2008年01月16日

The Who『Quadrophenia』

『さらば青春の光』として映画化されたロック・オペラ第2弾☆The Who『Quadrophenia』
Quadrophenia
発表年:1973年
ez的ジャンル:永遠のモッズ・ヒーロー系ロック・オペラ
気分は... :巡り巡って

久々のThe Whoです。

The Whoの紹介は、『Who's Next』(1971年)、『My Generation』(1965年)、『A Quick One』(1966年)、『Meaty Beaty Big And Bouncy』(1971年)に続き5回目の紹介になります。

今回は『四重人格』の邦題でお馴染みのロック・オペラ大作『Quadrophenia』(1973年)です。

『Tommy』(1969年)に続くロック・オペラ第2弾となる本作は、1979年に映画化され『さらば青春の光』のタイトルで公開されました(Franc Roddam監督)。若き日のStingも出演していましたね。

The Who大好きの僕ですが、このアルバムへの接し方は紆余曲折がありましたね。僕に限らず、ファンの間でもいろいろ意見が分かれるアルバムが『Quadrophenia』という作品のような気がします。

アルバム(LP)を購入した高校時代は、アルバムのコンセプトと10代だった自分の葛藤が重なったため、かなりハマった気がします。しかし、大学生になり浮ついた生活を過ごすようになると、このコンセプトに重さを感じはじめてあまり聴かなくなりましたね。

その後CD時代になると、決して嫌いな作品ではないけど、好んで聴くThe Whoのアルバムでもないというのが、『Quadrophenia』というアルバムの位置づけだったかもしれません。

僕の場合、『Who's Next』『Tommy』が入口で、その後『Quadrophenia』『Who Are You』(1978年)を聴き、そこから『My Generation』をはじめとする初期作品へ遡るという流れでThe Whoのアルバムを聴いていきました。

そんな変な聴き方をした関係で、初期作品への熱中度が高まるにつれて『Quadrophenia』を聴く機会が徐々に減っていったという流れもありましたね。

また、モッズとして生きる若者の孤独と葛藤を描いたストーリーと、ハード・ロック的なサウンドとの間にギャップを感じ、それに戸惑っていた面もあったかもしれません。

そんな僕がここ数年『Quadrophenia』をたまに聴きたいと思うようになり、実際ちょくちょく聴くようになっています。

きっかけは本ブログでもたびたび登場する海外TVドラマ『CSI:科学捜査班』シリーズの影響です。この人気ドラマ・シリーズのプロデューサーJerry BruckheimerがThe Whoのファンということもあって、『CSI:科学捜査班』『CSI:マイアミ』『CSI:ニューヨーク』という3シリーズ全てでThe Whoの音楽がガンガン流れてきます。

そんな中で『Quadrophenia』からは「5:15」『CSI:科学捜査班』「The Real Me」『CSI:マイアミ』で流され、頻繁に耳にするようになりました。このシリーズの大ファンである僕は、それらを聴いているうちに『Quadrophenia』への興味が再び湧いてきたわけです。

でもって、久々に聴いてみると悪くないんですよねぇ。
最初は純粋に曲単位で楽しもうなんて思っていたのですが、いざ聴いてみるとアルバムのテーマ、コンセプトがまた僕の心に響いてくるんですよね。この歳になっても人生にもがき苦しんでいる証拠なのかもしれませんが(笑)

初めての方は予備知識として、物語の主人公ジミーには4つの性格があり、それぞれの性格はThe Whoのメンバーを表しているという点を念頭に置いて聴くと、さらに興味深く聴けると思います。

それらはRoger Daltreyのテーマ「Helpless Dancer」John Entwistleのテーマ「Is It Me?」(曲としては「Doctor Jimmy」)、Keith Moonのテーマ「Bell Boy」Pete Townshendのテーマ「Love, Reign o'er Me」というかたちで表現され、アルバム内に度々登場します。

曲は全てPete Townshendによるものです。
いくつになっても若者の苦悩や葛藤に対してメッセージを送り続けるという点で、Pete TownshendThe Whoというグループの真髄を示してくれたアルバムと言えるのでは?

オススメ曲を紹介しときやす。

「The Real Me」
いきなりアルバムで最もエキサイティングなナンバー。暴れまくるKeith Moonのドラム、Roger Daltreyの役者魂たっぷりのヴォーカルもグッドですが、この曲の主役はJohn Entwistleのベースでしょうね。このベース・ラインを聴いているだけでも飽きないですね。。

この曲は前述のように『CSI:マイアミ』使用曲です。主人公の捜査官ホレイショ・ケインのタフさとこの曲のハードさとが実にマッチしていると思います。

「Quadrophenia」
「Helpless Dancer」、「Is It Me?」、「Bell Boy」、「Love, Reign o'er Me」という4つのテーマが順に顔を覗かせます。

「The Punk and the Godfather」
Pete Townshend永遠のテーマ“苦悩する10代”が歌われています。「My Generation」を思い起こすどもりの少年が出てくるあたりが興味深いですね。曲自体もなかなかキャッチーな仕上がりなので人気のある曲なのでは?

「I'm One」
アコースティックな味わいとPeteの鼻づまりヴォーカルがいい味出しています。 改めて聴くと、このあたりの曲がいいですね。

「Helpless Dancer」
Roger Daltreyのテーマ曲。ロック・オペラらしいサウンドをバックに主人公ジミーの葛藤が如実に描かれています。次の「Is It in My Head?」 の間に「Kids Are Alright」が聴こえてくるのがグッときますね

「Is It in My Head?」
Peteらしい1曲ですね。『Who's Next』収録の「Behind Blue Eyes」あたりがお好きな方は気に入る曲だと思います。

「I've Had Enough」
「The Real Me」と並ぶカッチョ良さを持った曲ですね。途中でバンジョーの演奏でほんわかムードになるのがロック・オペラらしい(笑)

「5:15」
アルバムからのリード・シングル。ホーン・セクションも入り大いに盛り上がる1曲ですね。一時期本アルバムから遠ざかっていた時期にも、この曲だけは好きで聴いていました。前述のように『CSI:科学捜査班』使用曲です。ドラマの舞台であるラスベガスの華やかさにマッチしていますね。

「Sea and Sand」
美しさとダイナミックな展開が魅力の1曲。『Who's Next』が好きな人ならば気に入る曲なのでは?

「Drowned」
なかなかファンキーな味わいの1曲です。Pete Townshendのライブ・レパートリーとしてもお馴染みですね。

「Bell Boy」
Keith Moonのテーマ曲。かつてのモッズの英雄がベル・ボーイとしてこき使われている様を歌ったもの。躍動感に満ちた演奏が♪Bell Boy〜♪のフレーズで一気に現実に突き落とされる感じです。

「Doctor Jimmy」
John Entwistleのテーマ曲。タイトルは「ジキルとハイド」に引っ掛けたもの。クスリの有無による二重人格をこのように表現したものです。Johnはやっぱりクスリでぶっ飛んでいたのか?

「Love, Reign o'er Me」
アルバムのエンディングでもあるPete Townshendのテーマ曲は美しさと虚しさが交錯するバラード。 全てに絶望し、海へ飛び込んだジミーだったが...愛はジミーを救うことができたのだろうか?

映画『さらば青春の光』やそのサントラ盤もセットで鑑賞すると、より楽しめると思います。
posted by ez at 06:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 1970年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする