2008年01月20日

Bow Wow & Omarion『Face Off』

若手人気ラッパー&シンガーの夢のコラボ☆Bow Wow & Omarion『Face Off』
Face Off
発表年:2007年
ez的ジャンル:若手人気ラッパー&シンガー夢のコラボ
気分は... :好敵手と向き合う!

ソロ・デビュー・アルバム『O』(2005年)、2ndアルバム『21』(2006年)が共に全米アルバム・チャートNo.1に輝くなど現在のR&Bシーンでもトップクラスの人気を誇る若手男性R&BシンガーOmarion

本ブログでも前述の2枚のアルバムを紹介したように、年甲斐もなくOmarion好きだったりします(笑)

そのOmarionが若手人気No.1ラッパーBow Wowとタッグを組み、作り上げたアルバムが『Face Off』です。

年末に購入したのですが、なかなか聴く時間が取れず、最近になってようやく聴き込むようになりました。

二人の共演と言えば、Bow Wowのアルバム『Wanted』(2005年)からシングル・カットされヒットした「Let Me Hold You」を思い出しますよね。この激メロなスロウ・チューンが大のお気に入りだったので、本作のリリースは嬉しい限りです。

二人はこれまで一緒にツアーを何度も回っており、コラボ・アルバムがリリースされるのは時間の問題でしたが、ようやく完成し年末にリリースとなりました。

二人はR.KellyJay-Zのコラボ・アルバム『The Best of Both Worlds』(2002年)を相当意識したみたいですね。まぁ、R.KellyやJay-Zと比較するのはまだまだ時期尚早という気がしますが...それでも二人の息はピッタリで十分に楽しめます。

こうしたコラボ・アルバムは、その性格上あまり冒険はできず手堅い作りになる傾向がありますよね。その意味で、本作に限らず純粋に共演自体を楽しむのが、コラボ・アルバムの聴き方だと思っています。まぁ、中身を云々は二の次でも良いのでは?

本作も将来のR&B/Hip-Hopシーンを担う有望な若手スター二人のビッグ・マッチを大いに楽しみましょう。

全曲紹介しときやす。

「Face Off」
これから始まる二人の共演を盛り上げるための オープニング曲といったカンジです。

「Hood Star」
人気の1曲ですね。シンセによる哀愁トラックが印象的です。YouTubeでこの曲のライブ映像を観ましたが、若い女性の歓声の凄さに圧倒されました。

「Girlfriend」
アルバムからのリード・シングル。「Let Me Hold You」大好きだった僕としては、同じくメロウ路線の本曲も大歓迎です。PVでも二人の息はピッタリってカンジですよね。若い女性が聴くともうメロメロになるんでしょうね(笑)Mary J. Blige『Growing Pains』でも大活躍だったThe-Dreamがソングライティングにも参加しています。

「Hey Baby (Jump Off)」
アルバムからの2ndシングルはこの曲。Soul DiggazプロデュースによるLL Cool J.「Going Back to Cali」をサンプリングしたミッド・グルーヴ。「Girlfriend」から続くPVも楽しいですね。女性バック・ボーカルSonya Eliseによる♪カモ〜ン♪がエロくていいですな(笑)

「He Ain't Gotta Know」
T-Painプロデュース曲。スムースな哀愁メロウ・チューンに仕上がっています。T-PainとBow Wowはシングル「Outta My System」で共演していますね。

「Bachelor Pad」
ダンス好きの人はこの手の曲が好きなのでは?僕はイマイチ苦手なタイプの曲ですが(笑)

「Listen」
Lil Ronnieプロデュース。Lil RonnieはBow Wowのアルバム『The Price of Fame』でも数曲プロデュースしていましたね。なかなかメロディアスな仕上がりが好きです。

「Can't Get Tired Of Me」
メロウ好きの僕はかなりのお気に入り曲です。プロデューサーのRic "Rude" Lewisはさすが Darkchild Entertainmentってカンジですね。

「Number Ones」
Earl Klugh「Mobimientos del Alma (Rhythms of the Soul) 」をサンプリングしたラテン・フレイヴァーのダンス・チューン。若い二人の共演にラテンはハマると思います。The Stereotypesプロデュース。

「Baby Girl」
L.T. Huttonプロデュース。Marques Houstonも曲作りに参加しています。サラッとしたカンジがいいですね。

「Take Off Your Clothes 」
Lil Ronnieプロデュース。この曲もラテン・フレイヴァーですね。メロディアスなトラックが印象的です。

「Another Girl」
本ブログでも大人気のPretty Ricky等を手掛けたJim Jonsinプロデュース。

Bow Wowと言えば、日本のハードロックバンドでBOWWOW(バウワウ)ってありましたよね。急に思い出しました。
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2008年01月19日

Deniece Williams『When Love Comes Calling』

David Foster、Ray Parker Jr.をプロデューサーに迎えAOR色を強めた3rdアルバム☆Deniece Williams『When Love Comes Calling』
ラヴ・コーリン(期間生産限定盤)
発表年:1979年
ez的ジャンル:AOR系R&Bソングバード
気分は... :コートが暖かそう!

今回はDeniece Williamsの3rdアルバム『When Love Comes Calling』(1979年)の紹介です。

Deniece Williamsの紹介は、デビュー・アルバム『This Is Niecy』(1976年)に続き2回目になります。『This Is Niecy』の記事投稿日を確認したら2005年11月になっていたので、2年以上のブランクが空いてしまいました。

本当はこんなにブランク空けたくなかったのですが、Deniece WilliamsのアルバムってAmazonでの取り扱いがないので、ペンディング状態のまま年月が過ぎてしまったという感じです。数日前、たまたま本作を発見できたので今回紹介する運びとなりました。

『When Love Comes Calling』は、1st『This Is Niecy』(1976年)、2nd『Song Bird』(1977年)に続く彼女の3rdアルバムです。

本作の特徴は、何といってもプロデューサーにDavid Foster(6曲)とRay Parker Jr.(3曲)の二人を起用している点ですよね。ご存知の方も多いように、Earth, Wind & FireKalimba Productionの一員となり、Maurice WhiteをはじめとするEW&Fの面々の全面バックアップのもと1st、2ndを制作してきたDeniece Williamなので、プロデューサーからMaurice Whiteの名が消えたということは大きな変化だったのかもしれませんね。

もっとも、このプロデューサー変更は多忙となったMaurice Whiteが秘蔵っ子の更なるステップアップを、二人のプロデューサーに託したという感じですよね。特に、David Fosterは本作と同じ1979年に発売されたEW&Fの『I Am』へも参加しており、Maurice Whiteからのご指名という流れなのでしょうね。

DenieceとRay Parker Jr.は、Deniece がStevie WonderのバックWonderlandの一員だった時代からの旧知の仲であり、気心知れた仲間によるプロデュースという感じでしょうか。

前年(1978年)にポップチャート、R&Bチャート共にNo.1に輝いたJohnny Mathisとのデュエット「Too Much, Too Little, Too Late」が伏線となり、本作ではAOR的なアプローチを強めていますが、そういった路線にフィットする人選がDavid FosterとRay Parker Jr.だったのでしょうね。

AORファンにとっては、Steve Lukather、Jeff Porcaro、David HungateというTotoのメンバーをはじめ、Jeff Porcaroの弟Mike Porcaro(後にHungateの後釜としてToto加入)、Bill Champlinあたりの参加も嬉しいのでは?

僕の場合、『This Is Niecy』『Song Bird』の2枚が特にお気に入りなのですが、本作でのAOR路線もなかなか好きです。同じくAOR色を取り入れたEW&F『I Am』には嫌悪感を抱いてしまう僕なのですが、本作に関してはそういったものが全くありません。EW&F『I Am』に対する偏見は、僕自身がへそ曲がりなだけだと思うのですが(笑)

Denieceの艶やかでキラキラした声質が大好きなのですが、そんな魅力が本作でも堪能できます。

全曲紹介しときやす。

「I Found Love」
シングルにもなったオープニング・チューン。Ray Parker Jr.が手掛けたウキウキ感たっぷりのミッド・グルーヴです。Denieceのキラキラ・ヴォイスの魅力がうまく引き出されていますね。アレンジのSylvester Riversの手腕はお見事です!

「Are You Thinking」
意外にお気に入りなのが、このDavid Fosterプロデュース曲。余裕たっぷりのアダルティな雰囲気がいいですね。夜酒のお供にピッタリな1曲だと思います。

「My Prayer」
インタールード的なアカペラ作品です。

「I've Got the Next Dance」
シングルカットもされた軽快なダンス・ナンバー。このディスコ・チューンのプロデュースがDavid Fosterというのも面白いですね。Bill Champlinのバック・コーラスもいい感じ!David Fosterとの相性が必ずしも良くない僕も大満足の仕上がりです。

「Touch Me Again」
ミュージカル挿入歌のようなドリーミーな仕上がり。Barbra Streisandあたりが歌ってもドンピシャな感じですね。Jeremy Lubbokのストリングス・アレンジがグッド!

「When Love Comes Calling」
このタイトル曲を聴くと、David FosterやToto勢との共演が正解であったと納得してしまいます。聴いていて、とても華がありますよね。メロウ好きの僕の一番のお気に入り曲です。

「God Knows」
タイトル曲と並ぶ僕のお気に入りです。メロウ好きにはたまらない1曲ですね。ラブラブ・モードの人が聴いたら、一発で昇天してしまうでしょうね。この曲でもBill Champlinのバック・コーラスが効いています!

「Like Magic」
Ray Parker Jr.プロデュースによる軽快なミッド・グルーヴ。聴いていると元気になってくる明るさが好きです。

「Turn Around」
Ray Parker Jr.プロデュース曲。じっくり聴かせるミッド・チューン。地味ですが、Denieceのヴォーカルを堪能するにはなかなかいい曲です。

「Why Can't We Fall in Love?」
この曲も本作のハイライトの1つですね。Deniece Williams/David Foster/Carole Bayer-Sagerによる共作曲。本作の翌年にDavid FosterプロデュースでTavaresもカヴァーしています。

Carole Bayer-Sagerによる切ない歌詞をDenieceが見事に歌いきっています。聴いているこちらも感情移入して胸が締め付けられてしまいますね(笑)Maurice Whiteがバック・コーラスで参加しています。

今日はバタバタで時間がありません。
何か書き忘れたけど、思い出せない!思い出したら後日書き足します。
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2008年01月18日

Cypress Hill『Cypress Hill』

90年代前半のHip-Hop黄金期に異彩を放ったラティーノHip-Hop☆Cypress Hill『Cypress Hill』
Cypress Hill
発表年:1991年
ez的ジャンル:ラティーノ系異彩Hip-Hop
気分は... :知らざァ〜言ってぇ〜聞かせやしょう〜

昨日は新春浅草歌舞伎へ...

年始挨拶には中村獅童が登場!巧妙なトークで場を盛り上げた後に演目へ!
僕が観た午前の部は、「傾城反魂香(けいせいはんごんこう)」、「弁天娘女男白浪(べんてんむすめめおのしらなみ)」の2演目でした。

特に、中村七之助、中村獅童、中村勘太郎、市川亀治郎、片岡愛之助という白浪五人男が勢揃いする「弁天娘女男白浪」は、なかなか壮観でした。やっぱり、歌舞伎役者は舞台で観るとTVや映画の10倍以上輝いて見えますね。

あと、いつも歌舞伎を観て思うのことが“歌舞伎ってジャパニーズ・ラップだなぁ!”

ということで、今回は90年代前半のHip-Hop黄金期に輝いていたHip-Hopグループの中でも、一際異彩を放っていたグループCypress Hillの紹介です。

Cypress Hillは、B-Real(チカーノ系)、Sen Dog(キューバ出身)、DJ Muggs(イタリア系)という3人がロサンゼルスで結成したグループ。House Of PainFunkdoobiestらとSoul Assassinsというクルーを結成していました。

Hip-Hop=黒人音楽という固定観念があった僕にとって、全員ラティーノのHip-Hopユニットの登場というのはそれだけでかなりインパクトがありましたね。

僕が持っている彼らの作品は、デビュー・アルバム『Cypress Hill』(1991年)、2nd『Black Sunday』(1993年)、3rd『Cypress Hill III: Temples of Boom』(1995年)の3枚。

Cypress Hillらしいロック色の強さやサイコ&ダークな雰囲気という意味では大ブレイクした全米チャートNo.1アルバム『Black Sunday』あたりを紹介すべきなのかもしれませんが、今回はデビュー・アルバム『Cypress Hill』(1991年)をセレクト!

個人的には『Cypress Hill』を聴く頻度が圧倒的に高いですね。僕にとっては『Black Sunday』以上にインパクトがあったアルバムです。
『Black Sunday』以降のアルバムと比べると、よりファンキーでユルい感じが好きですね。

コアなCypress Hillファンではない一般的なHip-Hop好きの方は、「How I Could Just Kill a Man」「Hand on the Pump」「Phuncky Feel One」「Latin Lingo」等の人気曲が収録されている本作が、一番聴きやすいのではと思います。

この独特のヤバさ&ユルさにハマると中毒になりますよ!

オススメ曲を紹介しときやす。

「Pigs」
タイトルの通り、警官をブタどもと攻撃しています。リリックのみならず、Chuck Cornish「Ali; Funky Thing」ネタのトラックもヤバそうですね。

「How I Could Just Kill a Man」
グループを代表する人気曲の1つですね。デンジャー・モードを誘導するかのような怪しいチャルメラ音が印象的ですよね。アドレナリン出まくりになること間違いなしの1曲です。

♪Time for Some Action♪のフレーズがRedman「Time 4 Sum Aksion」にサンプリングされており、2曲セットで楽しんでいるHip-Hopファンの方も多いのでは?Rage Against the Machineのカヴァーもありますね。

Lowell Fulsom「Tramp」、Manzel「Midnight Theme」、Music Machine「Come on In」等がサンプリングされています。

「Hand on the Pump」
シングルにもなった人気曲。リリックの中身は...ヤバくて書けません(笑)B-Realの甲高い声のユニークさがわかる1曲ですよね。みんなで♪ララララララッララァ〜♪と合唱しましょう!この曲もMethod Man & Redman「Da Rockwilder」とセットで聴くのが楽しいかもしれませんね。大胆にパクっています。

Gene Chandler「Duke of Earl」、Junior Walker & the All Stars「Shotgun」をサンプリング。

「Light Another」
ファンキーなハジけ具合がグッドな1曲。Kool & the Gang「Good Times」ネタ。

「The Phuncky Feel One」
この曲はHip-Hopクラシックですね。MuggsによるファンキートラックとB-Realの個性的なフロウが堪能できる傑作だと思います。Cypress Hill独特の雰囲気がいいですねぇ。The J.B.'s「More Peas」、「La Di Da La Di Day」、Village Callers「Hector」 、Meters「Look Ka Py Py」 、Kool & the Gang「Give it Up」等がサンプリングされています。

「Real Estate」
この曲も人気曲ですね。個人的にはアルバムで一番のお気に入りはコレです。All the People「Cramp Your Style」ネタのドラム・ブレイク、Bar-Kays「Humpin'」ネタのギターループ等サイコーにカッチョ良いですね。超イチオシです!

「Stoned Is the Way of the Walk」
B-Real節を堪能できる1曲。Grant Green「Down Here on the Ground」ネタ。

「Psycobetabuckdown」
P-Funkノリの1曲ですね。P-Funkの悪ノリ的な雰囲気とCypress Hillのユニークさって相通じるものがある気がします。Parliament「Aquaboogie」、Willie Hutch「Foxy Lady」ネタ。

「Latin Lingo」
Sen Dogがスパニッシュでキメてくれるこの曲も人気ですね。ヒスパニックHip-Hopの本領発揮!といったところでしょうか。Pazant Brothers and the Beaufort Express「A Gritty Nitty」 、Edwin Starr「Funky Music Sho Nuff Turns Me On」、Elephant's Memory「Mongoose」ネタ。

「Born to Get Busy」
ユルめな感じが好きですね。Booker T. & The MG's「Boot-Leg」ネタ。

歌舞伎の名台詞って、興味持ち始めるとハマりそうですね。
知らざァ〜言ってぇ〜聞かせやしょう〜
posted by ez at 02:24| Comment(2) | TrackBack(0) | 1990年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年01月17日

Dexy's Midnight Runners『Searching For The Young Soul Rebels』

パンク/ニューウェイヴを通過して生まれたホワイト・ソウル☆Dexy's Midnight Runners『Searching For The Young Soul Rebels』
若き魂の反逆児を求めて
発表年:1980年
ez的ジャンル:ブリティッシュ・ホワイト・ソウル
気分は... :“ソウルフル”ではないけど“ソウル”がある!

昨日、The Who『Quadrophenia』の記事投稿をした影響で、今日は映画『さらば青春の光』が公開された前後のモッドなアルバムを聴きたくなりました。

ということで、Kevin Rowland率いるDexy's Midnight Runnersのデビュー・アルバム『Searching For The Young Soul Rebels』(1980年)をセレクト。

Dexy's Midnight Runnersは、1978年に英国バーミンガムでシンガー/ソングライターであるKevin Rowlandを中心に結成されたグループです。Kevin RowlandはDexy's Midnight Runners結成前はKilljoysというパンク・バンドで活動していました。

1979年にシングル「Dance Stance」でデビューすると、早くも1980年の2ndシングル「Geno」がUKチャートNo.1の大ヒットとなりました。同年デビュー・アルバム『Searching For The Young Soul Rebels』を発表し、UKアルバム・チャートの第6位まで上昇します。

1982年には2ndアルバム『Too-Rye-Ay』を発表。同アルバムからのシングル「Come On Eileen」は全英のみならず全米チャートでも第1位となる大ヒットとなり、世界中にDexy's Midnight Runnersの名が知れ渡りました。その後グループは80年代半ばに解散しています。

現在、世間ではDexy's Midnight Runnersを“「Come On Eileen」の一発屋”ととらえる向きが圧倒的に多いように思います。

僕もリアルタイムでは、アイルランド出身の両親を持つKevin Rowlandのルーツに触れたアイリッシュ・トラッド風味のポップ・ソング「Come On Eileen」のイメージに圧倒的に支配されていましたね。なので、知らぬ間にDexy's Midnight Runners=アイリッシュ・トラッドという刷り込みが頭の中にインプットされていました。

彼らの本質が、スタックス/ノーザン・ソウルを指向するブリティッシュ・ホワイト・ソウルにある!とは当時全くわかりませんでしたね。「Come On Eileen」の次シングル「Jackie Wilson Said (I'm in Heaven When You Smile)」Van Morrisonのカヴァー(アルバム『Saint Dominic's Preview』収録)であったことを冷静に分析できれば、そうしたことも想像できたのかもしれませんが...でも、当時高校生の僕じゃそこまでは無理かぁ。

なので、この1stアルバムを初めて聴いた時には正直かなり驚きましたね。

2ndにあったようなアイリッシュ色はなく、スタックス/ノーザン・ソウル指向に溢れた100%ブリティッシュ・ホワイト・ソウルのアルバムです。

ただし、単にスタックス/ノーザン・ソウルを模倣したアルバムではなく、そこはパンク/ニューウェイヴを通過してきたKevin Rowlandらしいホワイト・ソウルに仕上がっているのがミソだと思います。

このアルバムを聴くと、Paul WellerJamを解散させ、Style Councilへと向かった気持ちが何となくわかる気がします。

実際、本作にはStyle Council加入前のMick Talbotも参加しています。

オススメ曲を紹介しときやす。

「Burn It Down」
彼らのデビュー・シングル(シングル時にタイトル「Dance Stance」を改題したもの)。パンクやニューウェイヴが流れるラジオから突如モッドなホワイト・ソウルが聴こえてくるという演出がなかなか乙ですな。ホワイト・ソウルといってもヴォーカルが全然ソウルフルではないあたりがこのグループらしいですね。

「Tell Me When My Light Turns to Green」
パワフルなホーン・セクションを中心としたスタックス風ソウルのバックとパンク/ニューウェイヴ・モードのヴォーカルとのギャップが面白いです。

「Teams that Meet in the Caffs」
哀愁ソウル・モードが漂うインスト・チューン。ヴォーカルがないとホワイト・ソウル・グループであることがより鮮明にわかります(笑)

「Geno」
前述のUKチャートNo.1となった大ヒット・シングル。ちなみにGenoとは、イギリスを拠点に活躍したR&BミュージシャンGeno Washingtonのことです。60年代後半にGeno Washington & The Ram Jam Bandとして活動し、モッズの人気を集めたみたいですね。

パンク/ニューウェイヴを通過して生まれたホワイト・ソウルってカンジがいいですよね。Kevin Rowlandのパンク・バンドKilljoysでの経験がちゃんと血肉になっている気がします。

「Seven Days Too Long」
1966年にChuck Woodsによってリリースされたノーザン・ソウルのカヴァー。Style Council的なカッチョ良さを求めるならば、この曲が一番かも?

「Thankfully Not Living in Yorkshire It Doesn't Apply」
カッチョ良さでは「Seven Days Too Long」と1、2位を争う曲ですね。パンク/ニューウェイヴを通過したBooker T. & The MG'sって感じです。スピード感がいいですね。

「Keep It」
この曲もバックは思い切りスタックス風ですね。Kevin Rowlandのヴォーカルは“ソウルフル”なテクニックないけど、“ソウル”なスピリッツがありますよね。

「There, There, My Dear」
「Geno」に続く3rdシングルであり、UKチャート第7位のヒットとなりました。この曲もパンク/ニューウェイヴ経由のホワイト・ソウルならではの魅力に溢れていると思います。

タイトルやジャケも中身と実にマッチしていると思います。
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2008年01月16日

The Who『Quadrophenia』

『さらば青春の光』として映画化されたロック・オペラ第2弾☆The Who『Quadrophenia』
Quadrophenia
発表年:1973年
ez的ジャンル:永遠のモッズ・ヒーロー系ロック・オペラ
気分は... :巡り巡って

久々のThe Whoです。

The Whoの紹介は、『Who's Next』(1971年)、『My Generation』(1965年)、『A Quick One』(1966年)、『Meaty Beaty Big And Bouncy』(1971年)に続き5回目の紹介になります。

今回は『四重人格』の邦題でお馴染みのロック・オペラ大作『Quadrophenia』(1973年)です。

『Tommy』(1969年)に続くロック・オペラ第2弾となる本作は、1979年に映画化され『さらば青春の光』のタイトルで公開されました(Franc Roddam監督)。若き日のStingも出演していましたね。

The Who大好きの僕ですが、このアルバムへの接し方は紆余曲折がありましたね。僕に限らず、ファンの間でもいろいろ意見が分かれるアルバムが『Quadrophenia』という作品のような気がします。

アルバム(LP)を購入した高校時代は、アルバムのコンセプトと10代だった自分の葛藤が重なったため、かなりハマった気がします。しかし、大学生になり浮ついた生活を過ごすようになると、このコンセプトに重さを感じはじめてあまり聴かなくなりましたね。

その後CD時代になると、決して嫌いな作品ではないけど、好んで聴くThe Whoのアルバムでもないというのが、『Quadrophenia』というアルバムの位置づけだったかもしれません。

僕の場合、『Who's Next』『Tommy』が入口で、その後『Quadrophenia』『Who Are You』(1978年)を聴き、そこから『My Generation』をはじめとする初期作品へ遡るという流れでThe Whoのアルバムを聴いていきました。

そんな変な聴き方をした関係で、初期作品への熱中度が高まるにつれて『Quadrophenia』を聴く機会が徐々に減っていったという流れもありましたね。

また、モッズとして生きる若者の孤独と葛藤を描いたストーリーと、ハード・ロック的なサウンドとの間にギャップを感じ、それに戸惑っていた面もあったかもしれません。

そんな僕がここ数年『Quadrophenia』をたまに聴きたいと思うようになり、実際ちょくちょく聴くようになっています。

きっかけは本ブログでもたびたび登場する海外TVドラマ『CSI:科学捜査班』シリーズの影響です。この人気ドラマ・シリーズのプロデューサーJerry BruckheimerがThe Whoのファンということもあって、『CSI:科学捜査班』『CSI:マイアミ』『CSI:ニューヨーク』という3シリーズ全てでThe Whoの音楽がガンガン流れてきます。

そんな中で『Quadrophenia』からは「5:15」『CSI:科学捜査班』「The Real Me」『CSI:マイアミ』で流され、頻繁に耳にするようになりました。このシリーズの大ファンである僕は、それらを聴いているうちに『Quadrophenia』への興味が再び湧いてきたわけです。

でもって、久々に聴いてみると悪くないんですよねぇ。
最初は純粋に曲単位で楽しもうなんて思っていたのですが、いざ聴いてみるとアルバムのテーマ、コンセプトがまた僕の心に響いてくるんですよね。この歳になっても人生にもがき苦しんでいる証拠なのかもしれませんが(笑)

初めての方は予備知識として、物語の主人公ジミーには4つの性格があり、それぞれの性格はThe Whoのメンバーを表しているという点を念頭に置いて聴くと、さらに興味深く聴けると思います。

それらはRoger Daltreyのテーマ「Helpless Dancer」John Entwistleのテーマ「Is It Me?」(曲としては「Doctor Jimmy」)、Keith Moonのテーマ「Bell Boy」Pete Townshendのテーマ「Love, Reign o'er Me」というかたちで表現され、アルバム内に度々登場します。

曲は全てPete Townshendによるものです。
いくつになっても若者の苦悩や葛藤に対してメッセージを送り続けるという点で、Pete TownshendThe Whoというグループの真髄を示してくれたアルバムと言えるのでは?

オススメ曲を紹介しときやす。

「The Real Me」
いきなりアルバムで最もエキサイティングなナンバー。暴れまくるKeith Moonのドラム、Roger Daltreyの役者魂たっぷりのヴォーカルもグッドですが、この曲の主役はJohn Entwistleのベースでしょうね。このベース・ラインを聴いているだけでも飽きないですね。。

この曲は前述のように『CSI:マイアミ』使用曲です。主人公の捜査官ホレイショ・ケインのタフさとこの曲のハードさとが実にマッチしていると思います。

「Quadrophenia」
「Helpless Dancer」、「Is It Me?」、「Bell Boy」、「Love, Reign o'er Me」という4つのテーマが順に顔を覗かせます。

「The Punk and the Godfather」
Pete Townshend永遠のテーマ“苦悩する10代”が歌われています。「My Generation」を思い起こすどもりの少年が出てくるあたりが興味深いですね。曲自体もなかなかキャッチーな仕上がりなので人気のある曲なのでは?

「I'm One」
アコースティックな味わいとPeteの鼻づまりヴォーカルがいい味出しています。 改めて聴くと、このあたりの曲がいいですね。

「Helpless Dancer」
Roger Daltreyのテーマ曲。ロック・オペラらしいサウンドをバックに主人公ジミーの葛藤が如実に描かれています。次の「Is It in My Head?」 の間に「Kids Are Alright」が聴こえてくるのがグッときますね

「Is It in My Head?」
Peteらしい1曲ですね。『Who's Next』収録の「Behind Blue Eyes」あたりがお好きな方は気に入る曲だと思います。

「I've Had Enough」
「The Real Me」と並ぶカッチョ良さを持った曲ですね。途中でバンジョーの演奏でほんわかムードになるのがロック・オペラらしい(笑)

「5:15」
アルバムからのリード・シングル。ホーン・セクションも入り大いに盛り上がる1曲ですね。一時期本アルバムから遠ざかっていた時期にも、この曲だけは好きで聴いていました。前述のように『CSI:科学捜査班』使用曲です。ドラマの舞台であるラスベガスの華やかさにマッチしていますね。

「Sea and Sand」
美しさとダイナミックな展開が魅力の1曲。『Who's Next』が好きな人ならば気に入る曲なのでは?

「Drowned」
なかなかファンキーな味わいの1曲です。Pete Townshendのライブ・レパートリーとしてもお馴染みですね。

「Bell Boy」
Keith Moonのテーマ曲。かつてのモッズの英雄がベル・ボーイとしてこき使われている様を歌ったもの。躍動感に満ちた演奏が♪Bell Boy〜♪のフレーズで一気に現実に突き落とされる感じです。

「Doctor Jimmy」
John Entwistleのテーマ曲。タイトルは「ジキルとハイド」に引っ掛けたもの。クスリの有無による二重人格をこのように表現したものです。Johnはやっぱりクスリでぶっ飛んでいたのか?

「Love, Reign o'er Me」
アルバムのエンディングでもあるPete Townshendのテーマ曲は美しさと虚しさが交錯するバラード。 全てに絶望し、海へ飛び込んだジミーだったが...愛はジミーを救うことができたのだろうか?

映画『さらば青春の光』やそのサントラ盤もセットで鑑賞すると、より楽しめると思います。
posted by ez at 06:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 1970年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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