2007年09月18日

Miles Davis『Get Up With It』

エレクトリック・マイルスが凝縮された玉手箱☆『Get Up With It』
ゲット・アップ・ウィズ・イット
録音年:1970、72、73、74年
ez的ジャンル:エレクトリック・マイルスの玉手箱
気分は... :はんぱねぇ〜!

本ブログ最多出場のMiles Davisです。

これまで紹介してきたのは以下の7枚♪
『On The Corner』(1972年)
『Milestones』(1958年)
『Miles Ahead』(1957年)
『In A Silent Way』(1969年)
『'Round About Midnight』(1955、56年)
『Miles Smiles』(1966年)
『Cookin'』(1956年)

しばらくエレクトリック・マイルス時代の作品を紹介していなかったので今回は『Get Up With It』をセレクト。

本作は1970〜1974年のセッションを集めたアルバムです。
こう書くと寄せ集めの中途半端なアルバムを想像するかもしれませんが、エレクトリック・マイルス好きの方の中には本作をエレクトリック時代の代表作として挙げる方も多いのではと思います。

大阪でのライブ録音『Agharta』『Pangaea』を最後に一度引退してしまったMilesですが、1972年の衝撃的なファンク・アルバム『On The Corner』以降のスタジオ録音をまとめて聴けるのは本作のみであり、その意味でも貴重な作品だと思います。

内容的には『On The Corner』でファンク的なアプローチを完成させたMilesが、そのアプローチをさらに発展させていった様子が窺えますね。ファンクにラテン、カリプソ、ブルース、現代音楽などを融合させた音世界のスケール感は、エレクトリック・マイルスが凝縮された玉手箱とも呼べるのでは?

特に本作ではMilesのオルガンにも注目したいですね。
妖気の漂うヘタウマ・オルガンが独特のムードを生み出しているのがいいですね。

メンバーは以下の通りです。
*但し、曲によって多少メンバーの構成が違っていたり、リソースによってメンバーのデータが異なるので多少ビミョーなものもある点をご了承下さい。

●1970年のセッション
Miles Davis(tp)、Steve Grossman(ss)、John McLaughlin(g)、Keith Jarrett(key)、Herbie Hancock(key)、Michael Henderson(b)、Billy Cobham(ds)、Airto Moreira(per)

●1972年のセッションA
Miles Davis(tp、org)、Cedric Lawson(key)、Reggie Lucas(g)、Khalil Balakrishna(sitar)、Michael Henderson(b)、Al Foster(ds)、 James Mtume(per)、Badal Roy(tabla)、Carlos Garnett(ss)

●1972年のセッションB
Miles Davis(tp)、Cornell Dupree(g)、Michael Henderson(b)、Bernard Purdie(ds)、Al Foster(ds)、 James Mtume(per)、Wally Chambers(hca)

●1973年のセッション
Miles Davis(tp、org、key)、Dave Liebman(fl)、John Stubblefield(ss)、Pete Cosey(g)、Reggie Lucas(g)、Michael Henderson(b)、
Al Foster(ds)、James Mtume(per)

●1974年のセッション
Miles Davis(tp、org、key)、Dave Liebman(fl)、Sonny Fortune(fl)、Pete Cosey(g)、Dominique Gaumont (g)、Reggie Lucas(g)、Michael Henderson(b)、Al Foster(ds)、James Mtume(per)

これらの様々なセッションをまとめあげたTeo Maceroの手腕は毎度お見事ですね。

全曲紹介しときやす。

「He Loved Him Madly」
1974年のセッション。1974年5月に亡くなったDuke Ellingtonを追悼するために書かれた曲。実に厳粛なムードのレクイエムといったカンジですね。エレクトリック・マイルスの強烈なファンクを期待すると、やや肩透かしを食ったような印象を受けるかもしれませんが、スピリチュアルなナンバーとして聴くと、それなりに味わい深く聴けますし、終盤の高揚感はかなりクセになりますな。

「Maiysha」
1974年のセッション。ラテン・ソウル・テイストの哀愁バラッド。Milesらしいかどうかは別にして、かなり好きなタイプの演奏ですね。Milesの演奏としては少し耳ざわりが良すぎで刺激が少ないかもしれませんが(笑)

「Honky Tonk」
1970年のセッション。収録曲のなかでは一番古いセッションとなります。一応ブルース・ロック調の曲ですが、MilesをはじめJohn McLaughlin、Keith Jarrett、Herbie Hancock、Billy Cobhamといった名うてのメンバーが奏でる音は実にコズミックな雰囲気に溢れています。

「Rated X」
1972年のセッションA。現代音楽の巨匠Karlheinz Stockhausenからインスパイアされた作品らしいですが、20数年後のドラムン・ベースの出現を予言しているかのようなその驚愕のコズミック・サウンドに圧倒されるばかりですね。ある意味、本作のハイライトなのでは?

「Calypso Frelimo」
1973年のセッション。大きく3つのパートに分けれた32分を超える大作。アフリカンなうねりのリズム隊をバックにMilesのワウワウ・トランペットが響き渡ります。Milesの能天気なカリプソ風オルガンが逆に妖しいムードを盛り上げマス。Dave Liebmanのフルートも呪術師の呪文のように聴こえてきます。このダーク・グルーヴを創れるのはMiles以外にはいない!

「Red China Blues」
1972年のセッションB。Wally Chambersのハーモニカ、Cornell Dupreeのギター、Bernard PurdieとAl Fosterのツイン・ドラムがアーシーな味を醸し出すソウル・ブルース。こんなソウルフルでイナたいMilesのプレイも滅多に聴けないのでは?

「Mtume」
1974年のセッション。タイトルの通り、Mtumeのパーカッションを前面に押し出した演奏です。ダークでどす黒いグルーヴ感を聴いていると、だんだん覚醒してくる危うさを持った演奏ですよね。この中毒になる高揚感こそがこの時期のMilesの演奏の凄さですな。

「Billy Preston」
1972年のセッションA。タイトルはBeatlesとのセッション等でお馴染みのキーボード奏者Billy Prestonに因んだものです。この時期のMilesらしいファンキーな演奏を堪能できます。

ある意味、この時代で一番エッジが効いた音楽が詰まった作品集と言えるのでは?
posted by ez at 00:03| Comment(1) | TrackBack(0) | 1970年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする