2008年09月03日

Anita Baker『Rapture』

クワイエット・ストーム旋風を巻き起こした大ヒット作☆Anita Baker『Rapture』
ラプチュアー
発表年:1986年
ez的ジャンル:クワイエット・ストーム系女性R&B
気分は... :秋に向けてしっとりと...

今回は"クワイエットストームの女王"Anita Bakerの出世作『Rapture』(1986年)です。

Anita Bakerは1958年オハイオ州生まれの女性R&Bシンガー。1980年代初めには本ブログでも紹介したデトロイトのR&BグループChapter 8のリード・シンガーとして活躍していました。

今回紹介する2ndアルバム『Rapture』(1986年)の大ヒットにより、R&Bシーンに"クワイエットストーム"ブームが巻き起こります。Anita Bakerはクワイエットストームの女王として、『Giving You The Best That I Got 』(1988年)、『Compositions 』(1990年)、『Rhythm Of Love』(1994年)といった作品を勢力的にリリースしました。

1980年代後半のクワイエット・ストーム・ブームは、僕がR&Bにのめり込んでいった時期ともリンクしていたので印象深いですね。僕の中ではAORブームが去った後の大人のアーバン・ミュージックという位置づけでした。

しかしながら、そのブームの立役者Anita Bakerはそれ程熱心に聴いていたわけではありません。雰囲気先行でソウルフルなカンジが希薄というイメージがあったんですよね。籠った感じのヴォーカルも相性が悪かったのかも?最初にそういった先入観で入ってしまったため、その後も夢中になることなく...といった感じでした。

そういった先入観を払拭し、好きだなぁ!と思えるようになったのはここ10年くらいですかね。

本作『Rapture』(1986年)は1stソロ・アルバム『The Songstress』(1983年)に続く2ndアルバムです。

プロデューサーはChapter 8の盟友Michael J. Powellが担当しています(1曲を除く)。Anitaと共に本作で一躍注目の存在となり、その後人気プロデューサーとして活躍します。本ブログでも紹介した大好きなRegina Belleのデビューアルバム『All By Myself』(1987年)も半分はMichael J. Powellプロデュースです。

Greg Phillinganes(key)、Paul Jackson Jr.(g)、Dean Parks(g)、Jimmy Haslip(b)、Ricky Lawson(ds)、John Robinson(ds)、Paulinho Da Costa(per)等がバック・ミュージシャンとして参加しています。かなりフュージョン系の布陣ですね。

当時の感覚で言えば、洗練されているものの、決して新しい音ではなかった気がします。逆に、レトロ・ヌーヴォーな音だったからこそ、賞味期限が長い作品として今聴いても古さを感じないのかもしれませんね。

これから秋に向けてしっとり気分になりたい時にはピッタリの作品ですね。

全曲紹介しときやす。

「Sweet Love」
アルバムからの1stシングルであり、Anita Bakerの名前を一躍有名にした名曲。全米ポップ・チャート第8位、R&Bチャート第2位の大ヒットとなりました。ジャジー&クールなアーバン・ソウルに仕上がっています。昔はAnitaの籠った感じのヴォーカルが苦手だったのですが、今聴くとなかなかグッドですね(今頃遅いっ!)。

名曲であり様々なアーティストがカヴァーしていますが、キュートな女性3人組FierceによるR&BカヴァーやLisa Grantによるラヴァーズ・カヴァーあたりが好きです。

「You Bring Me Joy」
AORファンにはお馴染みのシンガーソングライターDavid Lasleyの作品。Norman Connors『Take It To The Limit』にも収録されていますね。今聴くと、かなり好きな1曲です。昔はAnitaに対してソウルフルなテイストが希薄なように思っていたのですが、この曲なんか十分にソウルフルですよね。先入観ってコワイですな。

「Caught up in the Rapture」
Garry Glenn作。アルバムからの2ndシングル。全米R&Bチャート第6位のヒットとなりました。「Sweet Love」と並ぶ人気曲ですね。まさに"クワイエットストーム"といったスタイリッシュな雰囲気が魅力の仕上がりです。

Ras Kass「Understandable Smooth」でサンプリング・ネタとして使われたり、デトロイトのキーボード奏者Zo!がインスト・カヴァーしたりしています。また、作者の一人であるGarry Gllenは本曲のヒットがきっかけで1987年にクワイエット・ストームな2ndアルバム『Feels Good To Feel Good』をリリースしましたね。

「Been So Long」
ジャジー・テイストのミッド・チューン。ヒンヤリ感が魅力ですね。Hip-Hopファンの方は MF Doom「Zatar」ネタとしてご存知かもしれませんね。

「Mystery」
Manhattan Transferのヴァージョンでお馴染みのRod Temperton作品のカヴァー。ジャケのような大人の雰囲気に充ちた仕上がりです。この落ち着きがいいですな。

MC Lyte「I Go On」、DJ HASEBE featuring Sugar Soul「いとしさの中で」でサンプリングされています。「いとしさの中で」は大好きです!

「No One in the World」
アルバムからの4thシングル。全米R&Bチャート第5位のヒットとなりました。この曲のみMarti Sharron/Gary Skardinaのプロデュースです。そのせいか、同じアーバンな仕上がりでも異なる印象を受けますね。

「Same Ole Love」
アルバムからの3rdシングル。全米R&Bチャート第8位のヒットとなりました。Michael J. Powellらしいアーバン・ソウル・サウンドに仕上がっているのでは?Anitaのヴォーカルもより前に出ている感じで好きです。

「Watch Your Step」
クワイエットストームらしいミッド・チューンですね。あくまでスムージーな仕上がりです。

1990年代後半は沈黙を続けたAnitaでしたが、2004年にリリースした『My Everything』が全米R&Bアルバム・チャート第1位に輝き、見事な復活を遂げました。Blue Noteからのリリースというのが興味深かったですね。
posted by ez at 13:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 1980年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする