発表年:1975年
ez的ジャンル:ソフト&メロウ系ラテン・ソウル
気分は... :アミーゴ!
今回はラテン・ロック/ソウル好きには外せないパーカッション奏者Coke Escovedoの紹介です。
Coke Escovedoは、1941年L.A.生まれのメキシコ系アメリカ人。弟のPete Escovedoと共に幼い頃からパーカッションを始め、Escovedo Brothersとして活動していたようです。ちなみにPete Escovedoは、後にPrinceファミリーの一員としてブレイクする女性パーカッション奏者Sheila E.のお父さんです。
1960年代にジャズ・ヴァイヴ奏者Cal Tjaderのバンド・メンバーとして活動したCokeは、70年代初めにはラテン・ロックの雄Santanaのレコーディング&ツアー・メンバーとなります。特にSantanaの3rdアルバム『Santana III』におけるCokeの貢献は大きいものでした。
その後、弟Peteをはじめ元Santanaで後にJourneyを結成するNeal Schon、Paul Jackson、Lenny White等の腕利きミュージシャンを集めて、ラテン・ロック・グループAztecaを結成し、『Azteca』(1972年)、『Pyramid Of The Moon』(1973年)という2枚のアルバムをリリースしています。
AztecaはCarlos Santanaの弟Jorge Santanaが結成したグループMaloやEl Chicanoといったグループと共に、ラテン・ビート炸裂のチカーノ・サウンドを聴かせてくれましたね。本ブログでも紹介した大人気ラテン・グルーヴMalo「Nena」のアレンジはCokeです。
また、意外なところでは本ブログでも紹介したBoz Scaggs『Moments』のレコーディングにも、Cokeは弟Peteと共に参加しています。
こうしたキャリアを経てCoke Escovedoが発表した初のソロ・アルバムが今回紹介する『Coke』(1975年)です。本作の翌年に発表した2nd『Comin' At Ya』(1976年)とどちらを紹介しようか迷ったのですが...
『Comin' At Ya』には「I Wouldn't Change A Thing」、「Runaway」というクラブ系リスナーにとっての強力2トップが収録されているのが魅力ですね。僕も一番好きなCokeの曲となると「I Wouldn't Change A Thing」を選んでしまいますね。「I Wouldn't Change A Thing」はJohnny Bristolのカヴァー。
ただし、今日は本当はソウル系アルバムを紹介したい気分だったので、よりソウル・テイストの仕上がりとなっている『Coke』の方をセレクトしました。
ジャケの雰囲気そのままに、全体としてソフト&メロウな雰囲気が漂うラテン・ソウル・アルバムってカンジですね。Lamont Dozier、Smokey Robinson、Leon Wareといったソウル系カヴァーに本作の特色が出ているように思います。あとはCokeのソロ作で唯一R&Bチャートにチャート・インした「Make It Sweet」も聴きモノです。
参加ミュージシャンの中では、Linda Tilleryのパワフル&ソウルフルなヴォーカルが際立っていますね。彼女の存在なくしては、本作は成り立たないくらいの存在感があります。
全曲紹介しときやす。
「No One To Depend On」
Cokeがソングライティングに参加したSantana『Santana III』収録曲の再演。ラテン・フレイヴァーのSantanaヴァーションとは対照的に、少しルーズなファンキー・チューンに仕上がっています。ちなみにLinda Tilleryの思わせぶりのヴォーカルがグッドですね。Linda Tilleryは『Santana III』にもバック・ヴォーカルとして参加していました(本曲には未参加ですが)。
「Why Can't We Be Lovers」
60年代モータウンを支えた無敵のソングライティング・トリオH-D-Hの一人Lamont Dozierの1972年のヒット曲のカヴァー。男女デュエットによるメロウ・ソウルに仕上がっています。
「Rebirth」
Minnie Ripertonばりのソプラノ・コーラスが印象的なソフト&メロウ路線のミッド・チューン。
「Easy Come Easy Go」
ようやく4曲目にしてコンガやティンバレスが鳴り響くラテン・フレイヴァーのファンキー・チューンです。
「Love Letters」
Smokey Robinson『A Quiet Storm』収録曲のカヴァー。個人的にはソウル・カヴァーの中では本曲の仕上がりがダントツで好きですね。ラテン風味の大人のメロウ・ソウルってところですかね。アレンジのセンスがサイコーですね。話が逸れますが、最近の密かな愛聴盤が『A Quiet Storm』なので、こちらもそのうち紹介しますね。
「Halls Delight」
ブラック・ムービーのサントラあたりにピッタリなグルーヴ全開のインスト・チューン。ホーン隊が大活躍です。
「If I Ever Lose This Heaven」
本ブログでも紹介したQuincy Jones『Body Heat』収録のLeon Ware作の名曲。同じく本ブログでも紹介したAverage White Bandの大ヒット・カヴァーをはじめ、Sergio Mendes、Maxine Nightingale、Nancy Wilsonなど多数のカヴァーがありますね。ここでは男女デュエットでオリジナルの雰囲気に近い仕上がりです。
「What Are You Under」
クロスオーヴァー風味のファンキー・チューン。というかジャズ・ファンクですね。
「Make It Sweet」
前述のとおりR&Bチャートにもチャート・インした本作のハイライト曲。フリーソウル・クラシックとしてもお馴染みですね。僕もこの曲が一番のお気に入りです。
ラテンとソウルとAORのいいとこどり!みたいな仕上がりがサイコーですね。ざわめきの中からコンガのリズムとLindaのヴォーカルが聴こえてくるイントロがたまりません。Cokeらしいラテンらしいグルーヴ感とLindaのソウルフルなヴォーカルのコンビネーションが抜群です。文句なしの名曲だと思います。
「Life Is A Tortured Love Affair」
Santanaっぽい雰囲気もあるファンキー・チューン。この曲を聴くと、Boz Scaggs『Moments』にCokeが参加していたことを納得してしまいます。
ソロ第2弾『Comin' At Ya』(1976年)やAzteca『Azteca』(1972年)も改めて紹介したいと思います。