発表年:1976年
ez的ジャンル:エレクトリック・ベース革命系フュージョン
気分は... :Happy Birthday!
今日は知人の誕生日なので、
まずはお祝いの言葉を...Happy Birthday!
さて、今回はエレクトリック・ベースに革命をもたらした天才べーシストJaco Pastoriusの1stソロ『Jaco Pastorius』(1976年)です。
Jaco Pastorius(本名John Francis Pastorius III)は1951年ペンシルバニア生まれ。その後家族と共にフロリダへ移り住み、10歳の時にドラムを始めます。15歳からベースへ転向し、天才べーシストへの道へと進むことになります。1973年には10代の若さでマイアミ大学の臨時講師としてベースを教えていたそうです。
1975年にPat Methenyの初リーダー作『Bright Size Life』のレコーディングに参加。1976年には今回紹介する1stソロ『Jaco Pastorius』リリースすると同時に、Weather ReportにAlphonso Johnsonに代わるべーシストとして加入し、本ブログでも紹介した『Black Market』のレコーディングに参加しています。
Weather Reportの次作『Heavy Weather』(1977年)がリリースされる頃には、天才べーシストJaco Pastoriusの名を欲しいままにしていました。
『Weather Report』(1982年)までWeather Reportのメンバーとして活躍し、その後は自身のバンドを率いて活動するようになります。しかし、1987年に悲劇が起こります。泥酔状態でナイト・クラブを訪れたJacoは、ガードマンとの乱闘との末、頭部を強打し、そのまま永眠してしまったのでした。享年35歳。
僕が洋楽を聴き始めた頃、ロック少年でまだフュージョンなんて殆ど聴いたことがない僕でも、「Jaco=天才べーシスト」という認識はありましたね。
ただし、本作『Jaco Pastorius』のジャケ・イメージと凄腕の評判のみがインプットされたまま、音を殆んど聴かず長い年月が経ってしまいました。ちゃんとWeather ReportやJacoのソロ作を聴いたのはCD時代になってからですね。
本作『Jaco Pastorius』は、1975年にJacoと出会ったBlood, Sweat & TearsのドラマーBobby Colombyが、Jacoの才能に惚れ込み、その後押しで制作されたアルバムです。プロデュースもBobby Colombyが務めています。
べーシストのアルバムって、テクニックのお披露目中心で、普通の音楽ファンはあまり楽しめない退屈なイメージがあるのですが、本作『Jaco Pastorius』は違いますね。
Jacoの革新的なベースプレイだけで圧倒されるのも事実ですが、ベースプレイ以外の部分でも十分に楽しめるアルバムになっています。これはJaco Pastoriusというミュージシャンが、天才べーシストであると同時に、よりトータルな音楽クリエイターだからだと思います。Pat Methenyがギタリストを超えた存在であるのと同様に、Jacoもべーシストを超えた存在なのだと思います。
Herbie Hancock、Alex Darqui、Don Alias、Lenny White、Wayne Shorter、Hubert Laws、Randy Brecker、Michael Brecker、David Sanborn、Sam & Daveといったメンツが天才べーシストの衝撃のデビューを好サポートしています。
個人的にはDon Aliasのパーカッションがかなり効いていると思います。
全曲紹介しときヤス。
「Donna Lee」
Charlie Parkerによるスタンダード(クレジット上の作曲者はParkerですが、実際の作曲はMiles Davis)のカヴァー。Don AliasのコンガとJacoのベースによるデュオ演奏です。シンプルな編成な分だけ、Jacoの革新的なベース・テクニックに釘付けになります。僕のような門外漢の人間でも凄みを感じる演奏ですねぇ。
「Come On, Come Over」
Sam & Daveの二人がヴォーカルをとるご機嫌なファンク・チューン。「Donna Lee」からのシームレスなつながりがいいですね。Herbie Hancockのクラビネット&エレピ、Randy Brecker、Michael Brecker、David Sanborn等の豪華なホーン隊が盛り上げてくれます。
「Continuum」
幻想的な雰囲気の中で美しく神秘的なベース・プレイを堪能できます。Herbie HancockとAlex Darquiのツイン・エレピが幻想ムードをさらに高めてくれます。こういった曲でもベースが主役になれるってスゴイですな。
「Kuru/Speak Like a Child」
Jacoのオリジナル「Kuru」と本ブログでも紹介したHerbie Hancockの名曲「Speak Like a Child」をクロスさせた演奏です。ある意味、マッシュ・アップを先取りしている感じですよね(笑)
様々な表情で聴かせるストリングス、一貫して全体をガッチリ支え続けるJacoのベース、軽快に弾けるAliasのパーカッション、優雅なHancockのピアノ等全体のバランスが素晴らしいですね。
先に述べたようにストリングス・アレンジ等優れた音楽クリエイターでもあることを認識させてくれる1曲ですね。
「Portrait of Tracy」
Jacoの奥方Tracyをタイトルに入れた美しい1曲。最初聴いた時はこれをJacoのベース・ソロだとはわからず、恥ずかしながらエレピとのデュオだとばかり思っていました。いやぁ、ベースって凄い楽器だなぁ!と認識させてくれた演奏です。
「Opus Pocus」
スティール・ドラムとWayne Shorterのソプラノ・サックスをフィーチャーしたカリビアン・フレイヴァーな1曲です。スティール・ドラム好きの僕としては嬉しい1曲ですね。
「Okonkole y Trompa」
JacoとDon Aliasの共作曲。個人的には「Okonkole Y Trompa」と共にお気に入りの1曲です。ループし続けるJacoのベースとAliasのパーカッションの上で、Peter Gordonの叙情的なフレンチ・ホルンが響くというもの。エレクトロニカ/フューチャー・ジャズを先取りしている、かなり革新的な演奏のように思えます。今回聴いていたら、70年代のFela Kuti全盛期あたりの作品と一緒に聴きたい気分になりました。
「(Used to Be A) Cha Cha」
「Okonkole y Trompa」並ぶお気に入り曲。疾走感溢れるアップ・チューンに仕上がっています。駆け巡るHubert Lawsのピッコロ、煽りまくるDon Aliasのパーカッション、余裕のHancockのピアノといった演奏の中で、Jacoがそれらを一手に支える超ド級のベースを聴かせてくれます。特に後半の盛り上がりはサイコーですね。
「Forgotten Love」
この曲ではJaco本人は演奏に加わっていません。Herbie Hancockのピアノとストリングスによる美しいエンディング曲。
最近のCDにはボーナス・トラック2曲が追加されているようですが、「Forgotten Love」がエレクトリック・ベースの革命の余韻に浸る素晴らしいエンディングになっているので、その流れを尊重した方がいい気がします。
もう1枚のスタジオをソロ作『Word of Mouth』(1981年)も大好きな1枚です。