2008年02月17日

Jeru The Damaja『The Sun Rises In The East』

名曲「Come Clean」をはじめPrimo先生の神業が炸裂する大傑作☆Jeru The Damaja『The Sun Rises In The East』
The Sun Rises in the East
発表年:1994年
ez的ジャンル:神業系Hip-Hop
気分は... :神様、仏様、Primo様...

今回はDJ Premier(Primo)ファン必聴の1枚!Jeru The Damaja『The Sun Rises In The East』(1994年)の紹介です。

Jeru The DamajaはN.Y.ブルックリン出身のラッパー。Gang Starr Foundationの一員として、Gang Starrの3rdアルバム『Daily Operation』(1992年)収録曲「I'm the Man」へ参加して注目を集めます。

その後1993年にDJ Premierプロデュースの大傑作シングル「Come Clean」をを足掛かりにソロ契約を結ぶと、DJ Premier全曲プロデュースによるデビュー・アルバム『The Sun Rises in the East』(1994年)をリリースし、Hip-Hopシーンに大きなインパクトを与えました。続く2nd『Wrath of the Math』(1996年)も全曲DJ Premierがプロデュースしています。

その後DJ Premierの元を離れて、3rd『Heroz4Hire』(1999年)、4th『Divine Design』(2003年)、5th『Still Rising』(2007年)といったアルバムをリリースします。

本作『The Sun Rises In The East』は、以前に紹介したGroup Home『Livin' Proof』(1995年)と並んでPrimo大先生のベストワークの呼び声が高い1枚ですね。

個人的には、Group Home『Livin' Proof』の方が好みなのですが、Primo先生の偉業を称えるという観点で言えば、『The Sun Rises In The East』のインパクトの方が大きいかもしれませんね。本来ハードコア度が高い作品は苦手なのですが、『The Sun Rises In The East』には、そんなものを超越した凄みを感じます。

特にPrimo先生の偉大さを決定付けた「Come Clean」には圧倒されましたね。これだけシンプルな作りで、こんなにもインパクトがあるトラックなんて今まで聴いたことがなく、逆に最初は戸惑いましたね(笑)

Gang Starr自身の4thアルバム『Hard to Earn』(1994年)も含めて、この頃のPrimoはノリにノッていたって感じでしたね。

主役のJeru自身のラップもスキルフルで、Primoのトラックに負けない存在感を示しているところが、アルバムを魅力的なものにしていますよね。

「Come Clean」をはじめ、「D. Original」「You Can't Stop the Prophet」「Da Bitches」といったクラシックが並びますが、それ以外の曲も含めて密度の濃い1枚に仕上がっていると思います。

炎に包まれたワールド・トレード・センターが写っているジャケが、今眺めると何とも皮肉ですね。

オススメ曲を紹介しときやす。

「D. Original」
まずはクラシック1発目。ピアノの不協和音のダークなループが実に印象的です。これに絡むJeruのラップがまたヤバそうでいい感じですな。ジャケの不穏な雰囲気がぴったりな1曲。

「Mental Stamina」
Gang Starr Foundationの一員Afu-Raが参加しています。この疾走感が好きですね。Roy Ayers「Sensitize」ネタ。

「Da Bichez」
クラシック2発目。ダークな雰囲気が漂うアルバムの中で、軽やかでキャッチーなトラックが逆に印象的ですね。Crusaders「Whispering Pines」、Mary Jane Girls「All Night Long」ネタ。

「You Can't Stop the Prophet」
クラシック3発目。僕の想像するJeru The Damajaのイメージに最も近いダークでデンジャラスな曲。Jeruのフロウも冴え渡っている気がします。Crusaders「Chain Reaction」、Lou Donaldson「Ode To Billy Joe」ネタ。Pete RockによるRemixも話題になりましたね。

「Ain't the Devil Happy」
♪ア・ア・ア・アハハハァ〜♪Primoの声ネタ・スクラッチが印象的ですよね(Wu-Tang Clan「Tearz」ネタ)。Pleasure「Bouncy Lady」、Lee Oskar「Our Road」等もサンプリングしています。

「My Mind Spray」
定番Bob James「Nautilus」ネタによる不穏な雰囲気のトラックがカッチョ良いですな。PrimoはGroup Home「Inna Citi Life」でも「Nautilus」を使っているので聴き比べも楽しいのでは?

「Come Clean」
間違いなくアルバムのハイライトと言える問答不要の最強クラシック。Shelly Manne「Infinity」ネタの水が滴るような打楽器音のループで、これだけシンプルかつインパクトのあるトラックを作ってしまうなんて...まさにPrimo先生が神の領域に踏み込んだ1曲ですね。Onyx「Throw Ya Gunz」ネタの♪Uh-oh!! heads up, cause were droppin some shit♪のフレーズも印象的です。ドラムはFunk, Inc.「Kool Is Back」ネタ。

こんなシンプルなトラックで勝負できたのも、存在感のあるJeruのラップがあったからこそなんでしょうね。

「Jungle Music」
純粋な個人的嗜好で言えば、ヴァイヴの音色のループが気持ち良いこの曲が一番好きです。Jungle Brothers「Straight Out The Jungle」の♪in the J-U-N-G-L-E♪というフレーズ部分をPrimo先生がスクラッチしているのも僕好みです。

Primoに興味がある方にとっては、Group Home『Livin' Proof』(1995年)と共にマスト・アイテムですね。さらに興味がある方は、「Ya Playin' Yaself」、「Me or the Papes」、「One Day」、「The Frustrated Nigga」収録の2nd『Wrath of the Math』(1996年)もどうぞ!
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2008年02月16日

Lou Courtney『I'm In Need Of Love』

再評価が高まる1枚がボーナス・トラック2曲を追加した国内盤で発売されました☆Lou Courtney『I'm In Need Of Love』
アイム・イン・ニード・オブ・ラヴ(紙ジャケット仕様)
発表年:1974年
ez的ジャンル:Marvin Gaye系ニューソウル
気分は... :今回はゲッチュしました!

今回はLou Courtney『I'm In Need Of Love』(1974年)です。

以前からショップで何度も試聴し、購入するか否かいつも迷っていたアルバムでしたが、今回国内盤が税込1,890円で発売されたので迷わずゲッチュできました。

僕がLou Courtneyについて知っているのは、60年代から活動する黒人シンガーソングライターであること、本作『I'm In Need Of Love』(1974年)がニュー・ソウルの名盤として人気が高いこと、70年代後半にMarilyn McCooBilly Davis Jr.が抜けた後の5th Dimensionに在籍していたこと(でも、聴いたことはありません)、くらいですね。

ライナーノーツをよく読めば、もう少し詳しい経歴が書いてあるのですが、少しマニアックで読む気がしなかったのと、謎の部分が多い方が先入観なく新鮮に聴けるのではと思い、あまり読み込んでいません。

Lou Courtneyに興味を持ったのは、フリーソウルのコンピで「I Don't Need Nobody Else」を聴き、Marvin GayeLeroy Hutsonあたりに通じるメロウネスを感じたからですね。特にアルバム全体では、Marvin Gayeからの影響が顕著だと思います。

プロデュースはLou Courtney自身と60年代ノーザン・ソウル・シーンで活躍したJerry Ragovoy。有名どころでは David Spinozza(g)、Ralph MacDonald(per)等のミュージシャンが参加しています。リズム・アレンジのLeon Pendarvisの存在も見逃せないかもしれません。

ジャケ写真同様に、ナチュラルで何気ない感じがいいですね。
体から滲み出てきた自然体のニュー・ソウルという気がします。

全曲紹介しときやす。

「The Common Broken Heart」
オープニングはソウル・ファン大満足のメロウ・ソウル。Leon Pendarvisのアレンジ・センスが光りますね。

「Since I First Laid Eyes on You」
心に染み入るラブ・バラード。ロマンチスト(?)の僕としては歌詞も大好きですね。♪君を初めて見た瞬間から〜♪

「What Do You Want Me to Do」
シングルとしてR&Bチャート48位となった曲。Leroy Hutson風のメロウ・ソウルに仕上がっています。

「The Best Thing a Man Can Ever Do for His Woman」
こみ上げ度が高いバラード。この曲も歌詞が泣かせますなぁ。♪男が女にしてあげる一番のことは...♪それは誠実であること♪

「I Will, If You Will」
清々しい疾走感が魅力のメロウ・グルーヴ。Leroy HutsonLeon Ware好きの方は気に入るはず!

「Somebody New Is Lovin' on You」
この曲はアレンジ、曲調、ヴォーカルと全てにおいてMarvin Gaye度が高いと思います(笑)

「I'm Serious About Lovin' You」
正統派ソウル・ファンの心をくすぐるスウィートなバラード。甘茶ソウル好きの方向け。

「I Don't Need Nobody Else」
フリーソウル人気曲。僕もやっぱりこの曲が一番好きですね。このグルーヴ感はLeroy HutsonLeon Wareが好きにはたまりませんね。Norman Connorsもカヴァーしています。

「Just to Let Him Break Your Heart」
哀愁モードのバラード。雨の日あたりに聴くと、ピッタリという気がしますね。

「I'm in Need of Love」
Leon Pendarvisのリズム・アレンジが抜群のファンキー・ソウル。LouのMarvin Gaye風のヴォーカルもいい感じです。

今回のCDには上記のオリジナル10曲以外にボーナス・トラックとして「Beware」「Why」の2曲が追加されています。 特に、Marvin Gayeからの影響が顕著なミディアム・グルーヴ「Beware」は、かなりいい出来だと思います。

機会があれば、他の作品も聴いてみたいですね。
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2008年02月15日

Madonna『Confessions On A Dance Floor』

ノンストップ全編ダンス・ミュージックによる“Future Disco”☆Madonna『Confessions On A Dance Floor』
Confessions on a Dance Floor
発表年:2005年
ez的ジャンル:フューチャー・ディスコ
気分は... :お姉様エロすぎます...

最近、iPodでMadonna『Ray of Light』(1998年)、『Music』(2000年)、『Confessions On A Dance Floor』(2005年)という3枚のアルバムをよく聴いています。

特にMadonnaのファンという訳ではありませんが、先日久々に『Ray of Light』を聴いて以来、これらのアルバムをまとめて聴き直しています。

その中から今日は『Confessions On A Dance Floor』(2005年)を紹介します。
Madonnaを紹介するのは『Erotica』(1992年)以来2回目になります。

4月に新作アルバムをリリース予定のMadonnaであり、今更このアルバムを取り上げるのもどうかとも思いましたが、おさらいの意味で取り上げてみます。

半ケツ状態のピンクのレオタード姿が衝撃的だった「Hung Up」のPVと共にMadonna健在を印象づけたアルバムでしたよね。

『American Life』(2003年)でのアコースティック路線は、あまり好きではなかったので、ダンス路線に戻ってきた本作は大歓迎でした。

80年代あたりのレトロ感と新しさを混在させた、ノンストップ全編ダンス・ミュージックの“Future Disco”というコンセプトが良かったですね。あえて、チープ感や分かりやすさを強調するあたりにMadonnaのセンスを感じます。

プロデューサーはMadonna自身とStuart Price(Madonnaのワールドツアーの音楽ディレクター)、Mirwais Ahmadzai(『Music』、『American Life』にも参加)、Bloodshy & Avant、Bagge & Peerが務めています。特にStuart Priceの貢献が大きいですよね。

小難しいことを考えずに、これだけ素直に楽しめるダンス・サウンドを創れるあたりが、さすがギネス認定“史上最も成功した女性アーテイスト”という気がします。

全曲紹介しときやす。

「Hung Up」
お馴染みの1stシングル(UKチャート第1位、UKチャート第7位)。ご存知の通りABBA「Gimme Gimme Gimme」をサンプリングしています。まさにFuture Discoというコンセプトがぴったりのキラー・チューンですね。でも、曲以上に当時47歳とは思えないエロさが漂うレオタード姿およびダンスが印象的なPVに釘付けでした(笑)

「Get Together」
アルバムからの3rdシングル(UKチャート第7位)。「Jump」と並ぶ僕のお気に入り曲。キャッチーな4つ打ちダンス・チューンになっています。Madonnaってこういった曲のポップとダンサブルのさじ加減のセンスが抜群だと思います。

「Sorry」
アルバムからの2ndシングルであり、UKチャートで第1位となりました。世界中のさまざまな言語で「ごめんなさい」と歌っています。個人的には日本語の「ゴ・メ・ン・ナ・サ・イ」を聴くと興醒めしてしまうのですが...

「Future Lovers」
この曲もかなり好きですね。シンセが鳴りまくるダンス・チューンですが、あえてチープな作りにしてあるあたりが好きです。

「I Love New York」
ニューヨークへの愛を歌った1曲。ニューヨークへの思い云々を抜きにしても、突き抜けたダンス・チューンとして純粋にカッチョ良いと思います。

「Let It Will Be」
ストリングスが印象的な哀愁のダンス・チューン。

「Forbidden Love」
アルバム『Bedtime Stories』にも同タイトルの曲がありましたが同名異曲です。80年代テクノポップ風の仕上がり。

「Jump」
アルバムからの4thシングル(UKチャート第9位)。曲だけで言えば、アルバムで一番好きな曲です。ポップな疾走感がいいですねぇ。忍者をテーマに日本で撮影したPVはあまり好きではありませんが(笑)

「How High」
敢えてこういった分かりやすい曲をやるところが大好きです。ボコーダーとピコピコ・サウンドによるレトロ感がサイコーですね。

「Isaac」
イエメンの歌手Yitzhak Sinwaniのエスニックな節回しをフィーチャーした印象的な1曲。Yitzhakの英語表記がIsaacになるのだとか。全編ダンス曲ばかりだと一本調子になる傾向があるので、こういった曲でアクセントを付けたかったのでは?

「Push」
ロー・ビート感がいいですね。Tom Tom Club「Genius Of Love」を連想させるメロディが印象的です。

「Like It Or Not」
哀愁感漂うギターとクールなビートがいいですね。アルバム全体の余韻を楽しむのにピッタリです。

今度の新作も楽しみですね。
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2008年02月13日

Phil Collins『Hello, I Must Be Going!』

ポップ・センスが開花した2ndソロ☆Phil Collins『Hello, I Must Be Going!』
フィル・コリンズ 2(心の扉)
発表年:1982年
ez的ジャンル:ソウル/ファンク系ポップ・ロック
気分は... :恋はあせらず!

今日は80年代に最も忙しい男の異名をとったPhil Collinsの紹介です。

Phil Collinsは1951年ロンドン生まれ。1970年にUKを代表するプログレ・バンドGenesisにドラマーとして加入、1975年にグループのリーダーPeter Gabriel脱退後は、リード・ヴォーカルも務めるようになり、グループの中心的存在となっていきます。また、Genesisでの活動と並行してジャズ・ロック・グループBrand Xのメンバーとしても活動していました。

1981年には初のソロ・アルバム『Face Value』をリリースし、ソロ活動を開始します。ソロ活動、Genesis両方で大ブレイクした80年代最も成功したアーティストの一人と言えるでしょうね。

今回紹介するのは2ndソロ・アルバム『Hello, I Must Be Going!』(1982年)です。

1st『Face Value』(1981年)と3rd『No Jacket Required』(1985年)の間で、アルバム単位で語られることが少ない作品ですが、個人的には一番好きなソロ作です。

僕がGenesisをリアルタイムで聴いたのは、アルバム単位では『Abacab』(1981年)だったと記憶しています。当時僕の目には、UKではかなり人気あるけど、USマーケットではもう一歩のグループと映りました。シングル「Paperlate」だけは良い曲だと思いましたが、それ以外は特別気になるグループではありませんでしたね。ただし、PVでドラムを叩きながらリード・ヴォーカルをとるPhil Collinsの姿だけは印象的でした。

そんな僕がPhil Collinsの2ndソロ『Hello, I Must Be Going!』のLPを購入したのは、全英チャート第1位、全米ポップ・チャート第10位となった「You Can't Hurry Love」目当てでした。ご存知の通り、Diana Ross & The Supremesによる1966年の全米No.1ヒットのカヴァーです。

当時の僕はまだロック小僧だったのですが、それでもこのソウル・カヴァーに惹かれたというのは、この頃から今のようなR&B/ソウル志向が芽生えていたのかもしれません。

共同プロデューサー/エンジニアは前作『Face Value』に続きHugh Padgham、参加ミュージシャンも元Brand XのPeter Robinson、John Giblin、Genesisのサポート・メンバーDaryl Stuermer、Earth,Wind & Fireでお馴染みのPhenix Horns等『Face Value』の参加メンバーの多くが引き続き参加しています。個人的にはPhenix Hornsの貢献が大きいと思いますね。

前述の「You Can't Hurry Love」も含めてソウル/ファンク色の強いポップ・センスが開花したのが本作『Hello, I Must Be Going!』だったのでしょうね。

やっぱり、本作からEarth,Wind & FirePhilip Baileyとの共演で大ヒットしたシングル「Easy Lover」までのPhil Collinsが一番好きですね。

オススメ曲を紹介しときやす。

「I Don't Care Anymore」
オープニングは憂いを持ったロック・チューン。それでもGenesisほど重厚感がないのがソロ作らしいかもしれませんね。

「I Cannot Believe It's True」
僕の一番のお気に入り曲がコレ。「You Can't Hurry Love」目当てでLPを購入したはずだったのですが、数回聴いて「You Can't Hurry Love」以上にゾッコンになってしまいました。Phenix Hornsが大活躍のポップかつファンキーなグッド・グルーヴです。

Phenix Hornsが大活躍の曲と言えば、『No Jacket Required』(1985年)収録の「Sussudio」あたりがお馴染みかもしれませんが、個人的には「Sussudio」なんかより全然いけてる曲だと思います。

「Like China」
イントロを聴いてRolling Stones「Brown Sugar」かと思いました(笑)いい感じのパワー・ポップに仕上がっています。

「You Can't Hurry Love」
前述の全英チャート第1位、全米ポップ・チャート第10位となった大ヒット・シングルです。僕くらいの年代の人は、Philのカヴァーでオリジナルを知ったという方も多かったのでは?

オリジナルの雰囲気を大事にしつつ、ビート感を強調して小気味良い仕上がりになっているのがいいですね。3人のPhilが登場するPVも印象的でした。

「It Don't Matter To Me」
「I Cannot Believe It's True」同様にPhenix Hornsがご機嫌なホーン・セクションを聴かせてくれます。Genesisでは聴くことが出来なかったノリの良いポップ・ファンクに仕上がっています。

「Thru These Walls」
久々に聴き直して、こんなに良い曲だったけ?と思ったのがこの曲です。出だしは淡々としていますが、曲が進むに従い味わい深い展開になってきます。AORっぽいメロウネスとプログレっぽい硬質感がミックスしている感じが面白いと思います。

「Don't Let Him Steal Your Heart Away」
シングル・カットもされた美メロ・バラードです。ソングライターとしてのPhilの能力の高さを示してくれる1曲ですね。

「The West Side」
フュージョン・テイストのインスト。メロウとスリリングが交互に登場してくるのが良いですね。

「Why Can't It Wait 'Til Morning?」
ラストは美しいバラード。同じPhilのバラードでも全米ポップ・チャートNo.1に輝いた「Against All Odds (Take a Look at Me Now)」(映画『Against All Odds』のサントラ収録)のような熱唱タイプの楽曲は苦手なのですが、やや抑え目に歌う本曲のようなバラードは好きですね。Fourplayがカヴァーしています。

「You Can't Hurry Love」の大ヒットを契機にポップ・スターPhil Collinsが誕生し、3rdアルバム『No Jacket Required』(1985年)、4thアルバム『...But Seriously』(1989年)でソロ・アーティストとして揺るぎない地位を確立しました。併せて、Genesisもブレイクし、『Invisible Touch』(1986年)等の大ヒットを生み出しました。

不思議なことに、『No Jacket Required』以降のPhil Collinsのソロ諸作やGenesisの大ヒット・アルバムには、全く興味がありません。少し暑苦しい感じが僕には不向きなんでしょうね。Genesisならば『Abacab』(1981年)あたりの方がしっくりくる気がします。

ちなみに、Peter Gabriel在籍時のGenesisは全く聴いたことがありません。Peter Gabrielのソロ作は好きで結構持っているのですが...
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2008年02月12日

Courtney Pine『Modern Day Jazz Stories』

Dj Pogoを迎えてHip-Hop的アプローチにチャレンジした作品☆Courtney Pine『Modern Day Jazz Stories』
Modern Day Jazz Stories
発表年:1995年
ez的ジャンル:Hip-Hopフレイヴァー・ジャズ
気分は... :蟹江君残念!

昨日のグラミーは多少拍子抜けしましたね。

最後の最優秀アルバムは誰もがAmy Winehouseか!Kanye Westか!と固唾を呑んでいたのに、Herbie Hancockの名が呼ばれるとは...なんか変な空気が漂っていましたよね。

Herbie Hancockが受賞したことは彼の実績・実力を考えれば喜ばしいことですが...それでもねぇ。特別Kanye Westに肩入れするつもりはありませんが、あれは蟹江さんを選んであげても良かった気がしますね。グラミーの保守体質を再認識させられました。

ということで、今回はHerbieの最優秀アルバム受賞を記念してジャズ作品を取り上げたいと思います。

ということで、Courtney Pine『Modern Day Jazz Stories』(1995年)です。

Courtney Pineは1964年ロンドンのジャマイカ地区生まれのジャズ・サックス奏者(実際はフルート、クラリネット、キーボード等様々な楽器を演奏するマルチ・プレイヤー)。

デビュー・アルバム『Journey to The Urge Within』(1986年)の頃はJohn Coltrane等から影響を受けた正統派ジャズ・ミュージシャンとして評価されていましたが、その後レゲエ、ヒップ・ホップ、アシッド・ジャズ、ドラムン・ベースなど幅広いジャンルの要素を取り入れた独自のジャズ・ワールドを展開します。また、20人編成のビッグ・バンドJazz Worriersを率いたりもしました。

こうしてイギリスのジャズ/クラブ・ジャズ・シーンの第一人者として絶大な支持を集め、2000年には大英帝国勲章を授与されるほど、イギリスでは認められているジャズ・ミュージシャンです。

Courtney Pineが交流してきたSoulU SoulAswadCarrol Thompson4HeroRoni SizeAttica BluesPressure Drop等のミュージシャンの名前を見るだけで、彼がジャズ・ミュージシャンの枠に収まらないイノベーターであることがわかりますよね。

彼のイノベーターとしての活動は、ロンドンのジャマイカ地区で育ったジャマイカ系イギリス人としてのアイデンティティも影響しているのでしょうが、グラウンド・ビート、アシッド・ジャズ、ヒップ・ホップ、ドラムン・ベースといった新しいクラブ・ミュージックが盛り上った時期と、うまくリンクした印象もありますよね。

僕がCourtney Pineの名前を初めて知ったのは、2ndアルバム『Destiny's Song』 (1988年)の時だったと思います。彼の写真が縦横7×5の35枚並んだジャケが印象的でしたね。ただし、この時はジャケを眺めておしまいになり、音を聴くことはありませんでした(笑)

実際に音を聴いたのは、AswadプロデュースでCarrol Thompsonのヴォーカルでフィーチャーした「I'm Still Waiting」 Diana Rossのカヴァー)だったと思います。

そして、今回紹介するのは、Dj Pogoを迎えてHip-Hop的アプローチにチャレンジした1995年のアルバム『Modern Day Jazz Stories』(1995年)です。

本作におけるメンバーは、Courtney Pine(fl、ss、ts)、Eddie Henderson(tp)、Geri Allen(p、org)、Mark Whitfield(g)、Charnett Moffett(b)、Ronnie Burrage(ds、per)、Cassandra Wilson(vo)、Dj Pogo (Turntables)。Cassandra Wilsonの参加が目を引きますね。

1995年時点でJazzとHip-Hopの融合自体は、Hip-Hopからのアプローチとしては珍しくないことでしたし、Jazzサイドからのアプローチも帝王Miles Davisをはじめ、Branford MarsalisのBuckshot LeFonqueやGreg Osbyなどが既に作品をリリースしていました。

これらの諸作品は、ジャズ色の強いHip-Hopという感じで、あくまでHip-Hopファンが聴く作品という印象が強かったですね。一方、本作『Modern Day Jazz Stories』におけるCourtney Pineのアプローチは、あくまでジャズにHip-Hopのフレイヴァーを加えたという感じで、あくまでリスナーはジャズ/クラブ・ジャズ好きの方という気がします。

特に、Cassandra Wilsonがヴォーカルをとる「Don't 'Xplain」「I've Known Rivers」の2曲は絶品ですよ!

オススメ曲を紹介しときやす。

「The 37th Chamber」
本作を象徴する1曲なのでは?ソウルフルなCourtneyの演奏に、違和感なくDj Pogoのターンテーブルが絡んできます。バンドの一部としてターンテーブル、が目立ちすぎることなく溶け込んでいるのがグッドですね。全体的にゆったりとして、焦らず、騒がずって感じが好きです。

「Don't 'Xplain」
Cassandra WilsonをフィーチャーしたBillie Holidayのカヴァー。やはり、この曲の主役はCassandraの感動的なヴォーカルですね。いつ聴いても、このクールな低音ヴォーカルは魅力的です。特にCourtneyのハイトーンなサックスとのコントラストが好きですね。この1曲だけでも本作を購入して良かったと思います。

「Dah Blessing」
この曲なんかは殆ど正統派ジャズですよね。そんなに奇をてらわなくても勝負できるとことが、この人の強みかもしれませんね。じっくりCourtneyのサックスに耳を傾けましょう。

「In the Garden of Eden (Thinking Inside of You)」
エキゾチックかつアーシーな香りがする演奏ですね。途中でドラムン・ベース的なリズムが挿入されているあたりが楽しいですね。

「Creation Stepper」
10分を超える大作ですが、なかなか聴き応えがあって飽きない1曲ですね。純粋にJazzとして聴くならば、Courtneyの演奏が冴え渡り、他メンバーの演奏も堪能できるこの曲が一番楽しいかも?特にスピリチュアル・ジャズ好きの人は気に入る1曲だと思います。CourtneyのJazz魂に触れることができます。

「Absolution」
この曲ではCourtneyのフルートも堪能できます。フリーキーで情熱的な演奏の1曲ですね。

「Each One (Must) Teach One」
この曲はクラブ・ジャズ好きの方向けの1曲なのでは?ほんのりラテン・フレイヴァーな演奏です。

「Unknown Warrior (Song Fo My Forefathers)」
叙情ムードたっぷり...なんて思っていると、徐々にテンションが高まりフリーキーな世界へ...

「I've Known Rivers」
「Don't 'Xplain」同様Cassandra WilsonをフィーチャーしたGary Bartzのカヴァー。この曲も文句のつけようがないほど絶品です。
CourtneyがGary Bartzをカヴァーするのってエラく納得ですね。Gary Bartzのアフリカ回帰したスピリチュアル・ジャズは、Courtneyとの相性ばっちりだと思います。

本曲は4Hero、Pressure Dropによるリミックスもありますね。Pressure Dropは、何度か本ブログで紹介しようとしたことがあるのですが、Amazonでジャケが見つからず毎回断念しています。何とか紹介したいと思います。

「Prince Of Peace」
タイトルからしてPharoah Sandersのアノ曲のカヴァー!と思いきや同名異曲でした。でも、エキサイティングな演奏でいいですね。なお本曲はUK盤のみの収録みたいです。

グラミーと言えば、Aretha FranklinQuincy Jonesが貫禄たっぷりの体型になっていたのに驚きました。あとはPrince殿下が無事プレゼンターを務めることができるのかヒヤヒヤで観ていました(笑)噂のMJはついに登場しませんでしたね。登場すれば、もう少し盛り上がったと思うのですが。
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