2017年04月09日

Tall Black Guy『Let's Take A Trip』

Diggs Dukeらも参加!デトロイト出身の次世代ビートメイカー☆Tall Black Guy『Let's Take A Trip』
Let's Take A Trip
発表年:2016年
ez的ジャンル:デトロイト系ビートメイカー
気分は... :探偵ジョー!

今回はデトロイト出身の気鋭ビートメイカーTall Black Guyの2ndアルバム『Let's Take A Trip』です。

Tall Black Guy(TBG)(本名:Terrel Wallace)はデトロイト出身のビートメイカー。名前の通り長身らしいです。現在はUKを拠点にしています。

シカゴ出身のラッパーDee JacksonとのHip-Hopユニット80's Babiesとして活動すると同時に、Fela Kutiのリメイク「Water No Enemy」Gilles Petersonの人気コンピ『Brownswood Bubblers Seven』(2011年)に収録されたことで注目されるようになります。

2013年にはTall Black Guy名義の1stアルバム『8 Miles to Moenart』をリリース。1stアルバム『Offering For Anxious』が話題となり、もうすぐ発売される2ndアルバム『Civil Circus』への注目度も高まっている、ワシントン出身の異才シンガーソングライター/マルチ・インストゥルメンタリストDiggs Duke、ジャジーHip-Hop好きにはお馴染み、Othello名義の作品を当ブログでも数多く紹介してきたOzay Moore等をフィーチャリングしています。

同作は?uestloveThe Roots)、D'Angeloといった大物アーティストからも称賛されています。

さらにはJazzy Jeffが主催し、先進アーティストを集めるプロジェクトPlaylist Reteartに招かれ、当ブログでもイチオシの新進R&BアーティストSiRらとコラボしています。

2016年にはYusef Rumperfield名義でのアルバム『Jazz In Motion‎』(※アナログ盤のみ)をリリースしています。

そして、昨年11月にTall Black Guy名義でリリースされた2ndアルバムが本作『Let's Take A Trip』です。今年2月に国内盤がリリースされました。

僕が所有するのは国内盤であり、ジャケも上記のものですがオリジナルUK盤はジャケが異なるのでご注意を!

Tall Black Guy『Let's Take A Trip』 ※UK盤
Let's Take a Trip

デトロイト出身ということで故J Dillaの系譜を継ぎつつ、次世代ビートメイカーとしての進化も見せてくれる濃密な1枚に仕上がっています。

80's BabiesYusef Rumperfield名義で自身をフィーチャリングしています。

また、前作にも参加していたDiggs DukeOzay MooreOthello)に加え、当ブログでも紹介したL.A.ネオソウル・バンドMoonChild、L.A.出身のピアニストで当ブログでも2ndアルバム『The Awakening』(2014年)を紹介したDaniel Crawford、Hip-HopユニットEulorhythmicsのメンバーとしても活動していたKenny Keys、僕も好きなジャジーHip-HopユニットSounds Goodのメンバーとしても活動し、ドイツの気鋭レーベルMelting Pot Musicにも所属していたプロデューサー/MC/トランぺッターMiles Bonny、さらにはMario SweetRommel DonaldMasegoといったアーティストをフィーチャリングしています。

TBGのこれまでのキャリアや本作の参加メンバーのピープルツリーを見ただけでも、僕好みのアーティストであると言えるでしょう。Diggs DukeOzay MooreOthelloMoonChildというフィーチャリング・アーティストの名前だけで購買意欲がそそられました。

決して派手なアルバムではありませんが、J Dilla経由の次世代ビートメイカーとしての才能を存分に見せつけてくれます。Hip-Hop×ネオソウル×ジャズなフィーリングはThe SoulquariansやジャジーHip-Hop好きの人にフィットするはずです。あるいは、JTNC的なHip-Hop/ネオソウルを探している方も楽しめるかも・・・

今の僕の音楽嗜好にフィットするHip-Hop作品です。

全曲紹介しときやす。

「A Train Is Coming.....」
Eric B & Rakim等でもお馴染みの声ネタ♪This is a journey into Sound♪(「Train Sequence」ネタ)と共に始まるアルバムのイントロ。浮遊するJ Dilla的ビートを聴くことができます。

「One Device, One Method, One Thing」
哀愁モードのジャジーHip-Hop。寂しげなドープ感がいい感じです。
https://www.youtube.com/watch?v=27o5ujv6cQ4

「Rockin From Beginning To End」
Kenny Keysのフェンダーローズをフィーチャー。メロウなローズの音色がミステリアスに響きます。

「This One Is For The Ladies And Gents」
Miles Bonnyをフィーチャー。トランペット、フリューゲルホーン、ヴォーカルを披露してくれます。ジャジー&メロウHip-Hop好きには間違いないトラックに仕上がっています。
https://www.youtube.com/watch?v=1T4OIw8fj7c

Miles BonnyがJoe Goodと組むHip-HopユニットSounds Goodの3rdアルバム『Midnight Music』(2006年)が大好きで、当ブログでも紹介したつもりでいたのですが、未紹介であることに気づきました。そのうち紹介したいと思います。

Sounds Good『Midnight Music』(2006年)
MIDNIGHT MUS

「The Kids Are Listening Interlude」
インタールード。

「Don't Box Me In」
80's Babiesをフィーチャー。盟友Dee JacksonとのタッグでThe Soulquarians的なネオソウル・フィーリングのHip-Hopを聴かせてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=1ljOQNeL_F0

「Beware Of The Groove」
Mario Sweetのヴォーカルをフィーチャー。少しダークトーンのトラックは不気味な中に哀愁が漂います。

「Come With Me And Fly」
Yusef Rumperfield名義で自身をフィーチャリング。今ジャズ・フィーリングのトラックがいい感じです。Tall Black Guyのセンスを実感できる1曲です。
https://www.youtube.com/watch?v=UFCi_WLJ1N4

「Is There More To Life」
Diggs Dukeをフィーチャー。YouTubeに音源がないのが残念ですが、本作のハイライト的なトラックなのでは?派手さはありませんが、Diggs DukeとTall Black Guyの音世界がシンクロしている感じにグッときます。

「I Will Never Know」
L.A.ネオソウル・バンドMoonChildをフィーチャー。次世代らしい引き算のネオソウルを楽しめます。
https://www.youtube.com/watch?v=dXH-ImXGHJo

「Mario Smith Speaks On」
Daniel Crawfordの鍵盤をフィーチャー。Mario Smithのスポークン・ワードによるインタールード的な小曲です。

「Things Deeper Than My Skin」
Ozay Moore(Othello)をフィーチャー。Othello大好きだった僕には嬉しいコラボです。哀愁メロウなフィーリングにグッときます。

「Peace And Love」
Rommel DonaldのギターとMasegoのサックス&ヴォーカルをフィーチャー。美しくも寂しげな哀愁メロウ・トラックが印象的な1曲に仕上がっています。
https://www.youtube.com/watch?v=jFnoTS86va8

国内盤には「I Will Never Know (TBG Remix)」「This Is For You Gee (ATHII 1990-2015)」の2曲がボーナス・トラックとして追加収録されています。リミキサーとしての評価の高いTBGなので、「I Will Never Know (TBG Remix)」あたりはオリジナル・ヴァージョンと聴き比べると楽しいと思います。
「I Will Never Know (TBG Remix)」
https://www.youtube.com/watch?v=ab-OjoM4WQA

セットで1stアルバム『8 Miles to Moenart』(2013年)もチェックを!

『8 Miles to Moenart』(2013年)
8 Miles to Moenart
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2017年04月06日

Pier Bucci『Amigo』

チリ出身プロデューサーによるラテン・トライバル・ミニマル☆Pier Bucci『Amigo』
AMIGOS
発表年:2010年
ez的ジャンル:ラテン・トライバル・ミニマル
気分は... :桜舞うころ・・・

今回はラテン・トライバル・ミニマル作品Pier Bucci『Amigo』(2010年)です。

Pier Bucciはチリ出身のDJ/プロデューサー。現在はドイツ、ベルリンを拠点に活動しています。

Pier Bucciのソロ名義以外にも、SkipsapiensMamboturMonne AutomneMaluco等のさまざまなユニット名義でも多くの作品をリリースしています。

本作『Amigo』(2010年)は、『Familia』(2005年)に続く2枚目のソロ名義作品です。

アルバムには、フレンチ・ロック・バンドHoldenの女性ヴォーカリストArmelle Pioline、チリのロック史に残る重要バンドLos Prisionerosの中心メンバーJorge Gonzalezチリのミクスチャー・バンドLa Floripondioやネオ・クンビア・バンドChico Trujilloでも活動するAldo Asenjo (Macha)、さらにWashington Mirandaといったヴォーカリストがフィーチャーされています。

アルバム・タイトルやジャケからは華やかなラテン・ハウスをイメージするかもしれませんが、中身はエクスペリメンタルなラテン・トライバル・ミニマルといったサウンドが占めます。ヴォーカル曲でもヴォーカルはサウンドの一部であり、クール&ミニマルな美学で貫かれています。

Victor Jaraの代表曲のリメイク「Canto Libre」、フォルクローレ的なエレクトロニカ「Eternelle」、ノスタルジックなのにフューチャリスティックな哀愁ラテン・トライバル「Verte Tan」、少しダーク・トーンのトライバル・ミニマル「Wayna Wasi」あたりが僕のオススメです。

ありそうで無かった中毒性の高いラテン・トライバル・ミニマル作品だと思います。

全曲紹介しときやす。

「La Cortina De Hierro Y El Pajaro Cantor」
Jorge Gonzalezをフィーチャー。静寂のラテン・エレクトロニカ。アンビエントな魅力があります。
https://www.youtube.com/watch?v=CxJG83iLX4o

「Canto Libre」
歌を通じて社会変革を目指した「ヌエバ・カンシオン(新しい歌)」運動の旗手であり、軍事政権下で虐殺されたチリ・フォルクローレの英雄的シンガー・ソングライターVictor Jara(1932-1973年)の代表曲をリメイク。Armelle Piolineのヴォーカルをフィーチャーしたトライバルなミニマル・チューンに仕上がっています。クールなトライバル感が僕好み!
https://www.youtube.com/watch?v=RCf6-eDJnDc

「Papa Guede」
トライバル・リズムと土着的ヴォイスが織り成す覚醒的なダンス・ミュージック。トライバルとエレクトロニカの折り合いの付け方が絶妙です。
https://www.youtube.com/watch?v=Q6N8cn8x_cI

「Cuando」
Aldo Asenjo (Macha)をフィーチャー。ミニマルなパーカッシヴ・サウンドと哀愁モードのラテン・ヴォーカルの組み合わせが独特の雰囲気を醸し出します。
https://www.youtube.com/watch?v=Kh591AbI_fo

「Eternelle」
Armelle Piolineのヴォーカルをフィーチャー。フォルクローレ的なエッセンスを取り入れたエレクトロニカ・チューン。癒し系のエレクトロニカといった趣がいい感じです。
https://www.youtube.com/watch?v=XYy9vrQ484c

「Verte Tan」
Aldo Asenjo (Macha)をフィーチャー。ミサ曲調のヴォーカル+哀愁ラテン・トライバル・ミニマルがノスタルジックなのにフューチャリスティックという不思議な音世界に誘います。
https://www.youtube.com/watch?v=CZG0Lu1eou8

「Iskrenne」
ミニマルなインスト・チューン。エレクトロニカ好き人向けの仕上がり。
https://www.youtube.com/watch?v=ngEsBLudP00

「Wayna Wasi」
少しダーク・トーンのトライバル・ミニマル。ジワジワくるトライバル・ビートが僕好み。未開の地のミニマル・チューンって感じが好きです。
https://www.youtube.com/watch?v=MrLyc2xbeCg

「La Payaya」
Jorge Gonzalezをフィーチャー。ラストは覚醒的なラテン・リズムにヤラれるテック・ハウスで締め括ってくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=D-QVbP5q7R0

「For Free」
https://www.youtube.com/watch?v=KAt8nFdl1vc

Pier Bucciの他作品もチェックを!

Pier Bucci『Familia』(2005年)
Familia

Skipsapiens『Skipsapiens』(2001年)
Skipsapiens

Skipsapiens『Eco』(2005年)
Eco

Mambotur『Atina.Latino』(2002年)
Atina Latino

Mambotur『Al.Frente』(2005年)
Al.Frente

Monne Automne『Introducing Light & So』(2004年)
Introducing Light & So

Maluco『Right Time』(2008年)
Right Time
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2017年04月02日

FKJ『French Kiwi Juice』

フランスの才人プロデューサーのデビュー・アルバム☆FKJ『French Kiwi Juice』
French Kiwi Juice
発表年:2017年
ez的ジャンル:フレンチ・エレクトロ+アンビエントR&B
気分は... :チルアウト・・・

今回は新作アルバムから話題のフランスの才人プロデューサーFKJ(French Kiwi Juice)、待望の初アルバム『French Kiwi Juice』です。

FKJ(French Kiwi Juice)(本名:Vincent Fenton)はフランス出身のDJ/プロデューサー。独学で音楽を始め、いくつもの楽曲を操り、本作でもすべての楽曲演奏を一人で行っています。

友人と共同で自らのレーベルRoche Musiqueを立ち上げると同時に、新旧アーティストの名曲の見事なリミックスで注目を浴びるようになります。

Selah Sue「Alone (FKJ Remix)」
 https://www.youtube.com/watch?v=5go9xw7bOjs
Alice Russell「Hurry On Now (FKJ Remix)」
 https://www.youtube.com/watch?v=c_mtD89L9Gg
The Temptations「Cloud Nine (FKJ Remix)」
 https://www.youtube.com/watch?v=ofAi_RCzG4w

Selah Sue「Alone」Alice Russell「Hurry On Now」といった当ブログでも紹介した名曲に、鮮やかなリミックスで新たな魅力を吹き込んでいます。

自身の名義ではこれまで『Time For A Change』(2013年)、『Take Off 』(2014年)といったEPをリリースしてきましたが、フル・アルバムは本作『French Kiwi Juice』が初めてとなります。

エレクトロ系のコンピ・アルバムに収録され、FKJが注目されるきっかけを作った「Lying Together」をはじめ、アルバムからのリード曲「Skyline」、ネット上で人気となった「Better Give U Up」「Go Back Home」など、レイドバック感覚のアンビエント&チルアウトなメロウ・サウンドが心地好い1曲に仕上がっています。

ジャンルの括りが難しいですが、ダンス・ミュージックというよりはメロウなアンビエントR&Bといった内容の1枚に仕上がっています。

決して派手ではありませんが、晴れた日のチルアウト・モードにフィットする1枚です。

全曲紹介しときやす。

「We Ain't Feeling Time」
アナログ感のあるオルガンとサックスによるバカンス・モードのサウンドが心地好いオープニング。FKJ流のメロウ・ソウルといった感じですかね。
https://www.youtube.com/watch?v=wLNxSDYNjQA

「Skyline」
アトモスフィアなメロウネスが魅力のアンビエントR&B。フレンチ・エレクトロに止まらずR&B方面からもFKJが注目される理由がわかる1曲です。
https://www.youtube.com/watch?v=qU5FWU0SH0o

「Better Give U Up」
アイランド・モードのセクシーなメロウ・ソウル。バルセロナのジャマイカン・ジャズ・バンドThe Oldiansあたりと一緒に聴いてもフィットしそうなアイランド・サウンドです。
https://www.youtube.com/watch?v=ryPY8raV_VU

「Go Back Home」
Hip-Hop調のビート感が心地好いジャジー&メロウ・チューン。ジャンルを超越したFKJの魅力を堪能できます。
https://www.youtube.com/watch?v=CoyOjv7eVLM

「Vibin' Out」
(((O)))ことJune Marieezyの女性ヴォーカルをフィーチャー。引き算的なサウンドで華のある(((O)))のヴォーカルを引き立てるメロウ・チューンに仕上がっています。
https://www.youtube.com/watch?v=ZASnh3Gbdwg

「Canggu」
雰囲気のあるサックスで牽引するジャジー&メロウ・グルーヴ。トラック・メイカーに止まらないマルチ・ミュージシャンならではのグッド・ヴァイヴがあります。
https://www.youtube.com/watch?v=sNotIE0mX1w

「Blessed」
「Better Give U Up」と同系統のアイランド・モードのメロウ・チューン。メロウなギター&鍵盤は聴いているだけでバカンス気分になれます。
https://www.youtube.com/watch?v=LEmXsr5_VKw

「Die With A Smile」
ドリーミーなメロウ・チューン。ここでも引き算の美学が功を奏しています。
https://www.youtube.com/watch?v=5I9F5zzFgWI

「Lying Together (Interlude)」
「Lying Together」へナビゲートするインタールード。

「Lying Together」
アンビエントかつメロウなエレクトロ・サウンドが印象的なFKJの代表曲。淡々としたメロウネスが聴き重ねるほどクセになります。
https://www.youtube.com/watch?v=BqaKBslbvZI

「Joy」
ディスコ・フュージョン調なのにチルアウトなフィーリングなのがFKJらしいのかもしれません。
https://www.youtube.com/watch?v=BFtYWAudpFA

「Why Are There Boundaries」
ラストはチルアウトなのにヴィンテージ感のあるメロウ・ソウルで締め括ってくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=DG4JMKzpe8g

都内は天候的にも開花状態でも花見がビミョーな感じですね。
どんな日曜になることやら・・・
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2017年03月26日

Kurt Rosenwinkel『Caipi』

ミナスの風が吹く!現代ジャズ・ギターの皇帝の最新作☆Kurt Rosenwinkel『Caipi』
カイピ Caipi (Japan Edition)
発表年:2017年
ez的ジャンル:現代ジャズ・ギター+ブラジル音楽
気分は... :新風が吹く・・・

今回は新作から現代ジャズ・ギターの皇帝Kurt Rosenwinkelの最新作『Caipi』です。

Kurt Rosenwinkelは1970年フィラデルフィア生まれ。Gary Burtonのサポート・メンバーとなったのきっかけに、N.Y.でジャズ・ミュージシャンとしてのキャリアをスタートさせます。

その後オルタナティヴ・ジャズ・ユニットHuman Feelへの参加を経て、1996年に初リーダー作『East Coast Love Affair』をリリース。今日までコンスタントな活動を続け、現代ジャズ・ギターの皇帝と呼ばれるまでに至っています。現在はベルリンを拠点にしているようです。

ここ数年のJazz The New Chapterムーヴメントの中でもKurt Rosenwinkelの名を目にすることが多いですね。

僕自身は熱心なジャズ・リスナーではありませんが、Q-Tip『The Renaissance』(2008年)への参加でKurt Rosenwinkelの名を意識するようになりました。

さて、最新作『Caipi』ですが、完成まで10年の歳月を要し、Kurt自身がギターのみならず、ベース、ピアノ、シンセ、ドラム、パーカッションを演奏し、ヴォーカルも披露しています。

さらにAntonio Loureiro(vo)、Pedro Martins(vo、ds、key、per)といったブラジルの才能あるミュージシャンが参加し、アルバムにミナス・フレイヴァーを加えています。特に共同プロデュースも務めるPedro Martinsのアルバムへの貢献度は大きいです。

Antonio Loureiroは現代ブラジル音楽好き、ワールド・ジャズ好きには有名なミュージシャンですが、Pedro Martinsの方の知名度はそれ程ではないかもしれませんね。Antonio Loureiroのライブ・サポートでも知られる期待のミュージシャンです。

僕が本作に興味を持ったのも、そうしたブラジル音楽の影響を受けたジャズ作品に仕上がっている点です。

それ以外にもEric Clapton(g)、Alex Kozmidi(baritone g)、Mark Turner(ts)、Kyra Garey(vo)、Zola Mennenoh(vo)、Amanda Brecker(vo)、Frederika Krier(violin)、Chris Komer(french horn)、Andi Haberl(ds)、Ben Street(b)といったミュージシャンがアルバムに参加しています。Claptonの参加は意外ですが・・・

モロにブラジルって訳ではないですが、ブラジル音楽のエッセンスをモチーフに、Kurtが自身の音世界を切り拓こうとしているのがいいですね。

ギタリストだけではないトータルなサウンド・クリエイターとしてのKurt Rosenwinkelの才能を楽しむ1枚だと思います。特にピアニストとしての彼にプレイには驚かされます。

全曲紹介しときやす。

「Caipi」
タイトル曲は本作らしいミナスのエッセンスを感じることができます。Pedro Martinsのバック・コーラス以外はすべてKurt自身のプレイです。開放感のあるKurtのギターを楽しみましょう。

「Kama」
ここではPedro Martinsがリード・ヴォーカルをとります。ブラジル音楽ならではのミステリアスな雰囲気をAndi Haberlのドラムがタイトに締めている感じがいいですね。

「Casio Vanguard」
Antonio LoureiroとPedro Martinsがヴォーカルで参加。ある意味本作のハイライト的な演奏かもしれません。ブラジル音楽と現代ジャズ・ギターの融合を楽しめる1曲に仕上がっています。
https://www.youtube.com/watch?v=1FIWGfEKru4

「Song for Our Sea」
国内盤ボーナス・トラック。ここではピアニストとしてのKurtにも注目です。大海へ思いを馳せ、サウダージな気分になりそう・・・

「Summer Song」
イントロのピアノが印象的です。ブラジルっぽく始まりますが、ヴォーカルが入るとSSW風のジャジー・チューンに・・・

「Chromatic B」
Kurtのマルチ・プレイヤーぶりを楽しめるストレート・アヘッドなジャズ作品。特に後半はKurtのギターを堪能できます。

「Hold on」
インディー・ロック調の展開は今ジャズっぽいかもしれませんね。

「Ezra」
Kurtの息子のために書かれた曲のようです。父親から息子へ語り掛ける優しさに包まれた1曲に仕上がっています。

「Little Dream」
Eric Clapton参加曲。疾走感のある演奏で注目すべきはKurtとClaptonのギターなのですが、一番驚かされたのは中盤以降のKurtのピアノ。圧巻です。

「Casio Escher」
透明感のあるサウンドがジワジワと心の中に浸透してきます。Mark Turnerのサックスが印象的ですね。

「Interscape」
ミナス・テイストのミステリアスな雰囲気の漂う仕上がり。KurtのZola Mennenohの男女ヴォーカルとシンセが織り成す幻想的な音世界がいいですね。

「Little b」
本作らしいブラジル音楽のエッセンスとKurtのギターをたっぷり堪能しながら、アルバムはフィナーレを迎えます。

Kurt Rosenwinkelの他作品もチェックを!

『East Coast Love Affair』(1996年)
East Coast Love Affair

『Intuit』(1998年)
Intuit

『The Enemies of Energy』(2000年)
Enemies of Energy

『The Next Step』(2001年)
Next Step

Jakob Dinesen/Kurt Rosenwinkel『Everything Will Be Alright』(2002年)
Everything will be alright by Kurt Rosenwinkel / Jakob Dinesen (2003-02-04)

『Heartcore』(2003年)
Heartcore

『Deep Song』(2005年)
Deep Song

『The Remedy: Live at the Village Vanguard』(2008年)
レメディ~ライブ・アット・ヴィレッジ・バンガード

『Reflections』(2009年)
リフレクションズ

『Our Secret World』(2010年)
Kurt Rosenwinkel & OJM-Our Secret World by Rosenwinkel, Kurt (2015-01-06) 【並行輸入品】

『Star of Jupiter』(2012年)
スター・オブ・ジュピター(STAR OF JUPITER)
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2017年03月20日

Becca Stevens『Regina』

注目の女性SSW、初のソロ名義作品☆Becca Stevens『Regina』
レジーナ【日本先行発売】
発表年:2017年
ez的ジャンル:ミューズ系ハイブリッド女性SSW
気分は... :ドアの向こうにミューズが・・・

連休なので昨日に続いて新作を・・・注目の女性シンガー・ソングライターBecca Stevensの最新作『Regina』です。

ノースカロライナ出身、N.Y.のニュースクール大学でジャズ・ヴォーカルを専攻した女性シンガー・ソングライターBecca Stevensの紹介は、Becca Stevens Band名義のBecca Stevens Band『Weightless』(2011年)、Becca Stevens Band『Perfect Animal』(2014年)に続き3回目となります。

また、昨年リリースされたBecca StevensGretchen ParlatoRebecca Martinという女性アーティスト3名によるスペシャル・ユニットTilleryのデビュー・アルバム『Tillery』も当ブログで紹介済みです。

最新作『Regina』は、初のソロ名義の作品となります。

現行ジャズを牽引するジャズ・ミクスチャー・バンドSnarky Puppyが設立したGroundUP Musicからのリリースです。

"女王"を意味するアルバム・タイトルに象徴されるように、本作『Regina』は歴史・文学の世界に登場する女性からインスパイアされた作品になっています。

また、ロンドンに赴きレコーディングを行うなど、様々なミュージシャンとの交流を通して、自身の音楽の幅を広げようとしている点にも注目です。

さらに、本作ではスタジオならではの多重録音によるヴォーカル・ワークも重視しています。このあたりはTilleryでの活動成果をソロ作に還元したのかもしれませんね。

プロデュースはTroy Miller。さらにBecca Stevens本人、Snarky PuppyのリーダーMichael League、デビュー・アルバム『In My Room』(2016年)でその才能を示したロンドン出身の若きSSW/マルチ・インストゥルメンタリストJacob Collierが共同プロデューサーとしてクレジットされています。

Michael League、Jacob CollierはBeccaやJacob CollierがフィーチャリングされていたSnarky Puppy『Family Dinner Volume Two』(2016年)で形成された人脈です。

Snarky Puppy『Family Dinner Volume Two』(2016年)
Family Dinner Volume T

レコーディングにはBecca Stevens(vo、g、charango、ukulele)以下、Troy Miller(ds、el-p、syn b、harmonium、vibe)、Michael League(back vo、g、moog、ds)に加え、Liam Robinson(p、el-p、syn、accordion)、Chris Tordini(b)、Jordan Perlson(ds、per)といったBecca Stevens Bandの仲間がバッキングを務めます。

さらに前述のJacob Collier、同じく『Family Dinner Volume Two』でフィーチャリングされていたUKの黒人女性SSW、Laura Mvula、GroundUP Musicから最新作『Lighthouse』(2016年)をリリースした大御所の男性SSW、David Crosby、"今ジャズ"好きにはお馴染みのSSW/ミュージシャンAlan Hampton、オーストラリア出身でBeccaと同じくジャズをバックボーンに持つ女性SSW/ヴァイオリン奏者Jo Lawryといったミュージシャンがフィーチャリングされています。

上記以外に以外にOli Rockberger(p)、日本人ヴァイオリン奏者の徳永慶子さんも所属するN.Y.の若手弦楽四重奏団Attacca Quartet(Amy Schroeder、Andrew Yee、Keiko Tokunaga、Luke Fleming)も参加しています。

アルバム全体として、歴史・文学からのインスパイアや、様々なミュージシャンからの刺激を糧に、これまでBeccaが構築してきた音世界をさらに深化させた印象を受けます。

歴史・文学の世界に登場する"女王(レジーナ)"のようにジャケに写るBeccaの凛とした表情が、アーティストとしての自信を物語っているのでは?

もはや"Jazz The New Chapter"云々で語ることが全く不要な、素晴らしい女性SSW作品だと思います。

全曲紹介しときやす。

「Venus」
Laura Mvulaをフィーチャー。Lauraの最新作『The Dreaming Room』(2016年)もTroy Millerがプロデュースしており、Becca、Laura、Troy Millerの三者の音イメージが一致している感じがいいですね。インディー・ロック+エレクトロニカ+ソウルなが見事に融合したオープニングです。本作らしい素敵なヴォーカル・ワークを楽しめます。

Laura Mvula『The Dreaming Room』(2016年)
THE DREAMING ROOM

「Lean On」
Attacca Quartetによる美しいストリングスを配した幻想的なフォーキー・ジャズ。Beccaの多重録音によるコーラスが幻想的な音世界に拡がりを持たせています。

「Both Still Here」
Jacob Collierをフィーチャー。Beccaのチャランゴの音色が印象的な1曲で、Jacob Collierがマルチ・インストゥルメンタリストぶりを発揮しています。♪人生は一瞬の夢♪と歌い、その美しくも儚い世界観を見事に音で表現しています。

Jacob Collier『In My Room』(2016年)
イン・マイ・ルーム

「45 Bucks」
過去に振り向かず、前へ進んでいく女性の潔さを感じるタフな仕上がり。チャランゴの持つ神秘的な響きとエレクトロニカなエッセンスをうまく融合させているのがいいですね。

「Queen Mab」
Jo Lawryをフィーチャー。シェイクスピアによる有名な『ロミオとジュリエット』からインスパイアされた楽曲。インディー・ロックなサウンドをバックに、BeccaとJo Lawryが素晴らしいヴォーカル・ワークで聴く者を魅了します。
https://www.youtube.com/watch?v=XchJQV8accM

Jo Lawry『Taking Pictures』(2015年)
テイキング・ピクチャーズ

「We Know Love」
Alan Hamptonをフィーチャー。初代レスター伯ロバート・ダドリーから女王エリザベス1世への手紙からインスパイアされた楽曲。当ブログでも紹介したHamptonの『Origami for the Fire』(2014年)がお好きな人であれば、気に入るであろう幻想的&牧歌的なビューティフル・ソングに仕上がっています。

Alan Hampton『Origami for the Fire』(2014年)
Origami For The Fire

「Mercury」
Jo Lawryをフィーチャー。Freddie Mercuryに捧げられたドライブ感のあるロック・チューン。Becca Stevens Bandの仲間が力強いバッキングで好サポートしています。

「Regina」
タイトル曲はギター、ウクレレ、チャランゴの響きが美しく重なった幻想的で美しいフォーキー・チューンに仕上がっています。Attacca Quartetの好サポートもグッド!

「Harbour Hawk」
Jo Lawryをフィーチャー。静と動のコントラストが見事な1曲に仕上がっています。1曲の中にドラマがあります。

「Well Loved」
Laura Mvulaをフィーチャー。「Venus」と同様に、Becca、Laura、Troy Millerの三者のコラボならではの世界観を楽しめる幻想的なビューティフル・チューンに仕上がっています。
https://www.youtube.com/watch?v=4OBKmZVOMuk

「Ophelia」
Attacca Quartetを配したフォーキー・チューン。タイトルの通り、『ハムレット』のオフィーリアを歌ったものです。Beccaの歌声が時を超えていきます。

「The Muse」
David Crosbyをフィーチャー。困難を乗り越えるために、ドアの向こうからノックしてくれる女神のことを歌います。David Crosbyの作詞ですが、このミューズ(女神)とは正にBeccaのことかもしれませんね。

「As」
Jacob Collierをフィーチャー。ラストはStevie Wonder『Songs In The Key Of Life』収録の名曲カヴァーで締め括ってくれます。チャランゴの音色をバックに、BeccaとJacob Collierが感動的なデュエットを聴かせてくれます。


国内盤には「45 Bucks (Original Demo)」「Both Still Here (Original Demo)」の2曲がボーナス・トラックとして追加収録されています。

Becca Stevensの他作品もチェックを!

Becca Stevens Band『Tea Bye Sea』(2008年)
ティー・バイ・シー

Becca Stevens Band『Weightless』(2011年)
Weightless

Becca Stevens Band『Perfect Animal』(2014年)
パーフェクト・アニマル

Tillery『Tillery』(2016年)
ティレリー
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