2008年04月25日

Ex-Girlfriend『X Marks the Spot』

Full Forceプロデュースの女性R&Bグループ☆Ex-Girlfriend『X Marks the Spot』
X Marks the Spot
発表年:1991年
ez的ジャンル:Full Force直系女性R&Bグループ
気分は... :当時は僕のイチオシ・グループでした...

今回は90年代ガールズ・グループの流れに乗り損ねた(?)グループEx-Girlfriendの1stアルバム『X Marks the Spot』の紹介です。

90年代前半に活躍した女性R&Bグループと言えば、En VogueSWVTLCあたりが有名だと思いますが、個人的にはBrownstoneSWVEx-Girlfriendというあたりがお気に入りベスト3でした。この3グループの中で今日最も存在感の薄いのがEx-Girlfriendかもしれませんね。

Ex-Girlfriendは、Tisha Hunter、Stacy Francis、Monica Boyd、Julia Robersonという4人から成る女性R&Bグループです。Full Forceの強力なバックアップの元に『X Marks the Spot』(1991年)、『It's A Woman Thang』(1994年)という2枚のアルバムをリリースしています。

僕がEx-Girlfriendに興味を持ったのは、やはりFull Forceプロデュースだったのが一番の要因ですね。

80年代後半から90年代初めにかけて、Full ForceJam & LewisTeddy Rileyと並び、僕にとっての最重要R&Bアーティストでした。Ex-Girlfriend同様、Full Forceも今日では忘れ去られているグループですが...

例えば、Full Force『Smoove』(1989年)やFull ForceファミリーのCheryl "Pepsii" Riley『Chapters』(1991年)といったアルバムは、僕の中では名盤中の名盤という位置づけです。いずれもAmzonでの扱いがなく、本ブログで紹介できないのが残念なのですが。

よくよく考えてみると、Yvette Michele『My Dream』のように、一部Full Forceプロデュースという作品は紹介してきましたが、Full Force全面プロデュース作品を紹介するのは本ブログで初めてかもしれませんね。

Full Forceというのは、自らを"Hip-Hop vocal band"と呼んでいたように、いち早くHip-Hopを取り入れたR&Bサウンドに取り組んでいたグループでした。ただし、所謂Hip-Hop Soulではなく、NJS(New Jack Swing )+オールド・スクールHop-Hopといったサウンドでしたが。

本作『X Marks the Spot』も、そういったFull Forceサウンドを存分に堪能できる内容になっています。当時の僕は“これぞ90年代女性R&Bが進むべき方向だ!”くらいに思っていました。実際に90年代女性R&Bを方向付けたのは、翌年にリリースされたMary J. Bligeのデビュー・アルバム『What's The 411?』(1992年)でしたが(笑)

僕の当時の評価は大袈裟だったかもしれませんが、もっと再評価されて良いアルバム、アーティストだと思います。

オススメ曲を紹介しときやす。

「You (You're The One For Me) 」
2ndシングル。Full ForceらしいハネハネNJSを堪能できるご機嫌なアップ・チューンです。Ex-Girlfriendのメンバーも歌にラップに元気一杯です。前述の『Smoove』あたりと一緒に聴きたい曲ですね。

「Why Can't You Come Home」
Ex-Girlfriendのデビュー・シングル。やや抑え気味のクールなヴォーカル&コーラスとベースラインがカッチョ良いトラックとの絡みがグッドなミッド・グルーヴ。

「With All My Heart」
3rdシングル。メロウなミッド・チューンに仕上がっています。この曲はその後続々と登場する女性R&Bグループの感じに近いかもしれませんね。

「S.O.S.」
アルバムの中でも一番のお気に入り曲です。Full Force好きの人ならば、思わずニンマリするFull Forceらしさに溢れたアップ・チューンです。

「Fellas In The Area」
この曲もかなり好きです。オールドスクールな感じがたまらないですね。80年代末から90年代頭にかけての作品でしか味わえないテイストが何とも魅力的ですね。

「I Found That Guy」
Betty Wrightのカヴァー(オリジナルはアルバム『I Love The Way You Love』収録)。Full Forceって、この曲も含めて伝統的ソウル・マナーのスロウ・チューンを仕上げるのが上手ですよね。

「For All The Right Reasons」
個人的にはかなりお気に入りの1曲。Full Forceらしいカッチョ良いトラックとEx-Girlfriendらしいキュートなヴォーカルがうまく融合したハネハネ・グルーヴ。

「I Love My Man」
90年代女性R&Bグループらしいメロウ・スロウ。ややメロウネス抑えめかもしれません。僕はもっとメロメロな方が好きなのですが。

「What I Will Do To You」
この曲もFull Force好きの人は気に入るであろうハネハネ・トラックが魅力のアップ・チューン。

2ndアルバム『It's A Woman Thang』(1994年)もなかなかの佳作だと思います。超人気曲「Nobody Like You」「X In Your Sex (X Between The Sheets)」Isley Brothers「Between The Sheets」ネタのリミックス)あたりが楽しめると思いマス。
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2008年04月24日

Grant Green『Carryin' On』

ソウル/ファンク系のカヴァーがグッド!☆Grant Green『Carryin' On』
Carryin' On
録音年:1969年
ez的ジャンル:ファンキー・グルーヴ系Jazzギター
気分は... :プラスのストロークで音楽ライフを楽しみましょう!

心理学の概念で「ストローク」というものがあります。

"相手の存在や価値を認める働きかけ"を意味する言葉であり、大まかには相手と肯定する(認める)「プラスのストローク」と相手を否定する(認めない)「マイナスのストローク」に分けることができます。

プラスのストロークを心掛けて周囲とコミュニケーションしている人は、仕事でもプライベートでも豊かな生活を過ごしていることと思います。ストロークの受け手の立場で考えれば、プラスのストロークを出している人とは仲良くなりたいと思いますが、マイナスのストロークを出している人とはそうなりたくないですからね。

こんな事当たり前の話だと思われるかもしれませんが、人間の嫉妬や自尊心ってヤツが、その当たり前のことを妨げているケースって案外多いように思います。

その意味で、音楽の話というのはプラスのストロークを出しやすいと思います。多くの人は楽しむために音楽を聴いていますからね。

みんなプラスのストロークで楽しい音楽ライフを過ごしましょう!

ジャズ・ギタリストGrant Greenの久々の登場っす。

前回の『Live at the Lighthouse』(1972年)に続いて紹介するのは『Carryin' On』(1969年)です。

限られた作品しか聴いていませんが、基本的にGrant Greenのアルバムはどれも好きですね。特に、70年代前半のファンキー・グルーヴ満載の作品がお気に入りです。

『Green Is Beautiful』(1970年)、『Alive』(1970年)あたりをセレクトしようと思ったのですが、部屋のCD棚から何となく手に取っていたのが本作『Carryin' On』でした。

多分、このジャケを見たかったのでしょうね(笑)
実は数あるBlue Note作品の中でも、かなりお気に入りの1枚です。
(ちなみにReid Milesのデザインではありません。)

メンバーは、Grant Green(g)、Claude Bartee(ts)、Willie Bivens(vib)、Clarence Palmer(el-p)、Earl Neal Creque(el-p)、Jimmy Lewis(el-b)、Idris Muhammad(ds)といった布陣です(Earl Neal Crequeは「Cease the Bombing」のみ参加)。

エレピやエレクトリック・ベースを導入しているあたりからも分かるとおり、全体的にはジャズ・ファンクですね。

楽曲もMeters、Little Anthony & The Imperials、James Brownといったソウル/ファンク系アーティストのカヴァーが多く収録されています。

ただし、テンション高めではなく、比較的リラックスして聴けるユルい感じが本作の特徴かもしれませんね。

全曲紹介しときヤス。

「Ease Back」
Metersの3rdシングル(1969年)のカヴァー。レア・グルーヴ・ファンにはお馴染みの曲ですね。オリジナル同様黒いグルーヴ感は残しつつ、もう少しライトな感覚で聴かせてくれます。一昨日のLabelleに続き、Meters絡みですね。

「Hurt So Bad」
Little Anthony & The Imperials、1965年のヒット曲のカヴァー(Teddy Randazzo作品)。Linda Ronstadtのカヴァー・ヒット等でもお馴染みの作品ですね。このドラマティック・ソウルを甘く切ない哀愁モードで聴かせてくれます。

「I Don't Want Nobody to Give Me Nothing (Open Up the Door I'll Get It Myself) 」
James Brownの1969年のヒット曲のカヴァー。僕の一番のお気に入りです。ブラック・フィーリングたっぷりのジャズ・ファンクに仕上がっています。本作の狙いが一番ストレートに反映されている演奏なのでは?ただただカッチョ良いの一言です!

「Upshot」
この曲のみGrant Greenのオリジナル。アップテンポでグイグイ飛ばしてくれます!各メンバーのソロを充分堪能できる演奏です。

「Cease the Bombing」
この曲のみ参加のNeal Crequeの作品。Neal Crequeは、Pucho & the Latin Soul Brothersのキーボード奏者としてお馴染みですね。アルバム『Yaina』収録のPucho & the Latin Soul Brothersヴァージョンと聴き比べるのも楽しいと思います。ラテン・ソウルなPuchoヴァージョンに対して、本ヴァージョンはエレピ、ギター、ヴァイヴの音色が心地良いメロウな仕上がりです。

そう言えば、このジャケの男女の表情・仕草こそまさにプラスのストロークですよね!
僕には男性が女性をナンパしているように見えるのですが、何とか誘おうと必死でプラスのストロークを出しまくっている男性に対して、女性の方もまんざらではない表情を浮かべています。

プラスのストロークを多く出すほど、自分にもプラスのストロークが返ってくる!
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2008年04月23日

Gnarls Barkley『The Odd Couple』

大ヒット「Crazy」から2年、話題の二人がサイケデリック・ソウルと共に戻ってきた!☆Gnarls Barkley『The Odd Couple』
The Odd Couple
発表年:2008年
ez的ジャンル:オルタナ系サイケデリック・ソウル
気分は... :レトロな近未来感がいいですな。

先日、久々にラム・ステーキを食べました。
たまに食べると、独特のクセのある味がやたらと美味しく感じます。

Gnarls Barkleyの音楽って、ラム・ステーキに似ていると思いませんか?

ということで、2年前「Crazy」の大ヒットでシーンを盛り上げたGnarls Barkleyの新作アルバム『The Odd Couple』の紹介です。

Gnarls Barkleyは、巨漢ラッパーCee-LoとデンジャーなトラックメイカーDJ Danger Mouseのユニット。ユニット名はNBAの往年の名プレイヤーCharles Barkleyに由来したものです(多分)。

2006年にリリースしたシングル「Crazy」は全米ポップ・チャート第2位、UKシングル・チャート第1位(9週連続)の大ヒットとなり、同曲を収録した1stアルバム『St. Elsewhere』も全米アルバム・チャート第4位、全英アルバム・チャート第1位となりました。

この年はMTVで嫌になるほど「Crazy」のPVを観たような気がします(笑)

2007年のグラミー賞ではシングル「Crazy」がBest Urban/Alternative Performance、アルバム『St. Elsewhere』がBest Alternative Music Albumを受賞しています。それ以外にRecord Of The Year、Album Of The Yearといった主要部門でもノミネートされていました。

Cee-Loによる上手くはないけど、独特のソウルフルな声質が印象に残るヴォーカルと、DJ Danger Mouseによるオルタナ感覚のジャンルレスなトラックの組み合わせは、まさにラム・ステーキのようなクセのある美味という気がします。

Cee-Loについては、Goodie Mobのメンバーあるいはソロ・アーティストとして有名だと思いますし、本ブログでも2ndソロ・アルバム『Cee-Lo Green... Is The Soul Machine』(2004年)を紹介しています。

一方のDJ Danger Mouseは、2004年にJay-Z『The Black Album』とThe Beatles『The Beatles(The White Album)』をマッシュ・アップした『The Grey Album』を発表し、音楽シーンに大きなインパクトを与えました(権利上の問題をクリアできずに販売後に回収)。

『The Grey Album』をきっかけに一躍注目のトラックメイカーとなったDanger Mouseは、Gorillaz『Demon Days』(2005年)をプロデュースしたり、ラッパーMF DoomとのユニットDanger Doom、Cee-LoとのGnarls Barkleyといった話題のプロジェクトを次々と立ち上げました。その他にThe Rapture、Sparklehorse、The Good, the Bad and the Queen、Martina Topley-Bird、The Black Keys、The Shortwave Setといったアーティストのプロデュースを手掛けています。

さて、Gnarls Barkleyの2ndアルバム『The Odd Couple』ですが、きっと前作のような爆発的なヒットはないと予想しています。仮にそうなったとしても、あくまでも自分達の個性的なスタイルを貫いた結果として、前向きに評価したいと思います。

全体的には、サイケデリックでレトロなんだけど近未来的なフレイヴァーもあるオルタナ/ソウル・アルバムといった印象を受けます。1st以上に、Cee-Loのヴォーカルが前面に出てきたと同時に、Danger Mouseの個性的なトラック作りにも一層磨きがかかってきたという感じでしょうか。

Danger Mouseの作るトラックの元ネタになっているアーティストって、僕が知らないアーティストが多く、それをネットで確認するだけで、かなり楽しむことができました。さすがDanger Mouseはデンジャーな曲者ですな。

たまにはクセのある音楽で一杯なんていうのもいいのでは?

オススメ曲を紹介しときやす。

「Charity Case」
オープニングはレトロ・モードの近未来ソウルって感じですね。このチープなサウンドが逆に魅力ですね。このあたりのDanger Mouseのセンスはさすがですな。

「Who's Gonna Save My Soul」
この曲が2ndシングルになるみたいですね。まさにGnarls Barkleyらしいレトロなサイケデリック・ソウルに仕上がっています。哀愁トラックとCee-Loのヴォーカルがぴったりハマっていますね。

「Going On」
レトロ・ポップ調のダンス・チューン。ノリ的にはOutkast「Hey Ya!」がもう少しサイケになってって感じなのでは?Please「Folder Man」ネタ 。

「Run (I'm A Natural Disaster)」
アルバムからのリード・シングル。「Going On」同様ノリの良いサイケデリック・ソウルに仕上がっています。Keith Mansfield「Junior Jet Set」ネタ。

Justin Timberlakeがカメオ出演しているPVも楽しいのですが、このPVは強いストロボ効果が健康に悪影響を及ぼす(?)との理由でMTVで放送禁止になってしまいましたね。観たい方はYoutubeでチェックしてみて下さい。
http://www.youtube.com/watch?v=iFxNn474Nmc&feature=related

「Would Be Killer」
ダークなソウル・チューン。Cee-Loのヴォーカルが悪魔の囁きのように聞こえてきます。Twink「Fluid」ネタなのですが、Danger Mouseが筋金入りのサイケ野郎Twinkの狂気の1曲(オリジナルは女性の喘ぎ声が流れ続ける)をネタ使いするのって、とても納得してしまいますね。

「Open Book」
Gnarls Barkleyらしいオルタナ感覚に溢れた1曲。この曲もマッドな空気が漂っていますね。Francoise Hardy「Traume」ネタ。

「Whatever」
レトロでチープなんだけど近未来的なロック・チューン。Sam The Sham and the Pharaohs「The Hair on My Chinny Chin Chin」ネタ。

「Surprise」
個人的にはアルバムの中でもかなりお気に入りの1曲。60年代モードの哀愁ポップに仕上がっています。Village East「Building with a Steeple」(Ron Dante/Gene Allan作品)ネタ。

「No Time Soon」
フォーキー・モードのアコースティック作品。この曲も60年代好きの人にはたまらない1曲なのでは?単なるレトロ作品ではなく、近未来フレイヴァーも忘れないところがDanger Mouseですな。

「She Knows」
涼しげでダークという妙な雰囲気が好きですね。妖しげなフルートの音色にも惹かれてしまいます。Cy Payne「Gentle Flute」ネタ。

「Neighbors」
チープでレトロでパーカッシヴな展開が僕好みですね。シンプルさが魅力の1曲。

今日、明日とUEFAチャンピオンズリーグ準決勝の2試合「リバプールvsチェルシー」、「バルセロナvsマンチェスターU」がありますね。今からワクワクです。
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2008年04月22日

Labelle『Nightbirds』

名曲「Lady Marmalade」収録☆Labelle『Nightbirds』
Nightbirds
発表年:1974年
ez的ジャンル:パワフル系女性R&Bグループ
気分は... :♪イチ・ギチ・ヤ・ヤ・ダ・ダ♪

5日前に『Erykah Badu「Honey」のPVに観る名盤ジャケ』のエントリーでLabelle『Chameleon』のジャケを紹介したら、久々にLabelleが聴きたくなりました。

ということで、今日はLabelle最大のヒット・アルバム『Nightbirds』(1974年)を紹介します。

LaBelleの前身グループThe Bluebellesは、1961年にPatti LaBelleCindy BirdsongNona HendryxSarah Dashという4人のメンバーによりフィラデルフィアで結成されました。1965年にはAtlanticに入り、同社で2枚のアルバムをリリースしています。しかし、1967年にCindy BirdsonがSupremesへ参加するために脱退してしまいます。

残されたメンバー3人は、"LaBelle"として1970年より活動を始めます。1st『Labelle』(1971年)、2nd『Moon Shadow』(1972年)、『Pressure Cookin'』(1973年)という3枚のアルバムをリリースしましたが、商業的に成功を収めることはできませんでした。

起死回生を期したLaBelleはEpicへ移籍し、移籍第1弾アルバムのプロデューサーとしてニューオリンズR&Bの大物Allen Toussaintを迎えます。こうした制作された4thアルバム『Nightbirds』(1974年)からは、全米ポップ・チャート、R&Bチャート共に第1位となった「Lady Marmalade」という大ヒット・シングルが生まれ、アルバムもゴールド・ディスクを獲得します。

その後Epicで『Phoenix』(1975年)、『Cameleon』(1976年)という2枚のアルバムをリリースしますが、メンバー間の意見の食い違いから『Cameleon』リリース後に解散してしまいます。

解散後、各メンバーはそれぞれソロ活動を展開しています。

僕が最初にLabelleというグループを知ったのは、Laura Nyroのアルバム『Gonna Take A Miracle』(1971年)だったかもしれません。ファンの方はご存知の通り、Gamble & HuffがプロデュースしたこのアルバムでLabelleはコーラスとして全面参加していました。

今振り返ると、Patti LaBelle、Nona Hendryx 、Sarah Dashという3人のメンバーのソロ活動のうち、R&BファンとしてフォローすべきはPatti LaBelleだと思うのですが、ロック中心の洋楽ライフを過ごしていた学生時代にはNona Hendryxの印象が強かったですね。

Nona Hendryxって、Talking Heads『Remain in Light』やBill Laswell率いるMaterialの作品に参加したり、自身のアルバムでKeith Richardsと共演するなどロック系ミュージシャンとの交流が盛んでしたよね。なのでNona Hendryxにはアヴァンギャルドな黒人女性シンガーというイメージがありました。

一方Patti LaBelleのソロについては、ちゃんと聴いたのはMichael McDonaldとのデュエットで全米ポップ・チャート、R&Bチャート共に第1位となった「On My Own」が最初だったかもしれません。「On My Own」はかなり抑え気味のヴォーカルでしたが、本来パワフルで独特な歌声の女性ソウル・シンガーですよね。

そんな個性的なメンバーが集まったグループLabelleと言えば、やはりシングル「Lady Marmalade」、アルバム『Nightbirds』で決まりではないでしょうか?

前述のように、Allen Toussaintをプロデューサーに迎え、バックをThe Metersが務めるというニューオリンズR&B最強の布陣がバック・アップした結果、実にファンキーでコクのあるR&Bアルバムに仕上がっています。Allen Toussaint、The Metersの充実の仕事ぶりを堪能するアルバムとしても楽しめますね。

どうしても「Lady Marmalade」ばかりが注目されがちなアルバムですが、アルバム全体の出来としてもなかなかだと思います。Patti LaBelleのパワフルなヴォーカルに加えて、全10曲のうち半分の5曲をソングライティングしたNona Hendryxにも拍手を!

オススメ曲を紹介しときやす。

「Lady Marmalade」
前述のグループの代表曲であり、アルバムのハイライト曲(Bob Crewe/Kenny Nolan作品)。全米ポップ・チャート、R&Bチャート共に第1位となりミリオン・セラーを記録しました。オリジナルはLabelleではなく、ソングライティングを手掛けたKenny NolanもメンバーだったEleventh Hourです(正直このグループよく知りません)。

Allen Toussaint、Metersによるニューオリンズらしいリズム感を持ったファンク・ディスコ調の演奏、♪Itchy Gitchi Ya Ya Da Da〜♪Voulez-vous coucher avec moi, ce soir?♪といったお下劣ななフレーズが続く歌詞、酸いも甘いも知り尽くした大人のメンバーによるパワフルかつ挑発的なヴォーカル、これらが三位一体となった魅力的な仕上がりです。

Nicole Kidman主演の映画『Moulin Rouge』(2001年)で使われた Christina Aguilera、Pink、Lil Kim、Myaという歌姫4人によるカヴァー(Missy Elliott/Rockwilderプロデュース)もNo.1ヒットとなりましたね。それ以外にもAll Saints等様々なアーティストがカヴァーしています。また、Finesse & Synquis「Soul Sisters」、Angie Stone「Soul Insurance」等のネタにもなっていますね。

「Somebody Somewhere」
Nona Hendryx作品。個人的には「Lady Marmalade」、「What Can I Do for You?」に次いで好きなミッド・グルーヴ。大人のファンキー・グルーヴって感じがサイコーです。

「Are You Lonely?」
Nona Hendryx作品。ブルージーかつアーシーな味わいがですね。ニューオリンズらしいホーン・セクションも好きです。

「Don't Bring Me Down」
Allen Toussaint作品。Allen Toussaintならではのコクのあるグルーヴ感がいいですね。ホント、ニューオリンズ・リズムとLaBelleのヴォーカルの相性は抜群ですね。

「What Can I Do for You?」
「Lady Marmalade」に続くハイライト曲。ハウス・ファンにはガラージ・クラシックとしてお馴染みの1曲ですね。リズムが面白いと思います。Metersサイコーですな!勿論、Patti LaBelleを中心としたヴォーカル&コーラスもグッドです。ハウス・ファンの方は、What Can You Do For Me RemixやBlazeプロデュースのDee Hollowayによるカヴァー等をお聴きかもしれませんね。

「Nightbird」
タイトル曲はNona Hendryx作品。ジワジワと盛り上がってくるスロウ・チューン。ヴォーカル・グループとしてのLaBelleの魅力を堪能できる1曲です。

「Space Children」
Nona Hendryx作品。ニューオリンズR&Bとレゲエが融合したようなリズムが面白いですね。僕の中のNona Hendryxのイメージとぴったり合致します。

「All Girl Band」
Allen Toussaint作品。フットワークの軽い明るくポップな仕上がりです。LaBelleらしいとは思いませんが、アクセントをつける1曲としては良いのでは?

「You Turn Me On」
Nona Hendryx作品。ハートに響く熱唱が印象的なスロウ・チューン。

個人的にはPatti LaBelleのソロ作のコレクションを充実させたいですね。
とりあえず、『I'm in Love Again』(1983年)、『Winner in You』(1986年)、『Be Yourself』(1989年)、『Gems』(1994年)あたりは手元に置きたいですね。
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2008年04月21日

Peter Gabriel『Peter Gabriel III』

名作の貫禄充分なソロ3作目☆Peter Gabriel『Peter Gabriel III』
ピーター・ガブリエル III(紙ジャケット仕様)
発表年:1980年
ez的ジャンル:「技術×民族×社会派」系ロック
気分は... :溶けていく...

今回はPeter Gabrielの名作3rdアルバム『Peter Gabriel III』(1980年)です。

Peter Gabrielは1950年イギリス、サリー州生まれ。1967年にGenesisを結成し、1969年にアルバム『From Genesis to Revelation』でデビュー。バンドのフロントマン、ヴォーカリストとして、奇抜なファッションやメイク、劇場パフォーマンスの要素を取り入れたライブで人気を博しました。

バンドの人気は着実に上昇し、『Foxtrot』(1972年)、『Selling England by the Pound』(1973年)、『The Lamb Lies Down on Broadway』(1974年)といったヒット作を生み出しますが、1975年にグループを脱退します。

1977年よりソロ活動を開始します。1980年代に入るとシンセ・サウンドの導入や民族音楽への接近といった独自のアプローチを見せます。1986年の5thアルバム『So』が世界的に大ヒットし、シングル「Sledgehammer」も初の全米ポップ・チャート第1位となりました。

Phil Collinsのエントリーでも書きましたが、僕がGenesisを聴いたのは、アルバム単位では『Abacab』(1981年)からの数枚程度で、それ以前のGenesisは全く聴いたことがありません。当然ながら、Peter Gabriel在籍時のGenesisも全く未聴です。ライブの写真を観たことがある程度です。

Peter Gabrielのソロも、全米Top40に入ったシングル「Shock the Monkey」を聴いたぐらいで、「Sledgehammer」の大ヒットがあるまでは殆どノー・チェック状態でしたね。自分のコレクションにGabriel作品が並ぶようになったのはCD時代になってからです。

現段階で僕がよく聴くGabriel作品は、『III』(通称"Melt")、『IV』("Security")の2枚です。大ヒットした『So』はあまり聴きませんね。

今回は『III』をセレクトしました。

このアルバムは“好きなアルバム”というよりも、“聴くべきアルバム”というのが、僕の中での位置づけですね。

プロデューサーSteve Lillywhite、エンジニアHugh Padghamという強力コンビによるドラムのゲートエコーは80年代サウンドの主流となり、民族音楽のエッセンス導入は80年代後半のワールド・ミュージックの台頭を予見し、反アパルトヘイト等の社会メッセージを世界中の音楽ファンへデリバリーした...と様々な点で80年代を代表する1枚と呼べる作品だと思います。

Kate Bush(vo)、Robert Fripp(g)、Paul Weller(g)、Dave Gregory(XTC)(g)、Tony Levin(b)、Phil Collins(ds)等Gabrielらしい人選のゲスト陣も興味深いですね。

僕の場合、ポップ・ロック調の楽曲よりも、実験的な曲やメッセージ性の強い曲に惹かれてしまうのですが、全体的にはバランスの良い構成になっていると思います。個人的には、もっと実験的な曲が多くても良かった気もしますが、それではUKアルバム・チャート第1位になっていなかったかもしれませんね。

全曲紹介しときヤス。

「Intruder」
これが当時の音楽シーンにインパクトを与えたゲートエコーのドラム音です。今聴いてもどうってことない音ですが、この重量感のあるサウンドでSteve Lillywhite、Hugh Padghamの二人は人気プロデューサーとなり、音楽シーンはゲートエコーのドラムだらけになっていきます。

この曲の面白さは、そうした最新テクノロジー・サウンドとマリンバのようなエスニックな楽器の音色を融合させて、アヴァンギャルドに仕上げている点だと思います。

「No Self-Control」
この曲はシングルにもなりました。この曲もマリンバが大活躍しています。1982年から世界最大規模の音楽フェスティバル"WOMAD(World of Music, Arts and Dance)" を主宰し、ワールド・ミュージックの普及に尽力したことは、Gabrielの大きな功績の1つだと思いますが、そうしたワールド・ミュージック的アプローチが本曲にも反映されていると思います。

「Intruder」、「No Self-Control」は、当時なかなかインパクトのある2曲だったのでは?。

「Start」
Dick Morrisseyのサックスをフィーチャーした約1分半の小曲。

「I Don't Remember」
「Family Snapshot」
「And Through The Wire」
キャッチーなポップ・ロック3曲。「I Don't Remember」はフツーにカッチョ良いですね。「Family Snapshot」には哀愁感が漂います。「And Through The Wire」は一番キャッチーな曲かも?3曲共に聴きやすいですが、1、2曲目のような面白さは少ないかもしれませんね。

「Games Without Frontiers」
シングル・カットされ、UKシングル・チャートの第4位となったヒット曲(UKチャートでは「Sledgehammer」と並ぶ最高位)。子供達のゲームをモチーフに世界情勢に鋭いメスを入れたメッセージ・ソング。今から28年前の曲ですが、そのメッセージは現在の世界にも充分通用するものなのでは?バック・コーラスはKate Bushです。

「Not One Of Us」
GabrielのヴォーカルとPhil CollinsのドラムというGenesisの新旧フロントマンが目立つポップ・ロック。その意味ではGenesisっぽさもある1曲なのでは?

「Lead A Normal Life」
淡々としたアンビエント風の展開が印象的な曲ですね。Gabrielのヴォーカルと実にマッチしたサウンドだと思います。

「Biko」
Gabrielのキャリアを代表するアフリカン・テイストの名曲。タイトルのBikoとは、反アパルトヘイト運動に尽力し、1977年に拷問により死去した南アフリカ人の黒人活動家Steve Bikoのことです。世界中の音楽ファンの視線をアパルトヘイトが依然と続いていた南アフリカに集めた曲として、単なる名曲に止まらない重要曲ですよね。当時本アルバムを聴いていなかった僕でさえ、「Biko」 がアパルトヘイトをテーマにした曲だということは知っていましたから。

ちなみにSteve Bikoを描いた映画として、Richard Attenborough監督、Denzel Washington主演の『Cry Freedom(邦題:遠い夜明け)』があります。ご興味のある方はどうぞ!

ジャケ好きの僕としては、Hipgnosisによる『I』(通称"Car")、『II』(通称"Scratch")、『III』のジャケ・デザインも大好きです。
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