2007年12月15日

Sunny Hawkins『More Of You』

ゴスペルの枠に収まらないコンテンポラリーなR&B作品☆Sunny Hawkins『More Of You』
More of You
発表年:2007年
ez的ジャンル:アーバン・ゴスペル/ネオ・ソウル
気分は... :しじみ汁のように肝臓にやさしいアルバム

昨日は都内の知る人ぞ知る某天ぷら屋で昼食をとりました。

ランチ天丼を食べたのですが、そこでもう一品追加したのが“知る人ぞ汁”しじみ汁!
なんと、しじみ汁一杯700円!普通の店で一杯700円のしじみ汁なんて滅多にないと思います。でも来店客の半数以上がオーダーする名物なんですよね。

とにかく、しじみの量が半端じゃなく、普通のしじみ汁の20倍くらいは入っていると思います。とても食べきれないボリュームで、僕も半分くらいは身を食べましたが残りはギブアップ。その分ダシの旨み十分の汁を堪能しました。

忘年会シーズンで悲鳴を上げている肝臓には持って来いの一品かもしれません。

さて、今回はコンテンポラリーなゴスペル・シンガーSunny Hawkinsの待望のデビュー・アルバム『More Of You』です。

半年以上前に購入し、ずっと愛聴していたのですが、Amazonでジャケが見つからなかったのでペンディング状態でした。今回ようやくジャケを発見できたので紹介します。

Sunny Hawkinsは、カリフォルニア州オークランド出身の女性シンガー。

僕がSunny Hawkinsについて知っているのは、Jill Scottのアルバム『Collaborations』で数曲彼女がフィーチャーされていること、父Walter、母Tramaineというゴスペル界の大物ミュージシャンを両親に持つゴスペル界のサラブレットJamie Hawkinsが旦那様であること、Chaka Khan、Deborah Cox、Ray Charles、Patti LaBelle、Luther Vandross等のバック・シンガーを務めたことがあること、くらいですかね。

旦那のJamie Hawkinsは、R&BファンならばDonell Jonesのヒット曲「You Know That I Love You」のライターとしてご存知の方もいるのでは?Jamieの両親WalterとTramaineはSunnyの名付け親でもあるみたいなので、二人は幼なじみだったんでしょうね。

本作でもJamieがプロデューサーとして奥方をがっちりサポートしています。

元々は2004年に自主制作で発表されたアルバムが、今回正式にHidden Beachより発売されました。ジャケも一新されています。Jill ScottもHidden Beach所属なので、『Collaborations』への参加もレーベル・メイトという事情からだったのでしょうね。

ジャンル分けするとすれば、ゴスペル・アルバムなのかもしれませんが、サウンドを聴くとネオ・ソウルのアルバムといって差し支えないと思います。

僕は本作をCDショップで試聴して購入したのですが、お店のPOPには“アーバン・ゴスペルの新星”といったコピーが書かれていた気がします。

Chrisette MicheleLedisiあたりが好きな人は気に入るのでは?

しじみ汁のように肝臓にやさしいアルバムだと思います(笑)

オススメ曲を紹介しときやす。

「Send Me I'll Go (Intro-Lude) 」
2分足らずのオープニングですが、ラブリーな雰囲気がいいですね。

「More of You」
「Daddy's Got You Now」
R&B/ファンク・テイストのサウンドが印象的な2曲。タイトル曲「More of You」はパワフルなミディアム・スロウ。「Daddy's Got You Now」も思い切りゴスペルしている詞とサウンドのギャップが印象的な1曲ですね。

「Where Would I Be」
「You're Everything」
ネオ・ソウルしている2曲。スカスカの音空間の中でユラユラ揺れる浮遊感がいいですね。特に「Where Would I Be」がオススメです。

「It's Like Air」
Deniece Williamsあたりを彷彿させるSunnyの艶やかなヴォーカルを堪能できる1曲です。単に上手いだけではなく、声質の良さを実感できますね。

「Jesus the Same」
この曲はタイトルからしてゴスペルしてますね。コンテンポラリー・ゴスペルらしく、スタイリッシュに♪Hallelujah〜♪と歌ってくれます。「Love Me Too」と並ぶ僕のお気に入り曲です。

「What a Man」
Sunnyの熱唱を堪能できるバラッド。映画やドラマのエンディング曲にピッタリといった感じですね。

「Love Me Too」
爽快なメロウ・グルーヴ。僕の一番のお気に入り曲です。季節外れですが、南国でのバカンスってイメージの曲ですね。

「Alright」
今時のR&Bらしいグルーヴ感が魅力のミッド・チューン。女性R&B好きの方ならば、まず気に入ると思います。

「What If」
じんわりと胸に染み渡ってくるスロウです。まさにしじみ汁のようなホッとした感じがいいですね。

「Crazy (To Jamie)」
旦那様大好きソングです(笑)これだけ高らかに旦那への愛を叫んでしまえるのもスゴイですな。

大物の新作が続く年末ですが、こうしたマイナーな1枚もなかなか良いですよ。
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2007年12月14日

Bob Welch『French Kiss』

この頼りないオヤジ臭さが良かったりする☆Bob Welch『French Kiss』
French Kiss
発表年:1977年
ez的ジャンル:ダサ格好いい系ダンディ・ロック
気分は... :この際どさがいいねぇ!

今回は元Fleetwood MacのメンバーBob Welchの初のソロ・アルバム『French Kiss』(1977年)です。

Bob Welchは1946年カリフォルニア生まれ。イタリア、フランスなどヨーロッパで活動した後にイギリスへ渡り、Fleetwood Macのメンバーと出会います。そして、1971年にグループ唯一のアメリカ人としてFleetwood Macへ加入します。

イギリスを代表するブルース・ロック・バンドだったFleetwood Macでしたが、Bob Welchの加入を機に活動拠点をイギリスからアメリカへ移します。そして、アメリカ・マーケットを意識したせいか、それまでのブルース一辺倒からより幅広い音楽性を追求するようになります。

こうしたグループのポップ路線への方向転換はBob WelchがFleetwood Mac脱退後、Stevie NicksLindsey Buckinghamというに2人のアメリカ人の加入後に開花し、皆さんご存知の『Fleetwood Mac』(1975年)、『Rumours』(1977年)という大ヒット・アルバムを生むことになります。

Bob Welch自身はグループの成功を経験することなく、『Heroes Are Hard to Find』(1974年)を最後にグループを脱退しています。その後Parisというハード・ロック系のトリオを結成しますが、アルバム2枚を残して解散してしまいました。

そんなBob Welchにソロ活動を薦めて、マネジメントを含めてサポートしたのがかつて同僚Mick Fleetwoodでした。そして発表されたのが本作『French Kiss』です。

Mick Fleetwood(ds)以外にChristine McVie(key、vo)、Lindsey Buckingham(g、vo)といったFleetwood Mac勢がサポートしています。

そのおかげか、アルバムは全米アルバム・チャート第12位、シングル「Sentimental Lady」が全米ポップ・チャート第8位、「Ebony Eyes」が同14位というヒットとなり、同年リリースされたFleetwood Macのモンスター・アルバム『Rumours』の大成功には遠く及ばないものの、一定の成功を収めました。

僕自身はリアルタイムではなく、数年後追いで聴いた記憶があります。
今はそうは思いませんが、当時はかなりオシャレなアルバムという印象がありましたね。

本作をAORアルバムと位置づける人もいますが、個人的にはAORアルバムと言われると違和感がありますね。それなりに大人のダンディズムを感じますが、ビミョーにひねりを効かせて外しているあたりがこの人らしいのでは?

Todd Rundgrenあたりに通じるB級感の魅力をこのアルバムにも感じます。
ただし、Toddと違うのはこのアルバムはいかにもオールド・ファンが喜ぶ作品という気がしますね。若いリスナーの方には加齢臭が鼻につくのでは(笑)

オススメ曲を紹介しときやす。

「Sentimental Lady」
アルバムからの1stシングル。前述のように全米ポップ・チャート第8位のヒットとなりました。この曲のみLindsey BuckinghamとChristine McVieがプロデュースしています。ファンの方ならばご存知の通り、元々はWelchがFleetwood Mac時代に書いた曲ですね(アルバム『Bare Trees』収録)。

この頼りないWelchのボーカルがポップながらも悲しげなメロディと実にマッチしていますね。

「Easy to Fall」
ドライヴ感の効いたロック・チューン。これでヴォーカルが上手すぎると少し暑苦しくて嫌なのですが、Welchの下手くそヴォーカルが逆にマイルドな味わいを出してグッド!だと思います。

「Hot Love, Cold World」
アルバムからの3rdシングル。個人的にはアルバムで一番好きですね。なかなかグルーヴ感のあるハードなナンバーに仕上がっています。特に後半の演奏はスリリングで盛り上がりますな。

「Lose My Heart」
2分足らずの曲ですが、なかなか歯切れの良い軽快なポップ・チューンに仕上がっています。

「Outskirts」
少しハードなDoobie Brothersってカンジがしますね。ハードな要素とポップな要素とファンキーな要素のバランスが実に良いカンジですね。

「Ebony Eyes」
アルバムからの2ndシングル。頼りないWelchのボーカルの魅力全開といったところです(笑)ギター・リフとストリングス・アレンジが印象的ですね。とても印象に残る特別な雰囲気を持った1曲だと思います。

「Carolene」
ディスコ的な要素も垣間見ることができるハードなポップ・チューン。思わずハンド・クラッピングしたくなる曲ですね。

「Dancin' Eyes」
ブラック・フィーリング溢れる1曲。きっと僕がこのアルバムに惹かれる理由の1つに、Welchの持つブラック・フィーリングがあるのだと思います。

「Danchiva」
ドライヴ感のあるカッチョ良さが魅力の曲ですね。適度にブラック・フィーリングもあって、「Hot Love, Cold World」と並んで好きな1曲です。

「Lose Your Heart」
「Lose My Heart」に続き、今度は「Lose Your Heart」です。なかなかメロディアスな仕上がりです。爽快だけど寂しさが残るカンジがいいですね。

このエロいジャケもいいですね。ちなみに次作『Three Hearts』(1979年)では、さらにお姉さまを一人増員したジャケで勝負しましたが、こちらは見事にコケました(笑)
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2007年12月13日

Johnny Lytle『The Loop/New And Groovy Jazz』

「Selim」をはじめスタイリッシュなヴァイヴ・グルーヴ満載☆Johnny Lytle『The Loop/New And Groovy Jazz』
The Loop/New and Groovy
録音年:1965年、1966年
ez的ジャンル:グルーヴィー・ジャズ・ヴァイヴ
気分は... :どん詰まり状態だけど...

スランプ続きで心は閉じたまま...
無理に元気出そうとすると、その反動でますます下げモードに...

まぁ、音楽くらいはノリのいいのを聴かないとねっ!

今回はジャズ・ヴァイブ奏者Johnny Lytleのアルバム『The Loop』(1965年)、『New And Groovy Jazz』(1966年)の紹介です。これらはCD化に際して2in1CDとして発売されたものです。

本当は個別に紹介すべきだとは思うのですが、多分2in1CDのかたちでしかCD化されていないのでこのかたちで紹介したいと思います。勿論、僕が所有しているのもこの2in1CDです。

Johnny Lytleに関する情報は非常に少なく、彼のバイオグラフィーは不明な部分が多いのですが、1932年オハイオ生まれのようですね。トランペット奏者の父、オルガン奏者の母という音楽一家に生まれ、少年時代からドラムやピアノを演奏していたようです。

また、若い時にはボクサーとしても活躍していたようです。Wikipediaで調べたら、Golden Gloves championと書かれていたので、なかなか腕前だったのでは?

ヴィブラフォン奏者としてのJohnny Lytle『Blue Vibes』(1960年)が初リーダー作だと思います。それ以外に僕が知っているのは、『Happy Ground』(1961年)、『Nice And Easy』(1962年)、『Village Caller』(1964年)等断片的に記憶しているリーダー作のタイトルと、1995年に亡くなっていることぐらいです。

そんな中途半端な知識で紹介するのは大変申し訳ないのですが、それでも今回紹介する2枚のアルバムはかなり気に入っています。元々はOriginal Love初期の名曲「Million Secrets Of Jazz」の元ネタ「Selim」が欲しくて入手したものです。

おそらく本作を購入した人の大半は、僕のようにOriginal Loveの元ネタ探しか、本CDのライナーノーツも担当しているAcid Jazzブームの火付け役Giles Petersonのお気に入り作品というのが購入理由だと思います。

今回紹介する『The Loop』『New And Groovy Jazz』の2枚共に60年代半ばの作品ですが、僕は長い間てっきり70年代の作品だと思っていました(購入当時は全然クレジットなど見ていなかったもので...)。その意味では年代不詳の作品であり、いつ聴いても鮮度は高い気がしますね。

Johnny Lytle(marimba、vib)以下、Wynton Kelly(p)、Bob Cranshaw(b)、George Duvivier(b)、Jimmy Cobb(ds)、Peppy Hinnant(ds)、Milt Harris(org)、Willie Rodriguez(conga)等のメンバーが参加しています。Wynton Kellyがなかなか印象的なピアノを聴かせてくれます。

クラブ・ジャズがお好きな人ならば、まず気に入るカップリングだと思いマス。

オススメ曲を紹介しときやす。

「The Loop」
タイトル曲はヴァイブに加えて、Johnnyのマリンバも堪能できる1粒で2度美味しい1曲。たまに本作のレビューでエキゾチック・ミュージックの雄Martin Dennyが好きな人にオススメみたいなレビューを見るのですが、僕自身はMartin Dennyを聴いたことがないのでわかりません。でも、この曲なんかエキゾチックな雰囲気がするので、その路線なのかな?

「The Man」
前述のGiles Petersonが自身の番組のテーマ曲に使っていたことで有名な曲ですね。後述する本作のハイライト曲「Selim」のテンポを少し落としたような大人のグルーヴがたまりませんね。

「The More I See You」
「Time After Time」
Wynton KellyのピアノとJohnnyのヴァイヴの絡みがいい落ち着いたムードの2曲。後者はChet Bakerの名唱で知られるスタンダード(Jule Styne/Sammy Cahn作品)のカヴァー。

「Big Bill」
ラウンジ・ムードの小洒落た1曲。まったりとした中にもモンドな香りが漂っています。

「Cristo Redentor」
Duke Pearson作品をマリンバでカヴァー。どこから聴いてもルパン三世のテーマにしか聴こえませんが(笑)

「Shyster」
パーカッシヴなアップ・チューン。クラブ・ジャズがお好きな人は気に入ると思います。

「Hot Sauce」
オルガンとマリンバの絡みがかなり熱いグルーヴ・チューン。前のめり気味の突っ込み感がいいですな。どことなくコミカルな要素もあってB級映画のサントラなんかにも合いそうですね。

ここまでは『The Loop』収録曲です。

「The Snapper」
ここからは『New And Groovy Jazz』収録曲です。オープニングはマリンバのコロコロとした鳴り具合いがいいカンジのラテン・グルーヴ。

「Selim」
本作のハイライト。前述のようにOriginal Love「Million Secrets Of Jazz」の元ネタです。この曲を聴くたびに♪ミ・リ・オ・ン♪シークレッツ〜♪と口ずさんでしまいます(笑)「Million Secrets Of Jazz」を知らない人でも、一度聴けば忘れられない何かを持った曲だと思います。

ちなみにタイトルは敬愛するMiles Davisの名前を逆さまにしたものです。ということでMiles Davis「Milestones」〜Johnny Lytle「Selim」〜Original Love「Million Secrets Of Jazz」と3曲続けて聴くのも、なかなか楽しいと思います。

「Shadow of Your Smile」
アカデミー賞歌曲賞も受賞した映画「いそしぎ」の主題歌のカヴァー。ジャズ・アーティストのカヴァーとしてこの曲を紹介するのは、John Patton『Let 'Em Roll』収録)、Lou Donaldson『Mr. Shing-A-Ling』収録)に続き3回目になります。原曲の持つロマンティックな雰囲気とヴァイヴの響きとが実にマッチしていると思いマス。

「The Pulpit」
軽快なノリがエキサイティングな1曲。本作を購入した当初は「Selim」と本曲の2曲を繰り返し聴いていた記憶があります。

「Too Close for Comfort」
パーカッシヴな展開が心地良いですね。個人的にはスタイリッシュな仕上がりがかなり気に入っています。オリジナルは1956年のブロードウェイ・ミュージカル『Mr. Wonderful』の挿入歌(Jerry Bock/Larry Holofcener/George Weiss作品)。

「Screamin' Loud」
「The Man」と同タイプの曲。Wynton Kellyのピアノがかなりいいカンジですね。

関係ありませんが、サッカーUEFAチャンピオンズリーグは1次リーグが今日で終了しましたね。

リヴァプール、リヨン、シャルケは最後になんとか帳尻合わせてギリギリ突破しましたね。あとはジーコ率いるフェネルバフチェの突破も快挙ですね。この手腕を昨年のドイツW杯で発揮して欲しかったですね(笑)
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2007年12月12日

Kirk Franklin's Nu Nation『God's Property』

R&Bアルバム・チャートNo.1にもなったコンテンポラリー・ゴスペルを代表する1枚☆Kirk Franklin's Nu Nation『God's Property』
ゴッズ・プロパティ・フロム・カーク・フランクリンズ・ニュー・ネイション
発表年:1997年
ez的ジャンル:コンテンポラリー・ゴスペル
気分は... :My Life Is in Your Hands...

今月はゴスペルが聴きたい気分ですね。。

クリスマス・シーズンということもありますが、個人的に最近あまり良くない事が続いているので、そんな下げモードの心を救ってくれる音楽としてゴスペルを欲しているのかもしれません。

ということで今日はKirk Franklin's Nu Nation『God's Property』(1997年)の紹介です。

久々にR&Bアルバム・チャートNo.1にもなったゴスペル・アルバムとして話題になった1枚ですね。

本作の主役Kirk Franklinは、1970年テキサス生まれのゴスペル・シンガーです。1993年に『Kirk Franklin & the Family』でデビューすると、正統派ゴスペルにコンテンポラリーな要素を加えた、スタイリッシュなスタイルでゴスペル界に新風を吹き込みました。

その後もKirk Franklin & the Family名義で『Kirk Franklin & The Family Christmas』(1995年)、『Whatcha Lookin' 4』(1996年)といった佳作を発表します。そして、今回紹介する『God's Property』でゴスペル・ファンに止まらない幅広い人気を獲得することに成功し、今日までコンテンポラリー・ゴスペルのトップランナーとしてシーンを牽引しています。

本作『God's Property』は、Kirkの同郷のゴスペル・クワイアGod's Propertyを総合プロデュースしたという形式の作品になっています。

ファンク、Hip-Hop等を導入した新しいゴスペル・スタイルの曲もいいですが、個人的には正統派ゴスペル・タイプの曲が胸に染み入りますね。

本ブログでも何度か紹介したSounds of Blacknessあたりが好きな人は気に入る作品だと思います。

オススメ曲を紹介しときやす。

「Stomp」
オープニング曲は1stシングルにもなりました。Funkadelic「One Nation Under A Groove」をサンプリングし、女性ラップグループSalt-N-PepaのラッパーSalt(Cheryl Jones)をフィーチャーしているということで、ゴスペルというよりも普通のカッチョ良いファンク・チューンとして聴くことができます。Sounds of Blacknessとも共通しますが、この感覚こそがコンテンポラリー・ゴスペルなのでしょうね。

なお、アルバムにはシングルになった本ヴァージョン(Remix)以外にOriginal Mixも収録されています。こちらの出来もゴキゲンですよ!

「My Life Is in Your Hands」
Spike Lee監督の映画『Get on the Bus』の感動的なエンディングでも使われていた正統派ゴスペル・チューンです。僕の一番のお気に入り曲でもあり、今回もこの曲が聴きたくて本アルバムを取り上げた次第です。(本当の意味での)クリスマス・シーズンにピッタリなホーリーな1曲だと思います。今の僕の心境だと聴いているだけで目が涙でウルウルですっ!

辛いことがあっても、悩まず、恐れずに生きよう!きっと朝には喜びがやってくることを信じて...

「It's Rainin'」
女性ヴォーカルをフィーチャーし、ゴスペル・クワイアらしい厚みのあるコーラスを聴かせつつ、スタイリッシュなグルーヴ感でまとめられています。

「Up Above My Head」
この曲はスムース・ジャズ的なテイストでまとめられていますね。音楽によって救われることが多い僕にとって、♪I hear music in the air♪I hear music everywhere♪There must be a God somewhere♪というコーラスがとても印象に残りますね。

「Love」
「My Life Is in Your Hands」と並ぶお気に入り曲。この曲も感動的な正統派ゴスペル・チューンです。歌詞を聴きながら、真実の愛の意味を考えていると、自然と涙が頬を伝ってくるかもしれません。

「Sweet Spirit」
男女ボーカルをフィーチャーした、なかなかスウィートなスロウです。やっぱりゴスペルを聴いていると、大切な人に感謝したり、優しい気持ちになれるのがいいですね。

「Faith」
ソウル・フィーリング溢れる1曲。ソウル・ファンにとっては、Lee Dorsey、Pointer Sistersなどのヒットで知られるAllen Toussaint作品「Yes,We Can Can」が使われているあたりも楽しいのでは?

「You Are the Only One」
80年代ファンク・チューン的なノリが魅力の1曲。何の予備知識もない状態で聴けば、ゴスペルだなんて全然気付かない人も多いのでは?

「The Storm Is Over Now」
この曲も心が救われる1曲ですね。♪(no more)tears and sorrow♪(no more)heartache and pain♪it's over now♪そうさ、嵐はもう終わったのさ!

『Kirk Franklin & The Family Christmas』(1995年)、『The Nu Nation Project』(1999年)あたりも僕の愛聴盤です。Kirk Franklin & the Family名義の前者はタイトルの通りクリスマス・アルバムです。後者は本作に続いて発表されたアルバムであり、Mary J. BligeR. Kelly、Bono(U2)、Rodney Jerkinsといった豪華ゲスト陣も参加しています。

また、間もなく新作『Fight Of My Life』がリリースされるので、こちらも楽しみです。

嵐は過ぎ去り、きっと朝には喜びがやってくることを信じよう..
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2007年12月10日

T.Rex『Tanx』

T.Rexサウンドの完成形☆T.Rex『Tanx』
Tanx
発表年:1973年
ez的ジャンル:ブギ系グラム・ロック
気分は... :美しく燃え尽きて...

昨日は国立劇場で歌舞伎を観てきました。

演目は「堀部彌兵衛」、「清水一角」、「松浦の太鼓」という忠臣蔵のアナザー・ストーリー3本。背景に忠臣蔵があるので、僕のような歌舞伎初心者にとっても、ストーリーがわかりやすくとても楽しめました。

市川染五郎がエラく格好良いのにビックリしましたね。
それまでTVドラマの印象しかなかったのですが、本職で観ると全然違いますね。歌舞伎役者は生の歌舞伎を観ないと、本当の魅力に迫れないことを痛感しました。

さて、Marc Bolan率いるグラム・ロックの雄T.Rexの登場です。今回で2回目になります。

『Electric Warrior』(1971年)に続き紹介するのは、1973年発表の『Tanx』です。

歌舞伎を観終わったら、何故かT.Rexが聴きたくなりました。
僕の脳内で、短くも美しく燃え尽きたMarc Bolanの人生と、忠臣蔵の人間ドラマが結びついたのかもしれませんね(笑)

一般には「Get It On」収録の『Electric Warrior』(1971年)、「Telegram Sam」「Metal Guru」収録の『The Slider』(1972年)あたりがT.Rexの代表作として紹介されることが多いですが、T.Rexの魅力にハマった人ほど、これら2作品以上に『Tanx』への支持が高い気がします。

僕は決してT.Rexの熱狂的なファンではありませんが、一番好きなアルバムはやっぱり『Tanx』ですかね。

『Tanx』は、『The Slider』(1972年)で頂点を極めたグループが、その後も「Children of the Revolution」「Solid Gold Easy Action」「20th Century Boy」といったヒットを連発した勢いそのままに発表されたアルバムです。

アルバム・タイトルにはThanks(感謝)とTanks(戦車)という二重の意味が込められているようです。

ちなみに「20th Century Boy」は本アルバムと同時期に発表されたシングルですが、オリジナル・アルバムには未収録でした。最近の本作CDにはボーナス・トラックとして収録されています。

ということで、本作にはヒット・シングルは1曲も収録されていません。その意味では華やかさに欠けるアルバムであり、多少散漫な印象も受けますが、成熟したBolanサウンドをさまざまなかたちで堪能できる作品になっていると思います。

その後のT.Rexの人気急降下やBolanの事故死という悲しい結末を知ったうえで聴くと、滅びの美学を伴う最後の輝きという感じでグッときますね。

短くも美しく燃え尽きたMarc Bolanのように多くの曲が3分以内に収まっているのがらしいです。

プロデュースはお馴染みTony Viscontiです。

オススメ曲を紹介しときやす。

「Tenement Lady」
1曲で2度美味しいオープニング。Bolanブギしている前半と儚く幻想的な後半の対比が面白いですね。

「Rapids」
ユルい感じがグッドなブギ。個人的にはもっとユルユルな感じの曲がT.Rexには合っている気がします。

「Mister Mister」
アルバム中一番ポップなナンバーかもしれませんね。適度にポップで、適度にメランコリックで、適度にメロウでといったカンジでしょうか。

「Broken Hearted Blues」
メロディアスなBolan流ブルース。ブロークン・ハートな哀愁感が漂っていますな。

「Shock Rock」
この曲は東京録音。来日公演の合間をぬって東芝EMIでレコーディングしました。この曲もBolanらしいブギを堪能できます。

東京録音では、他にも本作収録の「Electric Slim and the Factory Hen」、シングル「20th Century Boy」をレコーディングしています。

「Country Honey」
アルバムで一番のお気に入り。アーシーにうねるグルーヴ感がサイコーにカッチョ良いですね。

「Electric Slim and the Factory Hen」
東京録音の哀愁チューン。この曲もかなり好きですね。僕の場合、Micky Finnのパーカッションが目立つ曲は基本的に好きみたいですね。

「Mad Donna」
子供の声でスタートするT.Rexらしいゴキゲンなミッド・グルーヴ。なかなかファンキーな仕上がりがいいですね。

「Born to Boogie」
元BeatlesのRingo Starrが監督したT.Rexのドキュメンタリー映画『Born to Boogie』の主題歌。本作に先駆けてリリースされたシングル「Solid Gold Easy Action」のB面曲でもありました。Bolanブギを堪能できる軽快なロックン・ロールに仕上がっています。

「Life Is Strange」
美しいアコースティック・チューン。シンプルな作りですが、逆にBolanのソングライティングの確かさを認識できますね。

「The Street and Babe Shadow」
個人的には「Country Honey」、「Electric Slim and the Factory Hen」と並んで好きな1曲。不気味な切迫感と不思議な浮遊感が漂うあたりが好きなのかも?

「Left Hand Luke and the Beggar Boys」
ラストは本作の収録曲としてはダントツで長尺な5分を超える大作。ゴスペル・タッチの感動作に仕上がっています。

本作をリリース後、T.Rexの人気は急降下してしまいます。
その意味では本作がT.Rex、あるいはMarc Bolanというアーティストのある意味の完成形だったのではと感じます。
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