2007年12月10日

T.Rex『Tanx』

T.Rexサウンドの完成形☆T.Rex『Tanx』
Tanx
発表年:1973年
ez的ジャンル:ブギ系グラム・ロック
気分は... :美しく燃え尽きて...

昨日は国立劇場で歌舞伎を観てきました。

演目は「堀部彌兵衛」、「清水一角」、「松浦の太鼓」という忠臣蔵のアナザー・ストーリー3本。背景に忠臣蔵があるので、僕のような歌舞伎初心者にとっても、ストーリーがわかりやすくとても楽しめました。

市川染五郎がエラく格好良いのにビックリしましたね。
それまでTVドラマの印象しかなかったのですが、本職で観ると全然違いますね。歌舞伎役者は生の歌舞伎を観ないと、本当の魅力に迫れないことを痛感しました。

さて、Marc Bolan率いるグラム・ロックの雄T.Rexの登場です。今回で2回目になります。

『Electric Warrior』(1971年)に続き紹介するのは、1973年発表の『Tanx』です。

歌舞伎を観終わったら、何故かT.Rexが聴きたくなりました。
僕の脳内で、短くも美しく燃え尽きたMarc Bolanの人生と、忠臣蔵の人間ドラマが結びついたのかもしれませんね(笑)

一般には「Get It On」収録の『Electric Warrior』(1971年)、「Telegram Sam」「Metal Guru」収録の『The Slider』(1972年)あたりがT.Rexの代表作として紹介されることが多いですが、T.Rexの魅力にハマった人ほど、これら2作品以上に『Tanx』への支持が高い気がします。

僕は決してT.Rexの熱狂的なファンではありませんが、一番好きなアルバムはやっぱり『Tanx』ですかね。

『Tanx』は、『The Slider』(1972年)で頂点を極めたグループが、その後も「Children of the Revolution」「Solid Gold Easy Action」「20th Century Boy」といったヒットを連発した勢いそのままに発表されたアルバムです。

アルバム・タイトルにはThanks(感謝)とTanks(戦車)という二重の意味が込められているようです。

ちなみに「20th Century Boy」は本アルバムと同時期に発表されたシングルですが、オリジナル・アルバムには未収録でした。最近の本作CDにはボーナス・トラックとして収録されています。

ということで、本作にはヒット・シングルは1曲も収録されていません。その意味では華やかさに欠けるアルバムであり、多少散漫な印象も受けますが、成熟したBolanサウンドをさまざまなかたちで堪能できる作品になっていると思います。

その後のT.Rexの人気急降下やBolanの事故死という悲しい結末を知ったうえで聴くと、滅びの美学を伴う最後の輝きという感じでグッときますね。

短くも美しく燃え尽きたMarc Bolanのように多くの曲が3分以内に収まっているのがらしいです。

プロデュースはお馴染みTony Viscontiです。

オススメ曲を紹介しときやす。

「Tenement Lady」
1曲で2度美味しいオープニング。Bolanブギしている前半と儚く幻想的な後半の対比が面白いですね。

「Rapids」
ユルい感じがグッドなブギ。個人的にはもっとユルユルな感じの曲がT.Rexには合っている気がします。

「Mister Mister」
アルバム中一番ポップなナンバーかもしれませんね。適度にポップで、適度にメランコリックで、適度にメロウでといったカンジでしょうか。

「Broken Hearted Blues」
メロディアスなBolan流ブルース。ブロークン・ハートな哀愁感が漂っていますな。

「Shock Rock」
この曲は東京録音。来日公演の合間をぬって東芝EMIでレコーディングしました。この曲もBolanらしいブギを堪能できます。

東京録音では、他にも本作収録の「Electric Slim and the Factory Hen」、シングル「20th Century Boy」をレコーディングしています。

「Country Honey」
アルバムで一番のお気に入り。アーシーにうねるグルーヴ感がサイコーにカッチョ良いですね。

「Electric Slim and the Factory Hen」
東京録音の哀愁チューン。この曲もかなり好きですね。僕の場合、Micky Finnのパーカッションが目立つ曲は基本的に好きみたいですね。

「Mad Donna」
子供の声でスタートするT.Rexらしいゴキゲンなミッド・グルーヴ。なかなかファンキーな仕上がりがいいですね。

「Born to Boogie」
元BeatlesのRingo Starrが監督したT.Rexのドキュメンタリー映画『Born to Boogie』の主題歌。本作に先駆けてリリースされたシングル「Solid Gold Easy Action」のB面曲でもありました。Bolanブギを堪能できる軽快なロックン・ロールに仕上がっています。

「Life Is Strange」
美しいアコースティック・チューン。シンプルな作りですが、逆にBolanのソングライティングの確かさを認識できますね。

「The Street and Babe Shadow」
個人的には「Country Honey」、「Electric Slim and the Factory Hen」と並んで好きな1曲。不気味な切迫感と不思議な浮遊感が漂うあたりが好きなのかも?

「Left Hand Luke and the Beggar Boys」
ラストは本作の収録曲としてはダントツで長尺な5分を超える大作。ゴスペル・タッチの感動作に仕上がっています。

本作をリリース後、T.Rexの人気は急降下してしまいます。
その意味では本作がT.Rex、あるいはMarc Bolanというアーティストのある意味の完成形だったのではと感じます。
posted by ez at 07:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 1970年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする