1968年)に収録されていた楽曲が3曲あるので、聴き比べてみるのも楽しいと思います。

レコーディングにはメンバー3名に加え、Dirceu(ds)、Jorge Ben(vo、g)、Dr. Cesar Baptista(vo)がゲスト参加しています。また、『Tropicalia: ou Panis Et Circencis』と同じくRogerio Dupratがアレンジを担当しています。

ぜひ60年代サイケ・ロック好きの方に聴いて欲しい1枚です。

全曲紹介しときやす。

「Panis Et Circenses」
Gilberto Gil/Caetano Veloso作。『Tropicalia: ou Panis Et Circencis』にも収録されていたソフト・サイケ・チューンでアルバムは幕を開けます。ストレンジな浮遊感にぎっりきます。
http://www.youtube.com/watch?v=BYibDbcb4yI

「A Minha Menina」
作者のJorge Benもゲスト参加している人気曲。Jorge Ben作品らしい躍動感と本作らしいサイケ・テイストが融合したトロピカル・サイケ・ポップに仕上がっています。
http://www.youtube.com/watch?v=SEpSFOibJho

「O Relogio」
Os Mutantes作。幻想的なムードに包まれた1曲。夢の中で彷徨っているようです。
http://www.youtube.com/watch?v=sPVacwApYBo

「Adeus Maria Fulo」
Sivuca/Humberto Teixeira作。アルバムの中で最もブラジルらしさを感じる仕上がり。このあたりはブラジルならではのロックですね。
http://www.youtube.com/watch?v=SOKlD3TVVGs

「Baby」
Caetano Veloso作。『Tropicalia: ou Panis Et Circencis』やGalのソロ1st『Gal Costa』ではGal Costaがキュートに歌っていました。それと比較すると、Os Mutantesヴァージョンはサイケ・モード全開の仕上がりです。
http://www.youtube.com/watch?v=0wvaKHGhGbI&feature=related

「Senhor F」
Os Mutantes作。このあたりは完璧にThe Beatles『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』の世界ですね。
http://www.youtube.com/watch?v=kYXHWWxsN0A

「Bat Macumba」
Gilberto Gil/Caetano Veloso作。『Tropicalia: ou Panis Et Circencis』でもGilberto Gilが歌っていたクラブ世代に人気のバイーア・グルーヴです。Os Mutantesヴァージョンはファズ・ギターが唸りを上げる強烈なサイケ・ロックに仕上がっています。
http://www.youtube.com/watch?v=eb4NArQ7cvk

「Le Premier Bonheur Du Jour」
Francoise Hardyでお馴染み「朝一番の幸せ」のカヴァー(Jean Gaston Renard/Frank Gerald作)。フレンチ・ポップの名曲がRita Leeのヴォーカルによる怪しげなサイケ・モードのポップ・チューンに生まれ変わっています。
http://www.youtube.com/watch?v=qvUXQB2aXlw

「Trem Fantasma」
Caetano Veloso/Os Mutantes作。邦題「幽霊列車」。個人的にはアルバムで一番好きな1曲。Os Mutantesならではのサイケ・ポップに仕上がっていると思います。
http://www.youtube.com/watch?v=qETJGc_6S-I

「Tempo No Tempo (Once Was A Time I Thought)」
The Mamas & The Papas「Once Was A Time I Thought」のカヴァー(John Philips作)。英語ヴァージョンに聴き慣れていると、ポルトガル語で歌われていること自体にストレンジな印象を受けるかもしれません。
http://www.youtube.com/watch?v=uGEgkbgr20k

The Mamas & The Papas「Once Was A Time I Thought」
 http://www.youtube.com/watch?v=xneFpj8c-n0

「Ave Gengis Khan」
Rita Lee/Arnaldo Baptista/Sergio Dias作。ラストはメンバーのペンによるオリジナルで締め括ってくれます。ガレージ調サイケとオリエンタルなサウンド・コラージュによる摩訶不思議な音空間はまさにOs Mutantesワールド!
http://www.youtube.com/watch?v=gyc-lW54V7k

興味がある方は他のOs Mutantes作品やRita Leeのソロ・アルバムもどうぞ!

Caetano Veloso/Gilberto Gil/Tom Ze/Nara Leao/Gal Costa/Os Mutantes『Tropicalia: ou Panis Et Circencis』(1968年)
Ou Panis Et Circensis

『Mutantes』(1969年)
Mutantes

『A Divina Comedia Ou Ando Meio Desligado』(1970年)
Divina Comedia Ou

『Jardim Eletrico』(1971年)
Jardim Eletrico

『Mutantes e Seus Cometas no Pais do Baurets 』(1972年)
Mutantes E Seus Cometas No Pai

Rita Lee『Build Up』(1970年)
Build Up

Rita Lee『Hoje E o Primeiro Dia do Resto da Sua Vida』(1972年)
Hoje E o Primeiro Dia do Resto da Sua Vida
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2010年11月11日

Carl Thomas『Let's Talk About It』

"グッド・ミュージック"なR&B/ソウル作品☆Carl Thomas『Let's Talk About It』
Let's Talk About It (Mcup)
発表年:2004年
ez的ジャンル:"グッド・ミュージック"系男性R&B/ソウル
気分は... :Bad Boy作品と敬遠しないで下さいね!

今回はCarl Thomasの2ndアルバム『Let's Talk About It』(2004年)です。

Carl Thomasは1972年イリノイ州オーロラ生まれの男性R&Bシンガー。

1996年にSean "Puffy" Combs(現Diddy)のBad Boy Entertainment(現Bad Boy Records)との契約に成功します。

The Notorious B.I.G.の遺作『Life After Death』(1997年)に収録された「The World Is Filled...」にフィーチャーされたのが初レコーディングとなりました。さらにはPuff Daddy & The Familyのアルバム『No Way Out』で「If I Should Die Tonight (Interlude) 」、「Is This The End?」、「Pain」の3曲に参加し、その名が知られるようになります。

さらにはNoreaga「I Love My Life」、The Lox「Let's Start Rap Over」、Total「Press Rewind」、The Beatnuts「Buddah In The Air」、Puff Daddy & The Family「Puff Daddy's Been Around The World (Remix)」、Puff Daddy「Hear Voices」、Mase「Same Niggas」、Angie Stone「U Had A Lady」など短期間に数多くの楽曲に参加し、Bad Boy期待の男性R&Bシンガーとして、どんどん注目を高めていきます。

満を持してリリースされたデビュー・シングル「I Wish」は全米R&Bシングル・チャート第1位に輝き、同曲を含むデビュー・アルバム『Emotional』(2000年)も全米アルバム・チャート第9位、全米R&Bアルバム・チャート第2位という成功を収めました。

「I Wish」
http://www.youtube.com/watch?v=T3lZKkVOdB0

その後リリースされた『Let's Talk About It』(2004年)、『So Much Better』(2007年)という2枚のアルバムも共に全米アルバム・チャートのトップ5に入っており、人気男性R&Bシンガーの地位を確立しています。

最大のヒット・シングル「I Wish」が収録されている『Emotional』(2000年)にしようとも思いましたが、個人的には『Let's Talk About It』(2004年)の方が好きなのでコチラにしました。

Bad Boy作品と聞いて敬遠される方もいるかもしれませんが、実にコンテンポラリー感の高いR&B/ソウル作品に仕上がっています。R&Bな楽曲とソウルな楽曲がバランス良く配されているのがいいですね。

総帥Sean "P. Diddy" Combsをはじめ、多彩なプロデューサー陣によるプロダクションと素晴らしいCarlのヴォーカルが見事に噛み合った充実作だと思います。今振り返っても、アルバム全体を通してかなり高い完成度という気がします。

とにかく楽曲が粒揃いですよ!

Carl Thomasを見るたびに、水泳の北島康介選手を思い浮かべてしまうのは僕だけでしょうか?

全曲紹介しときやす。

「Let's Talk About It (Interlude) 」
タイトル曲はMelba Moore「Standing Right Here」ネタのグルーヴィーなトラックが心地好いMarvin Gaye風の仕上がりです。Deric "D-Dot" Angelettieプロデュース。

「Anything」
キャッチーなR&Bチューン。メロウなコンテンポラリー感とBad Boyのテイストが上手く融合していますね。Carl Thomas/Vatoプロデュース。

「My First Love」
アルバムの中でも人気の高い1曲なのでは?Just Blazeプロデュースによるメロウ&セクシーR&Bは絶品です。Jimmy Spicer「Money (Dollar Bill Ya'll) 」ネタ。
http://www.youtube.com/watch?v=zKjR1mLqnVg

「She Is」
LL Cool Jをフィーチャーしたシングル曲。Sean "P. Diddy" Combs/Mario Winansプロデュース。Surface「Happy」をサンプリングしたBad Boyらしいキャッチーなアップに仕上がっています。

「Know It's Alright (Interlude)」
Malik Yusefをフィーチャー。Carl Thomas/Vatoプロデュース。さり気ないラテン・フレイヴァーの小曲ですがグッド!

「Make It Alright」
アルバムからの2ndシングル。 名曲「I Wish」を手掛けたMike Cityプロデュース曲。コンテンポラリーなグッドR&Bに仕上がっています。

「The Baby Maker」
歌詞にもMarvin Gayeの名が登場しますが、Marvinの流れを汲むセクシーなソウル・チューンです。Carl Thomas/Damien Desandiesプロデュース。
http://www.youtube.com/watch?v=EECS74LVVsA

「Dreamer」
個人的には一番のお気に入り曲です。胸キュン・モードの美メロR&Bは至極のグッド・ミュージック!Carl Thomas/Milton Thorntonプロデュース。

「A Promise」
Stevie Jプロデュース。60〜70年代ソウルへの愛情が感じられるソウル・チューン。Carl Thomasのシンガーとしての実力を堪能できます。レトロ・テイストにし過ぎないところがミソ!

「But Me」
Sean "P. Diddy" Combs/Mario Winansプロデュース。 Bob James「Over And Over Again」をサンプリングした哀愁モードのR&Bチューン。

「All You've Given」
Dre & Vidal(Andre Harris & Vidal Davis)プロデュース。Dre & Vidalらしいジャジー&メロウなネオ・ソウルに仕上がっています。Dre & Vidal大好きの僕には嬉しい1曲。

「All My Love (Interlude)」
Mike Cityプロデュース。短いながらもロマンティックな仕上がりにウットリです。さすがはMike City!

「Let Me Know」
U2の名曲「Love Is Blindness」がベースとなっている哀愁モードの仕上がり。

「Rebound」
Eric Roberson/Paris Bowens/Thaddaeus Tribette/Tye Tribetteプロデュース。美しいアコースティック・ソウル。作者のEric Robersonも自身のアルバム『The Vault, Vol.1』の中で歌っています。

「That's What You Are (Interlude) 」
David Liang/Ryan Leslieプロデュース。当ブログでも紹介した『Transition』で昨年注目されたRyan Leslieですが、こんな所でいい仕事をしていました。哀愁モードの美しいミディアム・スロウに仕上がっています。

「Work It Out」
ラストはStevie Jプロデュースの哀愁バラードでアルバムは幕を閉じます。

国内盤にはボーナス・トラック「Crazy」が収録されています。

『Let's Talk About It』(2004年)
Emotional

『So Much Better』(2007年)
So Much Better
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2010年11月10日

Erik Tagg『Rendez-Vous』

秋に聴きたくなるAOR作品☆Erik Tagg『Rendez-Vous』
ランデヴー
発表年:1977年
ez的ジャンル:ブルーアイド・ソウル系AOR
気分は... :乱でBoo!

今回はErik Tagg(Eric Tagg)の2ndアルバム『Rendez-Vous』(1977年)です。

AOR/フリーソウル・ファンに大人気の男性シンガーErik Tagg(Eric Tagg)の紹介は1stアルバム『Smilin' Memories』(1975年)に続き2回目となります。

今日は気分がAORモードだったので、本作とMarc Jordan『Mannequin』(1978年)のどちらにするか迷ったのですが、ジャケでコチラにしました。前回『Smilin' Memories』を紹介したのも(昨年の)11月でした。僕の中でErik Taggは秋に聴きたいAORなのかもしれません(笑)

本作『Rendez-Vous』は1st『Smilin' Memories』同様、オランダのみリリースのレア盤でしたが、今日ではAOR/フリーソウル系の名盤としてお馴染みの作品ですね。

レコーディングは、兄Larry Tagg(Bourgeois Taggのメンバー)を含む地元ダラスのミュージシャンと共に行われました。 David FosterLee RitenourJeff PorcaroMichael Porcaro等の強力メンバーを迎えた『Smilin' Memories』と比較すると地味なメンバーですが、その事を全く感じさせない素敵なメロウ・サウンドを聴かせてくれます。

ライナー・ノーツやショップのサイトには、Stevie Wonder『Songs In The Key Of Life』(1976年)からの影響が大きいとの解説がありますが、確かにその影響を覗える楽曲がいくつかあります。ただし、モロにStevie調ではなく、メロウなシティ・ポップ・サウンドと上手く調和させているところがお見事という気がします。

やはり、『Smilin' Memories』とセットで揃えておきたい1枚ですね。

全曲紹介しときやす。

「Got To Be Lovin You」
オススメその1。本作のキラー・チューンと言えば、このオープニングなのでは?ブラジリアン・フレイヴァーのシティ・ポップはAOR/フリーソウル好きにはたまらない仕上がりです。
http://www.youtube.com/watch?v=B3kwd1d62hk

「Rendez-vous」
オススメその2。タイトル曲は『Songs In The Key Of Life』からの影響が覗えます。アーバンな雰囲気の中にStevieテイストをうまく散りばめています。

「Lover With Stature」
今の季節にピッタリの少し寂しげな雰囲気にグッときます。SSWらしいシンプルな仕上がりが印象的です。

「Fancy Meeting You」
アレンジがなかなか面白いです。アルバムのいいアクセントになっていますね。

「Marja's Tune」
オススメその3。この曲も『Songs In The Key Of Life』風です。それでもシティ・ポップなテイストを入れてモロにStevie調になっていないところが好きです。

「Babies」
アルバムの中でも最もファンク調の仕上がり。ファンキーはギター&ホーン・セクションが盛り上げてくれます。

「Mutual Feeling」
オススメその4。ラテン・フレイヴァーのアーバン・サウンドが心地好いです。「Got To Be Lovin You」に次ぐ僕のお気に入りです。
http://www.youtube.com/watch?v=tmQLg1nWbjw

「Soul Touch」
哀愁モードのブルーアイド・ソウル。中盤以降の意表を突くアレンジにグッときます。

「Life Goes On」
哀愁モードのバラードで締め括ります。このエンディング・ソングの印象が強く、僕の中でErik Taggは秋に聴きたいAORなのかも(笑)

CDには「Living Off The Love」「The Love I Gave」「Who Are You?」「Will They Be Listening?」という4曲の未発表がボーナス・トラックとして追加収録されています。

『Smilin' Memories』(1975年)
Smilin' Memories

Eric Tagg『Dream Walkin'』(1982年)
ドリームウォーキン
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2010年11月09日

Cassandra Wilson『Days Aweigh』

プリンセス・オブ・ダークネスの魅力が詰まった2nd☆Cassandra Wilson『Days Aweigh』
デイズ・アウェイ
発表年:1987年
ez的ジャンル:ブルージー系女性ジャズ・ヴォーカル
気分は... :秋にはCassandraの低音ヴォーカルがピッタリ!

ジャズ界最高の女性シンガーの一人Cassandra Wilsonの4回目の登場です。

これまで当ブログで紹介したCassandra Wilsonは以下の3枚(発売年順)。

 『Blue Light 'Til Dawn』(1993年)
 『New Moon Daughter』(1995年)
 『Traveling Miles』(1999年)

今回紹介するのは1987年リリースの2bdアルバム『Days Aweigh』です。

やはり秋になるとCassandraのミステリアス&ブルーシーな低音ヴォーカルが聴きたくなりますね。

ちょうど最新作『Silver Pony』をリリースしたばかりCassandra Wilsonですが、これを機会に過去作品をチェックしてはいかがでしょうか?

『Silver Pony』(2010年)
シルヴァー・ポニー

これまでBlue Note時代の作品ばかりでしたが、今回紹介する『Days Aweigh』はJMT時代の作品です。

故郷ミシシッピからN.Y.へ進出し、先鋭ジャズ集団M-Base Collectiveの一員としてSteve Colemanらと活動を共にしていたCassandraが、JMTからリリースしたデビュー・アルバム『Point of View』(1986年)はシーンに大きなインパクトを与えた1枚でした。

天才女性ジャズ・ヴォーカリストと注目を浴びたCassandraが、『Point of View』に続きリリースしたのが『Days Aweigh』です。案外聴きやすい作品であり、インパクトという点では『Point of View』に劣るかもしれません。しかしながら。その後のBlue Noteで大ブレイクするCassandra Wilsonを予感させる充実の1枚です。

レコーディング・メンバーはCassandra Wilson(vo、g)、Jean-Paul Bourelly(g)、Steve Coleman(per、s)、Mark Johnson(ds)、Olu Dara(cor、vo)、Graham Haynes(tp)、Kenny Davis(b)、Kevin Bruce(b)、Rod Williams(p、syn)です。

M-Base系ミュージシャンに加え、Jean-Paul Bourelly(前作『Point of View』にも参加)、Olu Dara(Nasの父親)といった前衛派ミュージシャンも参加しています。

メイン・ストリーム寄りの仕上がりの中にも、Cassandraらしいミステリアス&ブルージーな味わいを堪能できます。

Blue Note時代の完成されたCassandraも素晴らしいですが、JMT時代のCassandraも未完成ならではの魅力があります。

全曲紹介しときやす。

「Electromagnolia」
Cassandra Wilson/Olu Dara作。Olu Dara参加曲。汎カリブ的な雰囲気を持った和やかなオープニング。Cassandra Wilsonらしくない仕上がりに意表を突かれます。

「Let's Face The Music」
Irving Berlin作。1936年に映画『Follow the Fleet』のために作られたスタンダード。クラブジャズ・ファンも気に入りそうなスリリングな演奏にグッときます。Cassandraのヴォーカルも快調です。

「Days Aweigh」
タイトル曲はJean-Paul Bourelly作です。ミステリアスな仕上がりがCassandraらしいですね。作者Bourellyのギターもいい味出しています。

「Subatomic Blues」
Cassandra Wilson作。プリンセス・オブ・ダークネスの本領発揮のブルージーなヴォーカルに魅了されます。Steve Colemanのアルト・サックスも盛り上げてくれます。やはり、Cassandraにはブルースがよく似合いますな。

「Apricots On Their Wings」
Henry Threadgill作。Cassandraのスキャットが絶品です。スウィンギーなパートとジャズ・ファンクなパートのメリハリも素晴らしいです。Kevin Bruce Harrisのベースも格好良いです。

「If You Only Know How」
Cassandra Wilson作。ブラジリアン・フレイヴァーの軽快な仕上がり。Graham Haynesのトランペット・ソロに続き、Cassandraが表情豊かなヴォーカルを聴かせてくれます。

「You Belong To You」
Cassandra Wilson作。既に貫禄十分のCassandraヴォーカルが素晴らしいですね。中盤のSteve ColemanとGraham Haynesの掛け合いもグッド!

「Some Other Time」
ミュージカル『On the Town』のために書かれたスタンダード(Adolph Green/Betty Comden/Leonard Bernstein作)。Rod WilliamsのピアノをバックにCassandraらしい低音ヴォーカルを存分に聴かせてくれます。

「Black And Yellow」
Rod Williams作。ラストはプリンセス・オブ・ダークネスにピッタリなミステリアスな仕上がり。深い深い闇へと吸い込まれそうです。

Cassandra Wilson作品の過去記事もご参照下さい。

『Blue Light 'Til Dawn』(1993年)
Blue Light 'Til Dawn

『New Moon Daughter』(1995年)
New Moon Daughter

『Traveling Miles』(1999年)
トラヴェリング・マイルス
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2010年11月07日

Tatiana Parra『Inteira』

サンパウロ出身の女性シンガー、待望のデビュー・アルバム☆Tatiana Parra『Inteira』
インテイラ
発表年:2010年
ez的ジャンル:印象派MPB
気分は... :心の扉を開け放ちたい・・

今回は一部からは非常に高い評価を得ているTatiana Parraのデビュー・アルバム『Inteira』です。

発売直後の7月に購入し、それ以来愛聴しています。
夏よりも秋が似合うアルバムと先延ばしにしていたら、11月のエントリーになってしまいました(泣)
まぁ、満を持しての紹介ということで・・・

Tatiana Parraはサンパウロ出身の女性ヴォーカリスト。

これまで数多くのアーティストのレコーディングに参加しており、自身のアルバム・リリースが待ち望まれていたアーティストです。

ブラジル国内では、女性シンガー・ソングライターDani Gurgel、男性シンガー・ソングライター/ギタリスト/To Brandileoneといった同じサンパウロ出身の新進気鋭アーティストの作品や、ソングライター/ギタリストとして高い評価を得ているLuiz RIbeiroが手掛けた子供向けアルバム『Teco Treco』(2009年)へ参加しています。

また、アルゼンチン・ネオ・フォルクローレ・シーンの重要グループAca Seca Trioの作品や、Aca Seca TrioのメンバーAndres Beeuwsaertのソロ作にも参加しており、その方面からも注目を集めるようになります。現代アルゼンチン音楽の最重要アーティストと目され、日本でも熱狂的に支持されているCarlos Aguirreとも交流があるようです。

そんなTatiana Parraへの注目が高まる中でリリースされた、待望のデビュー・アルバムが『Inteira』です。

プロデューサーにはベース奏者のMarcelo Marianoが起用されています。Marceloは、元Sambalanco Trioのメンバー、Elis Reginaの元夫/プロデューサー&アレンジャーでとしてお馴染みのCesar Camargo Marianoの息子です。

ブラジルの先人ミュージシャンの有名曲と、自身のオリジナルを含むサンパウロの新進アーティストの楽曲が、いいバランスで配されています。

ゲストとして、プロデューサーMarceloの父Cesar Camargo Mariano、前述のようにTatianaとの親交が深いAca Seca Trio、ボディ・パーカッション集団Barbatuquesなどが参加しています。特にAca Seca TrioメンバーAndres Beeuwsaertのアレンジ&ピアノによる本作への貢献は大きいですね。

アルゼンチン人アーティストとの交流も交えて創られた、ブラジル音楽の新しい可能性を感じさせてくれる1枚です。

聴けば聴くほど、その美しい音世界に魅了されます。

全曲紹介しときやす。

「Abrindo a Porta」
Pedro Viafora/Pedro Alterio作品。サンパウロの新世代シンガー・ソングライター作品がオープニングです。揺れ動く心模様を見事に表現しているTatianaのヴォーカルが素晴らしいです。心の扉を開け放ちたい!

「Bandeira」
Paulo Cesar Pinheiro/Sergio Santos作品。Cesar Camargo Marianoがアレンジ&ピアノで参加しています。最高のサンバ詩人Paulo Cesar Pinheiroとミナス出身の実力派シンガー・ソングライターSergio Santosによる素晴らしい楽曲を、Cesar Camargo Marianoがエレガントなアレンジ&ピアノでバックアップしています。Tatianaの自然体のヴォーカルもグッド!聴いていて心が穏やかになっていくのがわかります。最高!

「Vento Bom」
Sergio Santos/Andre Mehmari作品。Andre Mehmariは繊細な演奏で人気のブラジル人ジャズ・ピアニストです。アコーディオンの音色が印象的な味わい深い仕上がりです。秋に聴くにはピッタリな1曲だと思います。

「Depois」
Dani Gurgel/Tatiana Parra作品。Tatianaとその才能が注目される女性SSW、Dani Gurgelの共作です。Aca Seca TrioのAndres Beeuwsaertがアレンジ&ピアノで参加している点でも興味深い1曲。美しくアーティスティックな仕上がりに、ただただ魅了されるばかりです。

「Oracao」
Dani Black作品。Dani Gurgelらと同じくサンパウロの新世代SSWとして注目されるDani Blackの楽曲を取り上げています。独特のミステリアスな雰囲気が印象的です。

「Choro das Aguas」
Ivan Linsの名曲をカヴァー(Vitor Martins/Ivan Lins作)。オリジナルは当ブログでも紹介した『Somos Todos Iguais Nesta Noite』(1977年)に収録されています。そんな名曲カヴァーをバックアップするのはをゲスト参加のAca Seca Trioです。メンバーのJuan QuinteroとTatianaによる奥深いヴォーカル、Andres Beeuwsaeの美しいアレンジが至高の音世界へと誘ってくれます。絶品!

「Inteira」
Giana Viscardi/Tatiana Parra作品。タイトル曲はTatianaがピアノも弾いています。新世代MPBの世界観に上手くジャズ・テイストをブレンドしている感じですね。Teco Cardosoのソプラノ・サックスも印象的です。

「Amor de Parceria」
Noel Rosa作品。1930年代に活躍したサンバ詩人Noel Rosaの楽曲をボディ・パーカッション集団Barbatuquesのビートと共に歌い上げます。アルバムのいいアクセントになっています。、

「Uma Valsa para Tres」
Chico Cesar/Chico Pinheiro作品。Tatianaが敬愛するChico Pinheiroの作品です。アレンジも担当しているDebora Gurgelの美しいピアノとNailor "Proveta" Azevedoのクラリネットのみというシンプル・サウンドでTatianaの歌表現を際立たせています。

「Testamento」
Milton Nascimento/Nelson Angelo作品。Miltonのオリジナルは『Clube da Esquina 2』(1978年)に収録されています。シブいセレクトのカヴァーですが、彼女の雰囲気にマッチしているのでは?

「Sabia」
Chico Buarque/Antonio Carlos Jobim作品。Andres BeeuwsaertのピアノとFernando SilvaのチェロのみというシンプルなバックとTatianaの歌が創り出す小宇宙に魅了されてアルバムは幕を閉じます。

関連して、Dani GurgelAca Seca Trio等もチェックしてみると、さらに楽しめると思います。

Dani Gurgel『Nosso』(2008年)
Nosso

今年はアルゼンチン音楽が密かなブームとなっていますね。
本作あたりをきっかけにアルゼンチン音楽へ入っていくのも良いのでは?
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