発表年:1991年
ez的ジャンル:耽美系ドラッギー・ロック
気分は... :そこに愛はあるのか...
約10年ぶり位にCD棚からMy Bloody Valentine『Loveless』を手に取り聴いた。
いやぁ、このアルバムのインパクトの大きさを再認識しまシタ。
My Bloody Valentine(通称:マイブラ)は、1984年にリーダーのKevin Sheildsを中心にアイルランドで結成されたロックバンドだ。
1988年の2ndアルバム『Isn't Anything』で、そのノイジーで、サイケで、耽美な独自の音世界を確立した。そして、さらにそのサウンドを極限まで追求した3rdアルバムが本作『Loveless』(1991年)だ。
今回、この記事を書くにあたり、多少ネットで下調べしたけど、今でもこの作品が熱狂的な支持を得ていることを実感できまシタ。
この作品が発表された1991年にはPrimal Scream『Screamadelica』、Nirvana『Nevermind』といった本作同様の衝撃のロック作品が発表されている。ちなみに、リーダーのKevin Sheildsは、その後Primal Screamのギタリストとしても活動している。
以前にも書いたが、これらの作品が発表された頃から、僕の新作ロック離れが一層進み、新作で購入するCDの殆どがR&B、Hip-Hop、クラブ・ミュージックになっていった。その意味で、これらの3作品は僕の中で、今でも特別なロック・アルバムだ。
Kevin Sheildsを中心とするメンバーは、この作品を完成させるまでに、2年の歳月と20万ポンドの予算を要した(後にこの膨大な費用がCreationレーベルを経営難に陥れるのだが)。結果として、音の快楽とも呼ぶべき絶頂感を覚える退廃的で耽美なサウンドが完成したのではないかと思いマス。
結局、彼らはこの作品以降新作アルバムを発表していない。きっと、このアルバムを越えるのは至難の業だし、これ以上この方向を追求するのはかなり危険だと思う。このサウンドは追求しすぎると、絶対に頭がイカれて、行く着く先はXXXだと思う。
そんな美しさと危うさの紙一重の差を思い知らされる作品だ。
邦題は『愛なき世界』。愛なき世界の音楽は、こんなにもノイジーで、アシッドで、ドラッギーなのか。
オススメ曲を紹介しときやす。
「Only Shallow」
この曲こそが僕のマイブラ初体験だった。この美しく歪んだサウンドを最初に聴いた時の衝撃は大きかったね。そのサウンドにのって退廃的なボーカルがやけに耳に残る。もうこの段階で相当にヤバイ。
「Loomer」
続いて、ノイジーな美メロ・ナンバーで完全にこのアルバムの世界に入り込む。フツーにアコースティックに仕上げれば感動のバラードなのに?などと思いつつ、このノイズが段々心地良くなってきている。ヤバイ、これはヤバイ...
「To Here Knows When」
何なんだこの美しさは!何もかも忘れてこのサウンドに吸い込まれていく...ボーカルがエンジェル・ボイスに聴こえてくる。天使が舞い降りてくるのか?
「When You Sleep」
キャッチーなギター・ポップ・ナンバー。この曲でアシッドで、ドープな世界から、一度引き返すことができる。本来は彼らはギター・ポップのバンドだもんね。
「I Only Said」
「Come in Alone」
再びアシッド&ドラッギーな世界へ。ヤバイという気持ちと裏腹に脳内は高揚感で一杯だ。
「Sometimes」
「Blown a Wish」
アルバムで最も好きな2曲。「Sometimes」は、美しくも、虚しい愛なき世界のフォーキーなナンバー。「Blown a Wish」は、この退廃的な世界の希望の光のようなナンバー。そこに愛はあるのか...
「What You Want」
カッチョ良くロックしているナンバー。でも、あまりにフツーすぎて物足りなさを感じている。このアルバムにヤラれた証だ。
「Soon」
最後は、彼らのノイジーで、アシッドな世界をクラブ・ミュージック仕様にした有名曲。アシッド・ハウス全盛の当時のUkらしいサウンドかもしれないね。
この退廃的で耽美なサウンドは、音の快楽とも呼ぶべき絶頂感を覚える中毒性のある音楽だ。しかし、その絶頂が終わると、虚しさ、儚さ、切なさを感じることも確かだ。
人間は愛なき世界などでは生きてはいけないのだから...
ほどほどに聴くのがいい名盤それが『Loveless』だと思います。