2006年07月16日

MC Solaar『Prose Combat』

フレンチHip-Hopの先駆者によるジャジーな名作☆MC Solaar『Prose Combat』
Prose Combat
発表年:1994年
ez的ジャンル:文学系フレンチHip-Hop
気分は... :ボンソワール!

「イタリア対フランス」の決勝戦が終わって約5日が経過するが、まだまだジダン問題が決着するまでは、ドイツW杯は終わらないカンジですな。

それ以上に強豪国の代表監督の動向が面白い。
イタリアのリッピ、ドイツのクリンスマンという協会や国民が続投を望んでいた監督があっさり辞任。

リッピは八百長スキャンダルに揺れるイタリア・サッカー界のゴタゴタに巻き込まれるのが嫌だったのだろう。一説にはファーガソンGM、リッピ監督という体制でのマンチェスターUの監督就任の噂がある。

そうなればイングランド・プレミアは、チェルシーがポルトガル人モウリーニョ、アーセナルがフランス人ベンゲル、リバプールがスペイン人ベニテス、マンチェスターUがイタリア人リッピという外国人名将対決で盛り上がるよね。

大会前の悪評を大会後には称賛に代えたクリンスマンの手腕は痛快だね。
このまま辞めてしまう潔さも彼らしい。噂では居を構えるアメリカ代表監督就任の情報もある。そうなれば、またユニークな代表チームを生み出しそうな期待感が持てる。

ポルトガルを率いて好成績を収めたフェリペ監督は、母国ブラジル代表監督のオファーを断って、ポルトガル代表監督の続投決定。このあたりの計算に、フェリペのしたたかさを垣間見ることができるよね。

そんな中で、僕が未だにその手腕に疑問を抱くフランスのドメネク監督の続投も決定した。あれだけ優秀な指導者が数多いる国なのに、なんであんな意固地で柔軟性のない指導者を代表監督に据えるのか理解に苦しむね。

そんなフランス代表の未来に不安を抱きつつ、今回はフレンチHip-Hop界を代表するラッパーMC Solaarの名作『Prose Combat』(1994年)っす。

MC Solaarは、以前にGangstarrのGuruのプロジェクトJazzmatazzの1stアルバム『Jazzmatazz』収録の「Bien, Le Mal」のフューチャー・ラッパーとして紹介しまシタ。

1969年にダカールで生まれたMC Solaarは、生後6ヶ月後にパリ郊外のサンドニ(フランス代表の聖地サンドニ・スタジアムのある所ですな)にやってきた。

1990年より相棒Jimmy Jayと作品を作り始めたSolaarは、1991年にはDe La Soulのパリ講演の前座を努め、1991年末にデビューアルバム『Qui seme le vent recolte le tempo』を発表した。

本作『Prose Combat』(1994年)は、『Qui seme le vent recolte le tempo』に続く2ndアルバムっす。
僕は1stの『Qui seme le vent recolte le tempo』も持っていたが、1stはフレンチラップへの物珍しさから購入したというのが本音だったかな?

そんな僕がMC Solaarのフレンチラップにハマったのが『Prose Combat』(1994年)だった。当時、本作とSoon E MC『Atout...Point De Vue』(1994年)という2枚のフレンチHip-Hopのアルバムは、僕の通勤ウォークマンのヘビロテだったね。

この2枚に共通しているのは、実にジャジーなテイストがマッチしたHip-Hopアルバムだということ。これはアメリカのHip-Hopグループの“ジャジー”な雰囲気とは異なるものだ。これは前述のGuruの『Jazzmatazz』の記事でも書いたが、Hip-Hopを聴いているというよりもAcid Jazzを聴いているという感覚が強かったかもね。

特に、このジャジーな雰囲気とフレンチならではのソフトな語感が相性バッチリなんだよね。MC Solaarのライムは文学的で、言葉遊びの感覚にも溢れた極めてクリエイティビティの高いものとして評価が高いらしい。僕はフランス語はサッパリわからないが、でもそんな芸術性の高さは彼のライムを音として聴いているだけでもヒシヒシと伝わってくる。

オススメ曲を紹介しときやす。

「Nouveau Western」
アルバムからのヒット曲。映画音楽っぽいトラックが印象的ですな。フランス音楽界の異端児Serge Gainsbourg 「Bonnie & Clyde」ネタ。

「Obsolete」
フレンチラップの魅力を堪能できるシングル曲。フレンチの語感の音ってホント楽器のような気がしてくる。

「A la Claire Fontaine」
Acid Jazzテイストのクールネス溢れるトラックがカッチョ良い曲。サッカーのフランス代表で言えば、マケレレのようなシブさだよね。

「Superstarr」
キャッチーな女性コーラスが印象的なナンバー。当時パリはワールド・ミュージック・ブームの中心でもあったが、そんな影響もうかがえるトラックも印象的っす。

「La Concubine de l'Hemoglobine」
憂いのあるラップが印象的なシングル曲。皮肉にもW杯決勝という大舞台を通じてその認識が広まる格好となったが、フランスの移民問題はかなり深刻な状況だ。そんな状況とMC Solaarの憂いのあるラップが妙にオーバーラップする。

「Devotion」
本ブログでも紹介したEarth, Wind & Fireの名曲「Devotion」ネタのシリアスなムードのトラックが印象的なナンバー。

「Temps Mort」
僕の一番のお気に入り曲。ジャジーなHip-Hopと言えばこの曲でしょ!と言うくらいにスキだなぁ。パリの夜にピッタリなカンジのスタイリッシュなトラックがサイコーっす。

「L'Nmiaccd'htck72kpop」
「Dieu Ait Son Ame」
モロにジャズなストレートなトラックがウレシイ・ナンバー2曲。

「La Fin Justifie Les Moyens」
リズミックなフレンチラップを堪能できる、ちょっとファニーなナンバー。

「Prose Combat」
「Temps Mort」と並ぶお気に入りのタイトル曲。この落ち着きと深みが何ともクール☆

最近のジャジーなアンダーグラウンドHip-Hopが好きな方あたりにはオススメの1枚です。合わせて、Soon E MC『Atout...Point De Vue』(1994年)もどうぞ!
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2006年07月15日

Kofi『Black...with Sugar』

僕の大好きなAriwaラヴァーズの隠れた名作☆Kofi『Black...with Sugar』
ブラック...ウィズ・シュガー(紙ジャケット仕様)
発表年:1989年
ez的ジャンル:熱中症ラヴァーズ・ロック系レゲエ
気分は... :クソ暑い、ダーッ!

だんだんクソ暑い日々が続き、レゲエ日和になってきたので、お気に入りのレゲエ・アルバムを1枚☆ということで、UKレゲエ/ダブ・シーンの第一人者Mad ProfessorのAriwaレーベルから1989年に発表されたラバーズロックの隠れたKofi『Black...with Sugar』を紹介しマス。

Mad Professor(マッド・プロフェッサー)と言えば、1979年に設立したレーベル/スタジオであるAriwaを拠点に活躍する世界屈指のレゲエ・プロデューサー/アーティストですよね。

そのフィールドはレゲエに止まらず、Massive Attack(ダブ・アルバム『No Protection』の仕事ぶりはサイコー)などの作品を通じて、マッド教授の仕事ぶりに触れた人も多いのでは?ちなみに、邦楽系でも浜崎あゆみやbirdのリミックスなんかをマッド教授が手掛けていまシタ。

マッド教授率いるAriwaには2つの顔がある。1つは今回紹介するKofiに代表されるラヴァーズロック・レーベルとしての側面(Lovers Rock:レゲエのラブソング)、もう1つは"Dub Me Crazy" シリーズに代表されるダブ・レーベルとしての側面(Dub:オリジナル曲をリメイクして新たに別の曲に仕立てること)である。

マッド教授がDub Masterの異名をとり、レゲエにおけるダブの手法が、Houseなど他のダンス・ミュージックに与えた影響を考えればダブ・レーベルとしてのAriwaの役割は大きかったのかもしれない。それでも、僕にとっては「Ariwa=ラバーズロック」である。

マッド教授が送り出すAriwaラヴァーズは極甘スウィートだけど和三盆(わさんぼん)のようなホンモノの味わいがあるんだよね(^¬^)

特に、本作Kofi『Black...With Sugar』は、神様Bob Marleyの作品を除けば、僕が一番聴いた回数が多いレゲエ・アルバムかもしれないし、今でも気分がレゲエ・モードの時にはこのアルバムの優先順位が最も高い。

本作の主人公であるUkラヴァーズの歌姫Kofiについて触れると、彼女は以前にCaron Wheeler(本ブログでも紹介したSoul II Soulの世界的大ヒット「Keep On Movin'」のリードボーカル)とBrown Sugarというグループを組んでいた女性ボーカリストっす。

そして、Kofi自身もSoul II Soulの3rdアルバム『Volume III Just Right』(1992年)にフューチャリング・ボーカリストとして参加している。特に、彼女のボーカルをフューチャーした、フリーソウル・クラシックとしても有名なDionne Warwick「Move Me No Mountain」のカヴァーは、Soul II Soulの全作品の中で一番のお気に入りデス。

大スイセン作ですが唯一の欠点が、CDに楽曲情報が殆どクレジットされていないこと。これには参りマス。

オススメ曲を紹介しときやす。

「Black Pride」
前述のBrown Sugarのナンバーのリメイク。Brown Sugarバージョンよりも、さらにスウィートな仕上がりっす。CDショップでこの曲を試聴し、そのまま即レジへ向った記憶がありマス。マッド教授ならではのチープなんだけど、素敵なメロウネスに溢れるサウンドがたまらんデス。
http://www.youtube.com/watch?v=hFilXgf3PiQ

Brown Sugar - Black Pride
http://www.youtube.com/watch?v=L7ZWT3YkTVs

「There Must Be」
「Didn't I」
淡々としたヒンヤリ感がいいカンジのナンバー。キーボードの甘酸っぱいカンジの音色がサイコーだよね。
http://www.youtube.com/watch?v=uLoXiuxtu9Y

「Curious」
ご存知Midnight Starの超有名クラシックのカヴァー。僕の本作の一番のお気に入り。Midnight Starのオリジナルに迫る出来映えの名カヴァーだと思いマス。まさに、この名曲はレゲエ・カヴァーされるために存在する楽曲のように思えてくるくらいだよねぇ。

「Do You Really Want Me?」
軽快なリズム感が気持ちいいナンバー。ベタつかないサラッと感がいいですな。

「Looking over Love」
マッド教授らしい、甘く切ないトラックが印象的なシングルカットもされたナンバー。ビタースウィートなKofiのボーカルがピタッとハマっています。
http://www.youtube.com/watch?v=ogw6s-_ypUM

「Reggae Starship」
よくわからんけど、タイトルや歌詞の中でやたら♪エンタープライズ♪と連呼しているので、スタートレック絡みの歌か?

「Special Nation」
マッド教授のセンス溢れるナンバー。リズミカルながらもスウィートネスも忘れていない。こういう曲は何度リピートで聴いても全然飽きない。

なんと、Kofiは今年10年ぶりの新作『Eternally』をリリースしている。
Isaac HayesやLeon Wareあたりをカヴァーしているみたいデス。
ただし、レーベルもAriwaではなく、プロデュースもマッド教授ではありません。

本作以外のAriwaラヴァーズでは、Sandra Cross『Foundation Of Love』(1992年)、Carroll Thompson『The Other Side Of Love』(1992年)あたりが僕の愛聴盤デ〜ス(o^-`)b
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2006年07月14日

Traffic『Mr. Fantasy』

Steve Winwoodだけではない個性的なメンバーによるブリティッシュ・サイケ☆Traffic『Mr. Fantasy』
Mr. Fantasy
発表年:1967年
ez的ジャンル:ブリティッシュ・サイケ・ロック
気分は... :ユラユラ〜☆

僕はSteve Winwoodのソウルフルなボーカルが大好きだが、その割には彼のキャリアを代表するグループTrafficの作品への思い入れは、それ程高くない。

スキな度合いで言えば、「Spencer Davis Group>ソロ作品>Traffic」の順かな?純粋にSteve WinwoodのソウルフルなボーカルをグルーヴィーなR&Bノリのサウンドで堪能したいという僕のような人にとっては、Trafficは相性が悪いのかもね?

でもTrafficのアルバムは殆ど持っているし、Trafficの他の主要メンバーであるDave MasonやJim Capaldiのソロ作品も結構持っていて、案外好きだったりする。

Trafficというグループをきちんと聴くためには、Winwoodばかりにフォーカスするのではなく、Winwood以外のメンバーの個性も含めて、多様な音楽の要素を取り入れたTrafficサウンドを楽しむという聴き方が必要なのかもね?

Trafficとの出会いがうまくいかなかった僕だけど、それでも1stアルバム『Mr. Fantasy』と2ndアルバム『Traffic』は名作だと思う。

よく言われるように、Beatlesに例えるならば、『Mr. Fantasy』は『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』のような細部にもこだわったトータルな構成のサイケなアルバムであり、『Traffic』は『The Beatles(ホワイト・アルバム)』のような、各曲の完成度にこだわった叙情的なアルバムだ。

最近の僕の音楽嗜好で言えば、サイケな『Mr. Fantasy』の方が好みかも?
幻想的なジャケットのイメージそのままに、ユラユラとした不思議な浮遊感が気持ちイイ!このストレンジなテイストはCreamあたりにも通じるブリティッシュ・ロック・グループ独特の感じかもね?

メンバーは、Steve Winwood、Dave Mason、Chris Wood、Jim Capaldiの4人。ちなみにSteve Winwood在籍時のThe Spencer Davis Groupの最後のシングルであり、僕の大好きな名曲「I'm a Man」のレコーディングには、Dave、Chris、Jimの3人が参加している。

先に書いたように、Steve Winwoodが目立つグループだが、4人の強力な才能を楽しむアルバムだと思います。

全曲紹介しときヤス。

「Heaven Is in Your Mind」
ブリティッシュ・ロックらしさとサイケな雰囲気が融合したオープニング。中盤以降の幻想的だけどブルージーな展開がカッチョ良いね!

「Berkshire Poppies」
「House for Everyone」
Beatles『Sgt. Pepper'〜』の影響が顕著な2曲。Winwoodを中心に考えれば、こうした作品は不要な感じもするが、このあたりを堪能するのが本作を楽しむコツなのかも?「Berkshire Poppies」は、ドラッギーなタイトルのサイケ時代らしいナンバー。Small FacesのSteve Marriottなんかもゲスト参加していマス。「House for Everyone」は時計のネジを巻く効果音が印象的だよね。

「No Face, No Name, No Number」
これはWinwoodファンにはウレシイ、Winwoodの哀愁感たっぷりのソウルフルなボーカルを堪能できるバラード。このアルバムが制作されたバークシャーの田舎のような素朴な感じや、バロック風の幻想的なアレンジも実にいいねぇ〜!

「Dear Mr. Fantasy」
ユラユラとした不思議な浮遊感を満喫できるタイトル曲。この1曲に、この時代の雰囲気やTrafficというグループの音楽的な魅力が凝縮された名曲だと思いマス。特に後半の展開はスリリングでもっと長尺で聴きたいよね。

「Dealer」
実はアルバムで一番好きな曲がJim Capaldi作品のコレ。フルートの幻想的な音色とフォーキーなグルーヴ感のバランスがサイコーにカッチョ良い。

「Utterly Simple」
Dave Mason作品のラーガ・ロック。Masonのインド嗜好が全面にプッシュされたナンバー。シタールやタブラ好きの方にはオススメです。かく言う僕も結構このタイプにはヤラれやすい。

本作ではMasonの単独作が3曲もあり、その意味では一番音楽的主張が高かったのはMasonかもね?しかも、Masonはこの後グループを出たり、入ったりで、案外自己チューな性格な人だよね(笑)

「Coloured Rain」
やっぱりソウルフルなボーカルとオルガンがないと!というWinwoodファン向けのブルージーなナンバー。

「Hope I Never Find Me There」
これもDave Mason作品。このように聴いてくると、Mason作品が一番サイケ度が高い。後にスワンプ・ロック・ブームにも素早く対応したあたりを見ると、Dave Masonという人は時代に敏感に反応しやすいタイプなのかもね?

「Giving to You」
以前はプログレやジャズの雰囲気に支配されたインストの印象が強く、いつもスキップして聴いていなかったが、今回聴いてみると、Winwoodのオルガンが案外カッチョ良い。でも、この曲のハイライトはイントロとエンディングだね(笑)

僕の持っているCDには未収録だが、現在発売中の新品CDには、「Paper Sun」、「Hole In My Shoe」といった本作に先駆けてリリースされたシングル曲などがボーナス・トラックで追加されていマス。これはお得だよね!

Steve Winwood、Dave Mason、Jim Capaldiのソロ作品も、そのうち取り上げマス。
posted by ez at 02:16| Comment(2) | TrackBack(0) | 1960年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年07月13日

Harlem River Drive『Harlem River Drive』

Eddie Palmieriによるサルサとジャズ、ソウル/ファンク、ロックの融合☆Harlem River Drive『Harlem River Drive』
Harlem River Drive
発表年:1971年
ez的ジャンル:サルサ系ラテン・レアグルーヴ
気分は... :サルサのようでサルサでない!

先日The Salsoul Orchestraを記事投稿した時に、懐かしくなって、Fania All-Stars、Eddie Palmieri、Willie Colonあたりのサルサ・アーティストのアルバムを久々に聴いていた。

そんな中で、今iPodで良く聴いているのがEddie Palmieriの1972年のシン・シン刑務所での名作ライブ『Recorded Live at Sing Sing』だ。プエルトリコ移民二世のEddie Palmieriは、兄Charlie Pamieriと並ぶニューヨーク・サルサを代表するピアニスト。

Eddie Palmieriは、兄Charlie Pamieri、Ray Barretto、Johnny Pachecoらと共に1960年代のニューヨーク・ラテン・シーンを牽引し、1970年代初めのサルサ・ブームを築き上げた功労者の一人と呼べるであろう。

一方で、70年代のサルサ・シーンの中心と言えば、Fania All-Starsで一躍有名になったレコード会社Faniaだったが、Faniaとは距離を置くかたちで、独自のニューヨーク・ラテン音楽を構築しようとしたEddie Palmieriは異色の存在だったのかもしれない。

そんなEddie Palmieriの全盛期は1970年代前半の作品群であろう。『Recorded Live at Sing Sing』もそんな中の1枚だ。でも、残念なことに、アマゾンでは『Recorded Live at Sing Sing』を新品入手が困難なようなので、アマゾンで新品入手できそうなHarlem River Drive『Harlem River Drive』(1971年)を今回は取り上げマス。

Harlem River Driveは、Eddie Palmieriらを中心としたニューヨーク・ラテン・ミュージシャンらによるプロジェクト的なグループであり、そのプロジェクトによるスタジオ作が『Harlem River Drive』である。

先のEddie Palmieri『Recorded Live at Sing Sing』も厳密には、Eddie Palmieri with Harlem River Driveというクレジットになっている。その意味で『Harlem River Drive』と『Recorded Live at Sing Sing』は兄弟アルバムと呼べるかもしれない。

ただし、『Harlem River Drive』と『Recorded Live at Sing Sing』は、かなり異なった印象的を受ける。

『Recorded Live at Sing Sing』の方は、ニューヨーク・サルサの全盛を切り取ったようなモロにサルサなアルバムであり、歌詞もスパニッシュで歌われる。

一方の『Harlem River Drive』は、サルサのアルバムというよりも、ニューヨーク・ラテンとジャズ、ソウル/ファンク、ロックを融合を試みたアルバムであり、歌詞も全て英語である。今で言えば、ラテン・レアグルーヴという括りになるのかも?

『Harlem River Drive』の方は、参加メンバーもニューヨーク・ラテン・ミュージシャン以外にも、Bernard Purdie、Cornell Dupree、Randy Breckerといったお馴染み凄腕スタジオ・ミュージシャンの名がクレジットされていマス。

サルサと他ジャンルの融合を図ったEddie Palmieriのユニークな意欲作として、ご堪能下さい。

全曲紹介しときやす。

「Harlem River Drive (Theme Song)」
ソウルフルなラテン・グルーヴに仕上がったテーマソング。単なるサルサ・アルバムではないことがこの1曲でわかりマス。兄Charlie Pamieriのオルガンがえらくカッチョ良いね!

「If (We Had Peace Today)」
これはメロウなミディアムだね。同じラテン系ということで言えば、AztecaやMaloあたりのメロウ・ナンバーと似ているかもね。

「Idle Hands」
ファンキーなラテン・ファンク。今回聴いていたら、少しニューソウルっぽいテイストも漂っている印象を受けた。なかなか奥深い手強いナンバー。

「Broken Home」
Jimmy Normanのボーカルが前面にプッシュされたソウルフルかつフリーキーなナンバー。この曲もCharlie Pamieriの幻想的なオルガンが実にインパクトがあるね。

「Seeds of Life」
フリーソウルのコンピ『Free Soul Vibes』にも収録されたレアグルーヴ・ファンにはお馴染みのナンバー。James Brownノリのカッチョ良いラテン・ジャズ・ファンクに仕上がっていマス。

Eddie Palmieriの作品で言えば、『Vamonos Pal Monte(山へ行こう)』『Superimposition』『Justicia 』というTicoレーベル三部作は、未聴ですが機会があれば、ぜひ聴いてみたい作品ですね。

コレクション枚数は少ないですが、サルサもぼちぼち紹介していきますねっ!
posted by ez at 02:57| Comment(2) | TrackBack(0) | 1970年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年07月12日

Steely Dan『Gaucho』

AORの先駆者的グループSteely Danの実質的ラストアルバム☆Steely Dan『Gaucho』
Gaucho
発表年:1980年
ez的ジャンル:無国籍風ひねくれAOR
気分は... :勇敢なガウチョたちよ!

今月アタマに投稿した本ブログの2006年4月-6月アクセス数Top10Donald Fagen『The Nightfly』(1982年)が第2位に入った。第1位になったDigital Underground『Sex Packets』は怪しげなアクセス数がかなり含まれるので、Donald Fagen『The Nightfly』が実質的な第1位だ。Steely Dan人気の根強さを改めて実感しやした。

ということで、Steely Danの実質的ラストアルバム『Gaucho』(1980年)っす。
*個人的には、約20年の空白を経て発表された『Two Against Nature』(2000年)を『Gaucho』までのアルバムと同列で扱いたくはない。

僕がリアルタイムで聴いた最初のSteely Danは以前にも記事投稿した『Aja』(1977年)だった。洋楽を聴き始めたばかりの中学生の僕にとって、『Aja』のスタイリッシュなサウンドは衝撃だったし、ヒットナンバー「Peg」をカセットで何度も繰り返し聴いていたなぁ。

そんな中でSteely Dan待望の新作というかたちで聴いたのが『Gaucho』(1980年)だった。正直、当時の僕の耳には『Aja』に比べて地味な作品という印象が強かった。悪くはないけど、インパクトには欠ける気がしたなぁ。

なので、『Aja』Donald Fagenのソロ『The Nightfly』という強力作の狭間で分が悪い作品が『Gaucho』という感じだったね。

でも、最近(というかここ10年ほど)は『Gaucho』が大分気に入っている。
このアルバムの持つ無国籍なエキゾチック感覚が、とても心地良く僕の耳に入ってくるようになったみたいだね。

Donald Fagen、Walter Beckerのメンバーに加え、相変わらず(彦摩呂ふうに)ミュージシャンのグルメパークやぁ〜!
主なところは、ギターのHugh McCracken、Mark Knopfler、Rick Derringer、Larry Carlton、Steve Khan、ベースのChuck Rainey、Anthony Jackson、キーボードのDon Grolnick、Joe Sample、ドラムのRick Marotta、Jeff Porcaro、Bernard Purdie、Steve Gadd、パーカッションのRalph MacDonald、Victor Feldman、ホーンセクションのRandy Brecker、Michael Brecker、David Sanborn、Tom Scott、バックボーカルのValerie Simpson、Patti AustinMichael McDonaldなど。

ちなみに、アルバムタイトルの『Gaucho』とは南米のカウボーイのこと。アルゼンチンなどでは、この言葉に“英雄”の意味を込めて使うのだとか。日本で言う“侍”みたいなニュアンスがあるのかもね。

全曲紹介しときやす。

「Babylon Sisters」
いきなりマッタリと気だるいカンジのオープニング。アルバム全体を支配する乾いたクールネスが特に印象的なナンバー。Donald Fagenのボーカルのひねくれ感と実にマッチした曲調だよね。そんな中でPatti Austinをはじめとする華やかな女性コーラス陣が、まさにバビロンの乙女達のように聴こえます。

「Hey Nineteen」
Top10ヒットとなったアルバムからの1stシングル。なんか不思議な曲調がクセになるナンバー。歌詞の♪19才の君じゃ憶えていないだろうが♪あれがAretha Franklin!ソウルの女王さ♪という部分が印象的だね。この歌のように、オヤジになると19才の子と共通の話題がなくなるのかね?でも、オレには音楽の話題があるさ!

「Glamour Profession」
イントロを聴いた時に、この一瞬調子っぱずれに聴こえる奇妙な浮遊感に、最初はレコードの回転がおかしいのかと思った(笑)アメリカンな都会の雰囲気でもあり、ヨーロピアンな雰囲気もある、よくわからんSteely Danらしいひねくれナンバー。今聴くと、『The Nightfly』「New Frontier」のプロトタイプみたいにも聴こえるね。

「Gaucho」
ラテン・フレイヴァーのタイトル曲。ラテンといっても陽気なグルーヴではなく、まさに南米の勇敢なカウボーイのような男気あふれるラテン・ナンバーなところがいいよね。

「Time Out Of Mind」
アルバムからの2ndシングル。Dire StraitsのリーダーMark Knopflerのギターソロが話題だったね。コーラスもValerie Simpson、Patti AustinMichael McDonaldという豪華な布陣。アルバムの他の曲と比べて、実に輪郭がはっきりしたカチッとした音が印象的ですな。キャッチーさとカッチョ良さで言えば、この曲が一番かもね?

「My Rival」
「Third World Man」
正直、昔はこのラスト2曲は飛ばして聴くことが多かった。でも、最近はこの2曲のシブ〜い感じが結構気に入っている。「My Rival」は、エスニック・ムードたっぷりの変てこナンバー。なんかこのユルユル感がいいね!「Third World Man」は、このアルバムの無国籍感を象徴する哀愁のナンバー。Donald Fagenらしいダンディズムにも溢れているよね。後半のダイナミックな展開は「Aja」を彷彿させるよね。

そう言えば、巷ではガウチョ・ファッションが流行っているらしい。
本ブログでも絶賛の嵐(?)だったTVドラマ『ギャルサー』の藤木直人演じた進之助のカウボーイ姿がその火付け役だったのだとか?
僕的にはジェロニモ・ファッションの方が興味ある???
posted by ez at 01:28| Comment(4) | TrackBack(0) | 1980年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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