2007年11月05日

The Allman Brothers Band『Eat A Peach』

“スカイドッグ”最期の輝き☆The Allman Brothers Band『Eat A Peach』
Eat a Peach
発表年:1972年
ez的ジャンル:奔放系サザンロック
気分は... :桃を食べましょ!

先週はTVで印象的なサスペンス映画をたまたま2本観ました。

『Ascenseur pour I'Echafaud(死刑台のエレベーター)』(1957年)と『The Usual Suspects』(1995年)の2本です。どちらも何度も観ているのですが、何度観ても惹かれる映画ですね。

Louis Malle監督、Maurice Ronet、Jeanne Moreau主演の『Ascenseur pour I'Echafaud(死刑台のエレベーター)』は、パリを舞台に完全犯罪を試みた犯人が運悪くエレベーターに閉じこめられ、そこからさまざまな男と女の運命が変わっていくというヌーヴェルヴァーグを代表する映画です。モノクロ・フィルムの何とも言えない味わいと、Miles Davisによる音楽が実に印象的な1本ですね。

Bryan Singer監督、Kevin Spacey出演の『The Usual Suspects』は、謎の男“カイザー・ソゼ(Keyser Soze)”を巡る犯罪サスペンス。真実と嘘が交錯する中での大どんでん返しには何度観てもゾクゾクしますね。『Saw(ソウ)』シリーズが好きな方なんかは絶対ハマると思います。

ちなみにKevin Spaceyは本作でアカデミー助演男優賞を受賞し、スター俳優への道を歩み始めます。確かに本作でKevin Spaceyはその演技力を存分に見せつけてくれます。ただ、僕にはどう見ても助演ではなく主演に見えるのですが...

どうやら、僕はこの手のサスペンス映画が異常に好きみたいです。きっと、どんでん返しで映画の雰囲気がガラッと変わる瞬間のゾクゾク感や、どんでん返しを先読みして的中させた時に快感がたまらないのでしょうね。

ということで、サスペンス映画に全く関係ないThe Allman Brothers Bandの紹介です。本ブログ2回目の登場です。

前回はロック史上屈指のライブアルバム『At Fillmore East』(1971年)でしたが、今回はバイク事故で急逝した“スカイドッグ”Duane Allmanの遺作となったアルバム『Eat A Peach』(1972年)です。

遺作と言っても、Duane存命時のスタジオ録音、Duane死去後のスタジオ録音、『At Fillmore East』のアウトテイクが混在した変則的なアルバムです。

アルバムは当然ながら、“Dedicated to A Brother Duane Allman”というかたちでDuane Allmanへ捧げられています。

メンバーの中心人物が突如としていなくなった悲しみと混乱の中で制作されたアルバムですが、個人的にはAllman Brothers Bandのアルバムの中で一番好きかもしれません。

“スカイドッグ”の遺作であると同時に追悼作であり、しかも名ライブ盤『At Fillmore East』のアウトテイクが聴けて、さらにDickey Betts(g)、Gregg Allman(key)、Berry Oakley(b)、Jai Johanny "Jaimoe" Johanson(ds)、Butch Trucks(ds)という残った5人のメンバーによる新生Allman Brothers Bandのサウンドが聴けるという、不謹慎な表現ですが“1粒で4度美味しい”アルバムになっていると思います。

ちなみにアルバム・タイトルの“Eat A Peach”とは、グループの本拠地であるジョージア州の別名“Peach State”と呼ばれることから付けられたらしいです。

全曲紹介しときやす。

「Ain't Wastin' Time No More」
最初の3曲(LP時代のA面)は、残ったメンバー5名によるレコーディングです。「Ain't Wastin' Time No More」は新生Allman Brothersのお披露目的なナンバー。「時はもう無駄に出来ない」という邦題のごとく、Duane Allmanの死という大きな悲しみを必要以上に引きずらず、新たなグループの方向性を示そうとするグループの決意が感じられるオープニングです。Greggのヴォーカルを中心に据えたキャッチーなスワンプ・チューンに仕上っています。Greggのヴォーカルに絡み付くDickey Bettsのギターも印象的です。

「Brers in A Minor」
Dickey Betts作のインスト。Dickey Bettsのギターを中心にスピリチュアルな展開の前半から一転し、後半はエキゾチックなグルーヴ感がカッチョ良い豪快なバンド・アンサンブルを堪能できます。実はこのエキサイティングな後半部分がアルバムで一番好きだったりします。

「Melissa」
Gregg Allmanらしいレイドバック感覚に溢れた人気曲。この哀愁メロディとルーズなヴォーカルが何とも味わい深いですね。Dickey Bettsのギターも泣かせてくれますね。翌年に発表されるGreggの1stソロ『Laid Back』に通じる仕上がりですね。

「Mountain Jam」
本曲はDuane存命時のFillmore Eastでのライヴです。まぁ、本アルバムのハイライトということになると、Donovan「There Is a Mountain」をベースにした30分を超えるこのジャム・セッションになるのでしょうね。普通ならば、30分を超えるジャム・セッションなんて退屈して途中でスキップしてしまう僕なのですが、意外と飽きずに聴けてしまうのは不思議ですね。重すぎず、軽すぎず、適度にリラックス、適度にエキサイティングみたいなさじ加減が絶妙なのでしょうね。

「One Way Out」
この曲もFillmore Eastでのライヴ。ブルース・ハーピストSonny Boy Williamsonのカヴァー。DuaneのDickey Bettsのギターの絡みも含めて、実に軽快な仕上がりですね。

「Trouble No More」
この曲もFillmore Eastでのライヴ。こちらはMcKinley MorganfieldことMuddy Watersのカヴァー。Duaneのギターを堪能するには、こうしたブルース・ナンバーが持って来いかもしれませんね。

「Stand Back」
Duane存命時のスタジオ録音。Gregg AllmanとBerry Oakleyの作品です。Berry Oakleyも次作『Brothers And Sisters』のレコーディング中に、Duane同様にオートバイで事故死してしまうわけですが、そんな思いでDuaneおよびOakleyのプレイを聴いていると切なくなりますね。中身自体はAllman Brothersらしい土臭さが立ち込めてくるスワンピーな仕上がりになっています。「Brers in A Minor」と並ぶ僕のお気に入り。

「Blue Sky」
Dickey Bettsがソングライティングのみならず、初めてリード・ヴォーカルにも挑戦したナンバー。なんでもBlue Skyとは、後にDickey Bettsの奥方となるカナダ人女性のことなのだとか。朗らかなムードとどことなく頼りないDickeyのボーカルが印象的なカントリー・ロックに仕上がっています。

次作『Brothers And Sisters』から生まれた全米ポップ・チャートNo.1に輝いた大ヒット曲「Ramblin Man」の登場を予感させる曲ですね。個人的には、このホンワカ路線はイマイチ好きではありませんが(笑)

「Little Martha」
DuaneとDickeyのアコースティック・ギターのみのインスト曲。実に温かみのある演奏を聴きながら、Duane Allmanという不世出のミュージシャンを偲びましょう。

そう言えば桃を最近あまり食べていない気がするなぁ。
posted by ez at 00:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 1970年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする