2007年11月29日

Curtis Mayfield『Back To The World』

子供達に明るい未来を!社会派Curtisを象徴する作品☆Curtis Mayfield『Back To The World』
Back to the World
発表年:1973年
ez的ジャンル:社会派Curtis
気分は... :ランクよりも感性が大事!

初版12万部が3日間で完売した「ミシュランガイド東京2008」ですが、その賛否両論さまざまですね。

個人的にはレストラン本に限らず、こうした個人の嗜好が分かれる分野のガイド本は、あくまで1つの目安として利用すれば役立つものだと思いますが、それを絶対的な権威として振りかざすのであれば、そんなもの不要だと思います。

重要なことは、星の有無や数といったランク付けは、あくまで特定人物の主観によるもので、あらゆる人に当てはまる客観的なものではないという認識だと思います。

これは音楽ディスクのガイド本にも言えることですよね。

例えば、今年に入り主にオールド洋楽ファンをメイン・ターゲットとする某雑誌が、3ヶ月連続で60年代、70年代、80年代のロックベスト100を特集して話題になりましたよね。個人的には各年代妥当なセレクションだと思いましたが、それが妥当か否かということはどうでもいいことで、それよりも自分の感性に合ったものか否かという判別が大切なのではと思います。

自分の感性に合ったセレクションを見つけることが出来れば、その人の音楽ライフがさらに楽しいものになるはずですからね。逆に、ガイド本に縛られて、自分の好みに合わないディスクを名盤として聴く必要は全くないと思います。ガイド本を利用して通常聴かない分野のディスクを試しに聴いてみるということも、自分の世界を拡げる意味では大切なのかもしれませんが。

まぁ、個人の嗜好に左右されるものにランクをつけることの功罪に留意しましょうというお話でした。

久々にCurtis Mayfieldです。

今回はベトナムから帰還をタイトルにした社会派アルバム『Back To The World』(1973年)です。

Curtisは『Curtis/Live!』(1971年)、『Superfly』(1972年)、『Curtis』(1970年)に続く4回目の登場となりマス。

タイトル曲「Back To The World」は、地球の裏側で地獄を経験し、やっとの思いで帰国を果たしたベトナム帰還兵が、祖国でも辛い日々を過ごさねばらない現実を歌ったものです。

また、アルバムには収録曲「If I Were Only a Child Again」の歌詞に絡めて、“私が子供に戻ったならば、大人達にいつ世の中は平和になるのか尋ねるだろう”というCurtisのメッセージが記されています。

子供達の明るい未来のためにも、アメリカ社会が抱える現実に警鐘を鳴らした社会派Curtisらしい1枚に仕上がっていると思います。

Impressions時代から公民権運動に呼応したメッセージ・ソング等を歌ってきたCurtisですが、ソロ作品の中でそういった側面が最も強調されたアルバムが本作『Back To The World』(1973年)と『There's no place like America Today』(1975年)の2枚です。

僕自身、メロウでグルーヴィーなサウンドを聴かせてくれるCurtisが好きなのですが、これら2枚のアルバムを通じてCurtisの放ったメッセージを感じ取ることも、Curtis Mayfieldというアーティストを知るうえで大切ですよね。

Marvin Gaye『What's Going On』(1971年)、Donny Hathaway『Extension of a Man』(1973年)あたりと一緒に聴かれるべき作品だと思います。

全曲紹介しときやす。

「Back to the World」
タイトル曲は前述の通り、ベトナムからの帰還兵の苦しみを歌ったCurtisのキャリアを代表する社会派ソングです。よく言われるようにMarvin Gaye「What's Going On」に呼応したものでしょうね。

美しいストリングスとホーンの響きをバックに、♪こんな世間に戻ったところで...♪つらいんだ、つらいんだ♪と歌うCurtisのファルセット・ヴォイスに鋭く胸をえぐられる思いです。曲のラストに入っているベトナムからアメリカへ帰還する飛行機の音が実に虚しいですね。。

De La Soul「Ghetto Thang」のサンプリング・ネタになっています。

「Future Shock」
シングルにもなったCurtisらしいワウ・ワウ・ギターが鳴り響くシカゴ・ファンク・チューン。曲調的には「Superfly」と一緒に聴くと合うカンジですよね。途中で♪Superfly〜♪とか♪What's Going On〜♪なんてフレーズを聴くこともできます。Cypress Hill「Something for the Blunted」のサンプリング・ネタになっています。

「Right on for the Darkness」
泣きそうなCurtisのファルセットが炸裂する1曲。抑え気味のカッティング・ギターの音がいつまでも脳裏に残りますね。最後に美しくも不穏に響くストリングスもインパクトがあります。ニューソウルらしいメッセージにも注目です。

Eric B. & Rakim「Don't Sweat the Technique」、Gang Starr「Take A Rest」 、Mase Feat.Total「What You Want」等のサンプリング・ネタになっています。

「If I Were Only a Child Again」
前述のように「Back to the World」と並び本作においてCurtisが伝えたい重要なメッセージを持った1曲です。シングルにもなりました。未来ある子供達のように、生き生きと躍動感のあるグルーヴに仕上がっています。純粋に曲のキャッチーさで言えば、この曲が一番なのでは?

「Can't Say Nothin'」
ファンキーなミディアム・ファンク。いいカンジのホーン・アレンジが盛り上げてくれマス。

「Keep on Trippin'」
個人的にはアルバムで一番好きなメロウ・グルーヴ。バックでキラキラ駆け巡るキーボードの音色もメロウネスを高めてくれますね。。

「Future Song (Love a Good Woman, Love a Good Man) 」
哀愁ソウル・チューンな仕上がり。歌詞をよく読むと、いろいろと反省してしまいます。♪Take care a good woman〜♪そうだよねぇ(笑)

社会派アルバムのもう1枚『There's no place like America Today』(1975年)もぜひ本ブログで紹介したいと思います。
posted by ez at 00:33| Comment(2) | TrackBack(0) | 1970年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする