発表年:1976年
ez的ジャンル:レア・グルーヴ系クロスオーバー・ジャズ
気分は... :ある意味...
さて、今回はずっと紹介しそびれていたキーボード奏者Weldon Irvineです。
Weldon Irvineは1943年ヴァージニア州生まれ。10代後半にはピアノで職を得ていたいたというWeldonは、1960年代半ばからビッグバンドで活躍し、1969年にはNina Simoneのグループにオルガニスト/音楽監督として参加する。
ちなみに以前Aretha Franklin『Young, Gifted And Black』のエントリーでタイトル曲「Young,Gifted And Black」をNina Simone作と紹介したが、厳密にはWeldon Irvineとの共作である。
その後、『Liberated Brother』(1972年)、『Time Capsule』(1973年)などの作品を自主制作のレーベルから発売した後、メジャーのRCAから『Cosmic Vortex』(1974年)、『Spirit Man』(1975年)、『Sinbad』(1976年)という3枚の作品を残したが、商業的な成功からは程遠く、その後長い間彼の存在は忘れ去られていた。
それが80年代後半〜90年代初めのアシッド・ジャズ/レア・グルーヴの動きの中で突如注目され、あるいは本ブログでも大人気のA Tribe Called Quest『Midnight Marauders』収録の「Award Tour」の中で「We Gettin' Down」(『Spirit Man』収録)がサンプリングされるなど、にわかにWeldon Irvineへの再評価は高まっていった。
日本でもフリーソウルのムーブメントの中で「We Gettin' Down」、「I Love You」といった曲が大人気となり、忘れ去られていた人から一気に伝説の人になってしまった。先日紹介したTerry Callierあたりと同じパターンですな。
僕もフリーソウルのコンピの中で「I Love You」を聴き、モロにツボで一発で好きになりまシタ。音楽や風貌も含めて、なんかミステリアスな雰囲気が漂うところがとても気になりますよねぇ。
今回は、その「I Love You」収録の『Sinbad』(1976年)を紹介します。
よくWeldonの作品を紹介する時に、スピリチュアル、コズミックといった表現が用いられますが、本作ではわりとコマーシャルな作りでRCAの3枚の中で一番聴きやすいと思いマス。
参加メンバーも盟友(?)Don Blackman(p)をはじめ、Eric Gale(g)、Richard Tee(p)、Cornell Dupree(g)、Gordon Edwards(b)、Chris Parker(ds)、Steve Gadd(ds)といったStuff勢、Michael Brecker(ts)、Randy Brecker(tp)のBrecker兄弟などなかなkの豪華メンバーっす。
全曲紹介しときやす。
「Sinbad」
ファンキー・グルーヴなオープニング。コマーシャルな本作の路線が明確に打ち出された1曲だと思いマス。
「Don't You Worry 'Bout a Thing」
ご存知Stevie Wonderの名盤『Innervisions』収録の名曲ですね。個人的に『Innervisions』の中で本曲が一番好きなので、カヴァーしてくれているというだけでウレシイっす。
「What's Goin' On?」
Stevieの次はMarvin Gayeの説明不要の名曲のインスト・カヴァーっす。Marvinのエントリーの時に書きましたが、本曲のカヴァーの中ではDonny Hathaway、El Chicanoと並び、このWeldonのバージョンがお気に入りっす。
「I Love You」
本作のハイライトであり、フリーソウル・クラシックの1曲。本ブログでも紹介したDon Blackmanの作品っす。Don Blackmanはボーカルも担当していマス。浮遊感漂うメロウ・グルーヴは不思議な魅力に溢れていマス。中国風のイントロも印象的デス。
「Do Something For Youself」
僕の持っているCDのライナーノーツには、“ノリノリだけにつらい”みたいなネガティブな評書かれていますが、全然そんな気はしません。実に気持ち良いファンキー・チューンです。
「Music Is The Key」
「I Love You」と並ぶ目玉曲。この曲はWeldonらしいスピリチュアルでコズミックな雰囲気が漂っていマス。このマッタリ感がなんともたまりません。本曲もDon Blackmanがボーカルを担当していマス。どことなくSteely Dan「Rikki Don't Lose That Number」に似ている気もする。
「Here's Where I Came In」
『Liberated Brother』にも収録されていた作品のリメイク。オリジナルのムーディーな雰囲気と比較すると、シンプルなピアノの弾き語りの本バージョンは哀愁感漂ってますね(笑)
「Gospel Feeling」
ラストはゴキゲンなインスト・ナンバー。Weldonのファンキーなピアノがサイコー!って書きたいとことなんですが、ピアノはRichard Teeです。
残念ながら、Weldonは2002年にNYで自ら命を絶ってしまった。
享年58歳。ご冥福をお祈り致します。