録音年:1957年
ez的ジャンル:奇人系ユニーク・ジャズ・ピアノ
気分は... :個性って大事だよね☆
最近、“個性”について考えることが多い。
今の社会って、ブログのようなパーソナル・メディアが発達し、一人ひとりが個性を表現しやすい環境が整っている。一方で、その個性の表現に煩わしさを感じ、その部分を他人の知識・アイデアで代替してしまっている人も多いように思う。
別の他人の知識・アイデアの複製を否定するわけではない。他人の知識・データの複製なしに、すべてを表現できる人なんて、滅多にいないと思うしね。また、Web2.0みたいな流れで考えれば、知識・アイデアの複製(=共有)こそが、新たな創造の源泉といえるしね。
でも、Web2.0みたいな時代だからこそ、自分ならではの理念、価値観、視点、考え方を強く意識しないと没個性に陥りやすいのではと思いヤス。
さて、今回はジャズ史上最も個性的なミュージシャンと呼ばれるThelonious Monk(1920-1982年)☆
本ブログでは、Sonny Rollins『Sonny Rollins Vol.2』への参加で紹介しましたね。
その個性は彼の音楽のみならず、奇異な言動までおよび、一般には奇人変人のイメージが強いですよね。「Monk=修道僧」の意味から“ビ・バップの高僧”とも呼ばれたらしいけど、そんなイメージはないよね(笑)
僕がMonkの名を強く意識するようになったのは、1984年に発表されたHal WillnerによるMonkのトリビュート・アルバム『That's the Way I Feel Now: A Tribute to Thelonious Monk 』だったかな。
このアルバムには、Todd Rundgren、Donald Fagen、Peter Framptonといった当時僕のお気に入りだったロック系アーティストも多数参加していた。そんな彼らが敬愛するジャズ・ピアニストってどんな人なんだろう?という興味が湧いた。
社会人になってからJazzを本格的に聴くようになってから、Monk作品も何枚か購入した。その前にジャズ・ピアニストとしては、Bill Evans、Bud Powell、Herbie Hancockあたりの作品を聴いていたが、そうした後にMonkを聴いたら、確かにインパクトがあったよね。でも、それは決して好印象ではなかったけど(笑)
特に、Bill Evansの繊細でリリカルな世界の虜になっていた僕にとっては、Monkの独特のコードや不協和音、アクセントの強い演奏は、個性的ではあるが、決して頻繁に聴きたいアーティストではなかった。
でも、年月と共にそのクセのある演奏が何となく好きになってきたから不思議だよねぇ!そう言えば、子供の頃レバーのクセのある味が大キライだったんだけど、今では大好物になったなぁ...
個人的には、『Solo On Vogue』(1947-48年、1951-52年)、『Brilliant Corners』(1956年)、『Thelonious Himself』(1957年)、『Monk's Music』(1957年)、『Monk's Dream』(1962年)、『Solo Monk』(1965年)あたりがMonkを堪能できる作品ではと思いマス。
今回は、そんな中からピアノソロ作品『Thelonious Himself』(1957年)をセレクト。
オリジナル作品およびスタンダードをピアノソロで聴かせる本作は、ジャズというよりもMonkという芸術を聴いている気分になる。なんかとってもアートな雰囲気を持ったアルバムだ。
「April in Paris」
E.Y.Harburg作詞、Vernon Duke作曲のスタンダード。こうやってピアノソロで聴くと、Monkの奏でる音空間の奥行きを感じられるようでいいよね。
「(I Don't Stand) A Ghost of a Chance (With You)」
「ほのかな望み」の邦題で知られるB.Crosby/N.Washington作詞、V.Young作曲のスタンダード。Linda Ronstadtの『What's New』(1983年)にも収録されていましたね。何かアンハッピーな感じがMonkの演奏とピッタリなハマっている感じで好きですね。
「Functional」
Monkのオリジナル。Monkらしさ全開のナンバー。昔はこの調子っぱずれなカンジがダメだったんだけど、今はこれを聴かないとMonkを堪能している気がしない。
「I'm Getting Sentimental over You」
N.Washington作詞、G.Bassman作曲のスタンダード。Tommy Dorsey、Frank Sinatra、Bill Evansなんかも取り上げていますね。結構、スタンダードらしく演奏してマス(笑)
「I Should Care」
Sammy Cahn,/Axel Stordahl/Paul Weston作詞・作曲のスタンダード。Bud Powell、Bill Evansも取り上げているので、聴き比べるのも面白いかも?でも、こういった哀愁漂う曲ってMonkの不協和音がピタッとマッチする気がする。
「'Round Midnight」
誰も知っているMonk永遠の名曲。当初は「'Round About Midnight」のタイトルでしたが、 Barnie Hanighen が歌詞をつけた時に,どうしてもabout が入らなくて,削ってしまったのだとか。
やっぱり、この曲をMonk本人のピアノ・ソロで聞けるのはウレシイですね。特に、CD化の際に、OKテイクが出るまでの過程を記録した22分にも及ぶ「'Round Midnight (In Progress)」がボーナス・トラックが追加されており、モンク・ミュージックがクリエイトされるプロセスを聴けるのは実に興味深いですよね。
個人的にはMiles DavisやGerry Mulliganのバージョンも愛聴しますし、先日紹介したサックス奏者Dexter Gordonが主演した映画『Round Midnight』(1986年)を思い出してしまいマス。
「Monk's Mood」
これもMonkのオリジナル。この曲のみJohn Coltrane(ts)、Wilber Ware(b)が参加していマス。
ピアノ・ソロ作品だからこそ、モンク・ミュージックの本質部分がダイレクトに伝わってくる作品だと思いマス。
あとはMiles Davis好きとしては、1954年のクリスマスにおけるセッションでMilesとMonkの感情の対立がむき出しになった“喧嘩セッション”を収めた『Bags' Groove』あたりも興味深いですね。