2008年09月24日

John Cougar Mellencamp『Uh Huh』

田舎のロックン・ロールも格好良い!☆John Cougar Mellencamp『Uh Huh』
Uh-Huh
発表年:1983年
ez的ジャンル:地方都市の青春系ロックン・ロール
気分は... :もっと再評価されても良い気がします!

今日はJohn (Cougar) Mellencampの1983年のヒット作『Uh Huh』の紹介です。

John Cougar Mellencampのアルバムを取り上げるのは気恥ずかしい気もします。最近の僕の音楽嗜好とは大きく異なる人ですからね、一方で今日もう少し評価されても良いロック・アーティストという気もします。

John Mellencampは1951年インディアナ州シーモア生まれ。一度は電話会社に就職したもののロックへの夢を捨てられず、24歳の時にデモ・テープを携えてN.Y.へ向かいます。

そこでDavid BowieのマネージャーTony Defriesに認められ、レコード・デビューを果たします。しかしながら、本人の承諾なしにJohnny Cougarの芸名が使われ、しかもBowieのような(グラム・ロック風)メイクを強いられ...といったように本人の描いていた姿とはかなりギャップがあったようです。

このためDefriesとはすぐに決別し、その後数枚のアルバムをリリースしますが全く鳴かず飛ばずの状態が続きました。転機が訪れたのはSteve Cropperがプロデュースした1980年のアルバム『Nothing Matters And What If It Did』です。同作はアルバム・チャート第37位の中ヒットとなり、シングル「Ain't Even Done With The Night」は全米ポップ・チャート第17位まで上昇しました。

そして、1982年リリースの『American Fool』で遂に大ブレイクします。ご存知のように全米アルバム・チャート第1位となった同アルバムからは、「Hurts So Good」(全米ポップ・チャート第2位)、「Jack and Diane」(全米ポップ・チャート第1位)という大ヒット・シングル2曲が生まれ、一躍人気ロッカーの仲間入りを果たしました。

それ以降も『Uh-Huh』(1983年)、『Scarecrow』(1985年)、『The Lonesome Jubilee』(1987年)、『Big Daddy』(1989年)とヒット・アルバムを連発し、アメリカを代表するロッカーの地位を確立しました。

僕の場合、Bruce Springsteenあたりとの比較で当時John Cougar Mellencampを聴いていました。"田舎のSpringsteen"ってイメージでしたね。

今日紹介する『Uh-Huh』は出世作『American Fool』に続いてリリースされたアルバムであり、個人的には彼の最高傑作だと思っています。正直、『American Fool』の頃は一発屋という気もしたのですが、本作『Uh-Huh』を聴いてガキの耳ながら"この人は本物かもしれない"と思ったものです。アルバムの名義も前作までのJohn CougarからJohn Cougar Mellencampへ改めています。

大ヒット作の次のアルバムって、売れ線狙いの無難でつまらない作品も少なくないのですが、『Uh-Huh』にはそのような守りの姿勢は見られず、逆にMellencamp本人が目指すサウンドへぐっと近づいた印象を受けます。

Kenny Aronoff(ds)、Larry Crane(g)、Toby Myers(b)、Mike Wanchic(g)という基本メンバーと、The Brothers JohnsonのLouis Johnson(b)、Willie Weeks(b)等数名のゲストのみで生み出されたサウンドは、ルーツ色の濃いシンプルなロックン・ロールです。

特に本作ではクレジットでRolling Stonesへの賛辞が述べられており、『Sticky Fingers』、『Exile on Main St.』等70年代初めのStones作品からの影響が窺えます。

久々に"田舎のSpringsteen"が歌うロックン・ロールを聴くとアドレナリンがえらく分泌してくるのがわかります(笑)

全曲紹介しときヤス。

「Crumblin' Down」
アルバムからの1stシングルとして全米ポップチャート第8位のヒットとなりました。前作以上の力強さと土臭さが目立つこの曲を聴いて、"守りに入らず、攻めてるなぁ"という気がしましたね。今聴くとモロにStonesな気がしますが(笑)

「Pink Houses」
アルバムからの2ndシングルとして全米ポップチャート第8位のヒットとなりました。この曲を初めて聴いた時、当時大好きだったBruce Springsteenよりも格好良いかも?と興奮した記憶があります。アメリカの田舎町の光景が目に浮かんでくる、本アルバムを象徴する曲なのでは?

「Authority Song」
当時も今も一番好きなロックン・ロール・チューン。アルバムからの3rdシングルとして全米ポップチャート第15位を記しました。テンポの良さとドライブ感がサイコーですね。♪俺は権威と戦う♪と歌う"ロックな"歌詞にも共感したものです。

「Warmer Place to Sleep」
聖書絡みの歌詞の内容がなかなか興味深いですね。曲はStones『Sticky Fingers』『Exile on Main St.』あたりに収録されていそうな切れ味鋭いロック・チューンです。

「Jackie O」
オープニングから一気に飛ばしまくってきたので小休止って雰囲気の仕上がり。チープでノスタルジックな感じが和みます。

「Play Guitar」
僕の嫌いな商業ロックの臭いも多少しますが、豪快なギターリフに免じて我慢しましょう(笑)

「Serious Business」
この曲が一番Stonesっぽいかもしれませんね。70年代Stonesが好きな方ならば気に入ると思います。「It's Only Rock'n Roll」とセットで聴くとピッタリなのでは?

「Lovin' Mother Fo Ya」
この曲もStonesが演奏していても違和感がないですね。アーシーなドライブ感がたまりません。

「Golden Gates」
最後は力強く味わい深いアコースティック・バラードです。♪簡単に開くゴールデンゲートなんてないのさ♪苦労の末にゴールデンゲートを開いたMellencampだからこそ説得力がありますね。

最近の作品は正直ノーチェックでしたが、昨年リリースの『Freedom's Road Universal』が全米アルバム・チャート第5位、今年リリースの『Life, Death, Love and Freedom』が同チャート7位になっていることを知り、正直驚きました。

やっぱりアメリカ人はこういうのが好きなんでしょうね。
posted by ez at 09:24| Comment(7) | TrackBack(0) | 1980年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年09月23日

Pharoah Sanders『Thembi』

スピリチュアル&コズミック&アフリカンな演奏で心を解放しよう!☆Pharoah Sanders『Thembi』♪
Thembi
録音年:1970年
ez的ジャンル:アフロ・アメリカン系スピリチュアル・ジャズ
気分は... :崇高な気持ちで自分を見つめ直す!

僕の場合、急に思い立って平日の昼間に1人で鎌倉へ寺巡りに行ったりします。比較的人の少ない平日に1人で寺巡りをしていると、忙しない日常から解放されると同時に、崇高な気持ちで自分を見つめ直す良い機会になるんですよね。

そんな寺巡りと同じような感覚を抱かせてくれるアーティストがPharoah Sandersです。

ということで最も好きなジャズ・サックス奏者Pharoah Sandersの久々の登場です。

『Elevation』(1973年)、『Rejoice』(1981年)、『Izipho Zam』(1969年)に続き紹介するのは『Thembi』(1970年)です。

以前にも書きましたが、僕にとってのPharoah Sandersはかなり特別なジャズ・アーティストであり、我が家のCD棚においてMiles DavisJohn Coltraneと共にジャズ・コーナーのVIPエリアに収納しています。

彼のスピリチュアル&コズミック&アフリカンな演奏を聴いていると、他のアーティストでは感じられない解放感で満たされます。

個人的には『Karma』(1969年)、『Jewels Of Thought』(1969年)、『Thembi』(1970年)、『Deaf Dumb Blind (Summun Bukmun Umyun)』(1970年)、『Black Unity』(1971年)、『Elevation』(1973年)、『Love In Us All』(1974年)といったImpulse時代の作品がPharoah Sandersの魅力を最も堪能できると思っています。

でも、Impulse時代の作品って曲数が少ないものが多く、意外とブログで紹介しづらいですんよね。

そんな理由もあってPharoah Sanders絶頂期の作品を後回しにしてきたのですが、今回は比較的曲数が多く紹介しやすい『Thembi』(1970年)をセレクトしてみました。そんな聴きやすさも手伝って、Impulse時代のベストに挙げる方も結構いるのでは?

メンバーはPharoah Sanders(ts、ss、per)、Lonnie Liston Smith(p、el-p、per)、Michael White(vln、per)、Cecil McBee(b、per)、Clifford Jarvis(ds、per)、Roy Haynes(ds)、James Jordan(per)、Nat Bettis(per)、Chief Bey(per)、Majid Shabazz(per)、Anthony Wiles(per)といった布陣です。本ブログでも度々紹介してきたLonnie Liston Smithの貢献が大きいですね。

季節の変わり目で、一度自分をリセットしたい方にはオススメです!
心が解放されますよ!

全曲紹介しときヤス。

「Astral Traveling」
Lonnie Liston Smith作品。ジャジー系Hip-Hopのサンプリング・ネタにも使われていますね。浮遊感漂うLonnieのエレピを中心に幻想的なコズミック・ワールドへ誘ってくれます。Pharoah作品らしい各種パーカッションがトラベリング・モードを高めてくれます。

後にLonnie Liston Smithは本曲をタイトルに冠したアルバム『Astral Traveling』(1973年)をリリースし、再演しています。

「Red Black and Green」
John Coltraneの流れを汲むフリー・ジャズな演奏です。タイトルになっている赤、黒、緑という色はアフリカを意識したものでしょう。アフロ・アメリカンの苦闘の歴史や母なる大地アフリカへの思いが、激しくもスピリチュアルな演奏によって表現されている気がします。 

「Thembi」
心地好いグルーヴ感と暖かいメロディが僕の心を虜にします。安らぎを与えてくれるPharoahのソプラノ・サックス、美しく響くLonnieのピアノ、カッチョ良すぎるCecil McBeeのベース、全てがサイコーです!。

ちなみにタイトルの「Thembi」とは当時の奥方の名前なのだとか。そう言えば、80年代の作品である「Shukuru」も当時の奥さんの名を冠したものでしたよね。結構、わかりやすい性格の人なのかもしれませんね(笑)

「Love」
ベースのCecil McBeeのソロ演奏です。ベース・ソロの可能性について認識を新たにした素晴らしいソロです。後半の弓弾きの官能的な響きがたまりませんな。

「Morning Prayer」
Lonnie Liston Smith/Pharoah Sanders作品。アフロなグルーヴ感とスピリチュアル&コズミックな世界が融合した、まさにPharoah Sandersな演奏ですね。出だしは一聴するとオリエンタルな雰囲気にも聴こえますが、アフリカの民族音楽を意識したものでしょうね。アフロ・グルーヴにのったLonnieのコズミックなピアノがいいですね。聴いているうちに心が解放され高揚感がどんどん増してきます。

「Bailophone Dance」
ラストはアフリカン・パーカッションを前面に打ち出しています。最後の部分はまさにジャケ写真のPharoahの姿そのものですね。

Impulse時代のPharoah作品を一度聴いてしまうと1枚では終わらず、必ず4〜5枚まとめて聴く羽目になってしまいます。今日は1日Pharoah三昧になりそうです。
posted by ez at 12:47| Comment(4) | TrackBack(0) | 1970年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年09月22日

特別企画☆『R&B秋の陣〜注目新作リリース10枚』

4連休の方も、そうでない方もおはようございます。

会社員ではない私にとってはフツーの月曜日であり、しかも日曜の朝から寝ておらずフラフラ状態です(勿論仕事ですよ!)。今日もこれから打ち合わせのため外出で、記事を書く暇がないので、得意技"手抜き"特別企画です(笑)

ということで、今秋リリースされる新作R&Bアルバムを10枚ピックアップしてみました。
昨日のKenny Lattimore『Timeless』を皮切りに今秋は新作R&Bアルバムの注目リリースが目白押しです。

殆どのアーティストが以前に本ブログで紹介したことがあるアーティストです。

Deitrick Haddon『Revealed』
Revealed

Eric Benet『Love & Life』
Love & Life

Ne-Yo『Year of the Gentleman』
Year of the Gentleman

Raphael Saadiq『The Way I See It』
The Way I See It

The Tony Rich Project『Exist』
Exist

Joe『Joe Thomas, New Man』
Joe Thomas, New Man

Pretty Ricky『80's Babies 』
80’s・ベイビーズ

Ledisi『It's Christmas』
It's Christmas

Jennifer Hudson『Jennifer Hudson 』
Jennifer Hudson

John Legend『Evolver』
Evolver

これらに続き、"真打ち"Musiq Soulchild『On My Radio』あたりが止めを刺してくれるものと思っています。

ホント、手抜き記事ですね。ごめんなさ〜い!
でも、働かないとメシも食えないし、CDも購入できないのです!

これらの作品の大部分はいずれ本ブログできちんと記事にする予定ですので、ご容赦願います。
posted by ez at 06:34| Comment(7) | TrackBack(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年09月21日

Kenny Lattimore『Timeless』

7年ぶりのソロはカヴァー・アルバム☆Kenny Lattimore『Timeless』
Timeless
発表年:2008年
ez的ジャンル:名曲カヴァー系男性R&B
気分は... :男性R&B、秋の新作ラッシュ!

いよいよ男性R&B、秋の新作ラッシュが始まりましたね。

Ne-YoEric BenetRaphael SaadiqJoePretty RickyJohn LegendMusiq Soulchild等々注目の新作が目白押しですね。嬉しい反面、経済的に困窮しそうで心配です(泣)

今回はそんな男性R&B新作ラッシュの口火を切って、Kenny Lattimoreの新作『Timeless』をセレクト。全曲カヴァーで占めたカヴァー・アルバムです。

Kenny Lattimoreは1967年ワシントンDC生まれ。1989年に5人組の男性R&BグループManiquinの一員としてデビューしますが、成功には至りませんでした。その後ソロに転向し、1996年に1stアルバム『Kenny Lattimore』をリリースします。続く2ndアルバム『From the Soul of Man』(1997年)からはシングル「For You」がR&Bチャート第6位のヒットとなりました。

2002年には本ブログでも紹介した女性R&BシンガーChante Mooreと結婚し、その後Kenny Lattimore & Chante Mooreとして、『Things That Lovers Do』(2003年)、『Uncovered/Covered』(2006年)という夫婦アルバムをリリースしています。

新作『Timeless』『Weekend』(2001年)以来7年ぶりのソロ・アルバムとなります。

Al GreenAretha FranklinMarvin GayeStevie WonderOtis ReddingDonny Hathawayといったソウル界の巨匠から、BeatlesElton Johnといったロック/ポップス界のスーパースター、さらにはJeff BuckleyTerence Trent D'Arbyという意外な人たちまで、Kenny Lattimoreが今まで影響を受けたアーティストの楽曲がセレクトされています。

僕の場合、Chante Mooreとラブラブ・モードだった『Things That Lovers Do』の印象が強く、官能系シンガーというイメージすらありました。しかし、今回カヴァーした選曲を眺めてみると、繊細で、内省的な、ゴスペルライクな楽曲が多く、前述の僕のイメージが表層的なものであったと反省しています。

振り返ると、『Uncovered/Covered』(2006年)も半分はゴスペル・アルバムだったので、そういった彼のゴスペル/スピリチュアル路線の延長線上で考えると、今回の選曲も納得ですね。

オリジナルを知っている人はそれらと聴き比べながら、知らない人はこれを機にオリジナルも聴いてみると楽しめると思います。

全曲紹介しときやす。

「Something」
オープニングはAl Greenのカヴァー。オリジナルはアルバム『Have a Good Time』(1976年)に収録されています。オリジナルに近い雰囲気のアレンジで聴かせてくれます。その分、Al GreenとKenny Lattimoreのヴォーカルスタイルの違いを対比しやすく、興味深く聴けます。Kenny Lattimoreがゴスペル回帰的なこの曲を選ぶのって、とてもよくわかりますね。

「Everybody Here Wants You」
伝説のシンガーソングライターJeff Buckleyのカヴァー。オリジナルの翳りのある雰囲気をそのまま残してカヴァーしています。意外な選曲という気もしますが、Jeff Buckley(1997年没)が多くのミュージシャンに影響を与え続ける偉大なアーティストであると再認識しました。
Jeff Buckley「Everybody Here Wants You」
http://jp.youtube.com/watch?v=OUChkPU3cGg

「You Are My Starship」
先日紹介したばかりのMichael Hendersonがソングライティング&ヴォーカルを務めたNorman Connorsの1976年のヒット曲のカヴァー(アルバム『You Are My Starship』収録)。アルバムからの第1弾シングルにもなっています。個人的に大好きな曲なので、嬉しいカヴァーですね。Lattimoreの甘くソウルフルなヴォーカルが実にマッチする楽曲です。

「And I Love Her」
ご存知、Beatlesの名曲カヴァー(オリジナルはアルバム『A Hard Day's Night』収録)。オリジナルとは異なるリズミックなアレンジが実に新鮮ですね。本アルバムで最もサプライズな出来栄えだと思います。

