発表年:1975年
ez的ジャンル:クロスオーバー系R&B
気分は... :やさしく包み込んで...
今日はやさしく清らかな女性ボーカルが聴きたい気分っす。
ということでRoberta Flackの『Feel Like Makin' Love』(1975年)をセレクト☆
Roberta Flackは以前にRalph MacDonaldプロデュースのクロスオーバー/AOR感覚溢れるR&Bアルバム『I'm The One』(1982年)を紹介しました。
本作『Feel Like Makin' Love』は、そんなRobertaのクロスオーバー/フュージョン路線の幕開けとなったアルバムっす。
1969年に『First Take』でデビューしたRoberta Flackは、そのアルバムの収録曲「The First Time Ever I Saw Your Face」(邦題:愛は面影の中に)が、1971年のClint Eastwood監督・主演の映画『Play Misty For Me(恐怖のメロディ)』で使われ、全米ポップチャート第1位の大ヒットを記録すると同時に、グラミー賞も受賞し、一躍注目を集める。
その後1972年にはDonny Hathawayとのデュエット・アルバム『Roberta Flack & Donny Hathaway』から「You've Got A Friend」、「Where Is The Love」を大ヒットさせた。そして、1973年の4thアルバム『Killing Me Softly』からタイトル曲(邦題:やさしく歌って)が全米ポップチャート第1位となり、再度グラミー賞も受賞するなどその地位を不動のものした。
そんな大ヒット作『Killing Me Softly』の次に発表された作品が、5thアルバム『Feel Like Makin' Love』(1975年)です。それまでは、ニューソウルの文脈の中で語られることが多いRobertaでしたが、この『Feel Like Makin' Love』には、そんなイメージはあまり感じられません。
まずアルバムで特徴的なのは楽曲提供者たち。フリーソウル・ファンにもお馴染みEugene Mcdanielsの作品を大ヒットしたタイトル曲「Feel Like Makin' Love」を含む4曲、『I'm The One』もプロデュースした僕が大好きなパーカッション奏者Ralph McDonaldの作品を2曲、そしてStevie Wonderの作品も1曲取り上げています。Eugene McDanielsは一部楽曲でプロデュースも担当してますよ〜。
さらに、プロデューサーのRubina Flakeを中心に、Hugh McCracken(g)、David Spinozza(g)、Anthony Jackson(b)、Bob James(key)、Richard Tee(key)、L.Leon Pendarvis(key)、Idris Muhammad(ds)、Ralph McDonald(per)、Patti Austin(back vo)、Deniece Williams(back vo)などの豪華メンバーがバックを努めていマス。
オススメ曲を紹介しときやす。
「Feel Like Makin' Love」
本作のハイライトと言えるEugene McDaniels作のタイトル曲。全米R&Bチャートで5週連続No1に輝いた。実に、優しくかつスタイリッシュに心を包んでくれるアレンジ&ボーカルに脱帽ですな。まさにEugene McDaniels一世一代の大名曲デス。
本ブログで紹介したMarlena Shaw、D'Angeloの以外に、George Benson、Ricardo Marrero、Ana Mazzotti、Russell Malone/Benny Green、Sonia、Izitなど数多くのアーティストにカヴァーされていヤス。この夏はLumideeによるレゲエ・カヴァーも人気でしたね。以前にも書いたけど、僕はオリジナルとMarlena Shaw、George Bensonのバージョンの3点セットで聴くのがお気に入りっす。Meta Roos & Nippe Sylwens Bandのヴァージョンもベスト3に迫る出来でグッド!
日本人アーティストでも、以前にDelfonics「La La Means I Love You」のカヴァーを紹介したFried Prideをはじめ、paris match、the Indigo、Pyramid、今井美樹など数多くのカヴァーがありますね。
「Mr. Magic」
次はRalph McDonald作の名曲。落ち着いた大人のグルーヴをバックにRobertaのボーカルが実に映えるシブイ1曲。この曲は人気サックス奏者Grover Washington Jr.が先に取り上げ、同名のアルバム『Mr. Magic』(1975年)も発表しているので、そちらでご存知の方も多いかもしれませんね。Ralph McDonald大好きの僕は、Ralph自身のバージョン(アルバム『Sound Of Drum』収録)も愛聴していマス。
「Feelin' That Glow」
Eugene Mcdaniels作のオープニング・ナンバー。かつて声楽を習得したスキルフルなRobertaのボーカルに、クロスオーバー/フュージョンなアレンジが実によく馴染んでいるように感じマス。
「I Wanted It Too」
Ralph McDonald作品。いい意味で明るすぎない陰影に富んだボーカルがRobertaの魅力だと思うけど、そんな雰囲気を堪能できる1曲。
「I Can See the Sun in Late December」
Stevie Wonder作の12分を超える大作。この頃キャリアの絶頂期だったミラクルなStevieの勢いを反映したような重量感のある聴き応え十分の曲。こうした曲を取り上げられるのもクロスオーバー/フュージョン路線にしたからだと思う。
「Early Ev'ry Midnite」
「Old Heartbreak Top Ten」
Eugene Mcdaniels作品の2曲。「ヒット・レコードを作るために歌手をやっているのではない...」と言い続けていたRobertaが、黒人の立場からアメリカ社会の影の部分へメスを入れ続けたMcdanielsの作品を取り上げたことは、とてもよく理解できるよね。と言いつつ、「Old Heartbreak Top Ten」はどことなくCarpenters風のポップなアレンジになっているのが面白いね。
「She's Not Blind」
アルバムのラストを飾るバラード。崇高に歌い上げるRobertaのボーカルが感動的ですな。
本作とMarlena Shaw『Who Is This Bitch, Anyway?』、Patti Austin『End of a Rainbow』あたりと一緒に聴くのが僕のお気に入りデス。