2007年10月19日

Crusaders『Street Life』

ボーカル作品に取り組みCrusadersの転機となった作品☆Crusaders『Street Life』
Street Life
発表年:1979年
ez的ジャンル:コンテンポラリー系クロスオーヴァー/フュージョン
気分は... :ロデオ・ドライブで夜遊びしたい...

70年代のクロスオーヴァー/フュージョンを代表するグループCrusadersの紹介です。

Crusadersはテキサスの高校で同級生だったJoe Sample(key)、Wayne Henderson(tb)、Wilton Felder(sax)、Stix Hooper(ds)の4人が結成したグループ。1961年にJazz Crusadersとしてデビューします。

1971年にCrusadersを名乗るようになり、ジャズ・グループからファンキーなクロスオーヴァー/フュージョン・グループへと華麗なる変身を遂げたグループは、一躍人気グループとなりました。1974年にはLarry Carlton(g)も正式メンバーとして加入しました。

その後1976年にWayne HendersonLarry Carltonが脱退し、グループはよりアーバン・コンテンポラリーな路線へと向かいます。1983年にはStix Hooperも脱退し、それ以降はJoe SampleWilton Felderのユニットとなりました。

70年代のクロスオーヴァーと聞いて、僕が真っ先に思い浮かべるグループはCrusadersです。

ロック中心の洋楽ライフだった中学生の頃から、Crusadersがクロスオーヴァーの大物グループであるという認識はあり、Joe SampleWilton Felderの名や当時スーパーギタリストと持てはやされたLarry Carltonが在籍していたグループということも知っていました。その意味では、昔からそれなりに気になるグループだったのだと思います。特に、『Those Southern Knights』(1976年)あたりはとても気になるアルバムでしたね。

しかしながら、実際に彼らの作品を自分のコレクションに加えることなく、約20年もの年月が過ぎてしまいました。別に毛嫌いする理由は無かったのですが、たまたま出会う機会を逃していたのかもしれません。

そんな僕が今から7、8年前にようやく購入したCrusaders作品が本作『Street Life』(1979年)です。今のところマイ・コレクションにある唯一のCrusaders作品です。

本作はCrusadersが初めてボーカル作品に取り組んだアルバムとして有名ですね。ボーカルにRandy Crawfordをフィーチャーしたタイトル曲「Street Life」は、シングルとしてグループ最大のヒット曲となりました。

全体的には僕のようなメロウ好きが気に入るアーバン・コンテンポラリーな仕上がりとなっています。ボーカルものへの取り組みやメロウ路線は、従来からのコアなCrusadersファンの方にとっては複雑な思いもあるのかもしれませんが、確実にファン層を広げたことは事実なのでは?

3人のメンバー以外にはRandy Crawford(vo)をはじめ、Barry Finnerty(g)、Paul Jackson Jr.(g)、Ronald Bautista(g)、Alphonso Johnson(b)、Paulinho Da Costa(per)等がサポートしています。

よくこのアルバムを夏の夜にぴったりと感じる人がいるようですが、僕は何故かCrusadersに夏のイメージがありません。ということで今の時期に紹介しています。

まぁ、秋の夜長にLAでエレガントに夜遊びなんぞしてみたいものですな。

全曲紹介しときやす。

「Street Life」
本アルバムの目玉は何といってもこの曲ですね(Will Jennings,/Joe Sample作品)。アーバン・ナイトにぴったりなコンテンポラリーな仕上がりが何とも大人モードです。、Randy Crawfordの小気味良いボーカル、メロウなJoe Sampleのエレピ、Wilton Felderの吹っ切れたサックス、Stix Hooperのファンキーながらも軽やかなドラムなどを堪能しているうちに、11分を超える長尺の曲があっと間に終わってしまう感じです。

シングルとして全米R&Bチャート第17位、ポップチャート第36位となりました。ボーカルのRandy Crawfordにとっても転機となった1曲ですね。2Pac & Snoop Dogg「Street Life」などのHip-Hopネタにも使われていますね。

「My Lady」
フュージョンらしい優雅なマッタリ感が気持ちいい1曲(Wilton Felder作品)。Wilton Felderのサックスを中心に堪能しましょう。Yaggfu Front「Slappin' Suckas Silly」などのサンプリング・ネタにもなっています。

「Rodeo Drive (High Steppin') 」
「Street Life」と並ぶハイライト曲(Joe Sample作品)。ジャケのイメージそのままの曲ですね。超一流ブティックが並ぶロデオ・ドライブ通りのようなエレガントな仕上がりが何ともたまらないミッド・グルーヴ。ご機嫌モードの時に聴きたい曲ですね。

「Carnival of the Night」
個人的にはラテン・テイストのこのメロウ・グルーヴが一番好きだったりします。Joe Sampleのエレピにもうっとりですね。Wilton Felderの作品です。

「The Hustler」
Stix Hooper作品。全体的に落ち着いた仕上がりですがファンキーでソウルフルな味わいがします。

「Night Faces」
実は結構人気がある曲ですね(Joe Sample作品)。ロデオ・ドライブでのアーバン・ナイトを堪能した余韻に浸るような1曲ですね。

正直、Crusadersについては殆ど未開拓なので、機会があれば他の作品もボチボチ聴いてみたいですね。
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2007年10月18日

Deee-Lite『World Clique』

テイ・トウワらによるハイブリッドでハイパーなダンス・ミュージック☆Deee-Lite『World Clique』
World Clique
発表年:1990年
ez的ジャンル:ハイブリッド&ハイパー系NYハウス
気分は... :がっくり...

出張などでバタバタしお疲れモードのところへ、サッカー五輪予選のドーハの悲劇で止めを刺され、今日は完璧にサゲ・モードです。こんな時には明るくキャッチーなダンス・ミュージックでも聴いて立ち直ることにしようっと。

ということで今回は日本が世界に誇る才能テイ・トウワがいたハウス・ユニットDeee-Liteです。

Deee-LiteJungle DJ Towa Towa(テイ・トウワ)、ウクライナ人のSuper DJ Dimitry、オハイオ出身のボーカルLady Miss Kierの3人がNYで結成したハウス・ユニット。

1990年に発表したデビュー曲「Groove Is in the Heart」がいきなり全米ポップチャート第4位、全英ポップチャートの第2位の世界的大ヒットとなり、一躍注目のユニットとなります。さらに同年に発表したデビュー・アルバム『World Clique』からは「What Is Love?」「Power of Love」「E.S.P.」「Good Beat」等のダンス・ヒットが生まれました。

その後1992年に2ndアルバム『Infinity Within』、1994年に3rdアルバム『Dewdrops In the Garden』を発表しています。3rdアルバムの頃はテイ・トウワ氏は限定参加というカンジでしたが。

1987年に渡米し、1989年には本ブログで紹介したJungle Brothers『Done By The Forces Of Nature』へ参加するなど知る人ぞ知る存在となっていたテイ・トウワ氏ですが、その才能を広く世に知らしめたのが今日紹介する『World Clique』です。

大雑把にカテゴリー分けするとハウスということになりますが、アンダーグラウンドな音楽であったハウスをポピュラーな感覚で聴かせてくれたという点で、ダンス・ミュージック・シーンに大きなインパクトを与えてくれましたね。近未来を舞台にしたSFコメディの登場人物のようなジャケのキャラ立ちもサイコーでした。

Deee-Liteの最大の魅力は、ポップチャートにチャートインするようなキャッチーさを持ちながら、アングラ好きリスナーをも納得させるハウス、テクノ、Hip-Hop、ファンク等を融合したハイパーなダンス・ミュージックを聴かせてくれた点ですね。

この頃(1990年前後)って、Hip-Hopでもヒップ・ハウス的なものがあったし、ハウスとHip-Hopの距離感が近い時代だったからこそ、ハイブリッドなダンス・ミュージックが数多く生まれた気がしますね。逆に今の時代はジャンルの壁が音楽自体をつまらなくしている可能性があるかもしれませんね。

1st『World Clique』、2nd『World Clique』、3rd『Dewdrops In the Garden』全て持っていますし、その後のテイ・トウワ氏のアルバムやプロデュース作もそれなりに持っていますが、『World Clique』にあるNY的な雰囲気は格別な気がします。

アルバムにはBootsy CollinsMaceo ParkerFred Wesleyといったファンク好きにはたまらないメンツや、A Tribe Called QuestQ-Tipの参加も嬉しい限りですね。

フロアだけではなく、家で聴いても十分楽しめるハウス・アルバムだと思いマス。

オススメ曲を紹介しときやす。

「Deee-Lite Theme」
Hip-Hopテイストのアングラ感覚のダンス・チューン。ハイブリッド感がカッチョ良いですな。

「Good Beat」
クラブ・チャートでヒットしたNYハウスらしいガラージ・チューン。アングラ感覚を残しつつも、実にキャッチーに仕上がっています。

「Power of Love」
この曲もクラブ・ヒットしました。リズムのポコポコ感が気持ち良いアップ・チューン。この頃のハウスがお好きな方にはど真ん中の1曲ですね。

「Try Me On...I'm Very You」
Bootsy Collins、Maceo Parker、Fred Wesleyが参戦しファンクネスを高めてくれるハイパー・ダンス・チューン。

「Smile On」
Hip-Hopテイストのミッド・チューン。穏やかなハッピー感がいいですね。この曲にもBootsy Collins、Maceo Parker、Fred Wesleyが参加。

「What Is Love?」
クラブ・ヒットしたYMO世代のテイ・トウワ氏らしいテクノ感覚のダンス・チューン。僕もこの曲はかなり好きですね。

「World Clique」
クラブ・ヒットしたタイトル曲。ジャケ写真のようなハイパー感に溢れているハッピー・ダンス・チューン。

「E.S.P.」
この曲もクラブ・ヒットしました。僕の中では少し印象が薄いのですが...

「Groove Is in the Heart」
全米ポップチャート第4位、全英ポップチャート第2位となったグループ最大のヒット曲。全てにおいて完璧なハイパー・ダンス・チューン。印象的なベースライン、Q-Tipのおとぼけラップ、Maceo Parker、Fred Wesleyのホーン隊も盛り上げてくれます。これを聴いてハッピーになれない人は家で寝てましょう(笑)Herbie Hancock 「Bring Down The Birds」、Vernon Burch「Get Up」、Bel-Sha-Zaar, Tommy Genapopoluis & The Grecian Knights「Introduction」ネタ。

「Who Was That?」
Deee-Liteらしいハイパー&ハイブリッド感がいいカンジの1曲。おとぼけ&ハッピー・モードな感じがサイコーに好きですね。

実は本作を取り上げようと思ったきっかけは、売り出し中のアイドル女性R&BシンガーKeke Palmerのデビュー・アルバム『So Uncool』の収録曲「Footwurkin'」「Groove Is in the Heart」のあのベースラインを聴いたためです(正確には「Bring Down The Birds」ネタと言うべきなのでしょうが)。話が逸れますが、Keke Palmer『So Uncool』はキャッチーでなかなか楽しめますよ!
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2007年10月16日

Cream『Fresh Cream』

ロック史上最強トリオの衝撃デビュー作☆Cream『Fresh Cream』
Fresh Cream
発表年:1966年
ez的ジャンル:ダダイズム&インプロ系ブルース・ロック
気分は... :個性的な三色クリームはいかが?

久々にEric Clapton絡みの作品を!ということでCreamのデビュー・アルバム『Fresh Cream』です。

Creamの紹介は2ndアルバム『Disraeli Gears』に続き2回目となります。

Eric Clapton(g)、Jack Bruce(b)、Ginger Baker(ds)という3人で結成された伝説のUKロックのスーパートリオCream。そのデビュー・アルバムが本作『Fresh Cream』です。

グループ結成の経緯は、本作のプロデューサーであり、後にRSOレコードを設立することになるRobert Stigwoodが、経済的破綻の危機から脱するために、以前マネジメントしていたGraham Bond OrganizationJohn Mayall & Bluesbreakersという2つのバンドからメンバーを集めてグループを作ったという打算的なものだったみたいですね。

ということで、元Graham Bond OrganizationのGinger BakerClapton(元John Mayall & Bluesbreakers)を誘い、ClaptonがJack Bruce(GBOとBluesbreakersの両方に在籍)の参加を熱望し、結成されたのがCreamです。この時のClaptonはGinger BakerとJack Bruceが犬猿の仲だということを見抜けないKYさんだったようです(笑)

当初Claptonはシカゴ・ブルースの重鎮Buddy Guyとそのバック・バンド的なブルース・バンドを志向していたようですが、時代の波に沿ったダダイズム的感覚とインプロをセールス・ポイントとしたグループとしてデビューしました。

このデビュー・アルバム『Fresh Cream』は傑作の誉れ高い2nd『Disraeli Gears』、3rdアルバム『Wheels of Fire』といったアルバムと比較すると、一般的には評価が低いですよね。商業的には明らかに『Disraeli Gears』『Wheels of Fire』の後塵を拝しますが、内容的にはなかなかのものだと思います。

個人的には第1位『Disraeli Gears』、第2位『Fresh Cream』、第3位『Wheels of Fire』というカンジですかね。『Disraeli Gears』がサイケなパワー・ロックを楽しむアルバムだとすれば、本作は新たなブルース・ロックの息吹を堪能するアルバムだと思います。

『Fresh Cream』は、確かに『Disraeli Gears』、『Wheels of Fire』のような圧倒的なパワフルさは欠けるかもしれませんが、逆に新しい音楽を生み出そうとしている手探り感が魅力的な作品だと思います。

本作のインパクトを考えるならば、同じ1966年に発表された『Bluesbreakers With Eric Clapton』と聴き比べるのが一番わかりやすいと思います。『Bluesbreakers With Eric Clapton』もブルースとロックが融合した瞬間を捉えた名盤として評価が高いですが、そんな名盤と比較しても『Fresh Cream』は別次元のニュー・ロックという気がします。

正直、昔はそれ程好きではなかったのですが、最近かなり好きになってきました。その分、『Wheels of Fire』は滅多に聴きたいと思わなくなりましたね(笑)

なお、今日CDではオリジナル全10曲にデビュー・シングル「Wrapping Paper」、2ndシングル「I Feel Free」、それに「The Coffee Song」を加えた全13曲という構成になっています。今回もこの全13曲構成を前提にご紹介したいと思います。

内訳はカヴァー&トラッドが5曲、Jack Bruce作品が5曲、Ginger Baker作品が2曲、その他1曲ということでClaptonは1曲も書いていません。このあたりのバランスもなかなか興味深いですね。

全曲紹介しときやす。

「I Feel Free」
2ndシングルでUKチャート第11位となりました。「I'm So Glad」と並ぶ僕のお気に入り。イントロのカッチョ良さだけでノックアウトされてしまいマス。Creamならではのスピード感と独特のモワモワ・コーラスがクセになる1曲。Jack Bruce/Pete Brown作品。

数年前に日産自動車TIIDAのCMに使われていたので、それで記憶している人も多いのでは?ただし、あれはオリジナルにえらく忠実なカヴァーです。

「N.S.U.」
Jack Bruce作品。Ginger Bakerの例のドコドコ・ドラムとJack Bruceのボーカルの聴いていると、子供の時に歌っていた鬼ごっこの歌を思い出してしまうのは僕だけしょうか(笑)

「Sleepy Time Time」
オリジナルの中では一番この曲がオーソドックスなブルース・ロックですね。Claptonの“ウーマン・トーン”を堪能しましょう。Jack Bruce/Janet Godfrey作品。

「Dreaming」
Jack Bruce作品。Cream(というかJack Bruce)独特の浮遊感のあるボーカルがストレンジな雰囲気を醸し出しています。

「Sweet Wine」
Ginger Baker/Janet Godfrey作品。中盤以降の演奏がなかなかいいですね。

「Spoonful」
Willie Dixonのブルース・カヴァー。ライブでもお馴染みですね。ブルース・ロック好きにはたまらない1曲ですね。きっとClaptonはこの手の曲をもっとやりたかったのでしょうね。

「Cat's Squirrel」
邦題「猫とリス」というタイトルがプリティなトラッド・ナンバー(インスト)。デビュー・シングル「Wrapping Paper」のB面にもなりました。「Wrapping Paper」がかなりポップな仕上がりだったので、もう1曲はこのようなブルース・ロックらしいものを持ってきたのかもしれませんね。Jack Bruceのブルース・ハープがリスっぽいです(笑)

「Four Until Late」
Claptonが唯一リード・ボーカルをとっているのがRobert Johnsonのカヴァーというのがらしいです。アルバム中で一番リラックス・ムードの仕上がりですね。

「Rollin' and Tumblin'」
大御所Muddy Watersのブルース・カヴァー。このエキサイティングな演奏はCreamならではのものですね。かなりインパクトがあると思います。Jack Bruceのブルース・ハープがかなりカッチョ良いです!

「I'm So Glad」
アルバムで一番好きな曲がこのSkip Jamesのブルース・カヴァー。この約4分間の演奏の中にCreamの魅力が凝縮されている気がします。古典的なブルースをここまでカッチョ良く仕上げてしまうのはさすがですね。

「Toad」
Ginger Baker作品。僕がCreamで一番好きなナンバー「Swlabr」に通じるカッチョ良さを持っていますね。Creamの演奏(というかGinger Bakerのドラム)の凄まじさを魅せつけてくれます。「いやな奴」という邦題も印象に残ります。。

「The Coffee Song」
この曲はCDのみのボーナス・トラックです。後のHeads、Hands & FeetのメンバーTony Colton/Ray Smithの作品。Creamらしいダダイズム的な雰囲気を醸し出してくれる1曲です。

「Wrapping Paper」
記念すべきCreamのデビュー・シングル(Jack Bruce/Pete Brown作品)。このグループらしからぬ(?)ポップ・チューン。何でこんな曲をシングルにしたんですかね?まさに包装紙のように破って捨ててしまいそうな僕にはかなり退屈な1曲です。

Clapton好きでCreamを聴く僕ですが、聴くたびにグループを牽引していたのはJack Bruceであり、ド迫力の演奏を支えていたのはGinger Bakerということを再認識させられます。
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2007年10月15日

Barbara Mason『Transition』

フリーソウル・クラシック「World In A Crisis」収録☆Barbara Mason『Transition』
Transition
発表年:1974年
ez的ジャンル:シグマ・サウンド系ニューソウル
気分は... :ラグビーW杯佳境です!

日本代表が予選プールで敗退したため、日本では殆ど話題にならないラグビーW杯ですが、いよいよ佳境に入ってきました。

ラグビーに興味ない方にはピンと来ないかもしれませんが、予選プールが終わりベスト8が出揃った時点で、ベスト4はオーストラリア、ニュージーランド、南アフリカ、アルゼンチンという南半球が独占するというのが戦前の予想でしたが、オーストラリアをイングランドが破り、ニュージーランドをフランスが破るという番狂わせが起こり、かなり盛り上がっています。

そして、その両者がぶつかり合った準決勝「フランス対イングランド」が昨日未明行われました。
番狂わせ演じた両国、しかも開催国と前回優勝国という組み合わせに、サッカー仏W杯の決勝も行われたサンドニ・スタジアム(スタット・ド・フランス)は大盛り上がりでした。

試合自体はかなりシブイ地味な内容でしたが、後半イングランドが逆転で接戦を制し、史上初の連覇へ望みをつなげました。準決勝のもう1試合「南アフリカ対アルゼンチン」戦の勝者と決勝を戦うことになりますが、おそらく南アフリカとの戦いとなるでしょう。きっと下馬評で南アフリカ有利となると思うのですが、チャレンジャーとして臨めるだけ逆にイングランドにチャンスがあるように思います。

さて、今日はBarbara Mason『Transition』(1974年)の紹介です。

Barbara Masonは1947年フィラデルフィア生まれの女性R&Bシンガー。1965年に全米ポップチャート第5位、R&Bチャート第2位となった大ヒット「Yes, I'm Ready」で知られています。

1970年代に入ると個性派レーベルBuddahから『Give Me Your Love』(1973年)、『Lady Love』(1974年)、『Transition』(1974年)、『Love's the Thing』(1975年)といったアルバムを発表し、そこからCurtis Mayfieldの名曲カヴァー「Give Me Your Love」(全米R&Bチャート第9位)、Shirley Brown「Woman to Woman」(近年Jaguar Wrightがカヴァーしましたね)へのアンサー・ソング「From His Woman To You」(全米R&Bチャート第3位)、「Shackin' Up」(全米R&Bチャート第9位)といったシングル・ヒットが生まれました。

今日紹介する『Transition』(1974年)は、Buddahに残した4作品の中ではチャート・アクションが最も低調で、シングル・ヒットもなかったアルバムでした。その意味では長い間B級レディ・ソウル・アルバムという位置づけだったのかもしれませんね。

しかし、90年代に入り本作収録の「World In A Crisis」がフリーソウル・シーンで人気曲となったことで一躍注目の1枚となり、その再評価が高まりました。僕も勿論そのパターンで本作を知った次第です。恥ずかしながら、それまで本作はおろかBarbara Masonの名前さえ知りませんでした(笑)

僕の場合、本作をNorman Connors『You Are My Starship』、Michael Henderson『In The Night-Time』、The Futures『Castles In The Sky』、The Trammps『Legendary Zing Album』といったBuddah作品と一緒にまとめて購入した記憶があります。

本作の魅力の1つとして、シグマ ・サウンド・スタジオ録音ということがあると思います。 Ron Baker、Bobby Eli、Norman Harris、Earl Young、Barbara Ingram、Richard Rome、 Vincent Montana Jr.といったフィリー・ソウル好きにはお馴染みのメンツが参加し、魅惑のサウンドを聴かせてくれます。

Barbara Masonの場合、歌の上手さで聴かせるシンガーというよりも個性的な声のキュートさで聴かせるシンガーという気がしますが、魅惑のフィリー・サウンドが彼女の魅力をうまく引き出すことに成功していると思います。ニュー・ソウル的な雰囲気たっぷりなのもとてもグッドですね。

どうしても「World In A Crisis」1曲が注目されがちですが、それ以外の楽曲もなかなか佳作が揃っていると思います。1曲を除き、Barbara Mason自身のペンによるものです。

全曲紹介しときやす。

「Half Sister, Half Brother」
Curtis Mayfieldあたりが好きな人は気に入る曲なのでは?Norman Harrisのアレンジ&ギターが冴え渡っていますね。バックの女性コーラスもサイコーに雰囲気があってグッド!

「World In A Crisis」
前述のフリーソウル・クラシック。Marvin Gaye「What's Going On」の有効活用というカンジですね(笑)「What's Going On」好きの人には絶対オススメです。Vincent Montana Jr.のヴァイヴが何とも心地良いです。

「The Devil Is Busy」
「World In A Crisis」と同じくらい好きなのがこのパーカッジヴなラテン・グルーヴ。Santana「Black Magic Woman」がフィリーソウルになったカンジです(笑)

「People Don't Believe」
「Trigger Happy People」
Barbaraの個性的なボーカルが実にマッチしたニュー・ソウルの雰囲気たっぷりのミッド・グルーヴ2曲。

「Time Is Running Out」
「Miracle Man」
シグマ ・サウンド好きにとっては100%シグマ印の直球ど真ん中ってカンジの仕上がりの2曲。特にBobby Eliアレンジの「Miracle Man」は完璧に近い出来なのでは?

「I Believe And Have Not Seen」
本作唯一のスロウ。歌唱力のなさをキュートさで見事にカヴァー(?)しています(笑)

「Sunday Saint」
この曲のみBarbaraのオリジナルではありません。なかなかポップでキャッチーな仕上がりです。

正直、本作以外のBarbara Masonのアルバムをきちんと聴いたことがないのですが、Buddah時代の残りの3枚は機会があればチェックしたいですね。
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2007年10月14日

Caetano Veloso『Caetano』

MPBを代表するアーティストCaetano Velosoの80年代の絶好調ぶりを示す1枚☆Caetano Veloso『Caetano』
Caetano (José)
発表年:1987年
ez的ジャンル:進化形MPB
気分は... :常に先を見据えて...

今回はMPB(Musica Popular Brasileira)を代表するアーティストCaetano Velosoです。

Caetano Velosoは1942年ブラジルのバイーア生まれのシンガーソングライター。1960年代後半にGilberto Gilと共にボサノヴァと英米ロックにインスパイアされた新たな音楽のムーブメントであるトロピカリズモを先導し、Gilや妹Maria BethaniaGal Costaらと共にブラジル・ポピュラー・ミュージックの歴史に新たなページを加えました。

当時のブラジル軍事政権からは、その革命的な存在が危険分子と見なされ、逮捕、拘束された後に国外退去を命じらます。結果として、イギリスへの亡命を余儀なくされました(1972年にブラジルへ帰国)。

帰国後はコンスタントに作品を発表し続け、1980年代後半にはワールド・ミュージックの流れとも符合したのか、その人気が世界的に広がりトップ・アーティストとして再び大きな注目を集めるようになりました。

今回紹介するのはそんな1980年代のCaetano Velosoの絶好調ぶりを聴ける1枚『Caetano』(1987年)です。

どうしてもブラジル音楽と言うと、ボッサやブラジリアン・グルーヴといった表現で語られるオシャレな音楽をイメージしがちだと思います。実際僕自身もそういった音楽が大好きですし、そういった音楽を探している傾向が強いのは事実です。

でも、一方でそれがブラジル音楽の真髄かと言えば、それは少し違うような気がします。その意味ではCaetano Velosoという人のキャリアを追いかけると、ブラジル音楽の進化の流れというものが見えてくるように思えます。なんて言いながら、僕もCaetano Velosoのキャリアを全然フォローしきれていないのですが(笑)

本作は僕が最初に聴いたCaetano Velosoの作品です。
盛り上がりつつあったワールド・ミュージックへの興味や、Arto Lindsay率いるAmbitious Loversへの興味から本作へ辿り着いた記憶があります。

初めて本作を聴いた印象は、それ程オシャレではないけど、とてもブラジルらしさに溢れた味わい深いシンガーソングライターのアルバムというカンジでしたかね。また、かつては映画監督を目指し、地元新聞に映画コラムを書いていたCaetano Velosoの映画フリークぶりが反映された作品というのも本作の特徴としてよく語られています。

ブラジル音楽好きの人にとっては本作からバンドにCarlinhos Brownが加わっているのも注目ですね。

オススメ曲を紹介しときやす。

「Jose」
サウダージ感覚の静かで内省的な序曲。

「Eu Sou Neguinha?」
本曲はArto Lindsayへ捧げられています。前半は哀愁MPBというカンジですが、後半からArtoのグループAmbitious Loversを彷彿させるアヴァンギャルドなテイストが加わってきます。次作『Estrangeiro』(1989年)でCaetanoとArto Lindsay(Ambitious Lovers)は本格コラボすることになりますが、本曲はその伏線と言えるのかもしれませんね。

また、本作の裏ジャケに1本のカセット・テープが写っていますが、そのテープの中身は当時まだ未発表だったAmbitious Loversの人気曲「Copy Me」のデモ・テープなのだとか。

「Noite de Hotel」
本作の特徴の1つに映像感覚の音楽表現ということがよく言われますが、「ホテルの夜」と題された本作はそんな雰囲気たっぷりな1曲ですね。

「Depois Que O Ile Passar」
バイーアの伝統的アフリカ系ブラジリアン・パーカッション集団Ile Aiyeについて歌ったもの。パーカッション好きの僕としては、バイーアならではのパーカッシヴ・サウンドが楽しめるのがいいですね。

「Valsa de Uma Cidade」
サンバ・カンサゥンの名曲カヴァー。リオの街を讃える叙情感たっぷりのサウダージな1曲。

「"Vamo" Comer」
Luis Melodiaがゲスト参加している陽気で軽快な1曲。とてもワールド・ミュージック的なものを感じる曲ですね。「さぁ、食べよう」というタイトルは当時のCaetanoの様々な音楽の要素を貪欲に取り入れようとする制作意欲の高さを反映している気もします。

「Guilietta Masina」
タイトルはイタリア映画界の巨匠であった故Federico Fellini監督の妻であった女優Guilietta Masinaのことです。シネマティックかつエレガントな仕上がりがグッドです。

「O Ciume」
叙情感たっぷりのシンガーソングライターらしい1曲ですね。グッと胸に染み入りますな。妹Maria BethaniaもGal Costaとのデュエットというかたちでカヴァーしています。

「Fera Ferida」
ブラジルの国民的歌手Roberto Carlosの名曲カヴァー。サッカー好きの方のために書いておくと、元セレソンのロベカルとは勿論別人です(笑)曲自体が名曲だと思いますが、そこにCaetanoが新たな息吹を加えて、実に瑞々しく感動的な仕上がりになっていると思います。

「Ia Omim Bum」
Caetanoの愛妻Paula Lavigneに捧げられたインスト曲。

Caetano Velosoは実に多作な人ですが、僕が持っているのはCD5〜6枚程度。まだまだ未聴の名盤が数多くあるので、ぜひ聴いてみたいですね。
posted by ez at 00:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 1980年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする