2007年11月01日

Speech『1998 Hoopla』

もはやHip-Hopアルバムという枠には収まらないと2ndアルバム☆Speech『1998 Hoopla』
HOOPLA
発表年:1998年
ez的ジャンル:オーガニック系Hip-Hop&ソウル
気分は... :人生における大切なもの...

Arrested DevelopmentのリーダーSpeechの2ndソロ・アルバム『1998 Hoopla』(1998年)です。

Arrested Developmentのデビューアルバム『3 Years, 5 Months & 2 Days in the Life Of...』(1992年)は、全世界で700万枚以上を超す大ヒットを記録し、「Tennessee」「People Everyday」「Mr. Wendal」という3曲の全米Top10ヒットを送り込みました。

さらに、第32回グラミー賞でベスト・ニュー・アーティスト(Hip-Hopアーティストとしては初の快挙)、ベスト・ラップ・パフォーマンスの二冠に輝き、Arrested Developmentは瞬く間にトップ・アーティストの仲間入りを果たすことになります。

南部のアーシーで大らかな雰囲気がそのままライムやサウンドとなった“大地のHip-Hop”は、それまでの“ウエスト”や“イースト”のHip-Hopとは明らかに異なるものでしたね。

しかし、2ndアルバム『Zingalamaduni』(1994年)を発表した翌1995年にはグループはあっけなく解散してしまいます。そして、リーダーのSpeechはソロ活動へと向かったのでした。

ソロ最初の楽曲は、Marvin Gayeのトリビュート・アルバム『Inner City Blues』での名曲「What's Going On」をモチーフにした「Like Marvin Gaye Said」となります。さらに同曲を含む1stソロ・アルバム『Speech』(1996年)を発表し、健在ぶりを示してくれました。

そして、発表された2ndアルバムが今回紹介する『1998 Hoopla』(1998年)です。

個人的な感想ではSpeechが音楽シーンのメイン・ストリームに位置していたのは前作『Speech』までだと思います。本作『1998 Hoopla』からは、自分の伝えたい音楽をマイ・ペースで作るというスタンスが色濃くなった気がします。

また、内容的にも前作『Speech』まではHip-Hopアルバムと呼べるけど、本作『1998 Hoopla』以降の作品はHip-Hopアルバムと呼ぶより、オーガニック・ソウルあるいは黒人SSWのアルバムと呼んだ方がしっくりくるかもしれません。

本作のライナーノーツに、「このアルバムでは、第一に人生におけるシンプルなこと、今の世の中で見過ごされがちな日常の事柄について語っているだ。僕は自分のパーソナルな生活の中でスピリチュアルになって曲を書きたいと思っていたし、成長したいと思っているんだ」というSpeechの言葉が紹介されています。

そんなSpeechの思いが、気負うことなく、自然に音楽に反映されているのが本作『1998 Hoopla』だという気がします。前作『Speech』の時にもリラックスした雰囲気を感じましたが、それ以上に等身大のSpeechに出会える気がします。きっと、彼が前年にクリスチャンになったことが大きく影響しているように思えます。

30代後半あたりから、シンプルに生きる、等身大に生きるということを大切にしてきた僕にとって、神の教えを受け、人生において最も大切なものを再発見したSpeechが伝えたいメッセージは、かなり共感できる部分が多いですね。

シンプルに生きる!そんな生き方も悪くはないと思わせてくれるアルバムです。

オススメ曲を紹介しときやす。

「Clocks in Sync With Mine」
アーシー感覚のフォーキーなHip-Hopチューン。このシンプルかつリラックスした雰囲気は、案外Jack Johnsonなんかとも共通しているかも?まぁ、Jack Johnsonが海の香りであるのに対して、コチラは土の匂いという感じですが。

「The Hey Song」
本作のハイライト曲の1つ。4 Non Blondes「What's Up」がモチーフになっています。日常の忙しなさから開放されたリラックス感を満喫できるなHip-Hopチューンに仕上がっています。オリジナルとは別にライムが少し異なるRemixも収録されています。

「Movin' On」
♪僕は前進し続ける♪光に向かって♪もうすぐ自分の道を探し出すのさ♪力強く、正しい行いをして、自分の夢を叶えてみせる♪という歌詞のように、神の啓示を受けたSpeechの迷いのない生き方が反映された1曲。曲自体もなかなかグルーヴ感のあるオーガニックなR&Bチューンに仕上がっています。

「I'm Just An M.C.」
カリブ海出身や西アフリカ出身のMCも参加し、カリビアン&アフリカン・テイストな仕上がりになっています。こうしたカリブ志向、アフリカ志向は次作『Spiritual People 』でより顕著になりますね。アメリカのTV番組『Schoolhouse Rock』の収録曲「I'm Just a Bill」が元ネタです。

「Slave of It All」
パーカッシヴなミッド・チューン。Speechと共にリード・ヴォーカルを務める女性シンガーNadirah Shakoorがいいですね。

「Sumtimes I Do」
Speechが妻や子供に対して、時々ヒドイ奴になってしまうことを♪時々やってしまうのさ♪と歌っています。まぁ、人間なんだからそんこともあるわな。まさに等身大のSpeechに出会える1曲です。Speechの愛息Jahiの声も聞けます!

「Real Love」
僕の一番のお気に入り曲。僕は今まで落ち込んだ時、♪僕が感じている辛い時間、それを癒してくれるのは真実の愛だけ♪と歌うこの曲に何度となく救われてきた気がします。今もこのエントリーを書きながら曲を聴いていたら、感動のあまり訳もなく目がウルウルしてきました。

「The List Goes On」
この曲はボーナス・トラックです。クリスチャンになったことによるSpeech自身のさまざまな心の変化が綴られています。



このアルバムを聴いていると、なんか温泉にでも浸かりながら、一度自分の生き方についてじっくり考えてみたくなりますな。

僕が持っているのは国内盤ですが、日本から一年遅れで発売された米国盤はジャケや曲目が一部異なっています。

本作以降、本国アメリカでは一作ごとに存在が地味になっていったのに対して、日本では根強い人気を保っていた気がします。メロディアスな作品が好きな日本人の感性に合っているのかもしれませんね。

1st『Speech』(1996年)、3rd『Spiritual People』(2000年)も長きに渡り僕の愛聴盤となっています。特に『Spiritual People』はかなりの傑作だと思います。これらも後日紹介したいと思います。
posted by ez at 00:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 1990年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする