発表年:2007年
ez的ジャンル:英国産ジャジーHip-Hop
気分は... :紅茶が似合うHip-Hop
今回は英国産のアンダーグラウンドHip-Hopを紹介します。
登場するのは、自身のレーベルA Bridge Too Far Recordingsを立ち上げたトラックメイカーPat Dと20歳の女性MCであるLady Pardoxの二人からなるユニット、Pat D & Lady Paradoxのデビュー・アルバム『Kind Of Peace』です。
Pat Dは、米国ペンシルバニア出身のMCであるMelodiqとPat D & Melodiq名義で12インチEP 「This Is The Time」もリリースしています。
二人はMySpaceを通じて意気投合し、アルバムを制作する運びとなったようですね。
中身は、アングラHip-Hopファンにはたまらない、ひたすら美しくジャジーな仕上がりです。特にピアノのループの使い方が絶品ですね。二人は好きなジャズ・ピアニストとして、Ahmad Jamal、Herbie Hancockといった名を挙げています。
僕の中では英国産のアンダーグラウンドHip-Hopと聞いてもあまりピンと来なかったのですが、US産のアンダーグラウンドHip-Hopとはひと味違った感触がありますね。紅茶が似合うHip-Hopって感じでしょうか。
この美しさは、特に日本人好みかもしれませんね。
読書しながらBGMで聴けるような、落ち着きがたまりません。
Hip-Hopを普段あまり聴かない方でも、すんなり聴ける作品だと思います。
ダージリン・ティーでも飲みながら、大人のHip-Hopを聴くなんていうのも優雅な時間の過ごし方なのでは?
オススメ曲を紹介しときやす。
「Perspectives」
僕の一番のお気に入り曲。吸い込まれそうなくらい美しいピアノのループに秒殺されてしまいます。塞ぎ込んだ友人のために書いたというLady Pardoxのライムにも励まされます。♪アールグレイを飲みながら〜♪なんて一節は英国らしいですね。まさに紅茶が似合うHip-Hopです。
「Step Off」
おそらくアルバムで一番人気はこの曲なのでは?Ramsey Lewisネタのピアノ・ループが至極のジャジー気分へと誘ってくれます。この曲も“勇気を持って、一歩前へ踏み出せ”といった感じの励まし系の1曲です。レスター出身の女性シンガーLauren Jadeがゲスト参加。
きっと「Perspectives」と「Step Off」の2連発で昇天してしまう人も多いのでは?僕もそんな一人です。
「Dreams」
♪ナイキのデザインなどない、あるのは私の詩だけ〜♪というLady Pardoxの詩にインテリジェンスを感じる1曲です。
「Tick Of Time」
ピアノに加えて、ハーモニカの音色が気持ちいいですね。ゲストMCとしてSam Sureが参加。途中で♪sick of life passin' me by like bizarre ride♪なんて一節が出てきます。Hip-Hop好きの方ならお気づきですよね。 本ブログでも紹介したPharcydeのHip-Hopクラシック「Passin' Me By」と同曲収録のアルバム『Bizarre Ride II』のタイトルを引用したものです。
「Train Stations And Playstations」
今度はジャズ・ギターのループにうっとりのメロウ・チューン。Lady Pardoxの元カレのことを歌ったもの。
「Hip-Hop Quotables」
「Perspectives」と「Step Off」という2トップに続いて好きな曲。Vibeのループに思わずニンマリです。新進MCのLoganがゲスト参加。
「Escapism」
英国らしい曇ったテイストがいい感じですね。ライムの内容はかなりシリアスで際どいですね。ロンドン出身のシンガーSeloneとMCのKarizmaが参加。このKarizmaって、ハウス/Nu Jazzシーンで知られるDJと同じ名前ですけど別人ですよね?
「Train Of Thought」
これはUSのアングラ・ジャジーHip-Hopのテイストに近いですよね。ある意味、この曲がアルバムのテーマ・チューンであり、アルバム・タイトル『Kind Of Peace』の根本的な意味が歌われています。この曲にもLauren Jadeがゲスト参加。
「Summertime」
タイトル通りサマータイムな仕上がりです(季節外れですが...)。オリジナルに加えて、SpecificsのThink Twiceによるリミックスが収録されています。これがなかなかの逸品です!ジャジーHip-Hop好きには嬉しいボーナス・トラックですね。
美しいジャケ写真の風景は、Pat Dの住んでいる英国東部のハルの街なのだとか。こんな環境で過ごしているからこそ、こんな美しいアルバムをクリエイトできるのでしょうね。