発表年:1973年
ez的ジャンル:孤独系プログレ・ロック
気分は... :心の闇と向き合うことにしよう...
気分は最悪...
僕は基本的に楽天的に生きていると思う。
しかし、時々自分でも驚くほどに心の闇を持っていることにも気付く。
今日はそんなモードかもしれない。
考えれば考えるほど、嫌なことばかりが思い浮かぶ。
こんな時に無理矢理ポジティヴになろうとはせず、しばらく思考を停止して心の闇と向き合うことにしよう。
Pink Floydの2回目の登場です。1975年のアルバム『Wish You Were Here』...今ではプログレなど殆ど聞かない僕ですが、今日の僕はこのアルバムを欲しているようです。
プログレ・ファンの方はご存知の通り、グループの評価を決定付けたモンスター・アルバム『Dark Side Of The Moon』(1973年)から約2年間の沈黙を破り発表された本作『Wish You Were Here(邦題:炎)』は、グループのフロントマンだったSyd Barrettへのオマージュの色合いが濃い作品として知られていますね。
ご存知の通り、精神に異常をきたしたSyd Barrettは1968年にグループを脱退し、その後数枚のソロ作を発表するものの、月の裏側の狂気の世界から戻ってくることはなく、昨年60歳で死去しました。
また、本作は『Dark Side Of The Moon』でプログレシッヴ・ロックの頂点を極めてしまったグループが次にどんな進化を遂げるのか、大きな関心を集めたアルバムだったようです。全く楽器を使用しないアルバムを発表するという噂が流れ、実際に彼らがそうした試みをしていたというのは有名な話ですね。当時グループにはかなりのプレッシャーがかかっていたものと思われます。
結果として、そうした試みは日の目を見ることなく、発表された作品が本作『Wish You Were Here』です。UK、US共にアルバム・チャートの第1位となったものの、内容的には地味なものであり、“Floydは進化を止めてしまった”といった類の辛口評価が当時は多かったようです。
僕もリアルタイムで聴いたわけではありませんでしたが、『Dark Side Of The Moon』にハマり、その流れで本作を購入したものの、少し拍子抜けした記憶があります。
でも、そんなアルバムが今でもたまに聴きたくなります。
本作を貫く“不在”というテーマが僕を惹きつけるのでしょうね。
この孤独で空虚な雰囲気を欲しているのかもしれません。
あとは狂気の世界へ足を踏み入れてしまったSyd Barrettへの想いがあるのでしょうね。本作を聴いていると、Syd Barrettの虚ろな表情が脳裏に浮かんできます。人間なんてふとしたことで心のバランスを崩し、簡単に狂ったダイヤモンドになってしまうのかもしれない...と
全曲紹介しときヤス。
「Shine on You Crazy Diamond, Pts. 1-5」
まさに狂ったダイヤモンドとなってしまったSyd Barrettへのオマージュ。本曲の録音中にSydは突然スタジオに現れて、メンバーに“何か手伝うことはできないか”と申し出たエピソードは有名です。もはやSydに出来ることなど何もありませんでしたが、それでもメンバーにとってSydは輝き続けるダイヤモンドだったのでしょうね。
この美しく、静かで、虚しい音空間に逆に狂気の世界を感じてしまいますね。David Gilmourのブルース・フィーリングに溢れたギターと『Dark Side Of The Moon』に続き参加のDick Parryのサックス・ソロが印象的です。
「Welcome to the Machine」
後の大作『The Wall』(1979年)を予感させるナンバー。成功とは裏腹に苦悩するグループの様子が窺えますね。
「Have a Cigar」
この曲ではゲスト参加のRoy Harperがヴォーカルを務めています。グループの成功を自ら皮肉ったような歌詞が印象的ですよね。この曲のDavid Gilmourのギターはカッチョ良いですね。
「Wish You Were Here」
タイトル曲は悲しく叙情的なアコースティック・チューンに仕上がっています。このYouとはSyd Barrettのことでしょうね。♪今でも、お前は分かっているのか?天国と地獄、青空と苦痛の違いを...♪という歌詞を聴くたびに胸が痛くなりますね。
「Shine on You Crazy Diamond, Pts. 6-9」
そして再び静かで、虚しい世界へ...狂ったダイヤモンドは美しく輝き、そして再び暗闇の世界へと消えていく...
アート集団Hipgnosisによるジャケットも実に虚しいですね。
「あなたがここにいてほしい」という邦題とは逆に、「あなたがここにいないでほしい(=不在)」という本作のテーマを、すべて不在で現実ではない、見せかけの人間関係というかたちで見事に表現していますね。ちなみにジャケの炎の男はスタントマンを使い、実際に燃やしているのだとか。
昔とは異なり、今では本作の再評価が高まっているみたいですね。
今振り返ると案外聴きやすいアルバムなのかもしれませんな。
こんな下げモードの時はとことん落ち込もう!
そうすれば後は上昇するのみ!何とかなるさ!