2007年11月18日

Radiohead『Kid A』

ロックを否定したロック・バンドによる衝撃作♪Radiohead『Kid A』
Kid A
発表年:2000年
ez的ジャンル:虚無系オルタナ・ロック
気分は... :絶望の向こうにあるものは...

寒くなってくるとRadioheadが聴きたくなってくる....

年末にリリースされる4年ぶりの7thアルバム『In Rainbows』が期待されるRadioheadですが、今回は最近たまたま頻繁に聴いている『Kid A』(2000年)を紹介したいと思います。

Radioheadを紹介するのは『OK Computer』(1997年)に続き2回目となります。

正直、Radioheadに心酔する若いリスナーの方ほど、僕はRadioheadのことを詳しくは知らないし、思い入れも強くないのかもしれません。

それでも現在のロック・シーンに無関心な僕が唯一新作が気になるアーティスト、それがRadioheadです。何だかんだいって彼らの作品は殆どマイ・コレクションにあります。

今回、『Kid A』を取り上げたのは、最近たまに観る海外TVドラマ『ミディアム 霊能者アリソン・デュボア』シリーズの日本語版エンディングでオープニング曲「Everything in Its Right Place」が使われていたためです。それがきっかけで数年ぶりに『Kid A』を聴いたら、そのままハマっています(笑)

前作『OK Computer』(1997年)で電子楽器の導入により、美しくも儚い音空間の構築に成功したRadioheadが、よりポスト・ロック的な音響派の世界へ踏み込んだ作品が『Kid A』ですね。

『Kid A』というのは、近未来における“名も無き少年”、すなわちクローン人間のことを指していると理解しています(僕の理解が間違っていたならばゴメンナサイ)。

そうした人間としてのカタチを持ちながら、人間としてのココロを持たない(持てない)虚しさ、虚無感のようなものが、アルバム全体を支配しているように思えます。これが音の面でも無機質なサウンドとなって表れています。その意味では、絶望的なくらいにブルーになる作品ですね。

このあたりが、同じような儚いムードを持ちながらも、一方で美しくエモーショナルなサウンドに救われた『OK Computer』からの大きな変化だと思います。

個人的には、絶望的な『Kid A』よりも救いのある『OK Computer』の方が断然好きでした。なので、『OK Computer』は毎年寒い季節になると好んで聴いていましたが、『Kid A』は余程の気分にならないと聴くことはありませんでした。

しかし、今回久々に『Kid A』を通しで聴いてみて、このやり場のない虚無感に包まれたサウンドは21世紀に入ってからの時代の空気感を見事に表現しているように思えてきました。

本作『Kid A』の発売と前後して“ロックなんてゴミ音楽だ”と発言したリーダーThom Yorkeの心情は何となく理解できます。彼はロックそのものを否定したのではなく、時代の空気を表現しきれない形式的なロックを否定したかったのではと思います。

今の僕も現在のロック・シーンに対してかなり冷ややかです。Thom Yorkeの発言のように“ロックなんて退屈な音楽だ”というスタンスです。でも、ロックを拒絶しているわけではなく、この閉塞感を打ち破ってくれるロック作品の登場を心の何処かで待ち望んでいます。

Pink Floyd『Wish You Were Here』『Kid A』のようなアルバムが聴きたくなるなんて、今の僕の心は病んでいるのかもね(笑)

全曲紹介しときヤス。

「Everything in Its Right Place」
アルバム全体の雰囲気を象徴するオープニング曲。虚無感に充ちた無機質な電子音と声にならない心の叫びのようなThom Yorkeのヴォーカルが脳裏から離れなくなりますね。

前述の『ミディアム 霊能者アリソン・デュボア』のエンディング・テーマ以外にTom Cruise主演の映画『Vanilla Sky』のサントラにも収録されていますね。

「Kid A」
これはもう完璧にポスト・ロック/エレクトロニカの世界ですね。最期にKid Aの産声が聞こえますが、とても人工的なのが悲しくなりますね。

「National Anthem」
個人的には「Everything in Its Right Place」と並ぶお気に入り曲です。不気味に響くベース・ラインが印象的ですね。狂った世界の見せかけだけの盛り上がりみたいな虚しさがありますね。Pink Floyd的な世界に通じるものがありますね。

「How to Disappear Completely」
Thom Yorke自身かなりお気に入りの曲みたいですね。アコースティックなサウンドでアルバムの中では珍しく美しく穏やかな雰囲気を持っていますね。それでも♪I'm not here♪This isn't happening♪という歌詞に虚しさが漂っています。

「Treefingers」
この曲はアンビエントですね。Brian Enoでも聴いているみたい。

「Optimistic」
この曲では、しっかりギター・バンドとしてロックしていますね。強者が弱者を飲み込んでしまう、今でいう勝ち組、負け組の格差社会を痛烈に皮肉っていますね(曲タイトルからしてそうですからね)。♪If you try the best you can♪The best you can is good enough♪という歌詞が全く救いなっていないですからね。

「In Limbo」
個人的には、この曲もかなり印象的です。現実と空想を行き来する不透明感が見事に表現されていますね。クラブ系アーティストによるRadioheadのカヴァー・アルバム『Exit Music Songs With Radio Heads』の中でSa-ra Creative Partnersがカヴァーしています。

「Idioteque」
この曲は人気曲ですね。聴き手に突き刺さるような鋭利なビートは、押さえ込まれていた感情を爆発させたKid Aの心臓の鼓動のように聴こえてきます。

「Morning Bell」
絶望感に充ちた救いようのない曲ですね。だからこそ美しく聴こえるのかも?『Amnesiac』にも別バージョンが収録されていますが、本作のバージョンの方が居心地の悪い無機質感があるような気がします。

「Motion Picture Soundtrack」
エンディングでやっと絶望から救われます。しかし、それは赤いワインと睡眠薬による救い=自殺というもの。♪来世でまた会おう♪という言葉を残して....来世は虚無の世界ではないことを願って

最初にジャケの光景が映し出される本曲のPVも印象的でしたね。観ていて自分の心が泣いているのがわかります。

なんで、こんな絶望的なアルバムに惹かれるのでしょうね?
『Kid A』で描かれた虚しい世界は、今の世の中そのものなのかもしれません。

ちなみに村上春樹の長編小説『海辺のカフカ』に本作『Kid A』が出てくるようですね。

Thom Yorkeは村上春樹のファンであり、村上春樹もRadioheadファンであるという相思相愛の関係みたいですね。僕はまだ未読なのですが、ダークな世界観が『Kid A』と共通するのかもしれませんね。機会があれば読んでみたいと思います。
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2007年11月17日

Club Nouveau『Life, Love & Pain』

大ヒット「Lean on Me」1曲のみのアルバムというのは大間違い!☆Club Nouveau『Life, Love & Pain』
Life, Love & Pain
発表年:1986年
ez的ジャンル:リベンジ系シンセ・ファンク
気分は... :友を頼りにするのも悪くはない!

今回はリアルタイムで80年代洋楽を聴いていた人ならば、懐かしい名前のClub Nouveauの1stアルバム『Life, Love & Pain』です。

何と言っても、1986年の全米No.1ヒット「Lean on Me」(ご存知Bill Withersの名曲カヴァー)の印象が強いですよね。

また、後の人気プロデュース・チームFoster & McElroyDenzil FosterThomas McElroy)が在籍していたグループとして知られています。特に、Tony! Toni! Tone!En Vogueの諸作のプロデュースが彼らの名声を高めましたね。

プロデュースのみならず1989年にはFoster McElroy名義で『FM2』というアルバムを発表したり、1991年にはThe Nation Funktasiaという謎のユニットを結成してP-Funk魂に溢れたアルバム『In Search of the Last Trump of Funk』を発表しています。特に『In Search of the Last Trump of Funk』は、よく聴いた記憶がありますね。

さらにClub Nouveauを語るうえで欠かせないのが、Foster & McElroyと並ぶもう一人の重要人物Jay King存在です。

Jay Kingは元々はTimex Social Clubの大ヒット曲「Rumors」(1986年)の仕掛け人でした。この曲のデモ・テープを聴き、“絶対ヒットする!”と確信したJay Kingは、自らの私財を売るなどしてレコーディング費用を工面します・そして、メンバーをスタジオへ呼んで「Rumors」を録音しました。さらにお金を工面してレコードのプレスまで面倒みます。

さらにはプロモーション要員まで自ら資金で雇います。長い時間がかかりましたが、苦労が報われようやく「Rumors」はブレイクしました(全米で70万枚以上の売上)。しかし、彼らのヒットに目を付けてアプローチしてきた辣腕プロモーション・マンにグループを横取りされて、グループは他のレコード会社と契約を結んでしまいました。

こうして「Rumors」をヒットさせるために、全財産をつぎ込んだJay KingとTimex Social Clubは後味の悪いかたちで袂を分かちます。

そんなJay Kingがリベンジを誓ってFoster、McElroyらと結成したグループこそがClub Nouveauなのです。

Jay KingとTimex Social Clubをめぐる物語も踏まえて聴くと、さらに興味深く聴けるアルバムが本作『Life, Love & Pain』だと思います。

全米ポップ・チャート中心に聴いていた人にとっては、“「Lean on Me」のみの一発屋!”のイメージかもしれませんが、本作からはそれ以外にも「Jealousy」「Why You Treat Me So Bad」「Situation #9」という3曲のR&BチャートTop10ヒットが生まれています。

その意味ではアルバム全体を通して、聴きどころが多いアルバムだと思います。
“この手のサウンド古臭い!”なんて言っているうちに、時代は1回転してしまったかもしれませんよ(笑)

全曲紹介しときヤス。

「Jealousy」
全米R&Bチャート第8位となったシングル・ヒット曲。先に述べたように、Timex Social Clubを横取りされたJay Kingによるアンサー・ソングです。

♪もし僕が助けたならば、そのことは一生の借りになるだろうと、彼らは言った♪しかし、今では俺のことをナイフで脅す始末さ...♪といった内容の歌詞です。まさにジェラシー出まくりの1曲ですね。

サウンドは80年代らしいシンセ・サウンドが印象的な打ち込みファンクです。このチープなピコピコ感こそが80年代ファンクの魅力の1つなのでは?と思います。イントロでLalo Schifrin「Mission:Impossible」のテーマが引用されているのも好きですね。Lost Boyz「Lifestyles Of The Rich And Shameless」でサンプリングされています。

「Why You Treat Me So Bad」
「Lean on Me」に続く本作のハイライト。シングルとして全米R&Bチャート第2位となりました。哀愁感漂うミッド・テンポのファンク・チューンです。

この曲はリアルタイムで聴いた方以上に若いリスナーの方がサンプリング・ネタとして認知度が高いかもしれませんね。Cuete「I Feel For You」、Luniz「I Got Five On It」、Jennifer Lopez feat. Nas「I'm Gonna Be Alright」 、Puff Daddy feat. R. Kelly「Satisfy You」、Jessica Simpson「Irresistible」等でサンプリングされています。

「Lean on Me」
全米ポップ・チャート第1位、R&Bチャート第2位となったグループ最大のヒット曲。オリジナルは前述の通りBill Withers。オリジナルも1972年にポップ・チャート、R&Bチャート共に第1位となる大ヒットでした(アルバム『Still Bill』収録)。

ここではGo-Goスタイルに少しレゲエ・スタイルを取り入れた、この時代らしい仕上がりになっています。80年代後半はChuck Brown、Trouble Funk、E.U.等のGo-Goアーティストが盛り上がっていましたからね。ちなみに僕はE.U.が好きで本当は本ブログで紹介したいのですが、Amazonでの扱いがないので保留状態のままです。残念!

Timex Social Clubで煮え湯を飲まされたJay Kingの心情を踏まて、♪Lean on me, when you're not strong♪And I'll be your friend ♪I'll help you carry on♪なんて歌詞を聴くと、涙ナシには聴けません。

でも、この歌詞はJay Kingの心情のみならず、心に傷を負ったり、人生に悩む全ての方に勇気を与えてくれる名曲だと思います。ただし、そういった状況の時はClub NouveauよりもBill Withersのオリジナルを聴いた方がいいと思いますが(笑)

「Promises, Promises」
重心の低いビートがいい感じのファンク・チューン。シングル曲以外ならばこの曲が一番好きですね。Foster & McElroyの才能の片鱗を垣間見れる1曲なのでは?

「Situation #9」
この曲も全米R&Bチャート第4位となったヒット曲です。華やかさと哀愁ムードが同居するエレクトリック・ファンクに仕上がっています。

「Heavy on My Mind」
この頃のJam & Lewis風ですね。オリエンタル・テイストの仕上がりが印象的です。

「Let Me Go」
アルバム唯一のスロウ・チューン。なかなかしっとりと感動的な仕上がりとなっています。女性ボーカルがなかなかキュートで胸キュンになります。

「Pump It up (Reprise) 」
「Lean on Me」のリプライズです。くよくよしていても仕方がない。元気出さないとね!

このエントリーを書いていて思い出したのですが、Con Funk ShunMichael Cooperの1stソロ『Love Is Such a Funny Game』 (1987年)をプロデュースしていたのも、Jay King、Denzil Foster、Thomas McElroyの3人でした。ちなみにJay KingとMichael Cooperは家が向かい同士の知り合いだったようですね。正直、B級アルバムなのですが何故か好きでLP、CD共によく聴きました。Amazonで扱っていたので、そのうち紹介しますね。
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2007年11月16日

Isaac Hayes『...To Be Continued』

スキンヘッド&超低音がクセになる☆Isaac Hayes『...To Be Continued』
...To Be Continued
発表年:1970年
ez的ジャンル:ムーディー系シンフォニック・ソウル
気分は... :この続きは...

70年代前半に絶大な人気を誇った男性R&Bシンガー/キーボード奏者Isaac Hayesの登場です。

今回紹介するのは全米R&Bアルバム・チャートで11週連続No.1に輝いた作品『...To Be Continued』(1970年)です。

Isaac Hayesは1942年テネシー生まれ。60年代初めから名門Staxでキーボード奏者としてミュージシャン活動を始めます。David Porterと組んで、60年代Staxを代表するデュオ・グループSam & Daveのソングライティング/制作に携わったことで注目されるようになります。ちなみにSam & Daveの代表曲「Soul Man」もHayes/Porterのコンビによるものです。

1960年代末から本格的なソロ活動を開始します。
1969年の『Hot Buttered Soul』を皮切りに、70年代半ばあたりまでコンスタントに大ヒット・アルバムを発表し続けました。特に、70年代ブラック・シネマ旋風の先駆けとなったGordon Parks監督作品『Shaft(邦題:黒いジャガー)』(1971年)のサントラは映画/音楽の両シーンへ大きなインパクトを与えました。

その影響からか俳優、声優としても活動するようになります。詳しく書くのは避けますが、声優として参加した人気アニメ『サウスパーク』の降板は話題となりましたね。

また、Hip-Hop好きの方にとっては、サンプリング・ソースの供給源として欠かせない存在かもしれませんね。この強面のスキンヘッド自体がHip-Hop的なカンジですよね。

そんなIsaac Hayesの代表作と言えば、まずは『Shaft』(1971年)ということになるのでしょうが、敢えて『...To Be Continued』(1970年)を紹介したいと思います。

Isaac Hayes本来の魅力と言えば、セクシーな超低音ヴォーカル、ストリングスを全面に押し出したシンフォニック・ソウル、アルバム1枚で4、5曲の長尺ナンバーの三点セットだと思うので、それが堪能できる作品が本作『...To Be Continued』だと思います。

正直、この個性的なHayesワールドは、かなり好き/嫌いがハッキリ分かれるのではと思います。僕も正直最初は少しかったるい印象を受けたのですが、何度も聴いているうちに慣れてきて、知らぬ間に好きになっていました。

Hip-Hop好きの方には、サンプリングの定番曲「The Look of Love」「Ike's Mood I」の2曲が収録されています。

前述のように本作は全米R&Bアルバム・チャートで11週連続No.1という大ヒット作となりました。 あとはジャズ・アルバム・チャートでもNo.1になっているというのが興味深いですね。

Bar-KaysやMemphis Hornsによる好サポートも見逃せません。

全曲紹介しときヤス。

「Monologue: Ike's Rap I」
セクシーな低音の囁き声と共にアルバムは幕を開けます。

「Our Day Will Come」
Ruby and The Romanticsの1963年のヒット曲のカヴァー。オリジナルはボッサなソウル・チューンでしたが、ここではロマンティック・ムードたっぷりのシンフォニック・ソウルに仕上がっています。ラブ・ロマンス映画のエンディング曲にピッタリというカンジですね。

「The Look of Love」
Hal David/Burt Bacharach作品のカヴァー。オリジナルはDusty Springfieldです(OO7シリーズのパロディ作品『Casino Royal』の主題歌)。本ブログではDelfonicsや大ヒットしたSergio Mendes & Brasil'66のカヴァーを紹介済みですね。

まさに男の色気漂うHayesワールド全開の大人のセクシー・ソウルに仕上がっています。女性に人気があったというのが頷けますね。聴けば聴くほど、超低音ヴォーカルがエロく聴こえます(笑)中盤のソウルフルなインスト・パートもなかなか聴き応えがあります。

前述のように定番サンプリング・ネタですね。主なものとして、Allure「You're Gonna Love Me」、Ashanti「Rain on Me」、Smif-N-Wessun「Stand Strong」、L.L. Cool J「Hollis To Hollywood」、Snoop Dogg「Gz Up, Hoes Down」、Jay-Z「Can I Live」、Compton's Most Wanted「Niggaz Strugglin'」、Cam'ron「Diplomatic Poetry」、J.R. Writer「Freestyle」、Violadores del Verso「La Ciudad Vunca Duerme」等があります。

「Medley: Monologue:Ike's Mood I/You've Lost That Lovin' Feelin'」
「Ike's Mood I」と「You've Lost That Lovin' Feelin'」という強力な2曲のメドレーです。

「Ike's Mood I」は骨太リズムと美しいピアノ・リフが印象的なインスト。何と言っても定番サンプリング・ネタとして有名ですね。Biz Markie「Make the Music with Your Mouth, Biz」、Warren G.「Still Can't Fade It」、Foxy Brown「(Holy Matrimony) Letter to the Firm」、Alkaholiks「Mary Jane」、Mary J. Blige「I Love You」、L.L. Cool J「6 Minutes of Pleasure」、Frankie J feat. Mannie Fresh 「That Girl (Ike's Mood Remix)」等数多くの曲でサンプリングされています。

もう1曲の「You've Lost That Lovin' Feelin'」はご存知The Righteous Brothersの1965年のNo.1ヒットですね(Phil Spector/Barry Mann/Cynthia Weil作品)。ここでは壮大なシンフォニック・ソウルに仕上がっています。Hayesの野太い声はRighteous Brothersとの相性ピッタリというのは想像に難しくないですよね。特に後半の盛り上がりはいいですね。

「Runnin' Out of Fools」
Aretha Franklinのカヴァー(オリジナルは1964年のヒット)。甘ぁ〜い超低音ヴォーカルがピタッとハマったソウル・チューンに仕上がっています。ストリングスも抑え気味で一番フツーのソウルっぽいかも?

この続きは...????
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2007年11月15日

Bob Dylan『Bringing It All Back Home』

Dylanが初めてエレクトリック・スタイルを示した作品☆Bob Dylan『Bringing It All Back Home』
Bringing It All Back Home
発表年:1965年
ez的ジャンル:元祖フォーク・ロック
気分は... :全ては故郷に持ち帰る...

偉大なるロック詩人Bob Dylanの4回目の登場デス。

『Highway 61 Revisited』(1965年)、『Hard Rain』(1976年)『The Basement Tapes』(1975年)に続く4枚目は、最初のフォーク・ロック作品『Bringing It All Back Home』(1965年)です。

ファンの方はご存知の通り、1965年のニューポート・フォーク・フェスティバルでBob DylanPaul Betterfield's Bluse Bandを従えて登場し、初めてエレクトリック・サウンドをライブで披露したところ、コアなフォーク・ファンから大ブーイングを浴び、わずか3曲でステージを降りてしまいます。

この伝説となったステージで、Dylanのみならずロック全体が新たなステージへと足を踏み入れることとなります。そんな地殻変動のスタート地点となったアルバムが本作『Bringing It All Back Home』(1965年)です。

ジャケ好きの僕としては、本作のジャケは数あるDylan作品の中でもかなりお気に入りの1枚です。フォトグラファーDaniel Kramerによる幻想的な写真が、新たな境地に入ったDylanを象徴しているように思えます。Dylanの後ろに写っている女性は、DylanのマネージャーAlbert Grossmanの妻Sallyです。

オリジナルLPで言うA面がエレクトリック・サウンドを初めて導入したフォーク・ロック、B面が従来のフォーク・スタイルといった構成になっています。その意味で本作は最初のフォーク・ロック作品と呼ばれています。

この新スタイルと旧スタイルの共存というあたりがポピュラー音楽史としては重要なのかもしれませんね。でも、そんな大袈裟に考えなくても、純粋に粒揃いのDylan作品が並んでいるアルバムとして聴いても十分楽しめる作品だと思います。

「Subterranean Homesick Blues」「She Belongs to Me」「Maggie's Farm」「Mr. Tambourine Man」「It's All Over Now, Baby Blue」等々名曲がぎっしり詰まっています。

全曲紹介しときヤス。

「Subterranean Homesick Blues」
エレクトリック・スタイルのDylanに出会える最初の曲がコレです。PVを観ると一発で好きになっちゃいますよね。紙に書かれた歌詞をDylanが次々とめくっていくという単純なものですが、いつもこのPVを観ると“Dylanってラッパーじゃん!”って思えてきます。

Dylanのシングルとして初の全米Top40入りしました。ちなみにChuck Berry「Too Much Monkey Business」のリフを借用しています。Harry NilssonやRed Hot Chili Peppers等多数のアーティストがカヴァーしていますね。

「She Belongs to Me」
Dylanの最初の奥方Saraについて歌ったもの。そして、歌詞の中で語りかけている相手はかつての恋人Joan Baezという恋の三角関係の歌(?)。Dylanの世に広く紹介するのに一役買ったBaezにとって、Dylanのエレクトリック化は複雑な思いだったでしょうね。

Grateful DeadLeon Russell、Harry Connick, Jr.、Ricky Nelson等がカヴァーしています。

「Maggie's Farm」
♪働くのはいやだ〜♪と歌うこの労働階級ソングは、Dylanのエレクトリック化を象徴するナンバーです。この曲と言えば、先に述べた1965年のニューポート・フォーク・フェスティバルのオープニング・ナンバーとして有名ですね。本ブログではDylanのロック魂が剥き出しになった音楽巡礼ライブ『Hard Rain』(1976年)のバージョンを以前に紹介しました。Rage Against the Machine、Grateful Dead等がカヴァーしています。

「Love Minus Zero/No Limit」
個人的にはアルバムで一番好きな曲かも?♪She knows there's no success like failure♪And that failure's no success at all♪う〜ん深いなぁ。失敗なくして成功はない!でも本物の成功をつかまないとねぇ。今の僕にはズシリと響きます。Walker Brothersがカヴァーしていました。

「Outlaw Blues」
♪Don't ask me nothin' about nothin',I just might tell you the truth(何もないことについて何も聞かないで。本当のことしか言えないのだから)♪という歌詞が深いですな。

「On the Road Again」
「Bob Dylan's 115th Dream」
この2曲あたりはエレクトリック・スタイルをスムーズに消化しているDylanの姿が窺えますね。特にリラックスした雰囲気のDylanが快調に飛ばしてくれる「Bob Dylan's 115th Dream」がいいですね。

「Mr. Tambourine Man」
ここからは従来のフォーク・スタイルに戻っています。本曲はThe Byrdsの大ヒットでお馴染みの名曲ですね。Byrdsのエントリーでも書きましたが、昔はどうもこのDylanのオリジナルが好きになれませんでした。どう考えてもBeatles風のサウンド、3声ハーモニーで仕上げたByrdsヴァージョンが数段上に聴こえてしまいましたね。それが今ではこのオリジナルが味わい深く感じるのだから、僕もオヤジになったのかな(笑)

「It's Alright, Ma (I'm Only Bleeding) 」
Dylanらしい強烈なメッセージを感じる曲ですね。♪それでいいんだ。おっかさん〜♪て訳してしまうと興醒めかもしれませんが(笑)映画『Easy Rider』のサントラにおけるRoger McGuinnのカヴァーが有名ですね。

「It's All Over Now, Baby Blue」
先に述べた1965年のニューポート・フォーク・フェスティバルで、大ブーイングを浴びてステージを降りた後、ステージへ再び戻ったDylanがアコースティック・ギターを抱えて歌った曲として有名ですよね。そう考えると♪全部終わったんだ♪というメッセージは強烈ですよね。

この曲もThe Byrds、Them(Van Morrisonをフィーチャー)、The 13th Floor Elevators、Grateful Dead、Marianne Faithfull、Bryan Ferry、Echo & the Bunnymen、Hole、Matthew Sweet & Susanna Hoffs等多数のアーティストがカヴァーしていますね。

本作で新たな方向性に確信を持ったDylanは、さらにエレクトリック・スタイルを推し進めた次作『Highway 61 Revisited』(1965年)でフォーク・ロックのスタイルを確立することとなります。
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2007年11月14日

The Brand New Heavies『Heavy Rhyme Experience: Vol. 1』

Acid Jazzブームを代表するグループBNHとラッパー、レゲエMC達の共演☆The Brand New Heavies『Heavy Rhyme Experience: Vol. 1』
Heavy Rhyme Experience, Vol. 1
発表年:1992年
ez的ジャンル:Acid Jazz meets Hip-Hop
気分は... :そろそろ元気出すぞ!

そろそろ下げモードから脱しないと!
こんな時はノリのいい音楽を聴こうっと!

ということで90年代前半のAcid Jazzブームを代表するグループThe Brand New Heavies(BNH)の2回目の登場です。

デビュー作『The Brand New Heavies』(1991年)に続いて発表されたアルバム『Heavy Rhyme Experience: Vol. 1』(1992年)です。

本作ではUKのAcid Jazzシーンを牽引していたBNHがアメリカに渡り、10組のラッパー、レゲエMCと共演しています。

ということで他のBNHのアルバムとはかなり異なる仕上がりになっています。その意味で僕の中では1994年発表の『Brother Sister』が2ndアルバムで、本作『Heavy Rhyme Experience: Vol. 1』は一種の企画アルバムという位置づけですかね。

参加したラッパー、レゲエMCは、Main SourceGang StarrGrand PubaMasta AceJamalskiKool G RapBlack SheepEd O.GTigerThe Pharcydeの10組。このメンツを眺めただけで興味津々のアルバムという気がしませんか?当時の僕は必ずしもこのメンツの豪華さをちゃんと把握していたわけではありませんでしたが(笑)

生演奏のジャズ・バンドがラッパーをフィーチャーするスタイルは、今でこそ珍しくありませんが当時はかなり新鮮に映りましたね。UKクラブ・シーンとUSのHip-Hopが結びついたアルバムということで、相当エキサイティングして聴いていた記憶があります。

ゲストのラッパー、レゲエMC達を主役に据えて、BNH自体はサポート役に徹しているのが実にいい結果につながっていると思います。

全曲紹介しときヤス。

「Bonafied Funk」
オープニングはLarge Professor、Sir Scratch、K-Cutの3人組Main Sourceをフィーチャー。前年に本ブログでも紹介した名作『Breaking Atoms』を発表した彼らをBNHがファンクネス溢れる演奏で好サポートしています。

「It's Gettin' Hectic」
GuruDJ Premier(Primo)の90年代Hip-Hop最強ユニットGang Starrをフィーチャー。GuruのラップとAcid Jazzの組み合わせと言えば、本作の翌年に発表された『Jazzmatazz』(1993年)を思い出してしまいますが、本曲はそのプロローグといったカンジかもしれませんね。

「Who Makes the Loot?」
Grand Pubaをフィーチャー。余裕たっぷりのGrand Pubaのラップをファンキーな演奏で盛り上げるミッド・チューンに仕上がっています。

「Wake Me When I'm Dead」
Masta Aceをフィーチャー。Masta Aceのスムースなフロウにピタッと呼応するバックのグルーヴ感のある演奏が実にいいカンジですね。The Headhunters「God Made Me Funky」ネタ。

「Jump N' Move」
レゲエMCのJamalskiをフィーチャー。ラガマフィンな仕上がりがアルバム全体の中でもいいアクセントになっていますね。BNHの演奏もキレがあっていいですね。

「Death Threat」
Kool G Rapをフィーチャー。BNH自体の演奏としてはこの曲が一番カッチョ良いかも?Simon Bartholomewのギターがキマりすぎですね。Kool G Rapも迫力のあるラップを

「State of Yo」
Native Tongues一派のBlack Sheepをフィーチャー。この頃からジャジーなHip-Hopを披露していたBlack SheepとBNHの組み合わせは相性バッチリといったカンジですね。

「Do Whatta I Gotta Do」
Ed O.Gをフィーチャー。ここからラスト3曲はアクセル全開でBNHも飛ばしまくってくれます。スピード感溢れるライムと演奏がスリリングでカッチョ良いですね。

「Whatgabouthat」
レゲエMCのTigerをフィーチャー。実に臨場感あふれるファンキー・グルーヴに仕上がっています。僕はレゲエMCって少し苦手なのですが、これなら全然問題ありません。

「Soul Flower」
ラストはThe Pharcydeをフィーチャー。僕にとってのベストトラックがコレ。元気一杯にハジけまくってるPharcydeのラップにBNHのキレキレの演奏が加わり、文句ナシのハッピー・グルーヴに仕上がっています。Pharcyde好きの方はご存知の通り、彼らのデビュー・アルバム『Bizarre Ride II』(1992年)にも本曲の別ヴバージョンが収めれていますね。そちらもサイコーですのでセットでぜひどうぞ!

しばらく下げモードでしたが、「Soul Flower」を聴いたら一発で元気が出てきました!
よ〜し!また今日から頑張るぞ!
posted by ez at 00:02| Comment(2) | TrackBack(0) | 1990年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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