発表年:1994年
ez的ジャンル:インダストリアル系ネガティブ・ロック
気分は... :今の僕の嗜好とはかなり距離があるんだけど...
数日前にふとネットでNine Inch Nailsの新作『Year Zero』の記事を目にした。
僕がこの新作を購入することはまずあり得ないが、その代わり昔聴いていた彼らの作品を聴いてみようかなぁと...
ということで、本ブログらしからぬ1枚Nine Inch Nails『The Downward Spiral』(1994年)をセレクト。
実はこんなのも聴いていたんです!と過去形になってしまうのかなぁ。
我が家のCD棚を眺めると、90年代USロック・コーナーには、Sonic Youth、Nirvana、Pearl Jamといったグランジ/オルタナ系も揃っているし、Nine Inch Nailsなどのインダストリアル系も枚数は少ないけど並んでいる。本ブログの流れとは一番遠そうなMarilyn Mansonなんかもあったりする(笑)
本ブログで紹介したのって、Sonic Youth『Goo』(1990年)ぐらいかな?
R&B/Hip-Hopといったブラック・ミュージック中心の音楽ライフを楽しんでいる現在の僕にとっては、これらの作品はかなり距離感を感じるものばかりだ。
正直、へヴィーでダークで内向きなロックを好んで聴くほど、現在の僕の心は屈折してはいない(と思う)。人生くよくよ考えても仕方ない、等身大の自分で楽しく生きよう!と開き直っているポジティブ思考の僕には、ブラック・ミュージックが一番フィットしていると思っている。
でも、それは表層的なものかもしれない。自分の心の深層には、そうしたロックを欲するダークでネガティブな一面もあるのかも?
少なくとも、本作『The Downward Spiral』(1994年)を好んで聴いていた当時の僕は、今よりもへヴィーでネガティブな人間だったのだろう。
1989年にデビューした狂気の静寂の才人Trent Reznorのグループ(プロジェクトと呼んだ方が適切かな?)Nine Inch Nails(NIN)は、1992年のミニ・アルバム『Broken』で存在感を見せはじめ、本作『The Downward Spiral』(1994年)でブレイクすることになる。
何度聴いても、暗くて陰鬱で、背筋が寒くなるダークな音楽だ。このゾッとするカンジは、僕の中ではPink Floyd『Dark Side Of The Moon』を初めて聴いた時の感覚に近いものがあったかも?
どうしても本作は、David Fincher監督、Brad Pitt、Morgan Freeman、Kevin Spacey出演の七つの大罪をモチーフにした猟奇殺人事件を描いた映画『Seven』(1995年)とセットで、僕の頭の中にインプットされている。
David Lynchが監督したTVシリーズ『Twin Peaks』(1990-1991年)の頃から、サイコ・サスペンス/サイコ・スリラーにハマっていた僕にとって、『Seven』や以前に本ブログでも紹介したBrad Pitt主演の『Kalifornia』(1993年)、Quentin Tarantino原作、Oliver Stone監督の『Natural Born Killers』(1994年)等は、かなりインパクトのある作品だった。
そして、これらの映像作品と深く結び付いていたのが実はTrent Reznorだったのだ。
『Seven』のオープニング曲が本作収録の「Closer」のリミックス・バージョン、『Natural Born Killers』では音楽を担当、『Twin Peaks』のDavid Lynchが監督した映画『Lost Highway』(1997年)への「The Perfect Drug」等の楽曲を提供といった具合だ。
こうした映像との接点が、僕を『The Downward Spiral』へと向わせた...
さて、肝心の音楽は、ノイジーで、テクノで、パンクで、ダークで、へヴィな一方で、最後まで聴かせるキャッチーさも持ち合わせていマス。
オススメ曲を紹介しときやす。
「Mr. Self Destruct」
自虐的なノイジーでインダストリアルなサウンドと思って聴いていると、急に一瞬の静寂が訪れが、そして再びノイジーな世界は終盤の覚醒しているカンジがヤバそう。本ブログで何度か名前を出したことがある“エレファント”なギタリストAdrian Belew(King Crimson)が参加していマス。
「Piggy」
ファンの間では人気の高い曲ですね。この倦怠ムードが魅力だと思うんだけど、僕にはあまりピンと来ないかな?
「March of the Pigs」
ハイスピードの狂気に満ちた1曲なんだけど、案外キャッチーで聴きやすかったりもする。単にノイジーではないというあたりがTrent Reznorという人の才能なんだろうね。洒落たエンディングもなかなか。
「Closer」
前述のようにリミックスが『Seven』のオープニングにも使われたNINの代表曲。陰鬱でへヴィなテクノ・ポップ・サウンドが異常な空気を醸し出していマス。
「Ruiner」
映画『Blade Runner』のテーマ曲(Vangelis)をインダストリアル・サウンドにしたカンジ?後半のサイコな雰囲気が不気味デス。
「The Becoming」
サイコな効果音が印象的な1曲。狂気のサウンドの合間に聴こえるアコギの響きに救いを求めてしまいマス。この曲にもAdrian Belewが参加。
「I Do Not Want This」
本作をよく聴いていた当時、一番好きだったのがこの曲。僕的には『Seven』の映像と一番イメージが合致していたのが、この曲だったかも?
「A Warm Place」
美しくも虚しいインスト曲は、Pink Floydあたりの世界観と共通するものが多いと思いマス。
「The Downward Spiral」
背筋が寒くなる1曲ですな。サイコ・ホラーのサントラなんかにピッタリなのでは?
「Hurt」
当時はダークなバラッドくらいにしか思っていなかったけど、後日今は亡きカントリーの大物Johnny Cashのカヴァーを聴き、この曲が名曲だと気付いた次第っす。
一時期、このアルバムや本作のテクノ・リミックス集『Further Down The Spiral』にハマった僕であったが、ある時NINを聴いている自分にヤバさを感じて、突然全く聴かなくなった。それを契機にダークで、へヴィーなロックは殆ど購入していないかなぁ。
僕をロックから遠ざけるきっかけを作った1枚だけど、それだけインパクトも大きかった。今でも拒絶反応なく最後まで聴けてしまう自分がいるのが少し怖い気がしたね。
明日は思い切り健康的で、楽天的で、明るい作品をセレクトしようっと!