「Come Down In Time」
Elton Johnのカヴァー(オリジナルは『Tumbleweed Connection』収録)。このカヴァーも絶品ですね。オリジナルの魅力にプラスαを加えた仕上がりって感じですね。

「Ain't No Way」
Aretha Franklinの名曲バラッドのカヴァー(アルバム『Lady Soul』収録、Carolyn Franklin作品)。神聖なこの曲がLattimoreにハマらない訳がないですよね。オリジナル同様、魂が揺さぶられる仕上がりです。

「That's The Way Love Is」
Marvin Gayeの1969年のヒット曲のカヴァー(オリジナルはIsley Brothers、Norman Whitfield作品)。実にオーソドックスなカヴァーですが、それが逆にいいですね。

「It Ain't No Use」
Marvin Gayeの次はStevie Wonderです。オリジナルは『Fulfillingness' First Finale』に収録されています。なかなかシブい選曲に思わずニヤリとしてしまいます。

「I Love You More Than Words Can Say」
Otis Redding、1967年のシングルのカヴァー(Booker T. Jones/Eddie Floyd作品)。Lattimoreの甘いヴォーカルでOtisをカヴァーというのも、なかなか楽しいですね。

「Undeniably」
Terence Trent D'Arbyのカヴァー(オリジナルは1995年のアルバム『TTD's Vibrator』収録)。アルバム全体を見渡しても、違和感のあるセレクトですが、逆に興味深いですね。特にTTDが既に下降線であった時期の作品というあたりに何か理由があるのでしょうね。仕上がり自体は、ミステリアスな雰囲気が面白いですね。

「Giving Up」
ラストはDonny Hathawayの1972年のシングル曲カヴァー(アルバム『Donny Hathaway』収録、Van McCoy作品)。本作の流れとして、この曲で締めくくるというのはピッタリですね。

個人的にはChante Mooreと一緒にラブラブモードなアルバムをまた作って欲しいなぁ〜(笑)
posted by ez at 00:02| Comment(2) | TrackBack(0) | 2000年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年09月20日

Cassandra Wilson『Blue Light 'Til Dawn』

世界的な注目を集めたBlue Note移籍第1弾☆Cassandra Wilson『Blue Light 'Til Dawn』
Blue Light 'Til Dawn
発表年:1993年
ez的ジャンル:ミステリアス系女性ジャズ・ボーカル
気分は... :嫉妬したならば、進歩して乗り越えろ!

最近、たまたま人間の「嫉妬」について考えさせられる出来事にいくつか遭遇しました。

ご存知のように「嫉妬」とは、自分から見て良く見えるものなどを持っている相手を快く思わない感情のことです。
嫉妬の具体的な状態には以下の2つがあるそうです。
 1.上に見える人を見て反感を抱く
 2.下に見える人を見て悦に入る

そして、嫉妬心の強い人は1の状態を解消するために、その相手の弱点やミスを無理矢理探して侮辱し、2の状態を作りたがります。

こうした行為が卑しいものであるということは多くの人が認識していると思います。
でも、無意識のうちにこうした行為をしていることはありませんか?
だからこそキリスト教の「7つの大罪」の1つに挙げられているのでしょうね。

自分より優れた人に出会って"悔しい"と嫉妬することは誰しもあります。
でも、相手を侮辱しなくとも、自分が進歩することで追い抜くこともできるはずです。

嫉妬を「侮辱」で解消するか、「進歩」で解消するか、人間の器量が試される場面かもしれませんね。

さて、現在のジャズ界における最高の女性シンガーの一人Cassandra Wilsonの2回目の登場です。

やはり秋になるとこの人の歌が恋しくなりますね。
前回はグラミー賞最優秀ジャズ・ボーカル・アルバム賞を受賞した『New Moon Daughter』(1995年)でしたが、今回は世界的な注目を集めるようになったBlue Note移籍第1弾アルバム『Blue Light 'Til Dawn』(1993年)です。

Cassandraのアルバムを聴くたびにジャズ、ソウル、ブルース、カントリーといったジャンルの枠を超越したシンガーであるこということを痛感しますね。その意味ではジャズ・ファンは勿論のこと、ソウル・ファンにぜひ聴いて欲しいジャズ・シンガーという気がします。

こんなディープでミステリアスでクールでエモーショナルな低音女性ヴォーカルはなかなか聴けないのでは?
その精霊が宿ったような声を一度聴くと、胸ではなく腹に染み渡ってくる感じですね。

土臭いのに洗練されているバック陣の演奏も素晴らしいですね。特にギターのBrandon Ross、ヴァイオリンのCharlie Burnham、パーカッションのCyro Baptistaあたりが目立ちます。

秋の夜長には、こんなディープ&ブルージーなアルバムが似合うはず!

全曲紹介しときやす。

「You Don't Know What Love Is」
オープニングは多くのジャズ・アーティストによって演奏されているスタンダード。オリジナルは1941年のミュージカル映画『Keep'em Flying(凹凸空中の巻)』です(Gene DePaul/Don Raye作品)。本ブログでもJohn Coltrane(アルバム『Ballads』収録)、Sonny Rollins(アルバム『Saxophone Colossus』収録)の演奏を紹介しています。

ひたすらディープ&ブルージーなCassandraのヴォーカルとミステリアスな響きを奏でるBrandon Rossのギターの絡みが絶品です。Charlie Burnhamのヴァイオリンもムードを盛り上げてくれます。

この1曲でCassandra Wilsonというヴォーカリストの魅力に引き寄せられるのでは?

「Come on in My Kitchen」
伝説のブルース・ギタリストRobert Johnson作のカヴァー。同じミシシッピ州出身ということもありますが、CassandraがRobert Johnson作品を取り上げるのってハマりすぎですよね。Cassandraがカントリー・ブルースを歌って悪いはずがありません。

「Tell Me You'll Wait for Me」
Charles Brownによる1940年代のR&Bチューンのカヴァー。Cassandraの低音ヴォーカルがズシッと腹まで響いてくるのがいいですね。Kenny Davisのエレガントなベース・プレイによる好サポートも目立ちます。

「Children of the Night」
The Stylisticsでお馴染みの曲ですね(Thom Bell/Linda Creed作品)。多彩なパーカッションとBrandon Rossのギターによるリズミックかつエレガントなバックを従えて、Cassandraがミステリアスな歌声を聴かせてくれます。

「Hellhound on My Trail」
Robert Johnsonの作品のカヴァー2曲目。こちらもアーシーなカントリー・ブルースに仕上がっています。Brandon Rossのスティール・ギターがかなりカッチョ良いです。Olu Dara(ラッパーNasの父親)がコルネットで参加。

「Black Crow」
Joni Mitchellのカヴァー(オリジナルはアルバム『Hejira』収録)。CassandraはJoni Mitchellのファンなので取り上げたのでしょうね。ここではパーカッション隊とゲスト参加のDon Byronによるクラリネットのみによるアフリカンな仕上がりが印象的です。自由でオーガニックでコズミックなヴォーカル&演奏がサイコーですね!

「Sankofa」
この曲はCassandraのオリジナル。多重録音で素晴らしいアカペラを聴かせてくれます。様々な音色のCassandraのヴォーカルを堪能しましょう。

「Estrellas」
レコーディングに参加しているパーカッション奏者Cyro Baptistaの作品。ブードゥー的な雰囲気も漂うパーカッシヴなアフリカン・サウンドが印象的です。

「Redbone」
Cassandra Wilsonのオリジナル。「Estrellas」からシームレスに続くこの曲も実にパーカッシヴです。ジャズでもソウルでもブルースでもない、まさに"Cassandra Wilson"というジャンルの歌&演奏にうっとりです。

「Tupelo Honey」
僕の一番のお気に入りは大好きなVan Morrison作品のカヴァー。「Tupelo Honey」カヴァーの最高峰なのでは?Cassandraのクール&エモーショナルなヴォーカルも最高ですが、Brandon RossのギターやCharlie Burnhamのヴァイオリンもサイコーです。この1曲だけでも聴く価値アリですよ!

「Blue Light 'Til Dawn」
タイトル曲はCassandraのオリジナル。ディープ・サウスらしいブルージーな仕上がりです。アーシーなんだけど実にスタイリッシュなのが摩訶不思議!

「I Can't Stand the Rain」
エンディングはAnn Peeblesによるソウル・クラシックのカヴァー。オリジナルとは違った魅力で名曲を堪能できます。この曲をこんなスタイルでカヴァーしてしまうとは...脱帽です。

久々に聴きましたが、音の中に吸い込まれそうです!
posted by ez at 00:28| Comment(5) | TrackBack(0) | 1990年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする