
発表年:1972年
ez的ジャンル:カレドニア・ソウル系激シブ・ロック
気分は... :我が道を行く....
男性ロック・アーティストの中で僕のCD保有枚数がダントツで多いアーティストの一人Van Morrisonの3回目の登場です。
『Tupelo Honey』(1971年)、Van Morrison『Avalon Sunset』(1989年)に続く3枚目は、1972年発表の『Saint Dominic's Preview』です。
Van Morrisonのボーカルは、“ソウルフル”と称されることが多い。
しかし、それは単に黒人のR&Bを模しているものとは異なる。最も大きな特徴はジャズ・ボーカルの要素をうまく導入し、そこに自らのアイデンティティであるアイリッシュ・テイストを加え、自分らしく昇華させている点ではないかと思う。
そんなボーカル・スタイルをVan Morrison自身は“カレドニア・ソウル”と称した。
個人的には“カレドニア・ソウル”という言葉が一番しっくりアルバムが本作『Saint Dominic's Preview』(1972年)です。
ちなみに、Vanにとってのカレドニアとはカリフォルニアのマリン・カウンティのことをさします。『His Band and the Street Choir』 (1970年)発表後、イーストコーストからウエストコーストへ移ったVanですが、その場所こそがマリン・カウンティです。
そんなマリン・カウンティでの幸福の日々が生み出した傑作が『Tupelo Honey』(1971年)ではないかと思います。
そして、『Tupelo Honey』の次に発表された本作では、さらなる音楽の高みを目指して、突き進み始めたVanの姿が見て取れるのでは?
プロデュースはVan自身とTed Templemanの共同プロデュース。
なんかVanとTed Templemanの組み合わせって全然マッチしていない気もするのですが....でもコレがいいんですよねぇ。
とは言っても、別にウエストコースト・ロックしているわけではありません。
ジャケ写真のようにカリフォルニアにいても故郷アイルランドの香りが漂うのがこの人らしいところなのでは?
Van Morrisonは地味でストイックだから苦手!とい印象の方にとっては、案外とっつきやすい作品かもしれません。事実、本作はVanの全作品の中で全米アルバム・チャートの最上位ポジション(15位)を獲得しています。
全7曲という収録曲に物足りなさを感じる人もいるかもしれませんが、かなり濃密な7曲だと思いマス。
全曲紹介しときヤス。
「Jackie Wilson Said (I'm in Heaven When You Smile)」
まさにカレドニア・ソウルしている陽気でノリノリのVanに出会えるオープニング。タイトルの通り、Jackie Wilsonに捧げた1曲です。ホーンセクションがなかなかいいですな。Dexy's Midnight Runnersが1982年にカヴァー・ヒットさせています。
「Gypsy」
さすらいのジプシーのような哀愁感と疾走感がたまらくカッチョ良いですね。ラ・ラ・ラ・ライ・ライ・ライ・ラ・ライ〜♪の部分は思わず口ずさんでしまいマス。
「I Will Be There」
ジャズ・ボーカルの雰囲気を全面に出した1曲。このあたりを軽々と仕上げてしまうところがVanの実力ですな。
「Listen to the Lion」
10分を超える大作。こうした芳醇なコクと苦味とまろやかさを堪能できる曲があるからこそVan Morrisonは止められないですな。音楽に内なる探求を求めるVanらしい力作。
「Saint Dominic's Preview 」
Van Morrison節全開の1曲。ジャケ写真のように教会の前で遠くを見つめながら歌うVanの姿が思い浮かぶ1曲ですね。この奥行きの深さが好きな人にはたまりませんな。
「Redwood Tree」
普通に、フォーキー・グルーヴとして聴いてても、かなりイケてる1曲だと思いマス。
「Almost Independence Day」
この曲も10分を超える曲です。この曲はかなり枯れていマス。それがいいんデス。この枯れ方がたまらんのデス。
パンやパスタもいいけど、やっぱりご飯がいいよねぇ...Van Morrisonの音楽ってそんなカンジかも?