
発表年:1980年
ez的ジャンル:ブリティッシュ・ホワイト・ソウル
気分は... :“ソウルフル”ではないけど“ソウル”がある!
昨日、The Who『Quadrophenia』の記事投稿をした影響で、今日は映画『さらば青春の光』が公開された前後のモッドなアルバムを聴きたくなりました。
ということで、Kevin Rowland率いるDexy's Midnight Runnersのデビュー・アルバム『Searching For The Young Soul Rebels』(1980年)をセレクト。
Dexy's Midnight Runnersは、1978年に英国バーミンガムでシンガー/ソングライターであるKevin Rowlandを中心に結成されたグループです。Kevin RowlandはDexy's Midnight Runners結成前はKilljoysというパンク・バンドで活動していました。
1979年にシングル「Dance Stance」でデビューすると、早くも1980年の2ndシングル「Geno」がUKチャートNo.1の大ヒットとなりました。同年デビュー・アルバム『Searching For The Young Soul Rebels』を発表し、UKアルバム・チャートの第6位まで上昇します。
1982年には2ndアルバム『Too-Rye-Ay』を発表。同アルバムからのシングル「Come On Eileen」は全英のみならず全米チャートでも第1位となる大ヒットとなり、世界中にDexy's Midnight Runnersの名が知れ渡りました。その後グループは80年代半ばに解散しています。
現在、世間ではDexy's Midnight Runnersを“「Come On Eileen」の一発屋”ととらえる向きが圧倒的に多いように思います。
僕もリアルタイムでは、アイルランド出身の両親を持つKevin Rowlandのルーツに触れたアイリッシュ・トラッド風味のポップ・ソング「Come On Eileen」のイメージに圧倒的に支配されていましたね。なので、知らぬ間にDexy's Midnight Runners=アイリッシュ・トラッドという刷り込みが頭の中にインプットされていました。
彼らの本質が、スタックス/ノーザン・ソウルを指向するブリティッシュ・ホワイト・ソウルにある!とは当時全くわかりませんでしたね。「Come On Eileen」の次シングル「Jackie Wilson Said (I'm in Heaven When You Smile)」がVan Morrisonのカヴァー(アルバム『Saint Dominic's Preview』収録)であったことを冷静に分析できれば、そうしたことも想像できたのかもしれませんが...でも、当時高校生の僕じゃそこまでは無理かぁ。
なので、この1stアルバムを初めて聴いた時には正直かなり驚きましたね。
2ndにあったようなアイリッシュ色はなく、スタックス/ノーザン・ソウル指向に溢れた100%ブリティッシュ・ホワイト・ソウルのアルバムです。
ただし、単にスタックス/ノーザン・ソウルを模倣したアルバムではなく、そこはパンク/ニューウェイヴを通過してきたKevin Rowlandらしいホワイト・ソウルに仕上がっているのがミソだと思います。
このアルバムを聴くと、Paul WellerがJamを解散させ、Style Councilへと向かった気持ちが何となくわかる気がします。
実際、本作にはStyle Council加入前のMick Talbotも参加しています。
オススメ曲を紹介しときやす。
「Burn It Down」
彼らのデビュー・シングル(シングル時にタイトル「Dance Stance」を改題したもの)。パンクやニューウェイヴが流れるラジオから突如モッドなホワイト・ソウルが聴こえてくるという演出がなかなか乙ですな。ホワイト・ソウルといってもヴォーカルが全然ソウルフルではないあたりがこのグループらしいですね。
「Tell Me When My Light Turns to Green」
パワフルなホーン・セクションを中心としたスタックス風ソウルのバックとパンク/ニューウェイヴ・モードのヴォーカルとのギャップが面白いです。
「Teams that Meet in the Caffs」
哀愁ソウル・モードが漂うインスト・チューン。ヴォーカルがないとホワイト・ソウル・グループであることがより鮮明にわかります(笑)
「Geno」
前述のUKチャートNo.1となった大ヒット・シングル。ちなみにGenoとは、イギリスを拠点に活躍したR&BミュージシャンGeno Washingtonのことです。60年代後半にGeno Washington & The Ram Jam Bandとして活動し、モッズの人気を集めたみたいですね。
パンク/ニューウェイヴを通過して生まれたホワイト・ソウルってカンジがいいですよね。Kevin Rowlandのパンク・バンドKilljoysでの経験がちゃんと血肉になっている気がします。
「Seven Days Too Long」
1966年にChuck Woodsによってリリースされたノーザン・ソウルのカヴァー。Style Council的なカッチョ良さを求めるならば、この曲が一番かも?
「Thankfully Not Living in Yorkshire It Doesn't Apply」
カッチョ良さでは「Seven Days Too Long」と1、2位を争う曲ですね。パンク/ニューウェイヴを通過したBooker T. & The MG'sって感じです。スピード感がいいですね。
「Keep It」
この曲もバックは思い切りスタックス風ですね。Kevin Rowlandのヴォーカルは“ソウルフル”なテクニックないけど、“ソウル”なスピリッツがありますよね。
「There, There, My Dear」
「Geno」に続く3rdシングルであり、UKチャート第7位のヒットとなりました。この曲もパンク/ニューウェイヴ経由のホワイト・ソウルならではの魅力に溢れていると思います。
タイトルやジャケも中身と実にマッチしていると思います。