発表年:1971年
ez的ジャンル:フォーキー&ニューソウルIsleys
気分は... :現在進行形でいこう!
ここ1週間ほどのアクセス・ログを解析したら、検索ワード“Roger Nichols & The Small Circle Of Friends”で当ブログへ訪問される方が非常に多いという結果が得られました。
以前に書いた1stアルバム『Roger Nichols & The Small Circle Of Friends』(1968年)のエントリーがGoogleで上位表示されているためでしょう。その検索ワードで訪問された方の多くは、最近発売された約40年ぶりの新作『Full Circle』に関する記事を期待されていることと思います。
しかし、そんな期待を裏切るようで大変申し訳ありませんが、僕が『Full Circle』を購入することはまず無いでしょう。
これから書くことは、『Full Circle』を既に愛聴されている方にとっては気に障る内容かもしれません。ゴメンナサイ!先に謝っておきますね。ただし、あくまで僕自身の作品に対する思い入れの問題であり、作品のクオリティや愛聴されている方を云々言う意図は全くありませんので、どうぞご勘弁願います。
僕は『Full Circle』を未聴ですが、それなりに良質な内容に仕上がっているのだろうと推察しています。
それでも僕が『Full Circle』へ食指が動かないのは、2007年にRoger Nichols & The Small Circle Of Friendsが新作をリリースする意義を感じないからです。
僕もブログで大絶賛した彼らの1stは、時代を越えた普遍的な魅力に溢れており、今聴いても鮮度十分だと思います。でも、それはあくまで1968年という時代に創られた音楽であるという前提での話です。僕にとって大切なのは1968年という時間軸と作品の内容がリンクしており、しかもそこから未来方向へベクトルを放っているという点です。
*追記
この部分の書き方がわかりづらいので、補足しておきます。僕が書きたかったのは、本作が数多くのソフト・ロック作品が輩出された1960年代後半の作品であり、それを何十年後に何の予備知識もない若いリスナーが聴いても新鮮に聴こえるという点です。
簡単に表現すると、1stは1968年時点の現在進行形であったと同時に未来にも目を向けていた作品、今回の新作は2007年という時代とは全く無関係に過去へ逆戻りした作品といった印象を受けます。従って、新作を1stの延長線上で聴きたいという思いにならないのが僕の心境です。
2007年に新作アルバムを購入するならば、2007年らしい現在進行形、未来形の作品を購入したいというのが僕の新作購入スタンスです。
まぁ僕の場合、『Full Circle』に限らずEaglesの新作、Led Zeppelinの再結成ライブといった「●●年ぶりの▲▲」といったニュースに対しては、大抵ネガティブな見方から入ってしまうのですが...性悪なのかなぁ(笑)
さて、今回は「●●年ぶりの▲▲」といったニュースとは無縁に1950年代から今日までコンスタントに活躍し続ける、“生涯現在進行形”のモンスターR&BグループThe Isley Brothersの6回目の登場です。
『Between The Sheets』(1983年)、『The Heat Is On』(1975年)、『Baby Makin' Music』(2006年)、『The Isleys Live』(1973年)、『Winner Takes All』(1979年)に続いて紹介する作品は『Givin' It Back』(1971年)です。
1969年の『It's Our Thing』の頃からIsleysは独自のファンク・サウンドを追求しはじめ、バック・バンドにErnie Isley、Marvin Isley、Chris Jasperの3名が参加します。
O'Kelly Isley、Rudolph Isley、Roland Isleyのボーカル隊にこれら楽器隊3名が加わった「3+3」体制の6人組Isleysが正式にスタートするのは1973年のアルバム『3+3』からですが、その基盤を確立したアルバムが今回紹介する『Givin' It Back』(1971年)と次作『Brother, Brother, Brother』(1972年)の2枚です。
特に本作『Givin' It Back』は全曲カヴァーという異色作です。
全曲カヴァーのアルバムと聴くと、それだけで興味を失う方もいるかもしれませんが、本作におけるカヴァー作品はかなり興味深いセレクトだと思います。
カヴァーしているのはBob Dylan、Neil Young、James Taylor、Stephen Stillsといったフォーク/シンガーソングライターの作品に、War、Bill Withersといったニューソウル、そしてロックの革命児Jimi Hendrixといったアーティスト達です。
このカヴァー・アーティスト名が本作の特徴を如実に表していると思います。
つまり、フォーキーで、ニューソウルで、ロック感覚を導入したIsleysサウンドを聴くことができます。
先に書いた表現を用いれば、1971年という時代の現在進行形をカヴァー曲によって見事に表現したアルバムだと思います。
全7曲のうち、「Ohio/Machine Gun」、「Lay Lady Lay」、「Love the One You're With」は以前に紹介した『The Isleys Live』(1973年)にも収録されています。
全曲紹介しときやす。
「Ohio/Machine Gun」
Neil Young(CSN&Y)のカヴァー「Ohio」とJimi Hendrixのカヴァー「Machine Gun」のメドレーです。共にベトナム戦争絡みの曲であり、こうしたメドレーをオープニングに持ってくるあたりに1971年という時代性を感じますね。
「Fire and Rain」
James Taylorの名曲(アルバム『Sweet Baby James』収録 )カヴァー。オリジナルよりも重々しいムードが漂っています。
「Lay Lady Lay」
Bob Dylanの名曲カヴァー。アルバムからの3rdシングルとしてR&Bチャート第29位のヒットとなりました。
個人的にDylan作品の中でも特に大好きな曲の1つであり、Dylan自身のライブ・バージョン(アルバム『Hard Rain』収録)も本ブログで紹介しました。
本家Dylanヴァージョンも大好きなのですが、それ以上にコンガのリズムが心地良いIsleysバージョンの方はさらにお気に入りです。僕は今でも本アルバムを聴くときには、まずこの曲を最初に数回リピートで聴いてから他の曲へと流れます。
「Spill the Wine」
Eric Burdon & Warによる1970年のヒット曲のカヴァーは、「Lay Lady Lay」に次ぐお気に入り曲です。アルバムからの2ndシングルとしてR&Bチャート第14位のヒットとなりました。Isleysには珍しいラテン・グルーヴに仕上がっています。個人的には、こういったタイプの演奏はもっとアリだと思っています。
「Nothing to Do but Today」
Stephen Stillsのカヴァー。この曲はオリジナルに近い雰囲気のリズミックな演奏ですね。Rolandのヴォーカルがあるので全体的にはIsleysらしくなっています(笑)
「Cold Bologna」
Bill Withers作品のカヴァー。Bill Withers自身もギターで参加しています。ジャケ写真のイメージがピッタリのフォーキー・ソウルに仕上がっています。
「Love the One You're With」
一般には本アルバムのハイライトはこの曲だと思います。アルバムからの1stシングルとしてR&Bチャート第3位、ポップ・チャート第18位のヒットとなりました。
Stephen Stillsのカヴァー(オリジナルはアルバム『Stephen Stills』収録)です。Aretha Franklin、The Meters、Luther Vandrossなど数多くのアーティストがカヴァーしている名曲ですね。
「Nothing to Do but Today」もそうですが、フォーキーなグルーヴ感が魅力のStephen Stills作品とIsleysの相性の良さを感じますよね。
本作を気に入った方は、続編と言うべき次作『Brother, Brother, Brother』(1972年)もセットでどうぞ!