発表年:1994年
ez的ジャンル:東海岸オールスター系Hip-Hop
気分は... :オールスター・プロデューサー陣が勢揃い☆ワ〜イ!
昨日、MLBのインターリーグ「ヤンキース対メッツ」のサブウェイ・シリーズを観ていたら、NYらしいアルバムが聴きたくなってきました。
そこでセレクトしたのがNY出身のラッパーNasのデビュー・アルバム『Illmatic』(1994年)です。
Nas(本名:Nasir Ben Olu Dara Jones)は1973年N.Y.生まれのラッパー。父親はジャズ・ミュージシャンのOlu Daraです。
1991年に本ブログでも紹介したMain Source「Live at the Bar-Be-Que」に参加し、注目を浴びます。そして、1992年にシングル「HalfeTime」でデビューすると、1994年にHip-Hop史に残る金字塔的デビュー・アルバム『Illmatic』でシーンに大きなインパクトを与えました。
その後は現在に至るまで東海岸を代表する大物ラッパーとしてシーンを牽引しています。Jay-Zとの激しいバトルなんていうのもありました。ちなみに奥方は本ブログで紹介したR&BシンガーKelisです。
約2週間前に『Hip-Hop黄金期〜90年代前半オススメHip-Hopアルバム』という記事で本作を取り上げるのを忘れていましたが、客観的に考えれば90年代Hip-Hopアルバムのベスト10に選ばれて当然の作品だと思います。
ただし僕の場合、このアルバムがリリースされた頃は既に真面目なサラリーマンだったので、B-BOY的な印象があった本作に少し抵抗感があったのは確かですね。
その意味では、リアルタイムで聴いたものの、それほどのめり込んで聴いたわけではありません。ストリートをリアルに描いたリリックに共感できればもっと入れ込んだのかもしれませんが、健全なサラリーマンにはちょっと厳しかったですな(笑)
G-Funk全盛で「西高東低」の図式だった当時のHip-Hopシーンにおいて、東海岸からの切り札として登場したのがNasのこのデビュー・アルバムだったわけですが、そこに集結したLarge Professor、DJ Premier、Pete Rock、Q-Tip、L.E.S.といったプロデューサー陣が凄すぎでしたね。さらにMC Serch(3rd Bass)がエグゼクティブ・プロデューサーとして名を連ねています。
特にLarge Professor(Main Source)、DJ Premier(Gang Starr)、Pete Rock(Pete Rock & C.L. Smooth)、Q-Tip(A Tribe Called Quest)といったメンツは、前述の僕の90年代前半オススメHip-Hopアルバムとリンクしており、その意味で興奮を抑えきれませんでした。
サッカーで言えば、ドログバ(チェルシー)、ロナウド(マンチェスターU)、カカ(ミラン)、メッシ(バルセロナ)が同じチームで戦うようなワクワク感のある最強メンツですね。
全10曲という曲数もいいですね。1曲1曲が非常に濃密で充実している気がします。
「Halftime」、「It Ain't Hard to Tell」、「The World Is Yours」、「Life's a Bitch」、「One Love」というシングルになったクラシック5曲以外も捨て曲ナシです。個人的にはLarge Professor絡みの曲が特にお気に入りですね。
Nasのアルバムは数枚持っている程度で、それほど大好きという訳ではありません。それでもこのデビュー・アルバム『Illmatic』は、多少なりともHip-Hopに興味がある人ならば必ず聴くべきマスト・アイテムだと思います。
全曲紹介しときヤス。
「Genesis」
名盤のプロローグ的な1曲。地下鉄の音に続き、Nasが注目されるきっかけとなったMain Source「Live at the Bar-Be-Que」のサンプリングと共に、Hip-Hopカルチャーを世界に広めた映画『Wild Style』の会話の一部が流れ、続いて同映画サウンドトラックに収録されているDJ Grand Wizard Theodore「Subway Theme」ネタのトラックと共に、Nasのラップが始まるという出来過ぎのオープニングです。AZ参加。
「N.Y. State of Mind」
DJ Premierプロデュース1曲目。N.Y.の若者の気持ちを代弁するNasらしいリリックが聴ける1曲かもしれませんね。Joe Chambers「Mind Rain」ネタのピアノ・ループがダークでいい感じです。Donald Byrd「Flight Time」ネタ。
「Life's a Bitch」
クラシック1曲目(L.E.S. プロデュース)。Olu Daraのコルネットがフィーチャーされた親子共演曲です。ゲスト参加のAZの♪Life's a bitch and then you die♪that's why we get high♪Cause you never know when you're gonna go♪のコーラスが印象に残ります。大好きなThe Gap Band「Yearning for Your Love」がサンプリングされているトラックもグッドですね。
「The World Is Yours」
Pete Rockプロデュースのクラシック2曲目。Nasのメッセージをしっかり伝えたいという思いと、Pete Rockが創るAhmad Jamal「I Love Music」ネタの落ち着きのあるトラックが実にマッチしていますね。いつ聴いても名曲ですな。T La Rock「It's Yours」ネタ。
「Halftime」
クラシック3曲目はNasのデビュー・シングル(Large Professorプロデュース)。「Dead End」(日本版『Hair』より)、Average White Band「School Boy Crush」、Gary Byrd「Soul Travelin'」ネタを使ったLarge教授の硬質なトラックがカッチョ良すぎです。Main Source「Live at the Bar-Be-Que」がお好きな方は気に入ると思います。
「Memory Lane (Sittin' in da Park) 」
DJ Premierプロデュース2曲目はシングルになった5曲に迫る人気を誇る1曲です。僕もPrimoプロデュースの3曲の中ではコレが一番好きですね。ノスタルジック感のあるトラックも良いし、擦りもグッドです。Reuben Wilson「We're in Love」、Lee Dorsey「Get Out of My Life, Woman」、Biz Markie「Pickin' Boogers」ネタ。
「One Love」
クラシック4曲目はQ-Tipプロデュース。Clyde McPhatter「Mixed Up Cup」のドラムブレイクとThe Heath Brothers「Smilin' Billy Suite Pt. II」の上モノのバランスがいい感じです。そう言えば、「Mixed Up Cup」はATCQ「Lyrics To Go」でも使われていましたね。
「One Time 4 Your Mind」
Large Professorプロデュース2曲目。Gary Burton「Walter L」ネタ。
「Represent」
Primoプロデュース3曲目。 Lee Erwin「The Thief of Baghdad」ネタのループによるシンプルなトラックが実にPrimoらしいですね。
「It Ain't Hard to Tell」
クラシック5曲目は僕の一番のお気に入り曲。Large Professorプロデュースです。Michael Jackson「Human Nature」、Kool & the Gang「N.T.」等をサンプリングしたトラックがサイコーですね。同じ「Human Nature」ネタということで、SWV「Right Here(Human Nature Duet)」と一緒に聴くのも楽しいのでは?
本当はリリックの中身に触れるべきなのかもしれませんが、東海岸オールスター・プロデューサー陣の創りだすトラックだけでも十分お腹一杯になる作品だと思います。