2008年04月20日

Ronny Jordan『The Quiet Revolution』

Acid JazzとHip-Hopがうまく融合した1枚☆Ronny Jordan『The Quiet Revolution』
The Quiet Revolution
発表年:1993年
ez的ジャンル:Acid Jazzギタリスト
気分は... :ジョーダンじゃない心地良さ( ̄○ ̄)

今回はAcid Jazzブームの中で大活躍したギタリストRonny Jordanの2ndアルバム『The Quiet Revolution』(1993年)の紹介です。

Ronny Jordanは、1962年ロンドン生まれのジャズ・ギタリスト。

アシッド・ジャズ・ブームの真っ只中、1992年にデビュー・アルバム『The Antidote』をリリース。
クラブ・ミュージックを通過したジャズ・ギターは、アシッド・ジャズ・ブームの追い風も手伝って、多くの音楽ファンを魅了しました。特に、Miles Davisの名曲「So What」のカヴァーはシングル・ヒットもしました。

1993年リリースの2ndアルバム『The Quiet Revolution』では、GangstarrGuruが参加するなどAcid JazzとHip-Hopの見事な融合を聴かせてくれました。Guruとのコラボは、GuruのプロジェクトJazzmatazz『Jazzmatazz』(1993年)、『Jazzmatazz Vol II:The New Reality』(1995年)といったアルバムでも聴くことができます。

さらに1994年には、日本が誇るDJ Krushによるリミックス・アルバム『Bad Brothers』をリリースし、話題となりました。

現在はN.Y.を拠点に活動し、円熟味を増したプレイを聴かせてくれているようです。

Ronny Jordanと言えば、The Brand New HeaviesYoung DisciplesUS3GallianoIncognitoD-InfluenceSnowboyJTQ(James Taylor Quartet)らと並び、Acid Jazzを代表するアーティストですよね。

シーンに与えたインパクトという点では、「So What」を含む1st『The Antidote』が上ですが、作品の完成度という点では本作『The Quiet Revolution』が上という気がします。

特にGuruの『Jazzmatazz』が大好きな僕としては、そちらとの関連性が高い本作がお気に入りです。

全曲紹介しときやす。

「Season for Change」
Guruをフィーチャーした本曲が僕の一番のお気に入りです。Hip-HopのビートにジャジーなRonnyのギター、淡々としたGuruが絡めば、極上のAcid Jazzチューンの出来上がり。Jazzmatazzがお好きな方ならば、気に入ると思います。Ronny参加のJazzmatazzのシングル曲「No Time To Play」あたりと一緒に聴きたいですね。

『Bad Brothers』に収録されているリミックスもお気に入りです。

「In Full Swing」
アルバムの中で最もアグレッシヴな曲かもしれませんね。フルートとギターとオルガンの絡みがいい感じです。

「Slam in a Jam」
「Season for Change」、「Come With Me」と並ぶお気に入り。RonnyならではのHip-Hopビートの効いたメロウ・グルーヴに仕上がっていると思います。

「Mr. Walker」
Ronnyが敬愛するジャズ・ギターの巨人Wes Montgomeryのカヴァー。RonnyのギターってWesの影響が大きいって、わかりますよね。そう言えば、本曲をリリースした大衆ジャズ路線時代のWes Montgomeryと、アシッド・ジャズ・ブームにおけるRonnyの立ち位置って似ている気がしませんか?

「The Jackal」
Dana Bryantのポエトリー・リーディングをフィーチャー。NY出身のDanaはGil Scott-Heronの名曲「Revolution Will Not Be Televised」もカヴァーしていますね。この曲も『Bad Brothers』に収録されているので、そちらもどうぞ!

「Come With Me」
一般にはこの曲を本作のハイライトに挙げる人が多いのでは?ブラジル出身のジャズ・シンガーTania Mariaのカヴァーです。Fay Simpsonのヴォーカルをフィーチャーしています。プロデューサーRay Haydenのセンスも加わった、メロウかつスタイリッシュなブラジリアン・アシッド・ジャズに仕上がっています。気持ち良すぎの1曲です。

「The Morning After」
タブラのリズムをバックに、ロマンティックなRonnyのギターが響くメロウ・チューン。

「Under Your Spell」
Fay SimpsonのヴォーカルとTruth AnthonyのラップをフィーチャーしたHip-Hopチューン。ジャジーなアングラHip-Hopが好きな人は気に入ると思います。

「Tinsel Town」
『世界の車窓から』のBGMにピッタリな感じのメロウ・グルーヴ。一歩前へ前進したくなる1曲ですね。

「Vanston Place (00 AM) 」
お休み前のメロウ・チューンといった感じ。頭の中をメロウネスだらけにして、ぐっすり眠ろう!

本作と併せて『Bad Brothers』(1994年)もセットでどうぞ!

Bad Brothers
Bad Brothers
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2008年04月19日

Atlanta Rhythm Section『A Rock And Roll Alternative』

洗練されたサザン・ロック!ヒット曲「So into You」収録☆Atlanta Rhythm Section『A Rock And Roll Alternative』
ロックン・ロール魂(紙ジャケット仕様)
発表年:1977年
ez的ジャンル:ソフィスティケイト系サザン・ロック
気分は... :きちんと聴いて好きになろう!

きちんと聴いてもいないのに、好きなアーティストというものが存在しませんか?

僕にとってのAtlanta Rhythm Sectionは、そんなグループかもしれません。
Atlanta Rhythm Section(ARS)は1970〜80年代初めにかけて活躍したサザン・ロック・グループです。

学生時代の友人が好きで、"Atlanta Rhythm Sectionいいよ!"と頻繁に聞かされ、実際に音を聴いたのはカセットに録音してもらった数曲だけで、「Atlanta Rhythm Section=好きなグループ」という信号が僕の脳内にインプットされてしまったようです。

それから20年以上が経過していますが、ARSのアルバムは数枚持っている程度であり、きちんと聴いたという状況ではありません。でも、未だに「Atlanta Rhythm Section=好きなグループ」という脳内インプットは消えていません。

今日はそんな数少ない僕のARSコレクションの中から、『A Rock And Roll Alternative』(1977年)をセレクトしました。

Atlanta Rhythm Sectionは、1960年代に活躍していた2つの南部出身のグループThe Classics IVThe Candymenの元メンバー達が1970年に結成したグループです。メンバーは、Barry Bailey(g)、J.R. Cobb(g)、Paul Goddard(b)、Dean Daughtry(key)、Robert Nix(ds)、Ronnie Hammond(vo)の6人。さらに、プロデュース&ソングライティングを手掛けていたBuddy Buieは、Classics IVやCandymen時代からメンバーとは旧知の仲であり、第7のメンバーと呼んでいい存在だったのかもしれませんね。

1972年にデビュー・アルバム『Atlanta Rhythm Section』をリリースする傍ら、地元に自分達のスタジオStudio Oneを開き、様々なレコーディング・セッションをこなしていました。そう言えば、本ブログで紹介したAl Kooperの名曲「Jolie」(1972年)のバックもARSですね。

そんな彼らのアルバムの中で、初めてゴールド・ディスクに輝いたのが6thアルバムとなる本作『A Rock And Roll Alternative』(1977年)です。

本作からは全米ポップ・チャート第7位となったシングル「So into You」が収録されており、このAORテイストのヒット・シングルがアルバムのヒットにも大きく貢献したと思われます。

ARSと言えば、大きく分けるとサザン・ロックに区分されるグループだとは思いますが、「So into You」や次作『Champagne Jam』収録のヒット曲「Imaginary lover」に代表されるソフィスティケイトされた楽曲は、AORファンからも人気が高かったのではと思います。

その意味で、本作『A Rock And Roll Alternative』はサザン・ロック・グループとしてのARSの魅力に加え、ソフィスティケイトされたロック・グループとしてのARSの魅力も堪能できるアルバムだと思います。

本作がリリースされた1977年の状況を振り返ると、The Allman Brothers Bandは分裂状態にあり、Lynyrd Skynyrdは10月の飛行機墜落事故により活動停止に追い込まれてしまいます。このようにサザン・ロックの両雄が迷走していく中で、ARSがAOR的アプローチのヒット曲により人気を博していったというのは、非常に興味深いですね。

全曲紹介しときヤス。

「Sky High」
前述の僕が知人からもらったテープに入っていた1曲であり、僕の中ではARSのテーマ曲といった位置づけですね(僕が持っていたのはライブ・アルバム『Are You Ready!』のヴァージョンですが)。まさにスカイ・ハイになりそうなサザン・ロック・チューンです。サザン・ロックならではのダイナミック感がある一方で、意外に音は洗練されています。Barry Baileyのギター・リフもカッチョ良いですね。

「Hitch-Hikers' Hero」
アコースティックな味わいが魅力のナンバー。サザン・ロックなのにそれ程土臭くなく、都会的な印象を受けるのがこのグループの魅力ですね。

「Don't Miss the Message」
サザン・ロックらしいファンキー・チューン。Lynyrd Skynyrdあたりが演奏すると、もっとラフ&ワイルドになる気がしますが、程好く抑制が効いているあたりがARSらしいのでは?

「Georgia Rhythm」
このアコースティック・チューンはメロディがサイコーですね。Buddy Buie/J.R. Cobb/Robert Nixという優れたソングライター3人の共作です。

「So into You」
前述のヒット・シングルです。大甘にならないビター・スウィートな大人のメロウ・ロックといった感じがサイコーですね。

「Outside Woman Blues」
Creamのカヴァーでお馴染みのブルース・スタンダード(Blind Joe Reynolds作品)。Creamのカヴァー(アルバム『Disraeli Gears』収録)は本ブログでも紹介しましたね。ARSのヴァージョンは、サザン・ロックならではの仕上がりです。Barry Baileyのギターを堪能しましょう!

「Everybody Gotta Go」
ソウルフルでファンキーな大人のロック・チューン。土臭さを残しつつも、ソフィスティケイトされた演奏を聴かせてくれるあたりがグッドです。

「Neon Nites」
深夜のバーでウィスキー片手に飲みたくなる1曲。僕の苦手なカントリー風味ですが、イモ臭くなる一歩手前で止まってくれているのが嬉しいですね。

ARSについては、70年代後半から80年代初めの作品を中心に、きちんとフォローしたいですね。
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2008年04月18日

Erykah Badu『New Amerykah: Part One (4th World War)』

Erykah様は今も健在!インパクト充分の新作☆Erykah Badu『New Amerykah: Part One (4th World War)』
New Amerykah, Pt. 1: 4th World War
発表年:2008年
ez的ジャンル:フューチャー・ブラック・ミュージック
気分は... :Erykah様は健在!

某国のERIKA様は、芸能ゴシップでしか見かけなくなりましたが、こちらのErykah様は健在です!

昨日の予告通り、Erykah Baduの新作『New Amerykah: Part One (4th World War)』です。

Erykah Baduの紹介は『Mama's Gun』以来2回目となります。

『New Amerykah: Part One (4th World War)』は、DJのミックス・テープを意識したクラブ寄りのサウンドだった3rdアルバム『Worldwide Underground』(2003年)から約4年半ぶりとなる新作です。

当初のアルバム・タイトル『Kabbah』を『Nu AmErykah』へ変更したあたりに、作品に対する強い思いを垣間見ることができると思います。

今回の新作は、"21世紀スタイルのブラック・ミュージック"といった印象を受けました。70年代ブラック・ミュージックの大作と同じようなスケール感で、21世紀ならではのサウンドを聴かせてくれるアルバムといった感じですかね。購入から約1ヶ月以上経ちますが、大満足の1枚となっております。

『Baduizm』(1997年)、『Mama's Gun』(2000年)といったネオ・ソウル、オーガニック・ソウル路線のErykah Baduを支持してきた方は、『Worldwide Underground』や本作『New Amerykah: Part One (4th World War)』の変化に戸惑いを感じるかもしれませんが、この攻めの姿勢を評価してあげても良いのでは?

本作では、まず豪華プロデューサー陣の顔ぶれに惹かれました。
Sa-RaSa-Ra Creative Partners)、Madlib、Roy Ayers、James Poyser、
The Roots?uestlove(最近は"? Luv"と表記しているみたいですね)、9th Wonderといったプロデューサー陣は、かなり僕好みです。

最多の5曲をプロデュースするSa-Ra絡みの曲が、アルバム全体の近未来的な雰囲気を印象づけていると思います。Madlib9th Wonderが携わった楽曲にも勢いを感じますね。

Erykah様が、こうした今が旬のクリエイター達と一緒に、21世紀ならではのブラック・ミュージックをクリエイトした作品と言えるのでは?

全曲紹介しときヤス。

「Amerykahn Promise」
オープニングはRoy Ayersプロデュース。なんか意外ですよね!Ramp「The American Promise」をサンプリングした70年代レア・グルーヴ好きが歓喜するファンキー・グルーヴに仕上がっています。

「The Healer」
Madlibプロデュース曲。Bilalをフィーチャーしています。亡きJ Dillaに捧げれた曲みたいですね。Yamasuki「Kono Samourai」をサンプリングした不思議な浮遊感が漂うトラックが印象的です。

「Me」
Sa-Raプロデュース。かなりのお気に入り曲です。メロウながらもSa-Raらしいコズミックな雰囲気も漂います。ゲスト参加のRoy Hargroveのホーンもいい感じ。

「My People」
Madlibプロデュース曲。「The Healer」同様エスニック・テイストの不思議な楽曲に仕上がっています。Eddie Kendricks「My People...Hold On」ネタです。

「Soldier」
この曲もBilalをフィーチャー。フルートの音色が印象的なトラックが好きです。オランダのプログレ・グループSolutionの「Theme」という曲のネタらしいのですが、オリジナルを聴いたことがないのでわかりません(笑)

「The Cell」
個人的にはSa-Raプロデュースのこのトラックが一番カッチョ良いと思います。少しダークなグルーヴ感がサイコーですね。

「Twinkle」
「Master Teacher」
Sa-Raプロデュースの2曲。共にSa-Raらしい近未来的的な仕上がりが印象的ですね。「Twinkle」にはThe Mars VoltaのOmar Alfredo Rodriguez-Lopezがギターで参加しています。「Master Teacher」ではCurtis Mayfield「Freddie's Dead」をサンプリング。後半はフツーにメロウ・ソウルしています。

「That Hump」
従来のオーガニック・ソウルなErykah Baduがお好きな人が一番しっくり来る曲がコレなのでは?Sa-Raプロデュース。

「Telephone」
J Dillaとのエピソードがモチーフとなっている楽曲です。James Poyserと?uestloveというかつてJ Dillaと共にSoulquariansを形成していた強力コンビがプロデュース。哀愁のメロウ・チューンに仕上がっています。

The Rootsのニュー・アルバム『Rising Down』も今月末リリースされますね。こちらも楽しみです!

「Honey」
アルバムからの先行シングルは隠しトラックというかたちでアルバムの最後に収録されています。PVの映像を観ながら聴くのがサイコーですが、9th Wonderのプロデュースによるファンキー・グルーヴは音だけでも充分に楽しめます。Nancy Wilson「I'm In Love」ネタ。

話題のPVについては、昨日のエントリー『Erykah Badu「Honey」のPVに観る名盤ジャケ』をご覧下さい。

本作の続編『New Amerykah: Part Two (Return of the Ankh)』も年内にリリースされるようですね。楽しみです。
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2008年04月17日

Erykah Badu「Honey」のPVに観る名盤ジャケ

今日は本当はErykah Baduのニュー・アルバム『New Amerykah: Part One (4th World War)』を紹介しようと思っていたのですが、シングル「Honey」のPVについて書いているうちに、これはコレでジャケ企画の記事にしようと思い、本エントリーとなりました。

Erykahが名盤ジャケのパロディに次々と登場するPVはサイコーですね!
http://www.youtube.com/watch?v=SFkHylBiPyQ

このPVに登場するジャケのオリジナルは以下の13枚です。

Rufus featuring Chaka Khan『Rufus featuring Chaka Khan』
Rufus Featuring Chaka Khan
これは裏ジャケのソファに座るChaka Khanのポーズをパロっています。

Diana Ross『Blue』
Blue

Funkadelic『Maggot Brain』
Maggot Brain

Eric B. & Rakim『Paid in Full』
Paid in Full
Erykah B.というのが笑えます!Rakim本人も登場しています。

Ohio Players『Honey』
Honey

Minnie Riperton『Perfect Angel』
パーフェクト・エンジェル

Labelle『Chameleon』
Chameleon

De La Soul『3 Feet High and Rising』
3 Feet High and Rising
Erykahと一緒に登場するのは、ニュー・アルバムでも数多くの曲をプロデュースしたSa-Raのメンバー。

The Beatles『Let It Be』
Let It Be

Nas『Illmatic』
Illmatic

Olivia Newton-John『Physical』
Physical

Grace Jones『Nightclubbing』
Nightclubbing

Earth Wind & Fire『Head to the Sky』
Head to the Sky

こうした名盤ジャケ以外にも、Andre 3000(OutKast)「Hey Ya!」のPVや、Rolling Stone誌の表紙を飾ったJohn LennonYoko Onoの写真のパロディなどもあります。

いやぁ!何回観ても飽きないPVですね。

アルバム『New Amerykah: Part One (4th World War)』については明日にでも紹介します!
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2008年04月16日

Elis Regina『Elis Regina in London』

Elis Reginaの最高傑作の呼び声が高い1枚☆Elis Regina『Elis Regina in London』
イン・ロンドン
発表年:1969年
ez的ジャンル:エネルギッシュ&キュートMPB
気分は... :何とか900回目!

今回で900回目のエントリーになります。
ここまで来たら1,000回を目指したいですね。

僕は自分自身が音楽をより楽しむために、本ブログを書いています。
基本は"楽しむ"ことです。そして、僕なり楽しめる音楽の聴き方がこれまでのエントリーに反映されていると思います。

また、本ブログは音楽好きのブログですが、音楽マニアのブログではありません。

年代、ジャンルは幅広いですが、各ジャンルを眺めるとマニアックな作品というのは少ないと思います。基本はAmazonで入手可能な作品を紹介するようにしていますので。

書いている内容も基本的には好き/嫌い、●●な感じといった類のもので、音楽的な内容には全く触れていません。というか書けません。

僕は音楽を聴くのに、余計な知識は必要ないと思っています。知識があればより楽しく聴けることがあるのも事実ですが、それはプラスαの要素で考えれば良いという気がします。知識に頼らず自分の好きな音楽を感じ取る感性の方が、はるかに大事だと思います。

音楽なんて十人十色の嗜好が合って当たり前だし、殆どの人が酷評するアルバムがお気に入りであっても全然構わないのでは?

自分の基準で、自由に楽しく、知識ではなく感性で音楽を聴くというスタイルで、これからもエントリーを重ねたいと思います。

さて、区切りの900回目エントリーにセレクトしたのがElis Regina『Elis Regina in London』(1969年)☆

Elis Regina(1945-1982年)は、1960年代から1970年代にかけて大ブレイクしたブラジルで国民的人気を誇った女性シンガーです。“台風エリス(Furacao ELIS)”と呼ばれるほど激しい気性の持ち主でもあったようです。また、Milton NascimentoEdu LoboIvan Lins等彼女に楽曲を取り上げられたことで、広くその名が知れ渡った歌手も数多く存在します。1982年に36歳の若さで死去。

今年に入って、Elis Reginaをよく聴いています。

そのきっかけを作ってくれたのがElisの娘Maria Ritaです。

昨年末の『ezが選ぶ2007年の10枚』にもセレクトしたMaria Ritaのアルバム『Samba Meu』を聴いて以来、母親のElisのアルバムもよく聴いています。

今回は数あるElis Reginaの作品の中でも最高傑作の呼び声が高い1枚『Elis Regina in London』(1969年)を紹介します。

1968年、1969年と精力的にヨーロッパを巡演したElisが、イギリスのPhilipsのオファーによりロンドンで録音したのが本作『Elis Regina in London』です。

1969年のElis Reginaは、本作以外にもToots Thielemans との共演作『Aquarela Do Brasil』、"麦わらElis"の愛称でお馴染みの『Elis, Como e Porque』といった作品をレコーディングしており、まさに乗りにノッていた時期と言えるのではないでしょうか。

『Elis Regina in London』は、Elis及び彼女のバックバンドのメンバーとPeter Knightが指揮するオーケストラによる一発録音であり、わずか2日間のセッションで完成させたそうです。結果として、当時のElisの勢いがダイレクトに伝わってくる作品に仕上がっていると思います。

ヨーロッパ向け作品ということで、Elisの当時のレパートリーを幅広く網羅した選曲もグッドですね。

全曲紹介しときヤス。

「Corrida De Jangada」
オープニングはEdu Lobo作品。元気一杯のElisのヴォーカルがバックの演奏をグイグイと引っ張ります。「帆掛け舟の疾走」という邦題のように、疾走感に溢れたゴキゲンなアップ・チューンです。

「A Time For Love」
イギリス、ヨーロッパ向け作品ということで英語の楽曲を取り上げています。Johnny Mandel作品のこの曲は本ブログでもBill EvansJack Wilsonの演奏を紹介しています。ここではPeter Knight指揮のオーケストラをバックにエレガントな仕上がりになっています。

「Se Voce Pensa」
ブラジル・ポップ・ロックの雄Roberto Carlos(サッカー選手ではありません)作品。Elisのヴォーカル、バックバンドの演奏ともにハイテンションで飛ばしまくっています。特に、Antonio Adolfoのピアノが超ゴキゲンです。エキサイティングな仕上がりに大満足な1曲。

「Giro」
前曲でも大活躍だったAntonio Adolfo作品。ポップでキュートな仕上がりです。この曲は『Elis, Como e Porque』にも収録されているので、聴き比べてみるのも楽しいのでは?

「A Volta」
バンド・メンバーRoberto Menescalの作品。ブラジルらしい哀愁モードに溢れたエレガントな仕上がりです。

「Zazueira」
Jorge Benによる名曲ですね。元々大好きな曲なので、それをElisが歌ってくれるだけでサイコーですね。この曲のみElisのヴォーカルをオーヴァー・ダビングしています。

「Upa Neguinho」
Jorge Benに続き、今度はEdu Loboの名曲です。クラブ系の音楽がお好きな方にはたまらない1曲ですよね。

「Watch What Happens」
英語による楽曲2曲目。映画『The Umbrellas of Cherbourg』でもお馴染みのMichel Legrand作品。ロマンティックな仕上がりです。

「Wave」
「How Insensitive」
大御所Antonio Carlos Jobimの名曲を2曲。これらボサノヴァ・スタンダードを、かなり大胆なアレンジでアップ・テンポに聴かせてくれます。とても新鮮ですね。

「Voce」
「O Barquinho」
Roberto Menescalの作品2曲。特に「O Barquinho(邦題:小舟)」は名曲ですね。「Voce」はキャッチーなボッサ・チューンに仕上がっています。「O Barquinho」はエレガントなブラジリアン・グルーヴに仕上がっています。この曲は『Elis, Como e Porque』にも収録されています。

前述の『Aquarela Do Brasil』『Elis, Como e Porque』といった作品やAntonio Carlos Jobimとの共演作『Elis & Tom』あたりもぜひ紹介したいと思います。
posted by ez at 13:45| Comment(2) | TrackBack(0) | 1960年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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