発表年:1973年
ez的ジャンル:フュージョン・グループ最高峰
気分は... :アンタは粋なZ(爺)だった!
かなり前の話になりますが、長年ジャズ界で活躍してきたキーボード奏者Joe Zawinulが9月11日にウィーンの病院で死去しました。
Joe Zawinulは1932年ウィーン生まれ(恥ずかしながらオーストラリア人だということを長年知りませんでした)。1960年代の初めにCannonball Adderleyのグループに参加し、本ブログでも紹介したヒット曲「Mercy, Mercy, Mercy!」を作曲するなど約9年間Adderleyを支えていました。
1969年にはMiles Davisに声を掛けられ、『In A Silent Way』、『Bitches Brew』といったエレクトリック・マイルスの幕開けとなる歴史的レコーディングに参加します。
そして、1970年には同じくMiles門下生のWayne Shorter(ts)、プラハ生まれのMiroslav Vitous(b)、NY出身のAlphonse Mouzon(ds)と自己のグループWeather Reportを結成し、1986年に解散するまでたフュージョン界のトップ・グループとしてシーンを牽引し続けました。
最近では、シニア世代の枠を提案するメンズファッション誌『Z(ジー)』の表紙を飾っていたりしましたよね。
今回はそんなZawinulを偲ぶ意味でWeather Report『Sweetnighter』(1973年)をセレクト。
Weather Reportの紹介は『Black Market』(1976年)以来2回目となりマス。
『Sweetnighter』は『Weather Report 』(1971年)、『I Sing the Body Electric』(1972年)に続くグループ3枚目のスタジオ作となります。
僕がよく聴くWeather Report作品は天才べーシストJaco Pastorius在籍時(1976〜82年)のものなのですが、今回敢えて本作『Sweetnighter』をセレクトしたのは、Joe Zawinulの意向が最も強く反映されたアルバムが本作だと思ったからです。
元々はZawinul、Shorter、Vitousの三頭体制でスタートしたWeather Reportでしたが、本作でZawinul主導のグループへと様変わりしていきます。そして、Zawinulが目指した方向がファンク・ビートの導入と、更なるエレクリック化の強化というものでした。
Shorterは一人のプレイヤーに徹しVitousに到ってはかなり隅のほうへ追いやられてしまっている様子ですね。また、Zawinul自身も本作からシンセサイザーを本格的に演奏するようになっています。
メンバー構成にもZawinulの意向が反映されています。
Josef Zawinul(key)、Wayne Shorter(ts、ss)、Miroslav Vitous(b)、Eric Gravatt(ds)、Dom Um Romao(per)というメンバーに加え、Andrew White III (eb)、Herschel Dwellin(ds)、Muruga Booker(per)といったサポート・メンバーが加わっています。
ファンク導入に伴うエレクトリック・ベースはVitousではなくAndrew White IIIが演奏し、ドラムやパーカッションにもサポートを加えているあたりに注目ですね。
内容的にはファンク・ビート導入という点でMiles Davisの『On The Corner』(1972年)あたりに通じるものがありますね。
Milesから影響受けすぎ!といった本作に対する一部批判もあるようですが、
(小島よしお風に)でもそんなの関係ねぇ!オッパッピー!ってカンジでしょうか(笑)
素直にカッチョ良いものはカッチョ良いと認めて欲しいですな。
全曲紹介しときヤス。
「Boogie Woogie Waltz」
何と言ってもこのファンク・チューンがサイコーですね。この1曲を聴けるだけで、このアルバムを購入する価値があると思いマス。アフリカンなパーカッションをバックに奏でられるZawinulのエレピ・グルーヴが何とスリリングでセクシーなこと!聴いているとテンション上がって鼻血ブーになりそうですっ!
Zawinulはどうしてもこの手の曲をやりたかったのでしょうね。Vitousはアコースティック・ベースを弾きながら、このファンク・グルーヴをどのように感じていたのでしょうね?
この曲をイントロを聴くと、バラエティ番組『はねるのトびら』の人気コーナー「オシャレ魔女アブandチェンジ」の歌を思い出すのは僕だけでしょうか(笑)
「Manolete」
この曲はShorterの作品。本作では控えめなShorterですが、相変わらずの名コンポーザーぶりを見せてくれていマス。ソプラノのソロにもうっとりです。穏やかな表情から徐々にテンションが上がっていく終盤の展開も好きです!
「Adios」
幻想的な演奏です。ファンク・ナンバーの合間に聴く箸休めとしてなかなかいいのでは?。
「125th Street Congress」
「Boogie Woogie Waltz」同様バリバリのファンク・チューンです。ファンク・ビート導入の主体はZawinulですが、Shorterのサックスも違和感なく見事に融合しているあたりがShorterの凄さなんでしょうね。
「Will」
この曲はVitousの作品。本作では陰が薄いVitousですが、かろうじて面目を保っているカンジですね。
「Non-Stop Home」
まさにノンストップの疾走感を持つ演奏ですね。スリリングなリズム隊がいいですね。ちなみに本曲にはVitousは参加していません。
その後のWeather Report作品を考えると、エポック・メイキング的な作品が本アルバムなのでは?
Zawinul爺のご冥福を心よりお祈り申し上げます。