2007年09月19日

Scritti Politti『Provision』

Miles Davis、Roger Troutmanも参加した隠れた逸品☆Scritti Politti『Provision』
Provision
発表年:1988年
ez的ジャンル:ブルーアイド・ソウル系UKダンス・ミュージック
気分は... :2年が経ちました...

UEFAチャンピオンズリーグのリーグ戦がいよいよスタートしましたね。

地上波で「シャフタール対セルティック」を観ていた方はかなりイライラ・モードだったのでは?僕はスカパーで「レアル・マドリー対ブレーメン」、「ポルト対リヴァプール」、「シャルケ対バレンシア」、「シャフタール対セルティック」、「チェルシー対ローゼンボリ」を小まめにザッピングしながら観ていました。この記事投稿が終わったら、見逃してしまった「ミラン対ベンフィカ」を再放送でチェックです!

個人的には「レアル・マドリー対ブレーメン」、「ポルト対リバプール」が面白かったですね。
レアル・マドリーは現状CLでなければチェックできないので、だんだんシュスター体制のマドリーが見えてきましたね。あとはリヴァプールをかなり苦しめたポルトのサッカーが印象的でしたね!

今日以上に楽しめそうなのが明日の「バルセロナ対リヨン」、「アーセナル対セビージャ」の2試合。両方とも決勝トーナメントの準々決勝もしくは準決勝のカードとしてもおかしくない組み合わせですよね。

さて、Scritti Polittiの3rdアルバム『Provision』(1988年)です。

Green Gartsideを中心としたUKの白人ポップ・ユニットScritti Politti
*David Gamson、Fred Maherの二人はアメリカ人ですが...

以前に紹介した『Cupid & Psyche 85』(1985年)は、個人的には80年代を象徴するアルバムだと思います。「Wood Beez」「Hypnotize」「Absolute」といったダンス・ヒットは当時の最新テクノロジーを駆使しながら、レゲエ、ファンク、ソウル、テクノなどさまざまな音楽のエッセンスをアヴァンギャルドな感覚で取り入れた当時最もエッジの効いたダンス・ミュージックだったのではと思います。

そんな時代を象徴する傑作を作ってしまうと、その次作は狙いすぎて大コケするか、逆に地味なアルバム作りで一息つくか、といったところですが...Scritti Polittiの場合、この3rdアルバム『Provision』は昨日紹介したジャズ界の帝王Miles DavisZappファミリーの総帥Roger Troutmanが参加するなどの話題がありながら、発売当時の扱いはかなり地味であったような記憶があります。

まぁ、『Cupid & Psyche 85』にしてもUKではアルバム・チャート第5位となりましたがUSでは50位止まりだったので、その評価のわりには商業的に大成功していたわけではないので、まぁそんな扱いだったのかもしれませんが...

個人的な嗜好でいえば『Cupid & Psyche 85』以上に『Provision』が好きかもしれません。Miles、Rogerというお気に入りアーティストの参加もありますが、より自然なかたちでScritti Politti流ソウル・ミュージックを聴けるのが魅力ですね。『Cupid & Psyche 85』は良くも悪くも頭でっかちなダンス・ミュージックという気がしたので...

きっとScritti Polittiが他のUKエレポップと大きく異なるのは、意外としっかりソウル・ミュージックしている点ではないかと思います。Greenのボーカル・スタイル自体はソウルと言い難いかもしれませんが、ソウル・マインドのようなものは伝わってきますよね。そのあたりが、よりはっきりしているのが本作『Provision』なのでは?

メンバー以外にMarcus Miller、Dann Huff、Bashiri Johnson等が加わりバックアップしています。

全曲紹介しときやす。

「Boom! There She Was」
Roger Troutman参加の「Wood Beez」、「Hypnotize」、「Absolute」の流れを汲むファンク・チューン。シングルカットもされました。Roger大好きの僕としては彼のトーク・ボックスを聴けるだけで興奮してきますね!

「Overnite」
なかなか味わい深いスロウ・チューン。Greenならではの甘く切ないソウルが聴けます。

「First Boy in This Town (Lovesick) 」
個人的には一番のお気に入り曲。Scritti Politti流ソウル・ミュージックを最も堪能できる曲なのではと思いマス。懐かしいメロディを(当時の)最新サウンドで再現したというカンジが彼ららしいのでは?

「All That We Are」
この曲も50年代、60年代ポップスの楽しさを80年代風に甦らせたカンジですね。

「Best Thing Ever」
この曲はMadonnaが主演した映画『Who's That Girl』のサントラに収録されていました。『Cupid & Psyche 85』の流れを汲む軽快なナンバー。

「Oh Patti (Don't Feel Sorry for Loverboy) 」
Miles Davis参加のアルバムからの1stシングル(全英チャート第13位)。UKポップらしい甘く切ないラブ・バラッドに仕上がっています。MilesのScritti Polittiへの入れ込みはアルバム『Tutu』(1986年)における「Perfect Way」のカヴァーからもわかりますが、まさかゲスト参加までしてしまうとは...ミュート・トランペットで切ないムードを盛り上げていマス。

「Bam Salute」
リラックス・モードのレゲエ調のナンバー。この曲なんかもそうですが、Scritti Polittiのサウンドって他のUKエレ・ポップと異なり、こってりしていそうで実はあっさりというカンジですよね。

「Sugar and Spice」
この曲もRoger Troutman参加曲です。Scritti Politti独特の予想を裏切る意外な展開(?)が魅力の曲。

「Philosophy Now」
タイトルが彼ららしいですね。思わず体を揺らしてしまうミッド・グルーヴ。本曲に限らずアルバム全体を通じてMarcus Millerの貢献が大きいのではと思います。多分、Milesと彼らをくっつけたのもMarcus Millerだし。

すっかり忘れていましたが、本ブログを開設して2年が経過していました。
*初エントリーは2005年9月7日

直前まで覚えていたのですが...いかんですな。歳を取ると忘れっぽくて(笑)

僕のように年代・ジャンルを問わないセレクションの場合、ある程度エントリーが蓄積されないと間口が広すぎるため自分らしさが出てこないものですが、2年掛かってようやくエントリー数も700を超えたので、そろそろ自分らしさが訴求できているのでは?と勝手に思っています。

これからも年代やジャンルを自由に行き来するようなエントリーを続けたいと思いますので、どうぞお付き合い下さい。
posted by ez at 06:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 1980年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年09月18日

Miles Davis『Get Up With It』

エレクトリック・マイルスが凝縮された玉手箱☆『Get Up With It』
ゲット・アップ・ウィズ・イット
録音年:1970、72、73、74年
ez的ジャンル:エレクトリック・マイルスの玉手箱
気分は... :はんぱねぇ〜!

本ブログ最多出場のMiles Davisです。

これまで紹介してきたのは以下の7枚♪
『On The Corner』(1972年)
『Milestones』(1958年)
『Miles Ahead』(1957年)
『In A Silent Way』(1969年)
『'Round About Midnight』(1955、56年)
『Miles Smiles』(1966年)
『Cookin'』(1956年)

しばらくエレクトリック・マイルス時代の作品を紹介していなかったので今回は『Get Up With It』をセレクト。

本作は1970〜1974年のセッションを集めたアルバムです。
こう書くと寄せ集めの中途半端なアルバムを想像するかもしれませんが、エレクトリック・マイルス好きの方の中には本作をエレクトリック時代の代表作として挙げる方も多いのではと思います。

大阪でのライブ録音『Agharta』『Pangaea』を最後に一度引退してしまったMilesですが、1972年の衝撃的なファンク・アルバム『On The Corner』以降のスタジオ録音をまとめて聴けるのは本作のみであり、その意味でも貴重な作品だと思います。

内容的には『On The Corner』でファンク的なアプローチを完成させたMilesが、そのアプローチをさらに発展させていった様子が窺えますね。ファンクにラテン、カリプソ、ブルース、現代音楽などを融合させた音世界のスケール感は、エレクトリック・マイルスが凝縮された玉手箱とも呼べるのでは?

特に本作ではMilesのオルガンにも注目したいですね。
妖気の漂うヘタウマ・オルガンが独特のムードを生み出しているのがいいですね。

メンバーは以下の通りです。
*但し、曲によって多少メンバーの構成が違っていたり、リソースによってメンバーのデータが異なるので多少ビミョーなものもある点をご了承下さい。

●1970年のセッション
Miles Davis(tp)、Steve Grossman(ss)、John McLaughlin(g)、Keith Jarrett(key)、Herbie Hancock(key)、Michael Henderson(b)、Billy Cobham(ds)、Airto Moreira(per)

●1972年のセッションA
Miles Davis(tp、org)、Cedric Lawson(key)、Reggie Lucas(g)、Khalil Balakrishna(sitar)、Michael Henderson(b)、Al Foster(ds)、 James Mtume(per)、Badal Roy(tabla)、Carlos Garnett(ss)

●1972年のセッションB
Miles Davis(tp)、Cornell Dupree(g)、Michael Henderson(b)、Bernard Purdie(ds)、Al Foster(ds)、 James Mtume(per)、Wally Chambers(hca)

●1973年のセッション
Miles Davis(tp、org、key)、Dave Liebman(fl)、John Stubblefield(ss)、Pete Cosey(g)、Reggie Lucas(g)、Michael Henderson(b)、
Al Foster(ds)、James Mtume(per)

●1974年のセッション
Miles Davis(tp、org、key)、Dave Liebman(fl)、Sonny Fortune(fl)、Pete Cosey(g)、Dominique Gaumont (g)、Reggie Lucas(g)、Michael Henderson(b)、Al Foster(ds)、James Mtume(per)

これらの様々なセッションをまとめあげたTeo Maceroの手腕は毎度お見事ですね。

全曲紹介しときやす。

「He Loved Him Madly」
1974年のセッション。1974年5月に亡くなったDuke Ellingtonを追悼するために書かれた曲。実に厳粛なムードのレクイエムといったカンジですね。エレクトリック・マイルスの強烈なファンクを期待すると、やや肩透かしを食ったような印象を受けるかもしれませんが、スピリチュアルなナンバーとして聴くと、それなりに味わい深く聴けますし、終盤の高揚感はかなりクセになりますな。

「Maiysha」
1974年のセッション。ラテン・ソウル・テイストの哀愁バラッド。Milesらしいかどうかは別にして、かなり好きなタイプの演奏ですね。Milesの演奏としては少し耳ざわりが良すぎで刺激が少ないかもしれませんが(笑)

「Honky Tonk」
1970年のセッション。収録曲のなかでは一番古いセッションとなります。一応ブルース・ロック調の曲ですが、MilesをはじめJohn McLaughlin、Keith Jarrett、Herbie Hancock、Billy Cobhamといった名うてのメンバーが奏でる音は実にコズミックな雰囲気に溢れています。

「Rated X」
1972年のセッションA。現代音楽の巨匠Karlheinz Stockhausenからインスパイアされた作品らしいですが、20数年後のドラムン・ベースの出現を予言しているかのようなその驚愕のコズミック・サウンドに圧倒されるばかりですね。ある意味、本作のハイライトなのでは?

「Calypso Frelimo」
1973年のセッション。大きく3つのパートに分けれた32分を超える大作。アフリカンなうねりのリズム隊をバックにMilesのワウワウ・トランペットが響き渡ります。Milesの能天気なカリプソ風オルガンが逆に妖しいムードを盛り上げマス。Dave Liebmanのフルートも呪術師の呪文のように聴こえてきます。このダーク・グルーヴを創れるのはMiles以外にはいない!

「Red China Blues」
1972年のセッションB。Wally Chambersのハーモニカ、Cornell Dupreeのギター、Bernard PurdieとAl Fosterのツイン・ドラムがアーシーな味を醸し出すソウル・ブルース。こんなソウルフルでイナたいMilesのプレイも滅多に聴けないのでは?

「Mtume」
1974年のセッション。タイトルの通り、Mtumeのパーカッションを前面に押し出した演奏です。ダークでどす黒いグルーヴ感を聴いていると、だんだん覚醒してくる危うさを持った演奏ですよね。この中毒になる高揚感こそがこの時期のMilesの演奏の凄さですな。

「Billy Preston」
1972年のセッションA。タイトルはBeatlesとのセッション等でお馴染みのキーボード奏者Billy Prestonに因んだものです。この時期のMilesらしいファンキーな演奏を堪能できます。

ある意味、この時代で一番エッジが効いた音楽が詰まった作品集と言えるのでは?
posted by ez at 00:03| Comment(1) | TrackBack(0) | 1970年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年09月17日

The Beatles『A Hard Day's Night』

最もアイドルらしいBeatlesのアルバム☆The Beatles『A Hard Day's Night』
A Hard Day's Night (1964 Film)
発表年:1964年
ez的ジャンル:アイドルBeatles
気分は... :ヤァ!ヤァ!ヤァ!

Beatlesは久々ですね。

今回紹介するのは1964年発表の『A Hard Day's Night』です。

これまでBeatlesの作品は以下の4枚を紹介してきました。
『Rubber Soul』(1965年)
『Abbey Road』(1969年)
『Beatles For Sale』(1964年)
『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』(1967年)

どの作品も音楽的に素晴らしい作品ばかりですが、Beatlesを知らない若いリスナーの方はこれらの作品を聴いても、『エド・サリバン・ショー』やシェア・スタジアムでのライブのように熱狂的なファンに囲まれたスーパーアイドルBeatlesの姿は想像できないのでは?と思います。

その意味ではBeatlesの入口として、初期のアイドルらしさが出たピチピチ感のある作品から聴く方がいいのかもしれませんね。

ピチピチ感のあるBeatlesのオリジナル・アルバムといえば『A Hard Day's Night』が一番なのではと思います。

イギリスにおける3rdアルバムとして発表された本作はBeatles初主演の同名映画のサントラでもあります。映画は邦題の『ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!』のタイトルの方がピンと来るかもしれませんね。

当時の超多忙だったBeatlesの姿を、そのままユーモラスに描いた映画をTVで初めて観た時には興奮しましたね。決して作られたアイドルではない、多少問題児だけどウイットに富んでいるといったカンジが実によかったですね。

アルバムは半分が映画のサントラ、半分がその他の新作という構成です。
注目すべきは全曲Lennon/McCartneyのオリジナルで占められているという点です。当時としてはかなり画期的なことだったのではと思います。

特に頑張っているのがメンバーの中で一番アイドルらしくないJohn Lennon(笑)全13曲中10曲がJohnの作品です♪

アルバムは全英アルバム・チャートで21週連続No.1となりました。

ちなみにアメリカや日本では映画のサントラ+サントラのインストという構成のものが同じタイトルで発売されました。ややこしいですな。

全曲紹介しときやす。

「A Hard Day's Night」
Ringo Starrの“It was a hard day's night,wasn't it”という一言をモチーフにJohnが作ったタイトル曲。ご存知の通りシングル・カットされ、全英・全米チャート共にNo.1となりました。ジャ〜ン♪というイントロを聴くだけ興奮していましたね。JohnのボーカルとサビのPaulのボーカルのバランスが好きですね。

「I Should Have Known Better」
アコースティックな味わいが印象的なJohnの作品。明るくカラッとしつつも、どこか哀愁の漂うメロディがJohnらしいのでは?

「If I Fell」
ロマンティックなアコースティック・バラッド。JohnとPaulのハモリが大好き!シンプルさが魅力の曲ですね。

「I'm Happy Just to Dance With You」
George Harrisonがボーカルです(Johnの作品)。数少ないGeorgeがボーカルの曲だったので結構印象が強いですね。

「And I Love Her」
メロディ・メイカーとしてのPaulの才能を見せつけてくれる名曲ですね。「Yesterday」や「Michelle」といったクラシックを連発するきっかけとなったのが本曲なのでは?Georgeのガットギターもいいカンジですね。

「Tell Me Why」
Johnの作品。今聴くと実にR&Bテイストの仕上がりですね。The Who「(Love Is Like A) Heat Wave」あたりと一緒に聴くと合うかも?

「Can't Buy Me Love」
この曲も説明不要の大ヒット・シングルですね(全英・全米チャート共にNo.1)。Paulらしいキャッチーなロックン・ロール・ナンバー。Beatlesを聴き始めの頃は「She Loves You」、「I Want to Hold Your Hand」、「Can't Buy Me Love」というシングル3枚がBeatlesの象徴というカンジでしたね。R&Bファンの方は見事なスロウに仕立てたBlackstreetのカヴァーあたりも印象深いですね。

「Any Time at All」
「It Won't Be Long」(『With the Beatles』収録)の改作とJohn本人が認めているナンバー。そう思って聴くとそのように聴こえてしまいますね(笑)

「I'll Cry Instead」
映画のオープニングでも使われたJohnの作品(当初は未使用でその後使われた)。確かにこの少しカントリー・タッチのナンバーは映画向けではない気がします(笑)

「Things We Said Today」
結構地味な印象のPaul作品。でもPaul本人やJohnなども気に入っていた作品みたいですね。この物寂しいカンジが後を引きますね。

「When I Get Home」
昔はあまりいい曲だとは思わなかったのですが、今聴くとこういったR&Bテイストの曲は彼らのルーツが垣間見れて興味深いですね。

「You Can't Do That」
この曲もR&Bテイストなのですが...昔からどうも苦手!それは今も変わらず(笑)

「I'll Be Back」
幼い時から行方知れずだった父Alfredとの再会を歌ったJohnの作品。Johnの隠れ名曲としてファンには人気の高い作品ですね。僕も現時点であれば、この哀愁のアコースティック・チューンがアルバム中一番好きかも?

ちなみに僕が最初に購入したBeatlesのLPは『A Collection Of Beatles Oldies(But Goodies)』でした。1966年にイギリスで発売されたベスト盤です。
Beatles A Collection of Beatles OLDIES
Beatles A Collection of Beatles OLDIES

この頃はBeatles、Rolling StonesThe Whoといった人気グループはシングルとアルバムが分離していて、オリジナル・アルバムを集めただけではシングルを網羅できず、どうしてもシングルを網羅したベスト盤を別途ゲットする必要がありました。

『A Collection Of Beatles Oldies(But Goodies)』は、「She Loves You」から「Yellow Submarine」までのシングルを中心とした選曲で、初期のピチピチ感のあるBeatlesと魅力がうまくパッケージされたアルバムだと思います。

初期のヒット・シングルをゲットするならば、いわゆる赤盤を購入すればよかったのですが、当時中学生の僕にとってLP2枚組作品は高額であったため、LP1枚でヒットシングルを網羅した選曲はかなり魅力的でしたね。

まぁ、CD時代になりこのベスト盤の存在は殆ど忘れ去られてしまいましたが、味わい深いジャケも含めて思い出深いアルバムです。
posted by ez at 10:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 1960年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年09月16日

Maxwell『Maxwell's Urban Hang Suite』

新感覚R&Bアーティストの登場に当時かなり興奮しました☆Maxwell『Maxwell's Urban Hang Suite』
Maxwell's Urban Hang Suite
発表年:1996年
ez的ジャンル:アーバン系ネオ・ソウル
気分は... :どんだけ〜!

今日は外出中につき予約投稿です。

90年代半ば以降のR&Bシーンで、こりゃスゴイ才能だ!と思った男性アーティストが4人います。

D'AngeloEric BenetRahsaan Patterson、そして今日紹介するMaxwellです。

一般にはネオ・ソウル系の男性アーティストという括りになると思うのですが、特にD'Angeloを除く3人は、Prince殿下を聴いて育ってきたR&Bアーティストという印象を受けましたかね。

そんな中でMaxwellは一番アーバンな香りがするアーティストなのでは?

Maxwellは1973年N.Y.ブルックリン生まれ。18歳の頃から本格的にプロ・ミュージシャンを目指し、20歳の頃にはデビュー前にも関わらず、専門誌で期待の新人アーティストとして注目されていました。ちなみにMaxwellをイチオシしていたのは本ブログでも紹介したGordon Chambersです。

そして、1996年にデビューアルバム『Maxwell's Urban Hang Suite』を発表し、その才能を見せつけてくれました。その後も『MTV's Unplugged』(1997)、『Embrya』(1998年)、『Now』(2001年)といった作品を発表しています。

今回はデビューアルバム『Maxwell's Urban Hang Suite』をセレクト。
個人的にはやはりこのデビュー作が一番エレガントかつアーバンな雰囲気で好きですね。

そう言えば、デビュー当時は“黒人男性版Sade”なんて言われ方もしていましたね。

個人的にはあまりピンと来ませんが...確かにSadeのメンバーStuart Matthewmanが何曲かで作曲&プロデュースをしているなどSade人脈が関与しており、そのせいかUKっぽいサウンドが聴けるのも事実ですけどね。

マルチ・プレイヤーのMaxwellですが、前述のStuart Matthewmanをはじめ、元Scritti PolittiのDavid Gamson(key)、Wah Wah Watson(g)、Amp Fiddler(key)、Bashiri Johnson(per)などが参加しています。

オススメ曲を紹介しときやす。

「Urban Theme」
Wah Wah Watsonのカッチョ良いギター・カッティングが印象的なジャズ/フュージョン・テイストのインスト。オープニングにインストを持ってくるあたりがMaxwellらしいのでは?

「Welcome」
Stuart Matthewmanとの共同プロデュース曲。UKソウルっぽい味付けのアーバン・ソウルというカンジですかね。

「Sumthin' Sumthin'」
この曲ではなんと“ミスター・メロウネス”Leon Wareとの共作です。勿論の仕上がりは極上のメロウ・グルーヴです。本作における僕の一番のお気に入りデ〜ス。メロウ好きはもちろんAcid Jazzあたりが好きな人も気に入るのでは?シングルカットもされました(全米R&Bチャートで第23位)。

「Ascension (Don't Ever Wonder) 」
シングルカットされ全米R&Bチャートで第8位になったヒット曲。この曲あたりを聴いて新世代のR&Bアーティストという印象を受けた記憶があります。The S.O.S. Band「No One's Gonna Love You」ネタのリミックスも要チェックです。

「Dancewitme」
不思議な魅力を持ったファンク・チューン。Maxwell独特のアーバンでネオソウルで少しPrinceな音空間が好きですね。

「'Til the Cops Come Knockin'」
この曲のヒンヤリ感はSadeっぽいかも?クールネス・サウンドがお好きな方向け。シングルにもなりました。

「Whenever, Wherever, Whatever」
「Lonely's the Only Company, Pt. 1 & 2」
2曲共にStuart Matthewmanとの共同プロデュースです。「Whenever, Wherever, Whatever」はロマンティックかつエレガントな名曲の雰囲気が漂うスロウ。Maxwellの優しい歌声と美しいギターの音色にヤラれます。女性は特にメロメロになりそうな曲ですな。「Lonely's the Only Company, Pt. 1 & 2」は曲名からして少しIsleysっぽいですね。

「Suitelady (The Proposal Jam) 」
この曲が一番ソウルしていますね。シンガーとしてのMaxwellの魅力を堪能できる1曲なのでは?

「The Suite Theme」
エンディングは官能ムードのインストです。13分を超える曲ですが、途中5〜6分の無音状態が続き最後の1分半で再び演奏がフェードインしてきます。

今年出ると言われていた新作『Black Summers' Night』はどうなってしまったんですかね?
posted by ez at 00:00| Comment(2) | TrackBack(0) | 1990年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年09月15日

Gil Scott-Heron『Pieces Of A Man』

ジャンル分け不能のオリジナリティ☆Gil Scott-Heron『Pieces Of A Man』
Pieces of a Man
発表年:1971年
ez的ジャンル:ビートニク詩人系ニューソウル
気分は... :肝臓がヤバそー!

最近の手のひらのツボを押すとかなり痛い!
肝臓が相当ヤバい気がする。休肝日を作らねば...とか言って今日も飲んでしまうのですが(笑)

今回は紹介するのが遅れていた“黒いBob Dylan”ことGil Scott-Heronの登場です。

Gil Scott-Heronは1949年生まれの詩人/ミュージシャン。13歳からNYで過ごしグリニッジ・ヴィレッジ周辺のビートニク文化から影響を受けて誌を書くようになります。何冊かの本・詩集を出版した後、Flying Dutchmanレーベル(Lonnie Liston Smithなどでお馴染みのジャズレーベル)と契約し、1970年にポエトリー・リーディングのデビュー・アルバム『Small Talk at 125th and Lenox』を発表します。

1971年の2ndアルバム『Pieces Of A Man』からは、リンカーン大学に在学中に出会ったミュージシャンBrian Jackson等のバックアップを受けながら、より音楽的な作品を発表するようになります。

その後もコンスタントに作品を発表し続けると同時に、若いHip-Hopアーティストにも影響を与えたと思われます。また、90年代に入りレア・グルーヴ方面からの再評価も高まりました。

ポエトリー・リーディング/ジャズ/ファンク/ソウル/ラテン等が融合した、その音楽スタイルは非常にジャンル分けが難しいですね。

個人的には『Pieces Of A Man』(1971年)、『Winter in America』(1974年)、『The First Minute of a New Day』(1975年)、『It's Your World 』(1976年)、『Bridges』(1977年)、『Secrets』(1978年)あたりがオススメ作ですかね。

音楽的には『It's Your World 』(1976年)あたりが一番面白いのかもしれませんが、最初に聴くべき作品ということでは今回紹介する『Pieces Of A Man』(1971年)が良いのではと思います。

Gil Scott-Heronの痛烈なメッセージはニューソウルの動きとも連動するものであり、そんな流れを代表する作品が本作『Pieces Of A Man』です。個人的にはこのジャケ写真の表情だけで名盤という気がします(笑)

音楽的にもニューソウル的なジャズ/ファンク/ソウルの融合を堪能できます。決して上手くはないGil Scott-Heronの歌を、盟友Brian Jacksonをはじめ、Ron CarterBernard PurdieHubert Laws等といった凄腕ミュージシャンが好サポートしています。

全曲紹介しときやす。

「The Revolution Will Not Be Televised」
この曲のみポエトリー・リーディングです。Ron Carter、Bernard Purdieのリズム隊とHubert Lawsの少し不気味なフルートが響くバックと、アジテーションしまくりGil Scott-Heronの詞が絡む具合いのカッチョ良いこと!というか今聴くと完全にラッパーですよね。

あとはこのタイトルにピンと来る人もいるのでは?そうです!本ブログでも紹介したCommonの名曲「The 6th Sense」の最初の1節♪The Revolution Will Not Be Televised...♪はこの曲からの引用です。Commonは最新作『Finding Forever』からの1stシングル「The People」もGil Scott Heron「We Almost Lost Detroit」ネタだし、かなり影響を受けているのかもしれませんね。

Common以外にもMasta Ace「Take a Look Around」、Professor Griff「Real African People Rap pt 2」、Queen Latifah「The Evil That Men Do」、Salt-N-Pepa「Whatta Man(Luvbug Remix 1)」等の元ネタです。

「Save the Children」
タイトルだけ見ると、発表年も同じMarvin Gaye『What's Going On』(1971年)収録の同名曲のカヴァーだと思ってしまいますが同名異曲です。とってもピースフルな気持ちになる曲ですね。

「Lady Day and John Coltrane」
タイトルがBillie Holiday(Lady Dayは彼女の呼称)とJohn Coltraneなんて意味深ですよね。Brian Jacksonのエレピ・サウンドが心地良い曲も含めて実にニューソウル的なナンバーだと思います。かなりカッチョ良いですよ〜っ!

「Home Is Where the Hatred Is」
少しイナたいカンジが味があるミッド・グルーヴ。Kanye West feat.Common「My Way Home」の元ネタ曲としても知られていますね。

「When You Are Who You Are」
アルバムで一番のお気に入り曲。フリーソウル/レア・グルーヴ好きの人は絶対に気に入ると思う軽快なグルーヴ・チューン。心地良さ満点ですな。

「I Think I'll Call It Morning」
この曲も絶品。メロウ&ピースフルなバックの演奏がサイコーですね。気持ちが穏やかになりますねぇ。アルバム中一番ソウルを感じます!

「Pieces of a Man」
タイトル曲には深い深い祈りのようなものを感じてしまいますねぇ。一音一言がゆっくり、じんわりと胸に刻まれていきます。

「A Sign of the Ages」
ジャジーな味わいが印象的ですね。Hocus Pocus「Signe Des Temps」のサンプリングソース。

「Or Down You'll Fall」
Gil Scott-Heronの歌をナビゲートするような哀愁たっぷりのHubert Lawsのフルートが印象的ですね。特に中盤以降のリズム隊との絡みはなかなかエキサイティングです!

「Needle's Eye」
かなり僕向きのハート&ウォームなメロウ・グルーヴ。聴いていると、自由に羽ばたきなるような開放感に溢れています!

「The Prisoner」
最後はズッシリ重い9分半の大作です。実に重厚なスピリチュアル・ジャズといったカンジですかね。Pharoah Sandersなんかと一緒に聴くといいかも?KMD「What a Niggy Know」の元ネタ。

本作を聴いたら、次はGil Scott-Heron & Brian Jackson名義の『It's Your World 』(1976年)あたりを聴くのがいいと思います。
posted by ez at 06:59| Comment(4) | TrackBack(1) | 1970年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする