2007年11月19日

Archie Shepp『Attica Blues』

ニュー・ブラック・ミュージックに目覚めた“闘う”テナー・サックス奏者☆Archie Shepp『Attica Blues』
Attica Blues (Dig)
発表年:1972年
ez的ジャンル:ニュー・ブラック・ミュージック系ジャズ
気分は... :立ち上がれ!

今回はアフリカン・アメリカン活動家としても知られる“闘う”テナー・サックス奏者Archie Sheppの紹介です。

Archie Sheppは1937年フロリダ州生まれ。1960年あたりからCecil Taylorと活動し、1964年にはJohn Coltraneの推薦によりimpulse!と契約し、『Four for Trane』(1964年)、『Fire Music』(1965年)、『On This Night』(1965年)、『Live At The Donaueschingen Music Festival』(1967年)等John Coltraneの流れを汲んだニュー・ジャズをリードする作品を発表します。

“ニュー・ブラック・ミュージック”を提唱したSheppは、アフリカン・アメリカンとして人種差別と闘う姿勢を鮮明に見せたミュージシャンとしても知られていますね。

今回はそんなShepp作品の中から『Attica Blues』(1972年)をセレクト。

本作は1969年にヨーロッパに渡ったSheppが2年間の活動を経てアメリカへ帰国し、impulse!へ復帰後2作目のアルバムです。復帰第1作『Things Have Got To Change』(1971年)で、かつてのフリー・ジャズ的な作風からブラック・ミュージック的なアプローチへと大きな変貌を遂げたSheppですが、本作『Attica Blues』でもその路線をさらに推し進めています。

実質全7曲中5曲がヴォーカル入りです。特に、オープニングの「Attica Blues」あたりを聴くと、ジャズ・アルバムというよりもニューソウルのアルバムというカンジですね。実際、黒人としての自覚を訴えかけてブラック・パワーとして結実させるという視点は、ニューソウル的アプローチと共通するものがあると思います。

ジャケ写真の左上に、メキシコ・オリンピック男子200Mの表彰式における有名な金メダリストTommie Smith、銅メダリストJohn Carlosによるブラックパワー・サリュート(拳を高く掲げ黒人差別に抗議する示威行為)の写真が掲げられているあたりも、このアルバムを象徴していますね。

そんな作品に参加したメンバーは、Archie Shepp(ts、ss)、Joe Lee Wilson(vo)、Marion Brown(as)、Cal Massey(flu)、Cornell Dupree(g)、Jimmy Garrison(b)、Beaver Harris(ds)、Billy Higgins(ds)、Walter Davis Jr.(p、el-p)、Dave Burrell(el-p)等です。

Donny Hathawayあたりがお好きになR&B/Soul好きの方にもオススメです。

オススメ曲を紹介しときやす。

「Attica Blues」
1971年に起きたニューヨーク州アッティカ刑務所での囚人の暴動事件(白人警官による黒人受刑者への劣悪な待遇が原因といわれる)をテーマにした曲です。ちなみにJohn Lennonもアルバム『Sometime In New York City』(1972年)の中でアッティカ刑務所の暴動をテーマにした曲「Attica State」を発表していますね。

ゴスペル・テイストの女性コーラスが素晴らしい、スピリチュアル・ファンクに仕上がっています。この緊迫感と迫力はスゴイの一言ですね。この1曲だけでも本作を聴く価値があると思います。

Acid Jazzファンの方は本曲をリメイクしたGalliano「Jus' Reach」をよく聴いたのでは?

「Steam (Part 1)」
「Steam (Part 2)」
Joe Lee Wilsonのヴォーカルをフィーチャーした雄大かつスピリチュアルな仕上がりが印象的ですね。Sheppのサックスも自由でいいカンジです。

「Invocation To Mr. Parker」
ジャズ・ジャイアントCharles Parkerに捧げれたものです。

「Blues For Brother George Jackson」
この曲はブラック・シネマのサントラのようなカッチョ良さを持つグルーヴ・チューンですね。ちなみにGeorge Jacksonとは、1960年にガソリン・スタンドへの強盗の疑いで終身刑となり、1971年に脱獄を謀ったとして射殺された黒人です。

「Ballad For A Child」
感動的なバラッドです。Donny Hathawayあたりを聴いたような、ニューソウルのアルバムならではの高揚感を感じます。

「Good-Bye Sweet Pops」
1971年7月に亡くなったジャズ・ジャイアントLouis Armstrongに捧げられた曲です。ちなみに“Pops”とは“Satchmo”同様Armstrongの愛称です。悲しみに包まれながらも、あまり湿っぽくない仕上がりになっています。

「Quiet Dawn」
可愛い歌声を聴かせてくれるのはCal Masseyの娘Waheeda。スピリチュアル・ジャズ好きの方向けの1曲に仕上がっています。僕はこの手のヘタウマ・ヴォーカルものに弱いんですよね。この曲も大好き!

先週1週間は完璧下げモードでした。
今週はアゲアゲで頑張るぞ!
posted by ez at 02:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 1970年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする