2007年05月29日

10cc『How Dare You!』

びっくり電話って、どんな電話やねん!☆10cc『How Dare You!』
How Dare You!
発表年:1976年
ez的ジャンル:職人系アートポップ
気分は... :20ccにはならなかったのか...

「I'm Not in Love」

10ccのこの名曲に心奪われた方は多いと思います。
全英チャートNo.1、全米チャートNo.2に輝いた大ヒット曲という以上の何かがあるミラクルな1曲ですよね。

僕は後追いで聴きました。ちょうど洋楽を聴き始めの頃でBeatlesに大きく影響を受けており、“(後期の)Beatles的なもの”を追い求めていましたが、この曲はかなりのインパクトがありましたね。

あのポップで物悲しいメロディと、幻想的で美しく壮大なコーラスワークを聴いた瞬間に、“こういう曲を待っていたんだよねぇ”と感動したものです。

そんなスタジオの魔術師10ccは、前進のHotlegs,を経てEric StewartGraham GouldmanKevin GodleyLol Cremeというメンバーで活動するようになった4人は、1972年に10ccとしてのデビューシングル「Donna」を発表します。

そしてデビューアルバム『10cc』(1973年)で早くもポップマニアの心をくすぐると、2nd『Sheet Music』(1974年)、3rd『The Original Soundtrack』(1975年)といった作品でその万華鏡ポップを昇華させていきまシタ。

しかし、音楽性の違いから4th『How Dare You! 』(1976年)発表後にKevin Godley、Lol Cremeが脱退し、以後二人はGodley & Cremeとして音楽のみならず映像も含めた幅広い活動を展開していきます。一方、残ったEric Stewart、Graham Gouldmanの二人は10ccの活動を継続し、『Deceptive Bends』(1977年)などの作品を発表し続けまシタ。

こうしてスタジオの魔術師10ccは、表10cc(Stewart & Gouldman)裏10cc(Godley & Creme)に分かれていったのでした。分裂すれば本来は5ccずつですが(笑)、お互い10ccを保ったのがこの人達のすごいところだったのでは?

ということで、今回紹介する10cc作品は4人が揃った最後の作品『How Dare You! 』(1976年)です。

一般には10ccの最高傑作といえば、「I'm Not in Love」収録の3rdアルバム『The Original Soundtrack』(1975年)が紹介されることが多いと思います。僕も10ccで一番好きな曲は「I'm Not in Love」なのですが、アルバム単位となると『How Dare You! 』に軍配が上がってしまいマス。

まずは本作の邦題『びっくり電話』というタイトルにビックリ!しました(笑)
そんなタイトルやHipgnosisが手掛けるインチキ臭さがプンプンするジャケットも含めたひねくれ具合が僕好みなのかもしれません。

『The Original Soundtrack』からStewart & Gouldman組Godley & Creme組にはっきり分かれてしまいましたが、そのわりには本作は違和感なく両組の個性がうまくまとまっている気がします。

ポップだけど毒があってかゆいところに手が届く...
そんな10ccの魅力を堪能できる1枚ですよ!

全曲紹介しときやす。

「How Dare You」
オープニングはGodley & Cremeらしいインスト・ナンバー。エキゾチックで実験的だけどポップなツボも外さないところがニクイですな。案外グルーヴ感もあっていいんだよね。

「Lazy Ways」
アコースティックな響きが心地よいポップ・ナンバー。Paul McCartneyのソロが好きな人は絶対気に入る曲ですね。ファンの方はご存知のとおり、Ericはその後Paulのソロ作品にも大きく関与することになりますが、この曲を聴いていると二人の接点がかなり大きいことがわかりますよね。

「I Wanna Rule the World」
Godley & Creme組によるひねくれポップ全開の1曲。かなり盛り沢山の要素が入っていて1曲でかなりお腹一杯になるカンジですね。

「I'm Mandy, Fly Me」
アルバムからの2ndシングルとして全英チャート第6位に輝いたヒット曲。Ericのメロディ・メイカーとしての才能を見せつけてくれる1曲ですね。アルバムで一番好きです。10ccらしいコーラスワークも最高ですな。ちなみにMandyとは航空会社のポスターに登場していた女性のことなのだとか。

「Iceberg」
Godley & Creme組による小粋な一品。遊び心一杯なカンジがいいですね。

「Art for Art's Sake」
Stewart & Gouldman組の作品であり、アルバムからの1stシングルとして全英チャート第5位まで上昇しまシタ。英国らしいシニカルな雰囲気のロック・ナンバー。

「Rock 'N' Roll Lullaby」
Gouldman & Stewart組によるノスタルジック・ムードたっぷりのララバイなロック・バラッド。このあたりもPaul McCartneyとの共通点を感じますな。

「Head Room」
Godley & Creme組によるポップ&カントリーな1曲。メロディアスながらも必ずどこかでハズしているのがGouldman & Stewartらしいところですな。

「Don't Hang Up」
Godley & Creme組による美しくも、悲しく、儚く、ファンタジーな1曲。本作のGodley & Creme組の作品では一番好きですね。ポップ偏執狂の方にはたまらない1曲なのでは?今回この曲を聴いていたら、何故かPrefab Sprout『Jordan:The Comeback』(1990年)が頭に浮かんできまシタ。Paddy McAloonの偏執ポップの原点にはGodley & Cremeも見え隠れしているような気がしますね。

さっきGodley & Creme「Cry」のPVを久々に観たけど、やっぱり面白いねぇ。
今のテクノロジーで言えばこの手のものはもっと高度に作成できるけど、技術云々ではない面白さがこのPVにはあるよね。

Godley & Creme在籍時の10ccの魅力もそのあたりにあるのではと思います。
そんな視点で聴いていると飽きがこないのが本作だと思いますよ。
posted by ez at 06:22| Comment(2) | TrackBack(1) | 1970年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする