2008年02月23日

Jaco Pastorius『Jaco Pastorius』

エレクトリック・ベースの概念を変えてしまった天才べーシストの1stソロ☆Jaco Pastorius『Jaco Pastorius』
ジャコ・パストリアスの肖像+2
発表年:1976年
ez的ジャンル:エレクトリック・ベース革命系フュージョン
気分は... :Happy Birthday!

今日は知人の誕生日なので、
まずはお祝いの言葉を...Happy Birthday!

さて、今回はエレクトリック・ベースに革命をもたらした天才べーシストJaco Pastoriusの1stソロ『Jaco Pastorius』(1976年)です。

Jaco Pastorius(本名John Francis Pastorius III)は1951年ペンシルバニア生まれ。その後家族と共にフロリダへ移り住み、10歳の時にドラムを始めます。15歳からベースへ転向し、天才べーシストへの道へと進むことになります。1973年には10代の若さでマイアミ大学の臨時講師としてベースを教えていたそうです。

1975年にPat Methenyの初リーダー作『Bright Size Life』のレコーディングに参加。1976年には今回紹介する1stソロ『Jaco Pastorius』リリースすると同時に、Weather ReportにAlphonso Johnsonに代わるべーシストとして加入し、本ブログでも紹介した『Black Market』のレコーディングに参加しています。

Weather Reportの次作『Heavy Weather』(1977年)がリリースされる頃には、天才べーシストJaco Pastoriusの名を欲しいままにしていました。

『Weather Report』(1982年)までWeather Reportのメンバーとして活躍し、その後は自身のバンドを率いて活動するようになります。しかし、1987年に悲劇が起こります。泥酔状態でナイト・クラブを訪れたJacoは、ガードマンとの乱闘との末、頭部を強打し、そのまま永眠してしまったのでした。享年35歳。

僕が洋楽を聴き始めた頃、ロック少年でまだフュージョンなんて殆ど聴いたことがない僕でも、「Jaco=天才べーシスト」という認識はありましたね。

ただし、本作『Jaco Pastorius』のジャケ・イメージと凄腕の評判のみがインプットされたまま、音を殆んど聴かず長い年月が経ってしまいました。ちゃんとWeather ReportやJacoのソロ作を聴いたのはCD時代になってからですね。

本作『Jaco Pastorius』は、1975年にJacoと出会ったBlood, Sweat & TearsのドラマーBobby Colombyが、Jacoの才能に惚れ込み、その後押しで制作されたアルバムです。プロデュースもBobby Colombyが務めています。

べーシストのアルバムって、テクニックのお披露目中心で、普通の音楽ファンはあまり楽しめない退屈なイメージがあるのですが、本作『Jaco Pastorius』は違いますね。

Jacoの革新的なベースプレイだけで圧倒されるのも事実ですが、ベースプレイ以外の部分でも十分に楽しめるアルバムになっています。これはJaco Pastoriusというミュージシャンが、天才べーシストであると同時に、よりトータルな音楽クリエイターだからだと思います。Pat Methenyがギタリストを超えた存在であるのと同様に、Jacoもべーシストを超えた存在なのだと思います。

Herbie Hancock、Alex Darqui、Don Alias、Lenny White、Wayne Shorter、Hubert Laws、Randy Brecker、Michael Brecker、David Sanborn、Sam & Daveといったメンツが天才べーシストの衝撃のデビューを好サポートしています。

個人的にはDon Aliasのパーカッションがかなり効いていると思います。

全曲紹介しときヤス。

「Donna Lee」
Charlie Parkerによるスタンダード(クレジット上の作曲者はParkerですが、実際の作曲はMiles Davis)のカヴァー。Don AliasのコンガとJacoのベースによるデュオ演奏です。シンプルな編成な分だけ、Jacoの革新的なベース・テクニックに釘付けになります。僕のような門外漢の人間でも凄みを感じる演奏ですねぇ。

「Come On, Come Over」
Sam & Daveの二人がヴォーカルをとるご機嫌なファンク・チューン。「Donna Lee」からのシームレスなつながりがいいですね。Herbie Hancockのクラビネット&エレピ、Randy Brecker、Michael Brecker、David Sanborn等の豪華なホーン隊が盛り上げてくれます。

「Continuum」
幻想的な雰囲気の中で美しく神秘的なベース・プレイを堪能できます。Herbie HancockとAlex Darquiのツイン・エレピが幻想ムードをさらに高めてくれます。こういった曲でもベースが主役になれるってスゴイですな。

「Kuru/Speak Like a Child」
Jacoのオリジナル「Kuru」と本ブログでも紹介したHerbie Hancockの名曲「Speak Like a Child」をクロスさせた演奏です。ある意味、マッシュ・アップを先取りしている感じですよね(笑)

様々な表情で聴かせるストリングス、一貫して全体をガッチリ支え続けるJacoのベース、軽快に弾けるAliasのパーカッション、優雅なHancockのピアノ等全体のバランスが素晴らしいですね。

先に述べたようにストリングス・アレンジ等優れた音楽クリエイターでもあることを認識させてくれる1曲ですね。

「Portrait of Tracy」
Jacoの奥方Tracyをタイトルに入れた美しい1曲。最初聴いた時はこれをJacoのベース・ソロだとはわからず、恥ずかしながらエレピとのデュオだとばかり思っていました。いやぁ、ベースって凄い楽器だなぁ!と認識させてくれた演奏です。

「Opus Pocus」
スティール・ドラムとWayne Shorterのソプラノ・サックスをフィーチャーしたカリビアン・フレイヴァーな1曲です。スティール・ドラム好きの僕としては嬉しい1曲ですね。

「Okonkole y Trompa」
JacoとDon Aliasの共作曲。個人的には「Okonkole Y Trompa」と共にお気に入りの1曲です。ループし続けるJacoのベースとAliasのパーカッションの上で、Peter Gordonの叙情的なフレンチ・ホルンが響くというもの。エレクトロニカ/フューチャー・ジャズを先取りしている、かなり革新的な演奏のように思えます。今回聴いていたら、70年代のFela Kuti全盛期あたりの作品と一緒に聴きたい気分になりました。

「(Used to Be A) Cha Cha」
「Okonkole y Trompa」並ぶお気に入り曲。疾走感溢れるアップ・チューンに仕上がっています。駆け巡るHubert Lawsのピッコロ、煽りまくるDon Aliasのパーカッション、余裕のHancockのピアノといった演奏の中で、Jacoがそれらを一手に支える超ド級のベースを聴かせてくれます。特に後半の盛り上がりはサイコーですね。

「Forgotten Love」
この曲ではJaco本人は演奏に加わっていません。Herbie Hancockのピアノとストリングスによる美しいエンディング曲。

最近のCDにはボーナス・トラック2曲が追加されているようですが、「Forgotten Love」がエレクトリック・ベースの革命の余韻に浸る素晴らしいエンディングになっているので、その流れを尊重した方がいい気がします。

もう1枚のスタジオをソロ作『Word of Mouth』(1981年)も大好きな1枚です。
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2008年02月22日

Pearl Jam『Ten』

Nirvana『Nevermind』と共にグランジ・ブームを巻き起こした1枚☆Pearl Jam『Ten』
Ten
発表年:1991年
ez的ジャンル:グランジ/オルタナ・ロック
気分は... :久々に聴きました!

今日はへヴィなロックが聴きたい気分!
ということでCD棚から数年ぶりに取り出した1枚、Pearl Jam『Ten』(1991年)を紹介します。

Pearl Jamは、元Green River〜Mother Love BoneのStone Gossard(g)とJeff Ament(b)を中心にシアトルで結成されたグループ。その後Mike McCready(g)、Eddie Vedder(vo)、Dave Krusen(ds)が加入しました。

1991年にリリースしたデビュー・アルバム『Ten』でいきなりブレイクし、『Nevermind』(1991年)でブレイクした同じシアトル出身のNirvanaと共に全米中をグランジ・ブームに巻き込みました。

1993年にリリースした2ndアルバム『Vs.』も全米アルバム・チャート初登場No.1を記録し、人気を不動のものとします。その後もコンスタントに作品をリリースし、アメリカを代表するロック・グループとして君臨しています。

以前から何度も書いているように、90年代の僕はロック離れが進み、オルタナ/グランジ系の分野にのめり込んだことはありませんでした。なので、NirvanaPearl Jamもアルバムは持っていますが、リアルタイムで盛り上がったという記憶はありません。

僕が持っているPearl Jamのアルバムは数枚程度であり、どのアルバムも最近では数年に1度位しか聴いていません。それでも『Ten』(1991年)、『Vs.』(1993年)といったアルバムは聴く度にいい作品であると感じます。

Nirvanaと共にグランジの雄として語られるPearl Jamですが、既にアメリカン・ロックに疎くなっていた僕あたりは、グランジ=Nirvanaというイメージが支配的であったため、Pearl Jamに対してグランジというイメージはあまりありませんでしたね。

当時言われていたように、へヴィ・ロックという説明の方が僕にはピンと来ますね。
それ程奇をてらわず、真正面からへヴィでハードなロックを演奏するグループという印象があります。ハードながらもメロディはしっかりしているあたりも良かったですね。

『Ten』『Vs.』のどちらを紹介するか迷いました。
聴きやすさで言えば『Vs.』だと思いますが、アメリカン・ロック・シーンに与えた衝撃度で言えば『Ten』なのでしょうね。

今回はインパクト重視で『Ten』にしました。

ロック離れの進んだ僕のような人間でも、吸い込まれてしまう1枚です。

また、70年代ハード・ロックは聴くけど90年代以降のロックに距離感を感じている、なんて人にも意外とフィットするアルバムなのでは?
結構、60年代ロック、70年代ロックに根ざしたサウンドを聴けると思います。

オススメ曲を紹介しときやす。

「Once」
へヴィ・ロックという表現がピタッとはまるオープニング。

「Even Flow」
アルバムからの2ndシングル。ライヴでも定番曲のようですね。初めてこのアルバムを聴いた時に、最も印象に残った曲がコレでした。僕のようなオヤジ世代にとっては70年代ハード・ロックの香りが嬉しいです。

「Alive」
名曲の誉れ高いアルバムからの1stシングル。グループの音楽性の高さを実感できる1曲ですよね。曲作りがサイコーですな。まさに聴き惚れてしまう1曲です。

「Black」
哀愁のメロディでジワジワと迫ってくる2曲。

「Jeremy」
アルバムからの3rdシングル。この曲も曲作りの巧さを感じますね。Eddie Vedderの存在感を感じる1曲ですね。PVの最後は背筋が寒くなりますな。

「Oceans」
美しくも虚しく閉じた雰囲気が好きです。

「Porch」
今回聴いて最もアドレナリンが出てきたのがこの曲です。今日聴きたかったのは、まさにこんな曲だったんですよね。

「Garden」
哀愁のメロディが印象に残る1曲。

「Deep」
この曲も今回聴いて結構良いなぁと評価が上がった1曲です。全体にうねっている感じが好きかも?

あまり聴かない音楽だから、各曲のコメントが書きづらいですね。
もっとこのアルバムの持つ空気感が伝えられると良いのですが、今日の僕には無理みたいです(笑)

『Vs.』も良いアルバムだと思います。
と言いつつ、こちらも数年聴いていませんが(笑)
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2008年02月20日

Prince『Controversy』

ミネアポリス・ファンク確立の足掛かりとなった作品☆Prince『Controversy』
Controversy
発表年:1981年
ez的ジャンル:ミネアポリス・ファンク
気分は... :僕が最も好きな殿下がここに居る...

Prince殿下4回目の登場です。
これまで紹介したのは以下の3枚。

 『1999』(1982年)
 『Sign O' The Times』(1987年)
 『Prince』(1979年)

今回紹介するのはPrince及びミネアポリス・ファンクの原型となるサウンドを確立したアルバム『Controversy』(1981年)です。

Princeの記事で毎回書いていますが、僕が考える殿下の最高傑作は『Sign O' The Times』、最も頻繁に聴く作品は『Prince』(1979年)、自分の音楽嗜好に合っているのは『Controversy』(1981年)、『1999』の2枚という感じですね。

『Controversy』は、僕が初めて聴いた殿下のアルバムです。といっても、全曲きちんと聴いたわけではなく、数曲聴いた程度だったと記憶しています。

健全な少年(?)だった当時の僕にとって、殿下は倒錯の世界のアーティストという先入観があり、あまり深く足を踏み入れてはいけない音楽というスタンスで聴いた気がします。

『Controversy』を聴いた率直な感想は、ニューウェイブとダンス・ミュージックが合体した得体の知れない音楽という印象でしたね。当時はロック中心の音楽ライフだったので、ソウル/ファンク系のアーティストというよりも、ニューウェイヴを演奏する変態チックな黒人アーティストというイメージの方が強かったかもしれません。

この時期Rolling Stonesの全米ツアーのオープニング・アクトに抜擢されたものの、大ブーイングを浴びてステージを降りたという有名な話も、僕にネガティブな印象を植え付けていたかもしれません。

それから長い年月が流れ、R&B/Soul中心の音楽ライフとなってから『Controversy』を聴いてみると、このアルバムこそ殿下が確立したミネアポリス・ファンクの出発点であり、しかもタイトルの通り、論争を巻き起こすセンセーショナルなテーマを歌う、最もアヴァンギャルドな殿下に出会える作品であるとの認識をようやく持ち、僕の中での評価が一気に跳ね上がりましたね。

今の僕の音楽嗜好にフィットするという点では、ミネアポリス・ファンクのプロトタイプ的な楽曲と、ニューウェイブ感が漂う楽曲が渾然一体となっている雰囲気がかなりお気に入りなのかもしれません。

次作『1999』で一気にメジャーになる殿下ですが、そのブレイク寸前の本作こそ、最も殿下らしい面白さを堪能できるアルバムだと思います。

『1999』以降のアルバムが、ゴールデン・タイムで広く大衆の支持を得て視聴率を稼ぐ人気バラエティだとすれば、『Controversy』は深夜枠でやりたい放題やって、一部マニアのみが熱狂するバラエティ番組という気がしますね。

全曲紹介しときヤス。

「Controversy」
アルバムからの1stシングルとして全米R&Bチャート第3位となったタイトル曲。ワン・コードで推進力を持ってグングン突き進んでいく殿下のパワーを感じる1曲です。Jungle Brothers「Black is Black」のサンプリング・ネタにもなっています。

ミネアポリス・ファンクの原型というだけではなく、大所帯ファンク・バンド受難の時代となった80年代における、ファンクの1つの方向性を示したファンク・チューンだと思います。ホーン・セクション隊が居なくてもシンセでそれを十分に補っていますよねぇ!

「Sexuality」
『Purple Rain』収録の全米チャートNo.1ヒット「Let's Go Crazy」の原型みたいな曲ですね。「Let's Go Crazy」をニューウェイヴ仕立てにするとこんな感じになるのでは?ニューウェイヴ特有のスカスカな音空間を巧みに使っていますよね。

「Do Me, Baby」
ファンの間で人気の高いバラード。僕もやっぱりこの曲が一番好きですね。官能的なエロエロ・ソングですが、赤面することも忘れてしまうほどセクシーかつビューティフルな仕上がりだと思います。この1曲だけでも殿下が単なる異端児ではなく、天才であることを証明してくれると思います。

R&BチャートNo.1となったMeli'sa Morganの秀逸カヴァーも良かったですね。2 Pac (Makaveli)「To Live & Die in L.A.」等のサンプリング・ネタにもなっています。

「Private Joy」
この曲はプリティなエレ・ポップ・チューンになっています。ブレイク前のこの時期ならではのハジけ具合いがいいですね。

「Ronnie, Talk to Russia」
ロシアを非難した内容のこの曲は、完璧ニューウェイヴですね。こういった曲が本アルバムの異質感を高め、魅力的なものにしていると思います。

「Let's Work」
アルバムからの2ndシングルとして全米R&Bチャート第9位となりました。所謂ミネアポリス・ファンクのプロトタイプみたいなパープル色のシンセ・ファンク。変態チックな殿下のファルセット・ヴォイスが実にマッチしています。The Timeあたりが演奏してもいい感じですよね。次作『1999』でのブレイクを予感させる1曲ですね。Hammer「Work This」でサンプリングされています。

「Annie Christian」
キリスト教讃歌のこの曲もニューウェイヴ風味の仕上がりです。『Sign O' The Times』あたりで完成する密室的で贅肉をそぎ落としたようなシンプルかつ自由なサウンドの原型が聴けるカンジですね。。

「Jack U Off」
エレ・ポップしてる明るくフットワーク軽めのシンセ・ファンク。なかなかお茶目な雰囲気が好きですね。

今年のグラミーでお行儀良くプレゼンターを務める殿下を観ていたら、少し寂しい思いがしましたね。まぁ、殿下も今年で50歳になることを考えると仕方ないですかねぇ...
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2008年02月19日

Little Feat『Sailin' Shoes』

グループとしての輪郭が明確になってきた2ndアルバム☆Little Feat『Sailin' Shoes』
セイリン・シューズ
発表年:1972年
ez的ジャンル:ルーツ探求系LAロック
気分は... :このジャケ怖すぎ!

Lowell George率いるLittle Featの2回目の登場です。

前回は人気の3rdアルバム『Dixie Chicken』(1973年)でしたが、今回は2nd『Sailin' Shoes』(1972年)です。

おそらく『Dixie Chicken』と並んで人気の作品なのでは?

当時のことは知りませんが、Little Featが日本で初めて紹介されたのは4thアルバム『Feats Don't Fail Me Now(邦題:アメイジング!)』(1974年)の時で、その後3rdアルバム『Dixie Chicken』(1973年)が発売され、続いて2nd『Sailin' Shoes』(1972年)という流れだったようですね。リアルタイム組だった方達は、4thアルバムから1枚ずつ遡るという聴き方だったのでしょうね。

僕がこのアルバムに興味を持ったきっかけは、Linda Ronstadt『Heart Like A Wheel』(1974年)で「Willin'」のカヴァーを聴き、そのオリジナルが聴きたくなったことでしたね。

あとJackson Browne好きの僕としては、アルバム『Hold Out』(1980年)収録のLowell Georgeへの追悼曲「Of Missing Persons」もLittle Featへの興味を高めてくれましたね。

本作時点でのメンバーは、Lowell George(g、vo)、Bill Payne(key)、Roy Estrada(b)、Richard Hayward(ds)の4人。

プロデューサーは1stアルバム『Little Feat』(1971年)のRuss Titelmanに代わり、Ted Templemanが務めています。1stアルバム『Little Feat』は未聴なので憶測ですが、当時Doobie Brothersも手掛けていたTed Templemanの起用によって以前よりもサウンドのダイナミズムが増したのではないかと思います。

ただし、この時点では『Dixie Chicken』で聴かれるニューオリンズR&Bの要素は顕著ではなく、よりルーツ・ロック的なアプローチのサウンドを聴かせてくれます。

忘れちゃいけないのはNeon Parkによるジャケですね。
Frank Zappa『Weasels Ripped My Flesh(邦題:イタチ野郎)』で一躍有名になった彼ですが、本作以降一貫してLittle Featのジャケを手掛けるようになります。

目と手足がある食べかけのケーキ女がブランコに乗っている様は、何とも風変わりで薄気味悪いですよね。グループの持つ掴み所のない雰囲気とマッチしていると思います。あまり部屋に飾りたくはないジャケですが(笑)

曲は全11曲中8曲がLowell Georgeの作品です。
Lowellのソングライティング能力にも注目しましょうね。

オススメ曲を紹介しときやす。

「Easy to Slip」
ウエスト・コースト・ロックらしいオープニング曲。純粋にアルバムで一番カッチョ良い曲だと思います。この曲のキャッチーさはTed Templeman起用の効果が表れているのでは?初期Doobiesあたりが好きな人は気に入る1曲だと思います。ゲスト参加のMilt Hollandによるタブラのパカポコ感も僕好みです。

「Cold Cold Cold」
「Easy to Slip」とは対照的にずるずるとした重たさが特徴のブルース・ロック。でも、こういった曲の方がLittle Featらしい気もします。Lowell Georgeヴォーカル&スライドが印象的です。

「Trouble」
ルーツ色が色濃いアコースティック・チューン。シンプルな演奏だけにLowell Georgeのソングライティング能力を堪能できるのでは?

「Tripe Face Boogie」
タイトルの通りブギー調のロックン・ロール・チューン。Bill Payneのご機嫌なピアノとLowell Georgeのスライド・プレイが楽しめます。Bill Payne/Richard Hayward作品。

「Willin'」
僕が本作に興味を持つきっかけとなったグループを代表する名曲。トラック・ドライバーの日常を歌ったものであり、ドラッグを連想させる内容となっています。Ry Cooderをゲストに迎えたバージョンが1stアルバム『Little Feat』に収録されており、その再演バージョンとなります。ここではゲストのSneaky Pete Kleinowのペダル・スティールとBill Payneのピアノが叙情ムードを盛り上げてくれます。

Lowell GeorgeがThe Mothers Of Inventionに在籍していた頃、Frank Zappaにこの曲を聴かせたところ、その曲作りの才能を見抜いたZappaがLowellに自身のグループ結成を勧めたという話は有名ですね。

前述のLinda Ronstadtのカヴァー以外にByrdsもライヴ・レパートリーにしていました。

「Sailin' Shoes」
Debbie Lindseyによる女声コーラスがいいカンジに絡んでくるカントリー・ブルース。味わい深いアコースティック・サウンドがサイコーに決まっています!

Van Dyke Parks『Discover America』(1972年)がカヴァーしていますね。その後Van Dyke ParksがLittle FeatのメンバーにAllen Toussaintを紹介したことを考えると、非常に重要なナンバーといえるかもしれませんね。

「Teenage Nervous Breakdown」
スピード感溢れるロックン・ロール・ナンバー。勢いで一発!ってカンジが良いのでは?

「Got No Shadow」
Bill Payne作品。個人的な嗜好で言えば、ソウル・テイストのこの曲が一番好きかもしれません。ここでもLowell Georgeのスライドは聴きものです。

「Cat Fever」
この曲もBill Payne作品であり、ここでは彼自身がリード・ヴォーカルをとっています。懐かしさ一杯のブルース・チューンに仕上がっています。思わずウィスキーが飲みたくなる1曲ですな。

「Texas Rose Cafe」
Lowell Georgeらしさが曲作り&ヴォーカルの両面に出ていますね。イナたさたっぷりの前半から一転する中盤以降のインプロ的な展開はなかなかスリリングです。

本作を最後にRoy EstradaがCaptain Beefheartへ参加するためにグループを脱退します。その後Lowell Georgeが、元Lovin' SpoonfulのJohn Sebastian、Everly BrothersのPhil Everlyと新グループ結成なんて噂もあったみたいですね。

結局、Kenny Gradney(b)、Sam Clayton(per)、Paul Barrere(g)という新メンバー3人が加わり、6人編成となって次作『Dixie Chicken』のレコーディングに臨むこととなりました。
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2008年02月18日

John Coltrane『Impressions』

単なる寄せ集めではない、絶妙の曲構成が魅力の1枚☆John Coltrane『Impressions』
Impressions
録音年:1961年、62年、63年
ez的ジャンル:幕の内弁当風Coltrane
気分は... :動と静のバランス

ジャズの求道者John Coltraneの5回目の登場です。
これまで紹介したのは下記の4枚。

 『Ballads』(1962年)
 『My Favorite Things』(1960年)
 『Blue Train』(1957年)
 『Kulu Se Mama』(1965年)

今回は『Impressions』(1961年、62年、63年)です。
当時のことはよく知りませんが、リリース当時はかなり人気の作品だったようですね。

本作『Impressions』は、「India」「Impressions」が名盤『Live at the Village Vanguard』と同時期(1961年11月)のライブ録音、「Up 'Gainst the Wall」が人気作『Ballads』と同時期セッション(1962年9月)の録音、「After the Rain」が1963年の録音という異なる時期の録音を1枚にまとめた作品です。

このように書くと寄せ集め作品集のようなマイナスのイメージを持たれそうですが、この構成がなかなか絶妙だと思います。コンビネーション抜群の幕の内弁当に出会ったような感じでしょうか(笑)

本作のメインは、「India」「Impressions」という14分前後のVillage Vanguardでのライブ録音2曲であり、その意味では『Live at the Village Vanguard』の姉妹盤という位置づけになるのかもしれません。

1961年11月のVillage Vanguardでのライブは、『Live at the Village Vanguard』を中心に『Impressions』『The Other Village Vanguard Tapes』『Trane's Mode』という4枚に収録され、その後録音順に整理されたボックス・セット『The Complete 1961 Village Vanguard Recordings』が発売されています。

王道を行くならば、『Live at the Village Vanguard』から入った上で他の3枚に展開するか、しっかり『The Complete 1961 Village Vanguard Recordings』をゲッチュするということなのでしょうけど、個人的には『Impressions』から入るというのもアリかなと思います。

その理由は、「India」「Impressions」というVillage Vanguardでのライブ録音2曲と、その間に挟まれる「Up 'Gainst the Wall」「After the Rain」という小品2曲のコントラストがあまりに見事なためです。言い方が悪いですが、箸休めのような小品2曲の配置が絶妙であり、それ故にVillage Vanguardの2曲に凄味が増すという効果を生んでいると思います。

メンバーは録音年ごとに異なりますが、整理するとJohn Coltrane(ts、ss)、Eric Dolphy(b-cl)、McCoy Tyner(p)、Jimmy Garrison(b)、Reggie Workman(b)、Elvin Jones(ds)、Roy Haynes(ds)というメンツになります。

4曲共にColtraneのオリジナルです。

全曲紹介しときヤス。

「India」
John Coltrane(ss)、Eric Dolphy(b-cl)、McCoy Tyner(p)、Jimmy Garrison(b)、Reggie Workman(b)、Elvin Jones(ds)というダブル・ベースを従えたVillage Vanguardでのライブ。

この時期東洋思想にもご執心だったColtraneが、Beatlesファンにはお馴染みのインド人シタール奏者Ravi Shankar(最近のリスナーにはNorah Jonesのお父さんと説明する方がピンと来るのかな?)あたりから受けた影響が顕著に表れた1曲です。

フェード・インで入ってくるElvinのドラムとGarrisonとWorkmanのダブル・ベースに続き、Coltraneのソプラノ、Dolphyのバスクラが加わります。それに続き、インド象のような悲鳴を上げるColtraneのソロ、続いてColtraneに負けじとインド象で唸りまくるDolphyのソロが続き、再びColtraneの雄叫びで締めくくるという流れになっています。

最初はとっつき辛い演奏かもしれませんが、東洋思想、インド音楽あたりを意識して聴き重ねるうちに、なかなか楽しめるようになると思います。

「Up 'Gainst the Wall」
John Coltrane(ts)、Jimmy Garrison(b)、Elvin Jones(ds)によるピアノレスの演奏。『Ballads』と同時期セッションですが、『Ballads』に収録するには、ブルージーでシブすぎて雰囲気が違うってカンジですよね。

「Impressions」
John Coltrane(ts)、McCoy Tyner(p)、Jimmy Garrison(b)、Elvin Jones(ds)という最強カルテットによるVillage Vanguardでの演奏。最初から最後までColtraneのソロって感じでColtraneの演奏を堪能できる1曲ですね。Tyner、Garrison、Elvinによるバッキングもサイコーで、演奏全体のカッチョ良い疾走感を支えています。

「After the Rain」
John Coltrane(ts)、McCoy Tyner(p)、Jimmy Garrison(b)、Roy Haynes(ds)というメンツでの録音。麻薬療養中だったElvinに代わり、Roy Haynesがドラムを務めています。『Ballads』あたりに収録されていてもピッタリなひたすら美しくリリカルな演奏を堪能できます。ある意味本作のハイライトと言ってもいいくらいの絶品だと思います。

最近のCDにはボーナス・トラックとしてスウェーデン民謡のスタンダード曲「Dear Old Stockholm」が収録されていますが、上記4曲の構成が絶妙と思っている僕にとっては、不要なボーナス・トラックのように思えます。
posted by ez at 03:49| Comment(2) | TrackBack(0) | 1960年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする