発表年:1990年
ez的ジャンル:反体制Hip-Hop
気分は... :Fight The Power!
このアルバムを初めて聴いた時、こんな攻撃的トラックが続くHip-Hopアルバムは正直ヤバイと思ったね。
当時の僕のお気に入りHip-Hopは、Native Tongues一派(De La Soul、Jungle Brothers、ATCQ)あたりのおとぼけ系だったけど、客観的に考えて最も重要なHip-HopアーティストはPublic Enemyだと思っていた。
激しいラップで扇動するChuck D、大きな時計をぶらさげた道化師キャラのFlavor Flav、グループの“情報相”Professor Griff、DJのTerminator Xで構成されるPublic Enemyは、音楽以上にその政治的メッセージや体制に対する攻撃的な姿勢で、当時かなりインパクトが強かったね。
僕がPublic Enemyを意識したのは、Spike Lee監督の出世作となった映画『Do The Right Thing』(1989年)だ。映画自体も、NYブルックリンにおける黒人系住民とイタリア系住民の間の日常的な人種問題を見事に描いた素晴らしい作品だが、その映画の暴動シーンで印象的に流れていたのが、Public Enemy「Fight The Power」だった。
一般的には、2ndアルバム『It Takes a Nation of Millions to Hold Us Back』(1988年)が歴史的名盤との評価が高いけど、個人的には、続く3rd『Fear of a Black Planet』がお気に入りっす。
タイトルやジャケットからわかる通り、ブラック・プラネット国家の誕生というかたちで体制への対決を示したコンセプト・アルバムだ。皮肉なことに、このアルバムの発売前にProfessor Griffが反ユダヤ的な発言をし、メディアやユダヤ人団体から槍玉に挙げられ、結局Griffをグループから解雇するトラブルでも話題になりまシタ。
彼らの場合、政治的なメッセージ性が注目されがちだけど、サウンドもサイコーっす。Hank Shockleeを中心にCarl Ryde(Chuck D)、Keith Shocklee、Eric Sadlerから成るプロデュース集団The Bomb Squadの力がいかんなく発揮された作品だと思いマス。とっても攻撃的だけど緻密な音作りがされてヤス。
また、このアルバムは最も多くのサンプルを使っているアルバムらしいデス。確かに、このアルバムの元ネタを挙げたら、それだけで物凄いボリュームになりそうだね。でもかなり切り刻まれているので、どこで使われているのか不明なものも多いんだけど...
オススメ曲を紹介しときやす。
「911 Is A Joke」
人気曲の1つ。“黒人が電話で救急車を呼んでも来ない”とFlavor Flavが黒人への不公平な扱いを痛烈に批判した曲。とってもファンキーなトラックも文句ナシです。
「Welcome To The Terrordome」
リードシングルにもなった彼らの代表曲の1つ。ノイジーで攻撃的なサウンドもカッチョ良いし、アジテーションたっぷりのChuck Dのラップも最高デス。
「Burn Hollywood Burn」
自分達に都合の良い勝手な黒人像しか描かないハリウッドを攻撃した曲。Big Daddy KaneとIce Cubeが参加してマス。
「Power To The People」
疾走感のあるファンキーなナンバー。先日命日だったJohn Lennonにも同名曲がありますよね。NY在住で、しかも反体制派の危険人物としてFBIから睨まれていたJohnとPublic Enemyって結構接点あるかもね。
「Fear of a Black Planet」
BPM抑え気味ながらもグルーヴ感がとってもカッチョ良いタイトル曲。
「Revolutionary Generation」
「Can't Do Nuttin' For Ya Man」
アルバム後半になってもダレることなく、ネジを巻き直してくれる気合いの入った2曲。
「Fight The Power」
先に書いた『Do The Right Thing』でも使われたクラシックナンバー。黒人社会へ権力との闘いを訴えたこのナンバーは単に彼らの代表曲に止まらない、ブラックミュージック史の重要曲だと思う。
映画『Do The Right Thing』のラストで、「暴力」に対するキング牧師とマルコムXの相反する2つの見解が示されている。う〜ん、難しい問題だね。