2008年05月21日

Hank Mobley『A Caddy For Daddy』

テナー・サックス中量級の面白さ☆Hank Mobley『A Caddy For Daddy』
A Caddy for Daddy
録音年:1965年
ez的ジャンル:B級ジャズ・ロック
気分は... :守りに入らず、攻め抜く!

少し大掛かりな部屋の掃除をしていたら、15年以上前に購入したジャズのディスク・ガイドが見つかりました。所謂ジャズ喫茶世代の人が書いているディスク・ガイドです。

久々に読んでみると、紹介しているディスクとマイ・コレクションにあるジャズ・ディスクが全く合致しないのが、なかなか面白かったです。

例えば、同じ1960年代のディスクでも、ジャズ喫茶を体現したリアルタイム派のイチオシ盤と、僕のような俗っぽい視点でディスクを探している人が欲する盤では全くセレクションが異なってきます。

しかも、「ジャズを聴くならば〜であるべし」「〜を知らねばジャズ・ファンとは言えない」といった類の解説が多いんですよね。読んでいたら、昔の武勇伝を語る上機嫌の上司と、その隣で退屈そうに酒を飲む部下という、よくある居酒屋の光景を思い浮かべてしまいました(笑)

なんて、大笑いしつつも、ふと自分もこのようになってはいないかと心配になってきます(汗)

僕のように世間一般で"オヤジ"と呼ばれる年齢になってくると、時代に対するアンテナが鈍りがちになり、自分の知らない新しい音楽を否定し、自分の過去の音楽資産を必死で守ろうとしていることがあります。心理学で言うところの「認知的不協和」の概念で考えると、わかりやすいかもしれません。

僕の場合、音楽は個人で楽しむであるものであると同時に、異なる世代(特に自分よりも下の世代)とのコミュニケーション促進剤であると位置づけています。

若い世代の人と音楽の話をしていてギャップを感じることは多々あります。それでも、自分の知らない音楽世界を否定・逃避するのではなく、積極的に飛び込んで新たな刺激を受けるように心掛けたいですね。

そして、いつまでも自由で柔軟な"音楽好き"でいたいですね。「〜でなければ音楽好きとは言えない」といった類のことを言う"音楽マニア"にはなりたくないものです。

前置きが長くなりましたが、今回はテナー・サックス奏者Hank Mobleyの3回目の登場です。

『No Room For Squares』(1963年)、『Dippin'』(1965年)に続き紹介するのは『A Caddy For Daddy』(1965年)です。

先の話ではありませんが、Hank Mobleyも昔ながらのジャズ・ファンより若い今時のジャズ・ファンからの人気の高いアーティストかもしれませんね。

本作は何と言ってもジャケがサイコーですね。
僕も正直ジャケ買いしました。勿論、ジャケ・デザインはお馴染みReid Milesによるものです。

メンバーは、Hank Mobley(ts)、Lee Morgan(tp)、Curtis Fuller(tb)、McCoy Tyner(p)、Bob Cranshaw(b)、Billy Higgins(ds)の5名。

MobleyとLee Morganの相性の良さは、『No Room For Squares』
『Dippin'』でも紹介してきましたね。ある意味、僕はMorganメインで聴いている面もありますので(笑)

加えて、本作ではMcCoy Tynerの参加が目を引きますね。ちょうどElvin Jones(ds)共に長年支えてきたJohn Coltraneのグループを離れた前後のレコーディングとなります。

中身は、永遠のジャズ初心者である僕向きの俗っぽいB級感に溢れたジャズ・ロックな仕上がりです。この俗っぽさこそがMobleyらしいと思います。Mobley、Morgan、Fullerの三管編成もなかなかグッド!

以前にMobleyのことを“テナーのミドル級チャンピオン”と書いたことがありますが、まさに重量級にはない、軽快さやスタイリッシュさが魅力ですね。そうした小難しくないところが、今時のジャズ・ファンから人気なのでしょう。

全曲紹介しときヤス。

「A Caddy for Daddy」
タイトル曲は親しみやすいファンキー・ムードがグッドなジャズ・ロックです。Lee Morgan「Sidewinder」がお好きな方は気に入ると思います。ジャケの青空のイメージとマッチする明るくリラックスした演奏です。

「Morning After」
僕の一番のお気に入り曲。「A Caddy for Daddy」とは対照的な印象のブルージーなワルツです。McCoy Tynerのピアノがカッチョ良すぎですね。三管の中では伊達男ぶりが堪能できるMorganのソロが好きですね。全体的な仕上がりもモーダルな雰囲気に充ちていてグッドです。Tynerが参加しているからなのか、この演奏を聴いていると何故かJohn Coltrane「My Favorite Things」を続けて聴きたくなります。

「Venus Di Mildew」
Wayne Shorter作品。この小粋で少し気取ったカンジがたまりません。ここでもMobleyよりMorganのソロに心奪われてしまう僕なのでした(笑)

「Ace Deuce Trey」
どうって事ないけど全体の雰囲気が好きですね。Fullerのトロンボーンがコミカルなテイストでいい味出しています。

「3rd Time Around」
キャッチーでキザなカッチョ良さを持った軽快なバップ・チューン。三管の魅力を堪能できますし、それ以上にHigginsのドラムがかなりキマっています。

関係ありませんが、さっきまでWOWOWでSarah Vaughanのライブを観ていました。
いや〜いいですね。昔のジャズ・ヴォーカリストの中では一番好きですね。
若い音楽ファンの方が聴いてもSarah Vaughanは魅力的ではないかと思いマス。
posted by ez at 02:00| Comment(6) | TrackBack(0) | 1960年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする