2017年06月18日

RC & The Gritz『The Feel』

Erykah Badu諸作に関与したRC Williamsが率いるバンド☆RC & The Gritz『The Feel』
Feel
発表年:2016年
ez的ジャンル:ダラス産ソウル・バンド
気分は... :RCといえばサクションなのですが…

今回は新作R&BからRC & The Gritz『The Feel』です。
※昨年末のリリースですが、今春になりフィジカル・リリースされました。

RC & The Gritzはテキサス州ダラス出身のRC Williamsをリーダーとするソウル・バンド。

RC WilliamsErykah Baduの諸作にプロデューサー、ソングライター、キーボード奏者として参加経験を持つミュージシャンです。

そんな関係でバンドはErykah Baduをはじめ、Snoop DoggJill ScottThe RootsQueen Latifahなどのツアー・サポートを行ってきました。

本作『The Feel』は、RC & The Gritzにとって『Pay Your Tab』(2013年)に続く2ndアルバムとなります。

バンド・メンバーはRC Williams(key、vo)、Cleon Edwards(ds)、Braylon “Brother B” Lacy(b)、Claudia Melton(vo)、TaRon Lockett(per)、Jah Born(MPC)、Evan Knight(sax)、Mike Brooks(sax)。

メンバーのうちJah BornもRC同様、Erykah Baduの諸作に関与している人ですね。

前作『Pay Your Tab』ではErykah BaduSnoop DoggRaheem Devaughnといった豪華ゲストが参加していましたが、本作にはそういった派手なゲストはいません。

ただし、ここ数年注目度の高いドラマーChris Dave、80年代から活躍するキーボード奏者Bernard Wrightがプロデュース、コンポーザー、演奏で参加するなど多数のミュージシャンが本作に参加しています。

アルバムは大きくソウル・バンドらしい生音重視の演奏、プログラミングを交えたHip-Hopフィーリングのトラック、さらにはジャズ・フィーリングを前面に押し出した演奏から構成されます。

派手さはありませんが、捨て難い魅力があります。
生音とプログラミングの自然な融合という点では"今ジャズ"好きの人あたりも楽しめるのでは?

RC Williamsが全曲プロデュースしています(共同プロデュース含む)。

全曲紹介しときやす。

「The Feel」
Bobby Sessions、Zyahのラップをフィーチャーしつつ、ソウル・バンドならではのアーバンなサウンドを聴かせてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=-7rgxvLfXyQ

「Never Enough」
Bernard Wrightとの共同プロデュース。Claudia Meltonのヴォーカルが栄える爽快ネオソウルに仕上がっています。生音+プログラミングによる今の時代らしいビートもいいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=mvnlONdurA4

「Good Day To You Sir」
白人女性SSW、Sarah Jaffeのヴォーカルをフィーチャー。Jah BornのプログラミングとRCのムーグ・ベースによる濃厚なビートとSarah Jaffeの少し気怠いヴォーカルの組み合わせがいい感じです。
https://www.youtube.com/watch?v=V5bjySva_JE

「Anxiety」
Sam Lao、Bianca Rodriguezのヴォーカルをフィーチャー。シンセとプログラミングによアブストラクトなトラックが印象的です。
https://www.youtube.com/watch?v=g_dHFpuAPW8

「Lessons」
落ち着いた雰囲気のオトナのジャジー・ソウルです。優雅なアレンジがいいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=EjbhlnIDtss

「Feathers」
Chris Daveとの共同プロデュース。Chris Daveのドラミングが牽引するジャズ・フィーリングたっぷりのミディアム・テンポのインスト。
https://www.youtube.com/watch?v=pUOVpOKAsJU

「Jelly Roll」
"今ジャズ"好きの人が聴いても楽しめそうなライブ感のあるジャジーなインスト。
https://www.youtube.com/watch?v=pqxmmip7vi0

「Gritz Interlude」
Hip-Hopフィーリングのバンド演奏という感じがこのグループの特徴をよく反映しているのでは?
https://www.youtube.com/watch?v=jM6ws9EyqRQ

「Give Me Your Heart」
Bianca Rodriguezの女性ヴォーカルをフィーチャー。ソウル・バンドらしい余裕のあるアーバン・サウンドにグッとくるコンテンポラリーな仕上がり。
https://www.youtube.com/watch?v=SUGFGM_m49M

「Jazz And Reverse」
So So Topicのラップをフィーチャー。完全にバンド・サウンドではなくビートメイカー的トラックです。でもジャズ・フィーリングのHip-Hop好きの人であれば満足できる仕上がりだと思います。
https://www.youtube.com/watch?v=oUjGcIc9kuw

「The Feel (Reprise) ...」
オープニング曲のリプライズ。
https://www.youtube.com/watch?v=2peNp6_UwVs

「I'll Be Waiting For You」
ラストは自然体のリラックスしたソウル・グルーヴで締め括ってくれます。Claudia Meltonの素直なヴォーカルが栄えます。
https://www.youtube.com/watch?v=ZExl-gFO9AE

ご興味がある方は1stアルバム『Pay Your Tab』(2013年)もチェックを!

『Pay Your Tab』(2013年)
Pay Your Tab by Rc & The Gritz
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2017年06月11日

Christian Scott aTunde Adjuah『Ruler Rebel』

現在ジャズを牽引するトランぺッターの意欲作☆Christian Scott aTunde Adjuah『Ruler Rebel』
Ruler Rebel [日本語解説つき]
発表年:2017年
ez的ジャンル:今ジャズ系トランぺッター
気分は... :ジャズ生誕100年!

今回は新作ジャズから現在ジャズを牽引するトランぺッターChristian Scott aTunde Adjuah『Ruler Rebel』です。

1983年ニューオリンズ生まれ。サックス奏者のDonald Harrisonを叔父に持つChristian Scott(Christian Scott aTunde Adjuah)の紹介は、『Stretch Music』(2015年)に続き2回目となります。

『Stretch Music』(2015年)は、当ブログ恒例の『ezが選ぶ2015年の10枚』にも選んだお気に入り1枚であり、"今ジャズ"の魅力を余すことなく伝えてくれる1枚でした。

最新作『Ruler Rebel』は、ジャズ生誕100年を記念してリリースされる三部作"The Centennial Trilogy"の第1弾と位置付けられるアルバムです。

全8曲で36分という尺は、アルバムとしては少々物足りない気もしますが、中身は現在ジャズを牽引者らしい

レコーディング・メンバーはChristian Scott aTunde Adjuah(tp、flh、sirenette、SPD-SX、sampler)、Elena Pinderhughes(fl)、Lawrence Fields(p、el-p)、Luques Curtis(b)、Kris Funn(b)、Joshua Crumbly(b)、Cliff Hines(g)、Corey Fonville(ds、SPD-SX)、Joe Dyson Jr.(pan african ds、SPD-SX)、Weedie Braimah(djembe, bata, congas)、Chief Shaka Shaka(dununba、sangban、kenikeni)。さらにゲスト・ヴォーカルとしてSarah Elizabeth Charlesが参加しています。

プロデュースはChristian Scott aTunde AdjuahChris Dunn

前作『Stretch Music』の路線をさらに推し進め、生音とサンプリングパッド、プログラミングを有機的に融合させたビートづくりにさらに磨きがかかっています。これにはChristian自身に加え、Butcher Brown等でも活動するCorey FonvilleJoe Dyson Jr.というドラマー陣が大きく貢献しています。

勿論、主役のChristianのトランペット/フリューゲルホーンや前作に続きフィーチャリングされているElena Pinderhughesのフルートも素晴らしいですが、刺激的なリズム/ビートについつい耳が行ってしまいます。

その意味では「Encryption」「The Coronation of X. aTunde Adjuah」「The Reckoning」という後半3曲が特に刺激的です。

ジャズ・リスナー以外に聴いて欲しい"今ジャズ"作品です。

全曲紹介しときやす。

「Ruler Rebel」
Christian Scott作。美しくも悲しげな音世界に壮大なスケールを感じるオープニング。厳しい社会情勢を描いたドキュメンタリーのテーマ音楽とか似合いそうですね。Christianの演奏は悲しみ、怒り、慈しみ等さまざまな感情が入り混じっているようです。
https://www.youtube.com/watch?v=5TUHc4WkEGg

「New Orleanian Love Song」
Christian Scott作。故郷であり、ジャズ発祥の地であるニューオリンズをタイトルに冠しています。アフリカン・ドラムも交えた呪術的なビートにのって、Christianのトランペットが雄弁に語ります。Lawrence Fieldsの美しいピアノの旋律も印象的です。
https://www.youtube.com/watch?v=KbnBbZ6J0co

「New Orleanian Love Song II」
Christian Scott作。「New Orleanian Love Song」のパート2(というよりリミックス)。本作ならではの生音と電子音が融合したビートが刺激的です。
https://www.youtube.com/watch?v=Ocpr_ivGghc

「Phases」
Christian Scott/Sarah Elizabeth Charles作。Sarah Elizabeth Charlesのヴォーカルをフィーチャー。幻想的な音世界の中でChristianのソロの音色にSarahのヴォーカルが溶け込んでいく感じがいいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=86jv5s9Hp6w

ご興味がある方はChristian ScottがプロデュースしたSarah Elizabeth Charlesのアルバム『Inner Dialogue』もチェックしてみて下さい。
『Inner Dialogue』(2015年)
Inner Dialogue

「Rise Again」
Christian Scott/Allan Cole作。前作『Stretch Music』に収録されていた「Sunrise In Bejing」のパート2といった感じです。「Sunrise In Bejing」を気に入っていた僕としてはグッと心惹かれました。ここでも生音とプログラミングを融合させたビートが効果的に使われています。
https://www.youtube.com/watch?v=Owngsa_mwo0

「Sunrise In Bejing」(From 『Stretch Music』
 https://www.youtube.com/watch?v=L1JnHCqqu64

「Encryption」
Christian Scott作。Elena Pinderhughesのフルートをフィーチャー。前作でもフィーチャーされたElenaの演奏を再び楽しめます。ハンドクラップ調を交えた今ジャズらしいビートをバックに、ChristianのフリューゲルホーンとElenaのフルートが舞います。
https://www.youtube.com/watch?v=vF31YfbSJxk

「The Coronation of X. aTunde Adjuah」
Christian Scott作。この曲でもElena Pinderhughesのフルートをフィーチャー。ビートメイカー的なビートにElenaやChristianのソロが絡む様は、Hip-Hop経由の現在ジャズを強く意識させられるJazz The New Chapter的な仕上がりです。個人的にも一番好きな演奏です。
https://www.youtube.com/watch?v=5QY138isnzI

「The Reckoning」
Christian Scott作。ラストも本作らしい有機的かつ刺激的なビートがChristianの演奏をナビゲートします。ドラムパッドによるスクラッチ調の音が印象的です。「The Coronation of X. aTunde Adjuah」と並ぶお気に入りです。
https://www.youtube.com/watch?v=orZ6com0jCI

Christian Scottの他作品もチェックを!

『Rewind That』(2006年)
Rewind That

『Anthem』(2007年)
Anthem

『Live At Newport』(2008年)
Live at the Newport Jazz Festival (W/Dvd) (Dig)

『Yesterday You Said Tomorrow』(2010年)
Yesterday You Said Tomorrow

Stefon Harris/David Sánchez/Christian Scott『Ninety Miles』(2011年)
ナインティ・マイルズ

『Christian Atunde Adjuah』(2012年)
Christian Atunde Adjuah

Next Collective『Cover Art』(2013年)
Cover Art

『Stretch Music』(2015年)
Stretch Music [日本語解説付き]
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2017年06月04日

Justin Terrell『Love Sessions』

ジェントル&シルキーな男性R&B/Soul☆Justin Terrell『Love Sessions』
ラヴ・セッションズ
発表年:2017年
ez的ジャンル:インディ男性R&B/Soul
気分は... :ジェントル&シルキー!

今回は新作R&BアルバムからJustin Terrell『Love Sessions』です。

Justin Terrellはルイジアナ州出身の男性R&Bシンガー。本作『Love Sessions』はデジタル配信のみのアルバムでしたが、ディスクユニオンR&B発掘&復刻シリーズ『RNB MADNESS』の1枚として、フィジカル・リリースが実現しました。

アルバムはプロデューサーを務めるMelvin "Melo" Williamsとの二人三脚で制作されています。ソングライティングもすべて2人によるものです。

Justin Terrell自身は影響を受けたアーティストとして、同じルイジアナ州出身のR&BアーティストPJ Mortonの名を挙げています。

そんな流れでいえば、当ブログでも紹介したPJの1stアルバム『Emotions』(2005年)がお好きな人は、本作『Love Sessions』を気に入ると思います。

アルバム全体としては、Justin Terrellのジェントル&シルキーなヴォーカルを生かしたメロディ重視のソウル・アルバムに仕上がっています。また、Justin TerrellやMelvin "Melo" Williamsはゴスペルをルーツに持ち、そうした影響もアルバムに反映されています。

YouTubeに音源がないのが残念ですが、「Old School Love」「I Can Make You Smile」という冒頭の2曲を聴けば、本作の魅力を実感できるはずです。

時代の流れに左右されない素敵なソウル・アルバムを楽しみましょう。

全曲紹介しときヤス。

「Old School Love」
このオープニングで本作は"買い"と確信しました。Justinのヴォーカルとキーボード&アコギが優しく包み込んでくれる素敵なメロウ・ソウルです。

「I Can Make You Smile」
木漏れ日のメロウ・ソウルといった趣の仕上がりです。聴いていると、何かいい事が起こりそうなポジティブなヴァイヴがいいですね。

「Always Be」
しっとりと歌い上げるラブ・バラード。丁寧に言葉を重ねるJustinの真摯な歌声がいいですね。

「Fool For You」
ファルセットも駆使しながらJustinの歌手としての魅力が伝わってくる、レトロ風味の味わい深いミディアム・ソウル。

「Safe Place」
インタールード的な小曲ですが、ていねいなヴォーカルワークが印象的です。

「Your Hands」
さり気ないですが、Justinの切々としたヴォーカルに魅了されるラブ・バラード。

「Every Day」
シルキーなJustinのヴォーカルワークが栄える軽くビートを効かせたミディアム・グルーヴ。

「Interlude」
タイトルの通り、インタールードですがなかなか雰囲気があります。

「Fight for Love」
マイナー調の哀愁メロウ・ミディアム。アルバムで唯一のマイナー調です。

「Circle」
ピアノ、シンセのみをバックに歌い上げるビューティフル・バラード。

「Say Goodbye」
別離の歌ですが、Justinのジェントル&シルキーな魅力が伝わってくる素敵な仕上がりです。

「Motions」
ユラユラと揺らめくドリーミー感が魅力のR&Bグルーヴ。

「All Came Back」
キャッチーなヴィンテージ感にグッとくるソウル・チューン。2017年ならではのオールドスクール感がいいですね。

「Back to Love」
ヴィンテージなダンサブル感が心地好い1曲。自然と体が揺れてしまいます。

「MeandMusic」
David Simmonsをフィーチャー。ラストはアルバムの余韻に浸るようなバラードで締め括ってくれます。

今夜は世界卓球、テニス全仏オープン、サッカーCL決勝とスポーツ中継のハシゴになりそうです。

世界卓球の平野選手は残念でしたね。やはり中国のトップ選手は強かった!これを糧にさらなる飛躍を期待します。

CL決勝はユーべが勝ちそうな気がします。
ジダンが監督として古巣と対決するのは興味深いですね。
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2017年05月28日

Kendrick Lamar『Damn』

『To Pimp A Butterfly』に続く衝撃!☆Kendrick Lamar『Damn』
Damn
発表年:2017年
ez的ジャンル:コンシャスHip-Hop
気分は... :リバース!

今回は新作アルバムから超話題のHip-Hop作品Kendrick Lamar『Damn』です。

現代アメリカ社会に鋭く切り込むリリックで絶大なる支持を得ているKendrick Lamarの紹介は、大ヒットとなった歴史的名盤『To Pimp A Butterfly』(2015年)に続き2回目となります。

未発表曲集『Untitled Unmastered』(2016年)を挟んでリリースされた新作『Damn』ですが、『To Pimp A Butterfly』に続く衝撃作だと思います。

アルバムは『To Pimp A Butterfly』『Untitled Unmastered』に続く全米アルバム・チャートNo.1に輝いています。

プロデューサー陣には、Anthony "TopDawg" TiffithBekonMike WiLL Made ItDJ DahiSounwaveJames BlakeRicci RieraTerrace MartinSteve LacyThe Internet)、BadBadNotGoodGreg KurstinTeddy WaltonThe AlchemistCardo9th Wonderという多彩な面々が起用されています。

アルバムではRihannaU2、Zacariがフィーチャーされ、それ以外にBekon(vo)、Kid Capri(vo)、Chelsea Blythe(vo)、DJ Dahi(vo)、Anna Wise(vo)、Steve Lacy(vo)、Rat Boy(vo)、Matt Schaeffer(g)、Thundercat(b)、Kamasi Washington(strings)、Sounwave(strings)、Mike Hector(ds)等が参加しています。

『To Pimp A Butterfly』もそうでしたが、曲単位で云々ではなくアルバム単位で1つの作品、メッセージになっている構成力の高さが、他のアーティストの追随を許さない魅力だと思います。

普段は歌詞内容やメッセージよりもサウンド重視で作品を聴く僕ですが、本作に関しては、リリックや世界観に圧倒され、サウンドは二の次になってしまいます。

本作に貫かれているテーマは「邪悪さと弱さ」。神になったかのように振る舞う邪悪な自分、その反対に己の弱さを克服しようとする自分、自分の中に存在する2つのパーソナリティの間を揺れ動きます。

そんなテーマを象徴するように、「Pride.(強欲)」「Humble.(謙虚さ)」「Lust.(色欲)」「Love.(愛)」といった対照的なタイトルの曲が並んだ構成になっています。

対照的といえば、オープニングの「Blood.」では、誤った選択が死を招くという内容、ラストの14曲目「Duckworth.」は正しい選択が運命を切り開く内容になっているのも意味深です。

さらにラストの「Duckworth.」の終盤にはテープの逆回し音と共に、アルバムがリバースされ、気づくとオープニングの「Blood.」に戻っているという仕掛けがあります。

本作は1曲目から聴くと、2つのパーソナリティの間を揺れ動きながらも、「Lust→Love」、「Pride→Humble」のように弱さを克服してエンディングを迎える流れになっています。しかし、逆回しの流れで14曲目からアルバムをリバースしながら聴くと、「Love→Lust」「Humble→Pride」のように邪悪な方向に流れ、ラストはその選択の誤りから銃で撃たれて絶命することになります。

どちらから聴き始めるかでストーリーが大きく異なってくる。それを選択するのはリスナー次第・・・
こうしたリバースの流れを意図して本作が制作されたのであれば脱帽です。

こんなアルバムを作ってしまうKendrick Lamarは真のアーティストですね。

僕も両方のパターンでアルバムをさらに聴き込みたいと思います。

全曲紹介しときやす。

「Blood.」
Anthony "TopDawg" Tiffith/Bekonプロデュース。Bekonのヴォーカルに続き、Kendrickが盲目の女性を助けようとしたところ、銃で撃たれて絶命する悲劇を語った後、銃声が響き、さらにFoxニュースのコメントのサンプリングが流れます。

最後のFoxニュースは、2015 BET AwardsにおけるKendrickの「Alright」のパフォーマンス(パトカーの上に乗った扇動的パフォーマンス)に対して、Foxニュースのコメンテーターが痛烈に批判したことが発端になっています。Kendrickが伝えたかったメッセージと全く逆の意味で受け止められてしまうもどかしさを伝えたいのでしょう。

「DNA.」
Mike WiLL Made Itプロデュース。少しダークなトラックにのって、「Blood」での鬱憤を晴らすかのように、自身の才能への自信を組み込まれたDNAの違いという切り口でまくし立てます。ここでもFoxニュースのコメントのサンプリングが挿入されています。
https://www.youtube.com/watch?v=NLZRYQMLDW4

「Yah.」
Anthony "TopDawg" Tiffith/DJ Dahi/Sounwaveプロデュース。タイトルには神を意味する"Yahweh"というニュアンスも込められているようです。、サウンドからも宗教的なムードが漂います。♪buzzin',radaras in buzzin'♪のフレーズが脳内に刻まれます。

「Element.」
Sounwave/James Blake/Ricci Rieraプロデュース。Kid Capriがヴォーカルで参加しています。ポスト・ダブステップの貴公子James Blakeも関与した曲で、♪誰も俺を守ってくれない♪とKendrickが自身の脆さを吐露します。Juvenile「Ha」のフレーズが引用されています。

「Feel.」
Sounwaveプロデュース。超絶ベーシストThundercatが参加しています。そのThundercatのベース、O.C. Smith「Stormy」ネタのドラム・ループ、Chelsea Blytheのヴォーカルをバックに、富と名声を得た代償として孤独を感じる自身の内面に迫ります。

「Loyalty.」
Anthony "TopDawg" Tiffith/DJ Dahi/Sounwave/Terrace Martinプロデュース。Rihannaをフィーチャー。Bruno Marsの「24K Magic」をサンプリングし、大胆に逆回転させたトラックにのって、"バッドガール"Rihannaと共に大切な人への忠誠心を歌い上げます。

「Pride.」
Anthony "TopDawg" Tiffith/Steve Lacyプロデュース。注目のR&BユニットThe InternetのメンバーSteve Lacyがプロデュースに関与しています。そんなせいもあってサウンドがいいですね。ここでのKendrickのラップは不安定な心を露わにしています。

「Humble.」
Mike WiLL Made Itプロデュース。アルバムからのリード・シングルとして全米チャート、同R&Bチャート共にNo.1に輝いています。最後の晩餐を模したシーンも登場するPVが印象的です。謙虚でいることは難しい・・・
https://www.youtube.com/watch?v=tvTRZJ-4EyI

「Lust.」
BadBadNotGood/DJ Dahi/Sounwaveプロデュース。Kid CapriとRat Boyがヴォーカルで参加しています。L.A.ジャズの重要アーティストKamasi Washingtonがストリングスを手掛けています。哀愁モードのトラックにのって、色欲に流される人々を歌います。Rat Boy「Knock Knock Knock」のフレーズも登場します。

「Love.」
Anthony "TopDawg" Tiffith/Greg Kurstin/Sounwave/Teddy Waltonプロデュース。Zacariをフィーチャー。前曲「Lust」とは対照的に真の愛について歌います。そのテーマに相応しい崇高な美しさに包まれた仕上がりです。

「XXX.」
Anthony "TopDawg" Tiffith/DJ Dahi/Mike WiLL Made It/Sounwaveプロデュース。U2をフィーチャーした話題曲。ここでのKendrickはオバマが去り、トランプが仕切る合衆国への絶望を明確に示しています。そんな苛立つKendrickをなだめるようにBonoのヴォーカルが響きます。James Brown「Get Up Offa That Thing」 、Young-Holt Unlimited「Wah Wah Man」
Foals「Fugue」 ネタ。

「Fear.」
The Alchemistプロデュース。不気味な空気が支配するトラックをバックに、Kendrickがこれまでの人生の節目で感じてきた恐怖心を歌います。The 24-Carat Black「Poverty's Paradise」の声ネタが正にFearですね!自身の「The Heart Part 4」のフレーズを引用しています。

「God.」
Anthony "TopDawg" Tiffith/Bekon/Cardo/DJ Dahi/Ricci Riera/Sounwaveプロデュース。「DNA.」や「Humble.」で自身の神ポジションを誇示していましたが、ここでは♪神はこのように感じているのか♪と謙虚な姿勢です。

「Duckworth.」
9th Wonderプロデュース。9th WonderらしいTed Taylor「Be Ever Wonderful」、Hiatus Kaiyote「Atari」、September「Ostavi Trag」、The Fatback Band「Let the Drums Speak」 ネタのソウルフル・トラックが冴えます。

ラストは自身の名字(Kendrick Lamar Duckworth)をタイトルに冠したエンディングのリリックは、20年前、Kendrickの父親と所属レーベルTop Dawg Entertainmentの社長Anthony "Top Dawg" Tiffithの間で本当にあった数奇な縁(レストランに強盗を企てようとしたTop Dawgに対して、その店で働くKendrickの父親が親切に接することで強盗を踏み止めさせた)をテーマにしています。

あの時、Top Dawgが強盗を犯していたら、あの時、Kendrickの父親が襲われて死亡していたら、Kendrick Lamarという才能が生まれることはなかった・・・この時の2人の選択がKendrickの人生を導いたという、嘘のようなアンビリバボーな実話から人生の選択の重要性を説きながらエンディングを迎えます・・・しかし、ここで終わらず銃声と共にテープの逆回転が始まり、アルバムがリバースし、気づけばオープニングの「Blood.」に戻ってアルバムは幕を閉じます。

Kendrick Lamarの他作品もチェックを!

『Section.80』(2011年)
Section.80 (Limited Edition Cdr)

『Good Kid, M.A.A.D City』(2012年)
Good Kid M.a.a.D City

『To Pimp A Butterfly』(2015年)
To Pimp a Butterfly

『Untitled Unmastered』(2016年)
untitled unmastered.
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2017年05月21日

Diggs Duke『Civil Circus』

話題のSSW/マルチ・インストゥルメンタリストの新作☆Diggs Duke『Civil Circus』
CIVIL CIRCUS [日本限定CD化 / 日本語解説付き]
発表年:2015年
ez的ジャンル:マルチ・インストゥルメンタリスト系異才ジャズ/ソウル
気分は... :この感性についていけるか・・・

今回は話題のシンガーソングライター/マルチ・インストゥルメンタリストDiggs Dukeの新作アルバム『Civil Circus』です。

Diggs Dukeの紹介は、Gilles PetersonのBrownswood Recordingsからリリースされた1stアルバム『Offering For Anxious』(2014年)に続き、2回目となります。

本作『Civil Circus』は自身のレーベルFollowing Is Leadingから2015年にリリースされ、Bandcampで数量限定でフィジカル・リリースされていた作品です。今回、日本限定でCDがリリースされ、新作アルバムとして話題になっています。

『Offering For Anxious』(2014年)における生演奏とプログラミング、ジャズをベースにソウル/R&B、Hip-Hop、ビートミュージックのエッセンスを絶妙に融合させた独自の音世界は、玄人志向ながらも各方面から絶賛されました。

本作『Civil Circus』でも独自の音世界は健在です。『Offering For Anxious』と比較すると、よりジャズ・フィーリングが強調されているかもしれませんね。きっと"今ジャズ"好きの人は興味深く聴けるのでは?

『Offering For Anxious』(2014年)同様に、30分にも満たないアルバムです。このあたりはビートミュージック作品のような感覚ですね。

決して聴きやすいアルバムではありません。
しかし、少ない音数の中にDiggs Dukeの感性が凝縮されています。
Diggs Dukeの感性に挑んでみましょう!

Diggs Duke『Civil Circus』Trailer
https://www.youtube.com/watch?v=uvWoplEXcEg

全曲紹介しときやす。

「Busker」
Jelani Brooksのサックス、Luke Stewartのダブルベース、Warren G. Crudup IIIのドラムをフィーチャー。完全にジャズ・モードのオープニング。

「Compensation」
Dante Popeのヴォーカルをフィーチャー。ヴォーカル・ワークを重視した約1分半の小曲。

「Ambition Addiction」
ジャズとドラムンベースを融合させたDiggs Dukeらしいサウンドを楽しめる1曲。"今ジャズ"好きの人は気に入るはず!

「Stoplight Lessons」
Herb Scottのアルト・サックス、Jelani Brooksのテナー・サックス、Terry Orlando Jonesのドラム、Rachel Brotmanのヴォーカルをフィーチャー。ソウル+ジャズ+ビートミュージックなクロスオーヴァー感覚が楽しい1曲に仕上がっています。

「Postcard」
ビートミュージックな側面を前面に打ち出したミニマルな仕上がり。

「Street Preacher」
Diggs Duke自身のクラリネットとアルト・サックスが織り成す陽だまりの一人ジャズ・セッションといった趣です。

「Bumper To Bumper」
Diggs Dukeのピアノ・ソロ。静かなる闘志といった雰囲気の演奏です。

「Warming Warning」
Warren G. Crudup IIIのドラム、Jada Irwinのヴォーカルをフィーチャー。トライバル・リズム、巧みなヴォーカルワークにフューチャリスティックな味付けも加わり、独特の感性を楽しめる1曲。

「Damn Near Home」
Herb Scottのアルト・サックス、Jelani Brooksのテナー・サックス、Rachel Brotmanのヴォーカルをフィーチャー。サックスとヴォーカルが織り成すストレンジ・ワールド。

「We Don't Need Love (But Understanding)」
ラストはDiggs Dukeのヴォーカル、ピアノ、ベースによるジャズ・フィーリングの演奏で締め括ってくれます。

未聴の方は『Offering For Anxious』(2014年)もチェックを!

『Offering For Anxious』(2014年)
オファリング・フォー・アンクシャス(タワレコ生産限定CD) Diggs Duke ディグス・デューク
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