発表年:1988年
ez的ジャンル:ブラジリアン系アヴァンギャルド・ロック
気分は... :まじめ風貌でアヴァンギャルド!
Ambitious Loversは、Arto LindsayとPeter Schererのユニット。
1984年発表のアルバム『Envy』では、Art LindsayとAmbitious Loversの名が併記されていたので、Ambitious Loversのアルバムと呼ぶべきかビミョーだけど、『Greed』(1988年)はそれに続くアルバムっす。
Arto Lindsayは、最近でこそブラジル的なサウンドのイメージが強いかもしれないが(彼はアメリカ生まれだが3歳から17歳までをブラジルで過した)、D.N.AのメンバーとしてNYアンダーグラウンドの金字塔的アルバム『No New York』(1978年)へ参加し、その後もLounge Lizards、Golden Palominos等で活躍してきたフリーキーで個性的なギタリストだ。
一方のPeter Schererはスイスのプログレ・バンドIslandでの活動や、NY進出後はCameoやDaryl Hall & John Oates等とのセッションにも参加した経緯を持つキーボード奏者。
『Greed』は、そんな多彩な活動歴を持つ二人にふさわしい濃縮されたアルバムっす。パンク、ファンク、ジャズ、ブラジルなどさまざまな音楽がカオス状態で詰め込まれているカンジっす。また、アルバムの中で動と静のコントラストがはっきり分かれている点も面白いっす。
John lurie、John Zorn、Bill Frisell、Vernon Reid(元Living Colour)、Melvin Gibbs、Nana Vasconcelosといったゲスト陣も好サポートをしていマス。
オススメ曲を紹介しときやす。
「Copy Me」
NYらしいホワイト・ファンクのオープニング・ナンバー。Artoの軟弱クールネス・ボーカルとうねりまくるファンク・サウンドが妙にマッチする点が面白いねぇ。Melvin Gibbsのベースがメチャカッチョ良いっす。途中のVernon Reidのギター、Nana Vasconcelosのパーカッションによる好サポートもイイっす。
「Privacy」
ノイジーでアヴァンギャルドなシンセ・ファンク。この硬質なサウンドは、80年代後半らしいですな。
「Caso」
一転して、Artoらしいボッサなナンバー。ボッサな音なんだけど、サウダージなカンジがしないのが不思議だね。むしろ、NYらしい都会の愁いを感じます。
「King」
アヴァンギャルドとブラジリアン・テイストが融合した不思議なナンバー。エッジの効いた心地よさってカンジかな?
「Omotesando」
表記の通り「表参道」のことです。曲としては実験的・インタールード的な作品デス。そう言えば、表参道ヒルズにまだ行っていないなぁ。もう少し暖かくなった晴れた日にでも行ってみようっと!
「Love Overlap」
アルバムで一番のお気に入り、ブラジリアンでファンクでジャズな、これぞAmbitious Loversと呼べるオシャレだけどアヴァンギャルドな傑作。
「Admit It」
怪しげなジャジー・ナンバー。何かこのチープでいかがわしいカンジがいいですなぁ。
「Para Nao Contraria Voce」
ブラジル人シンガー/ギタリストPaulinho Da Violaの作品のカヴァー。「Caso」とは異なり、コチラはサウダージ気分たっぷりの仕上がりデス。
「Quasi You」
ブラジリアン・テイストのファンク・ナンバー。この曲も含めて、このアルバムって女性コーラスがいいアクセントになっていて、作品のオシャレ度とまろやかさのアップに貢献していると思いマス。
「It Only Has to Happen Once」
哀愁のブラジリアン・テイストのナンバー。何とも言えない愁いがいいですなぁ。
Arto Lindsayのソロ・アルバムって、自宅のCD棚の置き場所が一定しない。その時の気分でUSロックとブラジル/ラテンのコーナーを行き来している。Arto Lindsayって、まさにオルタナティヴな存在なんだなぁと実感しマス。