2007年10月31日

Brigitte Fontaine『Comme A La Radio』

Brigitte Fontaine、Areski Belkacem、Art Ensemble Of Cicagoによるアバンギャルドなコラボ☆Brigitte Fontaine『Comme A La Radio』
Comme a la Radio
発表年:1969年
ez的ジャンル:前衛ジャズ+前衛シャンソン+α
気分は... :芸術の秋...

芸術の秋ということで前衛的な作品をセレクト。
フランスの女性歌手Brigitte FontaineAreski BelkacemArt Ensemble Of Cicagoと共演したアヴァンギャルド作品『Comme A La Radio』(1969年)です。

本作の主人公はBrigitte FontaineAreski BelkacemArt Ensemble Of Cicagoという3組のアーティスト。

Brigitte Fontaineは1939年ブルターニュ地方のモルレ生まれのシャンソン歌手。18歳の時、ソルボンヌ大学に入学するためにパリへやってきます。しかし、大学を中退し、芝居の世界へ身を投じます。1963年頃からはパリのキャバレーで唄い始め、その異彩を放った歌で注目を集めます。1965年には最初のアルバムを発表し、前衛シャンソン歌手としての道を本格的に歩みはじめます。

Areski Belkacemは1940年ヴェルサイユ生まれのアルジェリア系のパーカッション奏者。退廃的なダンディズム溢れる男性シャンソン歌手Jacques Higelinの相棒として活動するようになります。

Art Ensemble Of Cicago(AEC)は1968年にシカゴで結成されたフリー・ジャズ・グループ。メンバーはRoscoe Mitchell、ester Bowie、Joseph Jarman、Malachi Favors、Don Moyeの5人(*Don Moyeは1969年加入)。シカゴ前衛派を生んだ組織であるAACM(Advancement of Creative Musicians)を代表するグループであり、その圧倒的な即興演奏と黒人を意識した衣装やメイクで話題となりました。1969年に拠点をパリに移し、1年半に渡るパリでの活動の間に10枚以上のアルバムを制作しました。

この3組のアーティストをパリで引き合わせたのが本作のプロデューサーPierre Barouh。1934年パリ生まれのBarouhはカンヌ映画祭でグランプリを受賞した『Un homme et une femme(邦題:男と女)』(1966年)への出演・歌で脚光を浴びます。しかし、スターの座には目もくれず、1966年にはSaravah Recordを設立し、埋もれた才能の発掘に財産を投じます。そして、発掘された1つの才能がBrigitte Fontaineでした。

こうしてSaravahから発表されたBrigitteの第2弾アルバムが本作『Comme A La Radio』です。

Brigitte FontaineAreski BelkacemArt Ensemble Of Cicago(AEC)という3組のアーティストのうち、本作以外の作品を持っているのはArt Ensemble Of Cicagoのアルバムを数枚持っている程度であり、Brigitte Fontaine、Areski Belkacemについては本作以外の作品を聴いたことがありません。

その程度の認識しかない僕でも本作を聴いた時のインパクトはなかなかのものがありましたね。シャンソンでもない、ジャズでもない摩訶不思議なアヴァンギャルド感がありますね。全然ジャンルが違いますが、前回の60年代カテゴリーで紹介したVelvet Undergroundのデビュー作『The Velvet Underground & Nico』(1967年)と似た存在感を持つアルバムだと思います。

1曲1曲を楽しむアルバムというよりはアルバム全体の空気を楽しむアルバムだと思います。

Brigitte FontaineArt Ensemble Of Cicagoの共演という側面が注目されるアルバムですが、案外このアルバムの肝はその後もBrigitte Fontaineとのコラボ作品を発表するAreski Belkacemの怪しげなパーカッションのような気がします。

何か訳のわからない変テコ感にヤラれてしまう不思議なアルバムです。
僕は不勉強で詳しく知りませんが、この頃の時代背景や前衛芸術に詳しい方ほどグッとくるアルバムなのでしょうね。

オススメ曲を紹介しときやす。

「Comme A La Radio」
アルバム全体の雰囲気を象徴するタイトル曲。♪世界は寒い♪それはみんな分かっている♪ そしてあちこちで火事がおきる♪ なぜって、あまり寒いから...♪という歌詞は、1968年の五月革命後のパリの空虚な空気感を反映しているのかもしれませんね。Brigitteのクールで儚いボーカル(というかポエトリー・リーディング)とAECの演奏が醸し出す不穏なムードが実にマッチしています。

「Tanka II」
邦題が「短歌II」となっていますが、この“Tanka”とは短歌のことなんですかね?Brigitteの歌とAreskiのパーカッションとベースのみのパフォーマンスなのですが、アシッドなAreskiのパーカッションが結構好きだったりします。

「Le Brouillard」
この曲ではAreskiがボーカルをとっています。「霧」という邦題のように、霧がかかったような不透明で不安げなムードが印象的です。

「J'ai 26 Ans」
♪私は26才。でも有益だったのはたったの4年♪...♪ある日私は大理石のテーブルを壊してしまった♪私は髭を剃っていない男が好き♪私は時々歯が痛くなる♪私はどんでもないときにお腹が空く♪

う〜ん、凡人の僕にはチンプンカンプンな歌詞です。でもアヴァンギャルドな気がする(笑)

「L'Ete L'Ete」
♪私はまだ生きている♪眩しい 白い砂♪という歌詞のような空虚感が印象的な曲。北アフリカあたりのエスニックな雰囲気もありますね。

「Leo」
AECらしいアフリカ回帰のフリー・ジャズを堪能できる1曲。

「Tanka I」
2分にも満たない曲ですが、Areskiならではのエスニックかつアシッドな仕上がりが魅力の1曲。もっと長尺で聴きたいですね。

「Lettre A Monsieur Le Chef De Garde De La Tour Carol」
邦題「キャロル塔の駅長さんへの手紙」。個人的にはアルバムで一番好きな曲。Brigitteの冷めた囁きとアシッドな高揚感を煽るパーカッシヴかつエスニックな演奏との対比が印象的ですね。

「Le Goudron」
アシッドなフォーキー・チューン。この曲を聴いていると、Donovanあたりとの共通点もあるのかな?なんて勝手に思ってしまいました。

「Le Noir C'Est Mieux Choisi」
邦題「黒がいちばんよく似合う」。♪とりわけ黒、私の心♪という歌詞が何とも虚しいですね。そんな悲しげな物寂しい雰囲気が伝わってくる1曲。

このアルバムが持つ空虚感は、「美しい国」などという幻想が崩れ去り、格差が拡がり、社会の至るところに歪みが生じつつあるどこかの国の空気感ともリンクしている気がします。
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2007年10月29日

Andrew Gold『What's Wrong With This Picture?』

このジャケ写真何か変じゃない?でもサウンドはバッチリ!☆Andrew Gold『What's Wrong With This Picture?』
What's Wrong with This Picture?
発表年:1976年
ez的ジャンル:ポップス好き系ウエスト・コースト・ロック
気分は... :間違いにいくつ気付くだろうか...

今回は70年代に活躍したシンガーソングライター/マルチ・ミュージシャンAndrew Goldの紹介です。

Andrew Goldは1951年カリフォルニア生まれ。Karla Bonoff『Wild Heart Of The Young』のエントリーで紹介したように1960年代後半にKenny Edwards、Wendy Waldman、Karla BonoffらとBryndleというグループを組むものの、短期間でグループは解散してしまいます。

その後、スタジオ・ミュージシャンとして活動していましたが、Linda Ronstadtのバック・バンドに加入しチャンスをつかみ、1975年にアルバム『Andrew Gold』でソロ・デビューを果たします。

そして、発表された2ndアルバムが本作『What's Wrong With This Picture?』(1976年)です。
“この写真、何か変じゃない”というタイトルの通り、ジャケ写真には32箇所の間違いがあるので、みんなその間違い探しをしてね!という仕掛けのようです。LP時代ならではの仕掛けですね。CDではちと厳しいですな。

肝心の音ですが、ポップス好きが作ったウエスト・コースト・ロックというカンジですね。実際、AndrewはBeatlesなどのブリティッシュ・ロックに夢中だったようです。そんな影響がManfred Mannや(Beatlesに影響を与えた)Buddy Hollyのカヴァーをはじめ、アルバムの随所で反映されているようですね。

本作の目玉は何と言っても、Andrew Gold最大のシングル・ヒット「Lonely Boy」が収録されていることですね。ただし、個人的には本アルバムを購入した理由は「Stay」を聴きたかったからです(理由は後述に)。

プロデュースはPeter Asher。Kenny Edwards、Waddy Wachtel、Dan Dugmore、Danny Kortchmar、Russ Kunkel等のウエスト・コースト・ロック好きにはお馴染みの面々がバックを務めます。Linda Ronstadtもバック・コーラスで参加しています。

ポップス好き、ウエスト・コースト・ロック好きの人はどうぞ!

オススメ曲を紹介しときやす。

「Hope You Feel Good」
ポップなロック・チューンなのですが、ビミョーに外しているウエスト・コースト・ロックといったところでしょうか。この外し具合が暑苦しくなく、愛嬌があっていいですね。

「Passing Thing」
ウエスト・コーストのシンガー・ソングライターらしい甘酸っぱい1曲。切ない雰囲気がとてもいい曲なのですが、唯一の難点がDon Menzaの尺八(泣)。日本人が聴くと一気に興醒めしてしまいますっ!

「Do Wah Diddy Diddy」
Manfred Mannの全英チャート第1位となった大ヒット曲のカヴァー。このウエスト・コーストらしくない選曲がAndrewの面白いところですね。それでもAndrewらしいポップ・センスで仕上がっているのが面白いですね。

「Learning the Game」
大御所Buddy Hollyのカヴァー。アップものではなく、しっとりとしたバラッドをセレクトするあたりがシブいですね。Kenny Edwardsのマンドリンがいいアクセントになっていますね。

「Must Be Crazy」
カラっと明るいポップ・チューン。パーカッシヴかつ能天気なノリがいいですな。

「Lonely Boy」
Andrew Gold最大のシングル・ヒット(全米ポップ・チャート第7位)。♪He was born on a summer day, 1951〜♪という歌詞で始まるこの歌は、まさにAndrewの自叙伝的なストーリーを描いたものですね(Andrewは1951年8月生まれ)。

♪Goodbye mama〜♪Goodbye papa I'm pushing on through〜♪という両親との別れを決意する部分のAndrew ヴォーカルとWaddy Wachtelのギターが胸に響きますね。ちなみにAndrewの父Ernest Goldはアカデミー賞を受賞した作曲家であり、母親のMarni Nixonは映画『West Side Story』のNatalie Woodや『My Fair Lady』のAudrey Hepburnの歌部分の吹き替えをしていた歌手です。

という、かなりAndrew本人の思いを赤裸々に語ったリアルな歌ですが、サウンドの方はウエスト・コーストらしいポップなロックに仕上がっています。バック・コーラスでLinda Ronstadtが参加しています。

2002年にJ-Popの女性デュオ花*花が歌詞を変えて「Lonly Girl」として発表していますね(多分これが彼女たちのラスト・シングルだと思います)。

「Firefly」
この曲では全ての楽器をAndrew一人でこなしています。地味ですがウエストコーストらしい雰囲気に溢れたいい曲です。ギター・ソロがいいカンジ。

「Stay」
「Lonely Boy」以上に僕が本作で楽しみにしているのがこの曲です。ドゥーワップ・グループMaurice Williams & The Zodiacsの1960年の大ヒット曲のカヴァーです。Hollies、Four Seasons、Cyndi Lauperなどのアーティストがカヴァーしていますが、僕にとって「Stay」と言えば、本ブログで紹介したアルバム『Running on Empty』(1977年)のJackson Browneのバージョンが一番です。

その意味で同じAsylamのAndrew Goldが同じような時期に、同じようなテイストで「Stay」を仕上げているのが何とも興味深いですね。AndrewのバージョンもJackson Browneのバージョンも、聴いているうちに思わず笑顔になるリラックス感が大好きですね。

「One of Them Is Me」
メロウな味わいが魅力のスロウ・チューン。AOR好きの人向けのエンディングです。

今日はNFL(アメフトのプロ・リーグ)の公式戦(ドルフィンズ対ジャイアンツ)が史上初ロンドンで行われます。フットボール=サッカーの英国でアメフトが受け入れられるのか実に興味があります。

それよりも開幕から7連敗中のわがドルフィンズに何としても今季初勝利を飾って欲しいものです。久々にドルフィンズの試合を生中継で観れるのでTVの前で応援しようっと!
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2007年10月28日

Keyshia Cole『Just Like You』

魅惑のハスキー・ヴォイス!待望の2ndアルバム☆Keyshia Cole『Just Like You』
Just Like You
発表年:2007年
ez的ジャンル:Next MJB系女性R&B
気分は... :そんなに見つめないで...

この秋から年末にかけて、期待の女性R&Bシンガーの新作が続々と発表されますね。
既発の作品の中には必ずしも期待通りの出来栄えのものばかりとは限りませんが...

そんな中で期待以上の出来栄えだったのが、若手女性R&BシンガーKeyshia Coleの2ndアルバム『Just Like You』です。

本ブログでも紹介済みのデビュー・アルバム『The Way It Is』が“Next Mary J. Blige”として各方面から絶賛され、商業的にも成功を収めたKeyshia Cole

そんな勢いを持って制作された2ndアルバムが本作『Just Like You』です。

『The Way It Is』のエントリーの時に、かなりの豪華メンバーの参加する模様ということで色々ビッグネームを挙げましたが、実際に収録曲に参加しているゲストは、Missy Elliott、Lil Kim、Too $hort、Amina、Anthony Hamilton、Diddy、Young Dro、T. I.と事前情報とはかなり異なるメンツでした。

ただし、そんなゲストのメンツ云々なんてことを忘れてしまうくらい素晴らしい出来ですね。個人的には“Next Mary J. Blige”という形容詞はあまり好きではありませんが、そんな期待も抱きたくなるのがよくわかります。

とにかくKeyshiaのキュートなハスキー・ヴォイスがいいですね。
特に、ミッド〜スロウの美メロ系の曲が個人的には好みです。

もう僕のハートはKeyshiaに鷲掴みにされています(笑)

オススメ曲を紹介してきやす。

「Let It Go」
まずは何と言ってもこの1stシングルですね。Missy Elliott & Lil' Kimという大物二人をフィーチャーし、大ネタMtume「Juicy Fruit」をサンプリングということで話題ですね。「Juicy Fruit」大好きの僕にとっては文句ナシのミッド・チューンに仕上がっています。ビッグネーム二人を前に堂々とハスキー・ボーカルで渡り合っているKeyshiaの大物ぶりが窺える1曲です。

アルバムには、T.I.、Missy Elliott、Young Droをフィーチャーしたリミックスも収録されています。

「Didn't I Tell You」
Too $hortをフィーチャーしたThe RunnersプロデュースのHip-Hopチューン。僕の苦手なサウスな仕上がりですが、Keyshiaのボーカルがキュートなので聴けてしまいます(笑)

「Fallin' Out」
Soulshockプロデュースの美メロの絶品スロウ。メロメロ好きの僕にとってはど真ん中の曲です。甘く切ないムードがサイコーですね。

「Give Me More」
この曲も大好き!Scott Storchプロデュースのミッド・チューン。疾走感と哀愁感が相俟ったグルーヴ感にグッときます。

「I Remember」
アルバムで一番のお気に入りの曲がコレ!Gregory G. Curtisプロデュースによる至極のスロウです。メロディ良し、アレンジ良し、そして何よりKeyshiaの切ないボーカル良し!と三拍子揃った完璧な1曲ですね。長らく聴き続けていくであろう名曲だと思います。

個人的には「Fallin' Out」、「Give Me More」、「I Remember」と続く、この3曲で昇天してしまいました。この3曲だけでマイ・クラシック認定決定!です。

「Shoulda Let You Go」
アルバムからの2ndシングル。Rodney Jerkinsプロデュース曲でAminaのラップをフィーチャーしています。若いリスナーの方はこういったタイプの曲が好きなんでしょうね。

「Heaven Sent」
アコースティックな仕上がりがいいカンジの曲ですね。個人的にはKeyshiaにはこういった哀愁感の漂う曲が似合っていると思います。

「Got to Get My Heart Back」
この曲もかなり好き!The O'Jays「She's Only A Woman」ネタの哀愁グルーヴです。Ron Fairプロデュース。

「Losing You」
Anthony Hamilton参加曲。実力派Hamiltonとの共演ということで、なかなか聴き応え十分です。

「Last Night」
DiddyをフィーチャーしたMario Winansプロデュース曲。元々はDiddyのアルバム『Press Play』収録されていた曲です。Diddy嫌いの僕ですが、Keyshiaに免じて許してしまいます(笑)

「Work It Out」
実はかなり好きな曲がこの哀愁ミッド・チューン。地味ですが、胸キュン好きにはたまらない美メロ・チューンだと思います。

MLBのワールド・シリーズ第3戦をTV観戦しながら興奮中!
松阪がタイムリー・ヒットを打った瞬間には思わず立ち上がってガッツポーズでした!
朝から缶ビールが飲みたい気分ですな(笑)
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2007年10月27日

Simply Red『Men And Women』

本作発表直後の来日公演を思い出します☆Simply Red『Men And Women』
Men and Women
発表年:1987年
ez的ジャンル:スタイリッシュ系UKブルー・アイド・ソウル
気分は... :やっぱりお米ですな♪

昨晩は魚沼産コシヒカリの新米を土鍋で炊き、日本人であることの喜びをしみじみ感じていました(笑)

さて、Simply Redの3回目の登場です。

『Stars』(1991年)、『Life』(1995年)に続き紹介するのは2ndアルバム『Men And Women』(1987年)です。

デビューアルバム『Picture Book』(1985年)から全米ポップ・チャートNo.1となった大ヒット・シングル「Holding Back The Years」が生まれた勢いで、『Picture Book』の翌年に発表されたのが本作『Men And Women』(1987年)です。

本作『Men And Women』発表直後の来日公演へ行きました(確か場所は新宿厚生年金ホールだったかな?)。その頃はまだ大物グループのオーラは全然ありませんでしたが、Paul Smithのファッションに身を包み(彼らのアルバムにはClothesとしてわざわざPaul Smithの名がクレジットされています)、洗練されたブルー・アイド・ソウルを聴かせてくれました。

音楽の嗜好がロックからR&B/Soul/Funkへ移行し、音楽と同時にファッションへの興味にも尽きなかった(当時はDCブランド・ブーム)当時大学生の僕にとって、Simply Redの登場は、相当ピタッとハマった印象を受けましたね。

そう言えば、Simply Redのライブと前後してブレイク前の久保田利伸のライブの行き、Simply Redのライブと併せて、“これからはロックじゃなくてソウル/ファンクだよね”って妙に納得していた記憶があります。

本作『Men And Women』ですが、『Picture Book』よりもさらに垢抜けてきたというが感想ですね。音楽的にもファンク、レゲエなどよりバラエティに富んだ内容になってきたのではと思います。

Simply Redの場合、単に黒人音楽への憧れのみではなく、当時におけるスタイリッシュなサウンドとうまく融合していたというあたりが肝だったのではと思います。その意味では本作におけるプロデューサーAlex SadkinGrace Jones作品等でお馴染み)の起用も成功しているのでは?

あとは何曲かでソングライティングにLamont DozierがリーダーMick Hucknallとの共作というかたちで参加しています。かつてのモータウン無敵のソングライティング・トリオH-D-Hに因んで、クレジットにHucknall/Dozier/Hucknallと表記されているあたりがなかなか心憎いですよね。

アルバムは全英チャートで第2位となり、イギリスにおける彼らの地位を確固たるものにしました。

全曲紹介しときヤス。

「The Right Thing」
アルバムからの1stシングル(全英ポップチャート第11位)。Simply Redらしいコンテンポラリーなサウンドで聴かせてくれるソウルフルなミッド・チューン。

「Infidelity」
Hucknall/Dozier/Hucknall作品。アルバムからの2ndシングルにもなったミッド・チューン。Paul Smithのファッションと実にマッチしそうな洗練された音に仕上がっています。Mick Hucknallのボーカルがエラくセクシーですね。

「Suffer」
Hucknall/Dozier/Hucknall作品。個人的にはかなりお気に入りの80年代のUKらしい哀愁メロウ・チューン。

「I Won't Feel Bad」
80年代ならではのゴージャス・ムードのアップ・チューン。80年代らしい硬質なリズム感が案外好きだったりします。

「Ev'ry Time We Say Goodbye」
Cole Porterの名曲のカヴァー。シングルにもなりました。実にロマンティックで美しいスロウに仕上がっています。僕の場合、Simply Redのカヴァーでこの曲の存在を知り、その後John Coltraneのカヴァー(『My Favorite Things』収録)で、ますますこの曲のことが好きになったというパターンですね。

「Let Me Have It All」
Sly & The Family Stoneのカヴァー(『Fresh』収録)。本ブログでSlyのオリジナルも紹介しましたが、オリジナルに近いテイストに仕上げています。

「Love Fire」
オリジナルWailersのメンバーBunny Wailer作品のカヴァー。レゲエを取り上げてもソツなくこなしてしまうあたりはUKのグループらしいですね。

「Move on Out」
Mick Hucknallお得意の哀愁ミッド・グルーヴ。とっても好きなんだけど、途中の気合い入りすぎの掛け声だけが僕には余計かも(笑)

「Shine」
アルバムで一番のお気に入り曲。スタイリッシュなグルーヴ感がサイコーのこの曲を当時からよく聴いていました。僕の中でこの曲の持つカッチョ良さと、初期の久保田利伸のカッチョ良さがかなりリンクしていましたね。

「Maybe Someday...」
淡々とした展開の中にもジワジワと感動が押し寄せてくるエンディング曲。途中のトランペット・ソロもなかなか感動的です。

Simply Redはまだまだ現役ですよ!
今年出た新作『Stay』は久々に昔ながらのファンを喜ばせてくれる出来栄えだったのでは?
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2007年10月26日

Heatwave『Too Hot To Handle』

Rod Temperton在籍のHeatwave!ディスコ・クラシック「Boogie Nights」収録の1st☆Heatwave『Too Hot To Handle』
Too Hot to Handle
発表年:1976年
ez的ジャンル:メロウ・グルーヴ&ディスコ/ファンク
気分は... :ショーパン可愛い!

最近、『ショーパン』を観るのが楽しみです。
初々しくていいですな。今日もウドが興奮しまくりでしたが、あんな可愛い子を目前にすればそうなるわな。

一昨日、昨日とサッカーのUEFAチャンピオンズリーグ第3節の試合が行われました。

どうしてもスペインとイングランドのチームの試合を中心に観てしまいますが、グループ最下位のリヴァプールの不調が気になりますね。

プレミアの序盤戦を観た限りは、今年のリヴァプールはかなり面白い!と思っていたので、この低迷ぶりは少し意外ですね。ベニテス監督のターン・オーヴァー制はどうなんですかね?

逆に、アンリが抜けてどうなるのかと危惧していたアーセナルがプレミア、チャンピオンズリーグ共に絶好調ですね。

セスク、ファンペルジーらが完全にチームの中心となり、ウォルコット等の期待の若手も確実に伸びているあたりは、さすがベンゲル監督という言うべきなのでしょうね。

あとはバルサが物足りないですね。中盤にヤヤ・トゥレ、デコ、マルケスと怪我人続出で、その穴埋めができず何かチーム全体がしっくりきていない気がします。

シーズン序盤に観たあのファンタスティックなサッカーがやや陰を潜めているようですね。早くエトーが復帰してくれないかなぁ。

さて、今回はRod Tempertonが在籍していたファンク・グループHeatwaveの2回目の登場です。

前回はフリーソウル系リスナーに人気の2ndアルバム『Central Heating』(1978年)でしたが、今回はディスコ・クラシック「Boogie Nights」収録の1st『Too Hot To Handle』(1976年)です。

後にプロデューサーQuincy Jonesのお抱えソングライターとなり、Michael Jackson「Off The Wall」、「Rock With You」、「Thriller」、George Benson「Love X Love」、「Give Me The Night」などの大ヒット曲を送り出すRod Tempertonですが、その原点がこのHeatwaveの1stアルバム『Too Hot To Handle』(1976年)かもしれませんね。

本作『Too Hot To Handle』でも全9曲すべてRod Tempertonのペンによるものです。「Boogie Nights」等のディスコ・チューンから「Always and Forever」等のロマンティックなスロウまで、Tempertonの才能を堪能することができます。

ということで、Rod Tempertonに注目が集まりがちですが、グループの中心KeithとJohnnieのWilder兄弟のボーカルもなかなか魅力的です。素晴らしいソングライティングと魅惑のファルセット・コーラスが組み合わさり、アルバムの魅力を高めています。

全曲紹介しときヤス。

「Too Hot to Handle」
タイトル曲はUKでシングル・ヒットしたポップなファンク・チューンです。底抜けに明るい感じがいいですね。とても元気が湧いてきます!

「Boogie Nights」
全米ポップチャート第2位、全米R&Bチャート第5位、全英チャート第2位となった大ヒット・シングル。というよりもディスコ・クラシックとして有名ですね。僕もHeatwaveというグループの存在を認識する前からこの曲だけは知っていました。

♪ブッギー・ナイッ〜♪というフレーズを聴いただけで夜遊びモードになりそうなノリの良さがサイコーですね。Rod Tempertonらしいポップな聴きやすさも兼ね備えているところも魅力ですね。

「Ain't No Half Steppin'」
リラックスしたグルーヴ感がカッチョ良いミッド・グルーヴ。Big Daddy Kane「Ain't No Half Steppin'」、Doug E. Fresh「Keep Risin' to the Top」等のサンプリング・ネタにもなっていますね。

「Always and Forever」
僕の一番のお気に入りはこのロマンティックなスロウです。メロウ&スウィート好きの方はたまらない1曲なのでは?シングルカットされ、全米R&Bチャート第2位、全米ポップチャート第18位のヒットとなりました。

Luther VandrossやSilk等がカヴァーしていますね。個人的には90年代に初めに活動していた日本では全く無名のR&BグループWhistleのカヴァーを今も愛聴しています。

「Super Soul Sister」
冒頭の♪パッパッパッ!パッパッパッラ〜ラ〜♪というコーラスが印象的なファンク・チューン。

「All You Do Is Dial」
「Lay It on Me」
魅惑のファルセットが冴えわたるメロウ・チューン2曲。案外サラッと仕上げているので、それほどファルセットが暑苦しく感じないのがいいですね。

「Sho'nuff Must Be Luv」
しっとりとした哀愁スロウ。じんわりと感動が伝わってきます。

「Beat Your Booty」
このノリの良いミッド・ファンクはかなり好きですね。なんか独特のポップなノリがクセになりそうですね。

さっきAmazonで確認したら、「Always and Forever」のカヴァーを収録したWhistleのアルバム『Always and Forever』(1990年)を扱っているようなので、近々紹介しますね。
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