発表年:1987年
ez的ジャンル:殿下の最高傑作
気分は... :孤高の天才...
前作『Musicology』(2004年)、最新作『3121』(2006年)で復調の兆しの見えてきたPrince殿下。
個人的には、そんなPrince殿下の最高傑作は『Sign O' The Times』だと思う。80年代の殿下をリアルタイムで聴いていた方は、同じ想いの方が多いのではと思いマス。
以前に紹介した『1999』(1982年)でコアなファンのみならず一般音楽ファンの支持を獲得し、『Purple Rain』(1984年)でMichael Jackson並みの人気を得た頃までは、正直殿下のことを風変わりなポップ・スター程度にしか思っていなかった。
そんな殿下のことを天才クリエイターだと認識するターニング・ポイントとなった作品が『Around The World In A Day』 (1985年)だった。多くの人がそう評したように、僕もこの作品に、The Beatlesの名作アルバム『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』(1967年)をダブらせていた。
その後、『Parade』(1986年)を最後にバックバンドRevolutionを解散させ、殿下が再びマルチ・プレーヤーとしての才能をみせた作品が2枚組大作『Sign O' The Times』(1987年)である。Beatlesで言えば、『The Beatles(ホワイト・アルバム)』(1968年)みたいなアルバムかもね。
この作品を聴いて印象的だったのは、全体を覆う閉じられた雰囲気と、その小宇宙の中での贅肉をそぎ落としたようなシンプルながら自由に駆けめぐるサウンドだった。孤高のポップスターが、ついにその頂点を極めた作品に感じられたなぁ。
当時、この作品は間違いなく、10年後、20年後に振り返っても歴史的名盤として語り継がれていることは間違いないと確信し、そんな作品にリアルタイムで出会えた幸運にずいぶんと興奮していた記憶がある。
最近紹介したPharrell『In My Mind』を聴いていたら、密室的な雰囲気という意味で『Sign O' The Times』と同じ感触がしたなぁ。
オススメ曲を紹介しときやす。
「Sign O' The Times」
1stシングルになもなったシングル・ナンバー。閉じた雰囲気の中でPrince流ファンクが繰り広げられる。このスカスカなカンジが何とも好きだなぁ。本ブログでも紹介したYoung Disciples「Get Yourself Together」の元ネタです。
「Housequake」
久々に聴いて、改めてカッチョ良さを再認識したファンク・ナンバー。エフェクトで声がより変態チックなハイトーンになっているのもいいよね。MC Hammer「They Put Me In The Mix」、Bomb the Bass「Beat Dis」、Levert「Rope-a-Dope Style」の元ネタ。
「The Ballad of Dorothy Parker」
一番のお気に入り曲。この密室的で物悲しく、儚いカンジが孤高の天才にピッタリだと思う。この曲の歌詞は、以前紹介したJoni Mitchell『Court And Spark』収録の「Help Me」の1節が引用されている。
De La Soul「Lovely How I Let My Mind Float」、Digital Underground「Wussup Wit The Luv」、Lords Of The Underground「Flow On (New Symphony)」の元ネタっす。
「Starfish and Coffee」
目覚まし時計の効果音が印象的なナンバー。一時期、朝起きたらまずこの曲を聴いていた記憶があある。殿下のポップ職人ぶりが発揮されたキャッチーなナンバー。Nice & Smooth「No Delayin'」の元ネタ。
「Hot Thing」
アシッドな雰囲気漂うファンク・チューン。中毒性のあるクセになるナンバー。Kipper Jones「Ordinary Story」、Chubb Rock & Howie Tee「Talkin' Loud, Ain't Sayin' Jack」の元ネタ。
「U Got the Look」
Sheena Eastonとのデュエットによるロック・チューン。アルバムからの3rdシングルにもなりました。ここでも声にエフェクトをかけて、変態ボイスの殿下を聴けマス。Sheila Eのパーカッションもイイ感じ。
「If I Was Your Girlfriend」
アルバムからの2ndシングル。何処となくSly Stone風のミディアム・ファンク。TLCのカヴァーをはじめ、Jay-Z「'03 Bonnie & Clyde」、Mobb Deep「Young Luv」、2Pac「Thugs Get Lonely Too」、Yo-Yo「Ain't Nobody」などの元ネタになっていますね。この曲も「The Ballad of Dorothy Parker」に続き、Joni Mitchellの名曲「All I Want」の歌詞を引用していマス。
「I Could Never Take the Place of Your Man」
アルバムからの4thシングル。ロック・テイストのストレートなポップ・チューン。
「It's Gonna Be a Beautiful Night」
この曲のみRevolutionを従えたパリでのライブ。アルバム全体の構成の中でこの曲のみ違和感があるけど、それを考慮しなければ楽しめるナンバー。
最近の若いリスナーの方にとって、Princeというアーティストはどのように映るのかね?
80年代のPrinceの絶頂期をリアルタイムで体験した人にとって、Princeはポップスターだった。それに対して、今の若い人から見るとPrinceはR&Bアーティストの一人なのだろうし、彼の過去の作品もR&B的な観点から聴いているように思う。この事自体は、ロックが洋楽の中心だった当時と、R&B/Hip-Hopが洋楽の中心である今日の状況を考えれば、自然な流れかもね。
そう考えると、『Around The World In A Day』 あたりはR&B的な観点から聴くと退屈な作品であるような気もする。むしろ、『Controversy』(1981年)、『1999』(1982年)あたりの方がハマるのかもね?