録音年:1957年
ez的ジャンル:個性派ピアニストvs.バリトン・サックス
気分は... :.個性と個性のぶつかり合い..
久々に50年代カテゴリーの紹介です。
今回選んだのは個性派大物ピアニストThelonious Monkとバリトン・サックス奏者の代表格Gerry Mulliganの共演アルバム『Mulligan Meets Monk』(1957年)です。
Thelonious Monkは、『Thelonious Himself』(1957年)、『Brilliant Corners』(1956年)に続き3回目の登場です。一方のGerry Mulliganの紹介は今回が初めてとなります。
Gerry Mulligan(1927-1996年)は、1950年代のパシフィック・ジャズを代表するミュージシャンです。何よりモダン・ジャズにおいてバリトン・サックスという楽器の地位を確立した第一人者といえますね。
元々はニューヨーク出身であり、東海岸でGil Evans、Miles Davisとの共演で才能を開花させていったMulliganでしたが、1952年に拠点を西海岸に移し、Chet Bakerらとピアノレス・カルテットを結成したことが大きな転機となり、ウエストコーストを代表するミュージシャンと位置づけられるようになります。
永遠のジャズ初心者の僕が説明できるMulliganのキャリアはこの程度です。
正直、Mulligan作品はそれほど聴いていない僕ですが、Chet Bakerと並んでウエストコーストを代表するキマっている白人ジャズ・ミュージシャンというイメージがありますね。
そんなGerry Mulliganが超個性派ピアニストのMonkと共演したアルバムが『Mulligan Meets Monk』(1957年)です。
ピアノレス・カルテットで注目されたMulliganがMonkという超個性派ピアニストと組むということ自体が興味深いですよね。
基本的にはMonk(p)、Wilbur Ware(b)、Shadow Wilson(ds)というMonkのグループにMulligan(bs)が加わったというかたちです。楽曲もMulligan作品は「Decidedly」の1曲のみで、あとは全てMonk作品です。その意味ではMonkのアルバムと言えるのかもしれませんが、Mulliganの代表作として本作を挙げる人も多いように思います。
Monkの場合、共演者をMonkワールドへ引きずり込み、飲み込んでしまうことが多いと思います。その点、本作ではMonkのグループに殆どがMonk作品という、完璧Monk主導のアウェー状態にも関わらず、Mulliganがなかなか健闘している気がします。そのあたりが評価され、Mulliganの代表作として挙げられるのかもしれませんね。
全曲紹介しときやす。
「'Round Midnight」
説明不要のMonkの名曲中の名曲。控えめに弾いても目立ってしまうMonkのピアノをバックにしつつ、Mulliganのバリトン・サックスが前に出ていていいカンジだと思います。こうやって聴いていると、この曲自体バリトン・サックスが似合う気がしますね。
個人的にはMonkのソロ(『Thelonious Himself』収録)、Miles Davisの名演(『'Round About Midnight』収録)と並んで好きな演奏ですね。
「Rhythm-A-Ning」
『Art Blakey's Jazz Messengers With Thelonius Monk』等でお馴染みの曲ですね。個人的にはこの曲を最初に聴いたのが、Dexter Gordon主演の映画『Round Midnight』(1986年)のサントラだったので、映像と共にその印象が強いのですが。
このテンポの良さがいいですね。ノリノリなカンジのMulliganのソロがグッドですね。それに続くMonkのソロもらしさ十分!そして最後の両者の絡みがカッチョ良いですな。
「Sweet and Lovely」
この曲も『Thelonious Monk Trio』等でお馴染みのMonk作品。個人的には『Solo Monk』(1964年)のヴァージョンも聴いております。ここではMonkのピアノに耳を奪われてしまうので、多少Mulliganが分が悪いかも?それでもなかなか雰囲気のあるソロを聴かせてくれます。
「Decidedly」
本作唯一のMulligan作品。ということでMulligan主導なのですが、他の曲と比較するとエラくフツーに聴こえてしまいますね。やはり、Monk作品にMulliganが挑むという構図の方が面白い気がします。ここではMonkは脇役に徹して控えめの演奏か...なんて思っていたら、ソロではやっぱりMonkしてますね(笑)
「Straight, No Chaser」
「'Round Midnight」と並ぶ説明不要の名曲ですね。このブルージーな雰囲気満点のMonk作品にMulliganがどう挑んだのかという観点で、最初のMonkとMulliganの絡みとMulliganのソロを聴くと楽しいですね。
オリジナルはTake3ですが、CDにはボーナス・トラックでTake1が入っています。対比して聴いてみるとなかなか面白いですよ(特に最初の部分)。
「I Mean You」
個人的にはMonkとMulliganの個性が一番いいバランスで聴こえますね。なかなか聴き応え十分の演奏だと思います。
そう言えば、WOWOWの「JAZZ FILE」で約1ヶ月半くらい前にMonkの1966年の演奏を放送していましたね。Monkの演奏をあれだけまとめて観たのは初めてだったので、なかなか興味深かったですね。映像で観ると、余計に奇才ぶりが際立ってインパクトがありました(笑)