2016年11月27日

Fernando Temporao『Paraiso』

Kassinプロデュース。Domenico、Donatinho等も参加した新世代ブラジル音楽☆Fernando Temporao『Paraiso』
パライゾ~楽園~
発表年:2016年
ez的ジャンル:音響系ブラジリアン・インディ・ポップ
気分は... :楽園は何処に・・・

今回は新作からブラジリアン・インディ・ポップ作品Fernando Temporao『Paraiso』です。

Fernando Temporaoはリオ出身の男性シンガー・ソングライター。

本作『Paraiso』『De Dentro Da Gaveta Da Alma Da Gente』(2013年)に続く2ndアルバムとなります。

プロデュースは前作に続きAlexandre Kassin。Kassinといえば、Moreno VelosoDomenico Lancellottiとの+2ユニットで知られる現在ブラジル音楽の重要ミュージシャンです。

最近も当ブログでKassinが参加した+2ユニット作品、Moreno + 2『Maquina de Escrever Musica』(2002年)を紹介したばかりです。

レコーディングにはFernando Temporao(vo、g)、Alexandre Kassin(g、winds、syn、per)、Domenico Lancellotti(ds、per)、Joao Donatoの息子Donatinho(key、syn、p、org)、Alberto Continentino(b)、Jaques Morelenbaum(cello)、Marcelo Jeneci(accordion)等が参加しています。

Kassin、Domenico以外であれば、ベーシストのAlberto Continentinoにも注目です。当ブログで紹介した作品でいえば、Adriana Calcanhotto『Mare』(2008年)、Adriana Maciel『Dez Cancoes』(2008年)、Cris Delanno & Alex Moreira『Nosso Quintal』(2012年)、Maria Rita『Coracao a Batucar』(2014年)にAlberto Continentinoの名がクレジットされています。

アルバム全体は、新世代ブラジル音楽らしいブラジリアン・インディ・ポップに仕上がっています。新世代ブラジル音楽らしいセンスとポップな聴きやすさのバランスが魅力の1枚だと思います。

全曲Fernando Temporaoのオリジナルですが、曲によってCesar LacerdaThiago CameloBruno Di LulloAva Rochaといった共作者も加わっています。

個人的には今年はなかなかブラジル音楽の新作をチェックできず、少しフラストレーションになっていましたが、その気持ちを晴れやかにしてくれる充実作だと思います。

Kassin、Domenico、Morenoの+2ユニット好きの方もぜひチェックを!

全曲紹介しときやす。

「Danca」
Fernando Temporao作。インディ・ロックなオープニング。Marcelo Jeneciのアコーディオンがいいアクセントになっています。
https://www.youtube.com/watch?v=XQA5EpCNwzQ

「Paraiso」
Fernando Temporao/Ava Rocha作。タイトル曲は女性SSW、Ava Rochaとの共作。タイトルを直訳すれば楽園ですが、パレスチナ紛争やブラジルのインディオ達のことを歌った内容になっています。そんな平和への長いが伝わってくる感動的な1曲に仕上がっています。
https://www.youtube.com/watch?v=kt20_3YpfE4

「Afinal」
Fernando Temporao/Cesar Lacerda作。Cesar Lacerdaとの共作1曲目。軽やかなリズムの開放的なポップ感が心地好い1曲に仕上がっています。
https://www.youtube.com/watch?v=zp9UVCIRP_M

「Sem Fantasia」
Fernando Temporao/Cesar Lacerda作。Cesar Lacerdaとの共作2曲目。新世代ブラジル音楽らしいセンスのインディ・ポップに仕上がっています。
https://www.youtube.com/watch?v=26aQ8PoqnfE

「Dia De Seguir」
Fernando Temporao/Thiago Camelo作。小気味よく疾走するインディ・ロック。USインディ・ロック好きの人も気に入りそうな1曲なのでは?
https://www.youtube.com/watch?v=x2wdmnqbJAo

「Um Milhao De Novas Palavras」
Fernando Temporao/Cesar Lacerda作。Cesar Lacerdaとの共作3曲目。ブラジル音楽に止まらない活躍を見せる世界的なチェロ奏者Jaques Morelenbaumが参加しています。Morelenbaumのチェロが深淵さを演出してくれるミステリアスな仕上がりです。
https://www.youtube.com/watch?v=ug-wCNpUHiY

「No Ar」
Fernando Temporao/Alberto Continentino作。穏やかなドリーミー・ポップ。休日マッタリと過ごしたい気分のときにフィットしそうです。
https://www.youtube.com/watch?v=hv1fcshRcjM

「Manto」
Fernando Temporao作。ブラジルらしいフォーキー感にグッとくるSSWらしい1曲。さり気ないけど、かなり好きです。
https://www.youtube.com/watch?v=h-oSRle0GDo

「Exilios」
Fernando Temporao/Filipe Catto作。邦題は「亡命者」。哀愁モードのインディ・ロックに仕上がっています。
https://www.youtube.com/watch?v=pypePtAlUDk

「Tudo o que e Tristeza」
Fernando Temporao/Thiago Camelo作。新世代ブラジル音楽らしいサウンドを楽しめる1曲。Fernando、Kassin、Domenico、Alberto、Donatinhoというカリオカ達のチームワークを感じるサウンドの一体感がいいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=5waRMJjSIr4
 
「Dois」
Fernando Temporao/Bruno Di Lullo作。ラストはエフェクトを駆使したゆったりと余韻を楽しむようなサウンドで本編を締め括ってくれます。クレジットにDonatinhoの担当楽器にiPhoneとあるあたりが今時のブラジル音楽らしいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=8eBITtKQsfk

国内盤にはボーナス・トラックとして「Apreco」が追加収録されています。実はアルバムで一番ポップな仕上がりかも?得した気分になるボートラです。

1stアルバム『De Dentro Da Gaveta Da Alma Da Gente』(2013年)もチェックを!

『De Dentro Da Gaveta Da Alma Da Gente』(2013年)
De Dentro Da Gaveta Da Alma Da Gente

ご興味がある方は共作でソングライティングを手掛けたアーティストのソロ作品をチェックするのも楽しいのでは?

Cesar Lacerda『Paralelos & Infinitos』(2015年)
Paralelos & Infinitos

Ava Rocha『Ava Patrya Yndia Yracema』(2015年)
Ava Patrya Yndia Yracema

Filipe Catto『Folego』(2012年)
Folego
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2016年11月20日

Common『Black America Again』

分断が懸念されるアメリカ社会に切り込んだ1枚☆Common『Black America Again』
Black America Again
発表年:2016年
ez的ジャンル:社会派シカゴHip-Hop
気分は... :アメリカはどうなる!

シカゴ出身の人気ラッパーCommonの最新作『Black America Again』です。

これまで当ブログで紹介してきたCommon作品は以下の7枚(発売順)。

 『Resurrection』(1994年)
 『One Day It'll All Make Sense』(1997年)
 『Like Water For Chocolate』(2000年)
 『Be』(2005年)
 『Finding Forever』(2007年)
 『Universal Mind Control』(2008年)
 『The Dreamer, The Believer』(2011年)

これまでCommonの最新作がリリースされれば、即座に当ブログで取り上げてきましたが、前作『Nobody's Smiling』(2014年)はスルーしてしまいました。Commonが変わってしまったのか、僕の耳がオッサン化したのかはわかりませんが、聴いても今一つピンと来なかったというのが正直な感想です。

最近の僕はアーティストにあまり固執せず、"旬が過ぎたな"とか"商業路線に走ったな"と思うと、一気に気持ちが離れることも多く、Commonについても『Nobody's Smiling』を聴いた時点で、"もう彼の新作を待ち遠しく聴くことはないのかなぁ"なんて勝手に思っていました。

しかし、そんな僕の杞憂を吹き飛ばすような素晴らしい新作を届けてくれました。

アルバム・ジャケやアルバム・タイトルに反映されているように、アメリカ社会の抱える人種差別問題に鋭く切り込んだ1枚です。血の日曜日事件(1965年)で有名なセルマからモンゴメリーへの行進を描いた映画『グローリー/明日への行進(Selma)』(2014年)のテーマ曲「Glory」John Legendとの共演)あたりにも伏線はありましたが、ここまで重厚な作品をリリースするとは・・・

アメリカ大統領選挙の直前に、アメリカ社会の分断に警鐘を鳴らすアルバムをリリースするあたりにCommonの本作に込めた強い意志を感じます。

その意味でD'Angelo & The Vanguard『Black Messiah』(2014年)、Kendrick Lamar『To Pimp A Butterfly』(2015年)といった近年の傑作アルバムたちと同じ流れに位置付けられる1枚だと思います。

CommonNo I.D.がエグゼクティブ・プロデューサーを務め、ジャズ・ドラマー/Hip-Hopプロデューサーとして活躍し、Common作品も手掛けてきたKarriem Rigginsがメイン・プロデューサーに起用されています。加えて、Robert GlasperFrank Dukesがプロデュースしている曲もあります。CommonはGlasperの『Black Radio 2』(2013年)に参加していました。

BilalStevie WonderMarsha AmbrosiusPJParis Jones)、Syd tha Kyd(The Internet)、BJ The Chicago KidElena PinderhughesJohn LegendTasha Cobbsといったアーティストがフィーチャリングされています。

フィーチャリング・アーティスト以外にBurniss Earl Travis II(b)、Theo Croker(tp)、Roy Hargrove(tp)、J-Rocc(DJ、scratch)、James Poyser(org)、Esperanza Spalding(b)等のミュージシャンが参加しています。

Stevie WonderJohn Legendといった大物アーティストとの共演も楽しいですが、個人的にはSyd tha Kyd(The Internet)、BJ The Chicago KidPJといった新進アーティストとの共演や、BilalRoy HargroveJames PoyserといったThe Soulquariansの面々との共演が嬉しかったですね。

また、Karriem RigginsRobert GlasperEsperanza SpaldingBurniss Earl Travis IITheo CrokerElena Pinderhughesといった"今ジャズ"系アーティストの参加でアルバムにジャズのエッセンスを効かせているのも僕好み!

ラッパーCommonの矜持を感じる1枚です。

全曲紹介しときやす。

「Joy and Peace」
Bilalをフィーチャーしたオープニング。自由と愛と平和を武器に立ち上がったCommonの強い意志を感じます。Gentle Giant「No God's a Man」をサンプリング。Karriem Rigginsプロデュース。
https://www.youtube.com/watch?v=MFPhp5dzung

「Home」
この曲もBilalをフィーチャー。O.V. Wright「I'm Going Home (To Live With God)」をサンプリングしたダーク・トラックやThe Nation of Islam の黒人リーダーLouis Farrakhanの演説のサンプリングと共に、Commonが黒人の権利を強く訴えます。Karriem Rigginsプロデュース。
https://www.youtube.com/watch?v=x-TQc9-3U_Y

「Word From Moe Luv Interlude」
Robert Glasperによる美しいインタールード。
https://www.youtube.com/watch?v=91ajGG0rioU

「Black American Again」
Stevie Wonderをフィーチャーしたタイトル曲。先行シングルにもなり、ルイジアナ州バトンルージュで今年7月5日に起きた白人警官による黒人男性射殺事件の映像と共に始まるPVは実にショッキングです。依然として無くならないアメリカ社会の人種差別に対する怒り、悲しみ、苦しみをCommonが代弁します。本作を象徴する1曲です。キング牧師の有名な演説「I Have a Dream」、James Brown「Introduction to Say It Loud - I'm Black and I'm Proud」、Public Enemy「Bring the Noise」、MC Lyte feat. Audio Two「10% Dis」といった声ネタが織り交ぜられています。Robert Glasperがピアノ、Esperanza Spaldingがベースで参加しています。ドラム・ループはJuice「Catch a Groove」ネタ。Robert Glasper/Karriem Rigginsプロデュース。
https://www.youtube.com/watch?v=bURKiygUPow

「Love Star」
FloetryMarsha AmbrosiusとPJをフィーチャー。PJことParis JonesはL.A.を拠点に活動する期待の女性R&Bシンガーです。Mtume「You, Me And He」ネタのトラックにのった女性ヴォーカル陣がドリーミーな歌声が印象的なアルバムに安らぎを与える1曲に仕上がっています。途中、チラっとThe Moments「Sexy Mama」のパーカッション・ネタも登場します。Karriem Rigginsプロデュース。
https://www.youtube.com/watch?v=4Ruqow2jjQg

「On a Whim Interlude」
エレピによるインタールード。Robert Glasperと思いきやKarriem Rigginsでした。

「Red Wine」
The Internetの主要メンバーSyd tha Kydと女性ジャズ・ヴォーカリスト/フルート奏者Elena Pinderhughesをフィーチャー。OFWGKTAのメンバーでもあったSyd tha Kydの才能は当ブログでも何度も紹介済みです。Elena Pinderhughesは当ブログでも紹介したChristian Scott『Stretch Music』(2015年)でのフルートの音色が印象に残っています。Edgar Vercy「Cormoran Blesse」のシンセ・ネタやストリングスをバックに、浮遊する儚い女性ヴォーカルがメインです。Commonは脇役に回って淡々としたフロウを聴かせます。
Karriem Rigginsプロデュース。
https://www.youtube.com/watch?v=E2N7l0Z5khM

「Pyramids」
ヴォーカルはBilal。JTNC好きの人はGlasperの鍵盤とRigginsのドラムによるトラックを楽しめるのでは?Hip-HopファンはBoogie Down Productions「South Bronx」、A Tribe Called Quest「Award Tour」Public Enemy「Don't Believe the Hype」、Ol' Dirty Bastard「Brooklyn Zoo」といった名曲の一節を引用しているので、分かるとニンマリかもしれませんね。Robert Glasper/Karriem Rigginsプロデュース。
https://www.youtube.com/watch?v=Fs4EQ6-2jmE

「A Moment In the Sun Interlude」
Glasperのピアノ、Elena Pinderhughesのフルート/コーラス、Karriem Rigginsのドラム/ベースによる美しいインタールード。もっと長尺で聴きたいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=7YKRl7BMYkw

「Unfamiliar」
PJをフィーチャー。John Cameron「Half Forgotten Daydreams」のドリーミーなトラックにのって、PJが透明感のあるキュートなヴォーカルを聴かせてくれます。Karriem Rigginsプロデュース。
https://www.youtube.com/watch?v=cl21BcmLUaY

「A Bigger Picture Called Free」
Syd tha KydBilalをフィーチャー。アトモスフィアなアンダーグラウンド感があるトラックとSyd & Bilalの哀愁ヴォーカルがマッチしています。注目の新時代ジャズトランペッターTheo Crokerのトランペットがいいアクセントになっています。Karriem Riggins/Frank Dukesプロデュース。
https://www.youtube.com/watch?v=9miZhXiLYBY

「The Day Women Took Over」
今年メジャー初アルバム『In My Mind』で注目を集めた男性R&BシンガーBJ The Chicago Kidをフィーチャー。The Soulquariansの盟友Roy Hargrove(tp)も参加しています。Commonの力強いフロウに、BJ The Chicago Kidの妖しげなセクシー・ヴォーカルが加わったソウルフル感がいいですね。Karriem Rigginsプロデュース。
https://www.youtube.com/watch?v=A6CCOeFNAWg

「Rain」
John Legendをフィーチャー。John LegendとCommonの共演といえば、先には挙げた「Glory」以外に、反戦メッセージのPVが印象的であったJohn Legend & The Roots『Wake Up!』(2010年)収録の「Wake Up Everybody」『Be』収録の「Faithful」Bilalも共演)を思い出します。Glasperの美しいピアノにのって、John Legendが高らかに歌い上げ、Commonが祈るようにフロウする感動的な1曲に仕上がっています。
https://www.youtube.com/watch?v=5Zxb0mwSz3E

「Little Chicago Boy」
女性ゴスペル・シンガーTasha Cobbsをフィーチャー。The Soulquariansの盟友James Poyser(org)も参加したゴスペル調の仕上がり。Karriem Riggins/Frank Dukesプロデュース。

「Letter To the Free」
ラストはBilalをフィーチャー。憲法修正第13条を通して、差別問題に切り込んだドキュメンタリー映画『13th』でも使われた曲。Glasper(p)、Burniss Earl Travis II(b)、Elena(fl)、Riggins(ds)による生演奏と黒人霊歌調のコーラス隊をバックに、BilalとCommonが自由を訴えてアルバムは幕を閉じます。
https://www.youtube.com/watch?v=TRlTnJr_7ec

Common作品の過去記事もご参照下さい。

『Resurrection』(1994年)
レザレクション(紙ジャケット仕様)

『One Day It'll All Make Sense』(1997年)
ワン・デイ・イトゥル・オール・メイク・センス

『Like Water For Chocolate』(2000年)
Like Water For Chocolate

『Be』(2005年)
Be

『Finding Forever』(2007年)
ファインディング・フォーエヴァー

『Universal Mind Control』(2008年)
Universal Mind Control

『The Dreamer, The Believer』(2011年)
Dreamer the Believer
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2016年11月13日

Eric Benet『Eric Benet』

ソロ・デビュー20周年にセルフ・タイトルを冠した自信作☆Eric Benet『Eric Benet』
エリック・ベネイ
発表年:2016年
ez的ジャンル:男性セクシーR&B
気分は... :今が全盛期!

新作アルバムから良質なR&B作品をリリースし続ける男性シンガーEric Benetの最新作『Eric Benet』です。

これまで当ブログで紹介したEric Benet作品は以下の6枚。

 『True to Myself』(1996年)
 『A Day In The Life』(1999年)
 『Love & Life』(2008年)
 『Lost In Time』(2010年)
 『The One』(2012年)
 『From E to U : Volume1』(2014年)

『The One』(2012年)より約4年ぶりのオリジナル・アルバムとなる最新作『Eric Benet』です。

『The One』(2012年)より自らが設立したレーベルJordan Houseから作品をリリースしているEric Benet

ソロ・デビューから20周年となる今年、セルフ・タイトルのアルバムをリリースあたりに、ソロ・アーティストEric Benetの自信が窺えます。

プロデュースはEric Benet本人と長年のパートナーDemonte Poseyが務めています。2曲のみDavy NathanJonathan Richmondがプロデュースしています。

レコーディングにはDemonte Posey(key、p、syn、programming)、Jairus Mozee(g)、Nick Smith (ds)、Dammo Farmer(b)等が参加しています。

楽曲はすべてEric BenetDemonte Poseyを中心としたオリジナルです。

どの曲をオススメに挙げるか迷うほど全曲充実しています。70年代、80年代、90年代のソウル/R&Bのエッセンスを2016年仕様でうまく取り入れている感じがいいですね。その一方で、現行オルタナティブR&Bに通じるアトモスフィアな雰囲気の楽曲もあり、彼の音楽に対する貪欲さも感じます。

デビューから20周年経っても、EricのセクシーなR&Bワールドは健在です。
この揺るぎないリアル・ソウルをぜひ!

全曲紹介しときやす。

「Can't Tell U Enough」
ファンキー・ホーン隊の高らかなファンファーレと共にスタートするオープニング。Eric Benetらしいソウル・ヴァイヴに満ちた本曲を聴けば、本作の充実ぶりが一発でわかります。リズム・トラックはJoe Tex「Papa Was Too」をサンプリング。

「Sunshine」
先行シングルにもなった曲。ヴィンテージ感のあるソウル・サウンドをバックに、Eric Benetらしいセクシーなファルセット・ヴォーカルで歌い上げる味わい深い1曲に仕上がっています。
https://www.youtube.com/watch?v=SSh0l2Rer5g

「Insane」
"愛の伝道師"Eric Benetらしいエロ・モードのセクシー・バラード。甘い囁きで女性を口説き落とします。Jairus Mozeeのギターが雰囲気を盛り上げてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=OVbF9Q8zHFk

「Cold Trigger」
ダンサブルなファンク・チューン。曲調やシンセの音色を聴いていると、何処となくPrince殿下の影響を感じます。殿下へのトリビュートと勝手に推測してしまいます。

「Home」
ホームで待つ愛する人への思いを切々と歌い上げるラブ・バラード。『From E to U : Volume1』でカヴァーしていた80年代ヒット・バラードに通じるキャッチーさがあります。

「Holdin On」
90年代に活躍したフィメールラッパーMC Lyteをフィーチャー。EricとMC LyteにはToto「Georgy Porgy」という共通点があります。Ericは『A Day In The Life』で同曲をカヴァーし、MC Lyteは同曲をサンプリングした「Poor Georgie」(1991年)をリリースしています。本曲もToto風のロック・サウンドが印象的なミディアムR&Bグルーヴに仕上がっています。
https://www.youtube.com/watch?v=C6FbVYuSVqI

「Fun & Games」
ストリングスを配した70年代風のソウル・バラード。Ericの歌力を存分に堪能できる1曲に仕上がっています。

「Run To Me」
Irakere等でも活躍したキューバン・ジャズ・トランぺッターArturo Sandovalをフィーチャー。Arturo Sandoval参加から想像できるよううに、ラテン/スパニッシュ調のパーカッシヴなダンサブル感が印象的な1曲に仕上がっています。Arturo Sandovalが流石のトランペット・ソロで盛り上げてくれます。

「Floating Thru Time」
現行オルタナティブR&Bに通じるアトモスフィアな雰囲気のバラード。Ericのセクシー・ファルセットがアトモスフィアなサウンドにうまく溶け込んでいい感じです。

「Broke Beat & Busted」
Jonathan Richmondプロデュース曲。Al Greenらを輩出したHi Recordsの本拠地であった名門Royal Studioでレコーディングです。そう聴くと、ソウル・ヴァイヴがマシマシになります(笑)
https://www.youtube.com/watch?v=ncD6f8T6IHw

「That Day」
Davy Nathanプロデュース曲。永遠の愛を歌い上げるラブ・バラード。かなりベタな雰囲気もありますが、Ericが歌うと絵になるところにアーティストとしての底力を感じます。

「Never Be The Same (Luna's Lullaby)」
サブ・タイトルにもあるように愛娘Lunaに捧げたバラード。娘に問いかけるような優しい歌声でアルバムを締め括ってくれます。

「Sunshine Remix」
国内盤ボーナス・トラック。Tamiaをフィーチャリングした「Sunshine」のリミックスです。Tamiaとのデュエットといえば、全米R&Bチャート第1位となった「Spend My Life With」『A Day In The Life』収録)を思い出します。Mtume「You, Me And He」をサンプリングしたトラックも含めて、オリジナルとは異なる「Sunshine」を楽しめます。
https://www.youtube.com/watch?v=6LrPmcSnLs8

Eric Benetの過去記事もご参照下さい。

『True to Myself』(1996年)
True to Myself

『A Day In The Life』(1999年)
Day in the Life

『Love & Life』(2008年)
愛すること、生きること。

『Lost In Time』(2010年)
Lost in Time

『The One』(2012年)
ザ・ワン

『From E to U : Volume1』(2014年)
eric benet from e to u  volume1.jpg
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2016年11月10日

Corey King『Lashes』

期待のジャズ・トロンボーン奏者のSSWサイドな作品☆Corey King『Lashes』
Lashes [日本語解説付]
発表年:2016年
ez的ジャンル:新世代ジャズ・トロンボーン奏者/シンガー・ソングライター
気分は... :ジャズよりロック強めで・・・

今回は新作から新世代ジャズ・トロンボーン奏者/シンガー・ソングライターCorey Kingの初ソロ作品『Lashes』です。

Corey Kingはテキサス州ヒューストン出身。

2004年にN.Y.のニュースクール大学に入学し、気鋭の日本人トランペッター黒田卓也らと交流を持つようになります。

これまで今ジャズからR&B、Hip-Hopまで幅広いジャンルのアーティストと共演したり、レコーディングに参加しています。

例えば、当ブログで紹介した以下の作品にCorey Kingの名がクレジットされています。

 Erimaj『Conflict Of A Man』(2012年)
 Jose James『No Beginning No End』(2013年)
 Derrick Hodge『Live Today』(2013年)
 Christian Scott『Stretch Music』(2015年)
 Esperanza Spalding『Emily's D+Evolution』(2016年)

この5枚のリストを見ただけで、Corey Kingに興味を持つ人も多いのでは?

そんなCorey Kingの初ソロ作品が『Lashes』です。全8曲35。フル・アルバムと呼ぶには少し尺が短い感じもしますが・・・

本作ではジャズ・トロンボーン奏者としての顔ではなく、シンガー・ソングライターCorey Kingとしての顔を前面に打ち出した作品になっています。

レコーディング・メンバーが強力です。Corey King(vp、el-p、programming、syn、tb)、Matthew Stevens(g)、Alan Hampton(b)、Vicente Archer (b)、Jamire Williams(ds)、Justin Tyson(ds)という今ジャズ好きならば、グッとくるミュージシャンの名が連なります。

Alan HamptonJamire Williams(Erimaj)は作品を当ブログでも紹介済みのアーティストです。

Matthew StevensJamire WilliamsKris BowersBen Williamsらも参加する若手ジャズメンのオールスター・ユニットNEXT Collectiveのメンバーとしてお馴染みですね。最近ではEsperanza Spalding『Emily's D+Evolution』でのプレイが印象的でした。

Vicente Archer Robert Glasper『Canvas』(2005年)、『In My Element』『Double Booked』(2009年)、『Covered』(2015年)への参加で知られるベーシストですね。

期待の新進ジャズ・ドラマーJustin TysonはCorey King、Matthew Stevensと共にEsperanza Spalding『Emily's D+Evolution』に参加していました。

そんな強力メンバーたちが生み出した音は、ジャズというよりインディー・ロック的な印象の作品に仕上がっています。哀愁ヴォーカル&サウンドが印象的ですね。

このあたりはCorey KingがNirvanaRadioheadといったロック・アーティストを聴いて育ってきたようですし、そうしたエッセンスを取り入れるのは自然の流れなのでしょうね。特にRadioheadThom Yorkeからの影響は大きい感じです。

ミニ・アルバム的な感覚で聴くと楽しめるオルタナティブ作品だと思います。

全曲紹介しときやす。

「Ibaraki」
哀愁メロディと歯切れのいいビートのロック・チューンがオープニング。タイトルは日本の茨城からとったものです。Jamire WilliamsのドラミングやMatthew Stevensのギターをはじめ、今ジャズ・ミュージシャンによるロック・チューンという感じがします。
https://www.youtube.com/watch?v=_naMeGqX2lU

「IF」
哀愁モードの中にミステリアスな雰囲気を醸し出す1曲。Corey Kingの憂いをヴォーカルが印象的です。

「Midnight Chris」
アンビエントな小曲。

「Botched Farewell」
プログラミングを駆使したエレクトロニカな哀愁のオルタナティブ・ソウルといった雰囲気です。

「Parisian Leaves」
この曲もプログラミングを駆使したエレクトロニカ・サウンドと幻想なヴォーカルで哀愁ワールドへ誘ってくれます。

「Uncle Richie」
Corey Kingの哀愁ヴォーカルとJustin Tysonのドラミングが織り成す音世界が面白いです。

「Climb」
Justin Tysonのドラミングが牽引する本作で最もビート感のある演奏です。ついついTysonのドラミングを追ってしまいます。

「Lucky Grey」
トイ・ピアノ的なイントロが印象的な哀愁ミディアムで締め括ってくれます。Radiohead好きの人は気に入りそうな曲です。

次はトロンボーン演奏も存分に聴けるジャズ・サイドな作品も出してほしいです。
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2016年11月06日

NxWorries『Yes Lawd!』

Anderson .PaakとKnxwledgeの強力Hip-Hop/R&Bタッグ☆NxWorries『Yes Lawd!』
Yes Lawd!
発表年:2016年
ez的ジャンル:強力Hip-Hop/R&Bタッグ
気分は... :フューチャリスティック・ピンプ・・・

新作アルバムから今最も注目を集める西海岸Hip-Hop/R&BアーティストAnderson .Paakとニュージャージー出身の期待のプロデューサーKnxwledgeによる強力Hip-Hop/R&BタッグNxWorriesの1stアルバム『Yes Lawd!』です。

西海岸Hip-Hopシーンの大御所Dr. Dreが健在ぶりを示した大ヒット・アルバム『Compton』(2015年)で6曲もフィーチャリングされたことをきっかけに、大きく注目されることになったAnderson .Paakについては、これまで『Venice』(2014年)、『Malibu』(2016年)という2枚のアルバムを紹介済みです。

もう一人の主役であるKnxwledgeに関して、当ブログで彼の名前はAnderson .Paakの記事以外にKendrick Lamar『To Pimp A Butterfly』(2015年)、SiR『Seven Sundays』(2015年)、Mndsgn『Body Wash』(2016年)の記事で登場しています。ちなみに期待のプロデューサー/ビートメイカーMndsgnとKnxwledgeは、かつてKlipmodeというHip-Hopクルーを結成していました。

ニュージャージー、フィラデルフィアを経てL.A.に拠点を移したKnxwledgeがネット上でAnderson .Paakと知り合い、結成したユニットがNxWorriesです。そして、Stones Throwから2015年にEP『Link Up & Suede』をリリースしています。

特に『Link Up & Suede』に収録された「Suede」は、Dr. Dre『Compton』での大抜擢のきっかけとなった曲であり、Anderson .Paakの運命を切り開いた1曲となりました。また、同じタイミングでKnxwledgeがモンスター・アルバムKendrick Lamar『To Pimp A Butterfly』にプロデューサーの一人として関与することとなり、全世界に存在感を示すことに成功しました。

このようにAnderson .PaakKnxwledgeへの注目度が最高潮となった絶好のタイミングでStones Throwからリリースされたのが本作『Yes Lawd!』です。

ゲスト・アーティストなどは招かないあたりに、Anderson .PaakとKnxwledgeの自信が窺えます。

アルバム全体はフューチャリスティック・ピンプな世界観で貫かれており、Knxwledgeによるソウルフルなトラックが並び、それに合わせてPaakが癖のある声でヴォーカル/ラップを聴かせてくれます。

流れが素晴らしい前半、ソウルフルなトラックが並ぶ後半と聴き応えのある全19曲です。

『Link Up & Suede』にも収録されていた代表曲「Suede」「Link Up」以外ならば、「Get Bigger/Do U Luv」「Scared Money」「Sidepiece」「Another Time」「Lyk Dis」「Can't Stop」「What More Can I Say」あたりがオススメです。

今年一番の注目度のHip-Hop/R&B作品を聴き洩らさないように!

全曲紹介しときやす。

「Intro」
アルバムのイントロ。

「Livvin」
Paakの癖のあるヴォーカルが全てを投げ捨てて都会へ旅立つ男の心情を歌います。
https://www.youtube.com/watch?v=BJM31we4I6w

「Wngs」
Ahmad Jamal「Ghetto Child」のエレピ・ネタを使ったKnxwledgeの心地よいメロウ・トラックが栄える1曲。
https://www.youtube.com/watch?v=Y8cgSzmzp78

「Best One」
「Wngs」から切れ間なく続きます。Paakの少しエロい感じのヴォーカルとソウルフル・トラックがよくマッチしています。
https://www.youtube.com/watch?v=CT2DB_U_-Zg

「What More Can I Say」
The Notations「What More Can I Say」ネタのソウルフル・トラックをバックに、Paakが切々と歌い上げます。途中、The Five Heartbeats「Nights Like This」のフレーズが効果的に使われています。
https://www.youtube.com/watch?v=9598ioIhflg

「Kutless」
Gino Vannelli「Lady」ネタの美しいトラックが印象的です。

「Lyk Dis」
Creme D'Cocoa「Mr Me, Mrs You」ネタのトラックにKnxwledgeのセンスを感じます。そんなトラックがPaakのラッパーならではのヴォーカルを引き立てます。
https://www.youtube.com/watch?v=2hEm94gx1y8

「Can't Stop」
妖しくも虚しい雰囲気のエフェクト・ヴォーカルが印象的です。Evelyn "Champagne" King「I Think My Heart Is Telling」をサンプリング。海外カートゥーン『Rick and Morty』ネタも入っています。

「Get Bigger/Do U Luv」
Webster Lewis「The Love You Give to Me」をサンプリングした本作らしいメロウ&ソウルフル・ワールドを堪能できます。終盤にはRonnie Mcneir「In Summertime」も使われています。
https://www.youtube.com/watch?v=ByLIWvPsKMY

「Khadija」
ダークで妖し気な空気で疾走します。アルバムの流れの中でいいアクセントになっています。

「H.A.N.」
シリアスなトラックにのって、Paakが切々と問いかけます。

「Scared Money」
B.B. & Q. Band「(I Could Never Say) It's Over」をサンプリングした本曲もメロウ&ソウルフルな魅力を楽しめる1曲に仕上がっています。

「Suede」
前述のように彼らの快進撃のきっかけとなった運命の1曲。Gil Scott-Heron & Brian Jackson「The Bottle」ネタのトラックにのって、Paakが癖のあるヴォーカルで畳み掛けます。
https://www.youtube.com/watch?v=zNTNbNtft9g

「Starlite」
70年代ソウルのエッセンスを巧みに使ったトラックにのってPaakが切々と歌い上げます。

「Sidepiece」
優しく包み込んでくれるようなメロウ・チューン。J Dilla「Won't Do」ネタが挿入されているあたりも嬉しいですね。

「Jodi」
インタールード的な小曲。

「Link Up」
「Suede」と並び『Link Up & Suede』に収録されていた注目曲。Cassiano「Onda」をサンプリングしています。哀愁ソウル・トラックとPaakのラップ調ヴォーカルのバランスが絶妙ですね。
https://www.youtube.com/watch?v=PsXaSRBO5kM

「Another Time」
Heaven Sent & Ecstasy「Bless You With My Love」 をサンプリングしたソウルフル・チューン。NxWorries流のソウル・ワールドを楽しめます。終盤のChristion & Jay Z「Your Love」ネタに思わずニヤリとする方もいるのでは?

「Fkku」
ラストはEddie Robinson「Absolutly Beautiful」ネタのメロウ・ソウル・チューンで締め括ってくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=MeiKE43pqaE

Anderson .PaakKnxwledgeのソロ作品もチェックを!

Anderson .Paak『Venice』(2014年)
Venice

Anderson .Paak『Malibu』(2016年)
MALIBU [国内仕様盤 / 帯・解説付き](ERECDJ218)

Knxwledge『Hud Dreems』(2015年)
Hud Dreems
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