発表年:1973年
ez的ジャンル:超個性派UK黒人シンガーソングライター
気分は... :ミーハー的に好きになるのがよくわかる!
UKの黒人シンガーソングライターLinda Lewisの3rdアルバム『Fathoms Deep』(1973年)です。
ようやくLinda Lewisを紹介できました。これまで何度か紹介しようと思ったのですが、その度にAmazonにジャケ写真がなく断念していた次第です。
Linda Lewisは1950年ロンドン生まれの黒人シンガーソングライター。10代前半の頃は映画の仕事をし、端役ながらBeatlesの映画『A Hard Day's Night』にも出演していたらしいです。その後音楽活動を開始し、1960年代後半には Ferris Wheelというグループのメンバーとしてレコード・デビューを果たしています。
Ferris Wheel解散後、Lindaはソロ活動に入ります。そして1970年代から1980年代にかけて、『Say No More』(1971年)、『Lark』(1972年)、『Fathom Deeps』(1973年)、『Heart Strings』(1974年)、『Not A Little Girl Anymore』(1975年)、『Woman Overboard』(1977年)、『Hacienda View』(1979年)、『A Tear And A Smile』(1983年)といったアルバムをリリースしています。
このうち、UKのアルバム・チャートに入ってきたのは『Not A Little Girl Anymore』(第40位)のみであり、目立ったシングル・ヒットも1975年の「It's In His Kiss」(UKシングル・チャート第6位、Betty Everettのカヴァー)くらいです。その意味では決して成功を収めたとは言い難い、通好みのアーティストという存在だったのでは?
しかし、90年代に入りレア・グルーヴの流れの中でLinda Lewisの再評価が一気に高まり、1995年には12年ぶりのオリジナル・アルバム『Second Nature』がリリースされました。この復活は日本でもフリーソウル・ファンを中心に大いに盛り上がりましたね。
Linda Lewisの名を知ったのは、有名な某音楽雑誌です。長年その雑誌を講読している間に、中村とうよう氏が彼女を絶賛する記事を度々読みました。欧米ミュージシャンの作品を褒めたりすることなんて滅多に無かった同氏がミーハー・モードで大絶賛するLinda Lewisとはどんなアーティストなのだろう?という点で興味津々でした。
なので、CD時代になってようやくLinda Lewisの音源を聴くことができた時は大感動でしたね。とうよう氏がミーハー気分になるのも頷ける、透明感のあるラブリー・ヴォイスとジャンル分け困難なサウンドは実にユニークで魅力的でした。
中でもLinda Lewisが最もLinda Lewisらしかった作品が『Lark』(1972年)、『Fathom Deeps』(1973年)の2枚だと思います。『Lark』は、とうよう氏のお気に入りアルバムとして有名ですね。
個人的には『Lark』以上に好きなアルバムが今日紹介する『Fathom Deeps』です。
『Lark』が新感覚フォーキー作品であったのに対して、『Fathom Deeps』はサウンドがカラフルになったと同時にブラック・フィーリングが増した作品という印象を受けます。
本作では、後にLinda Lewisと結婚することになるJim Creganが『Lark』に引き続きプロデュースしています。Jim Creganは Family、Steve Harley & Cockney Rebelのメンバーだったロック・ギタリストです。
レコーディングには、Bob Tench(g)、Clive Chaman(b)、Max Middleton(key)という元Jeff Beck Groupメンバー、Robert Ahwry(g)、Phil Chen(b)、Richard Bailey(ds)などが参加しています。
Bob Tench、Clive Chaman、Max Middleton、Robert AhwryらはこのレコーディングをきっかけにHummingbirdを結成しています。ちなみにHummingbirdの1stアルバム『Hummingbird』にはLindaがヴォーカルでゲスト参加しています。
このように見ると、ロック系ミュージシャンの参加が目立ちますよね。
ブラック・フィーリングが増した印象を受ける本作ですが、それを支えていたのはロック系ミュージシャンだったというのは興味深いです。特にMax Middletonのエレピの音色が本作の印象にかなり大きな影響を及ぼしている気がします。
Linda Lewisの魅力がカラフルに伝わってくる名盤だと思います。
全曲紹介しときやす。
「Fathoms Deep」
タイトル曲はLindaのラブリー・ヴォイスの魅力を存分に堪能できる仕上がりです。Max MiddletonのエレピとDel Newmanによるストリングスがエレガントなムードに包んでくれます。サイコーのオープニング。
「I'm in Love Again」
この曲はファンキーな仕上がり。5オクターブの音域を持つLindaのヴォーカルですが、ここではラブリー・ヴォイスを少し抑えて、中低音域の落ち着いたヴォーカルを披露しています。
「Red Light Ladies」
この曲は人気曲ですね。Danny Thompsonのダブルベースをはじめジャジー&メロウなバックがグッドです。Lindaのヴォーカルもラブリー・モード全開です。
「If I Could」
レゲエ調の仕上がり。The Wailers『Catch a Fire』のリリースが本作と同じ1973年ですから、かなり早くレゲエを取り入れていたことになりますね。さすがジャマイカ移民三世のLindaですな。
「Kingman Tinman」
ダークなニュー・ソウル風サウンドとラブリー・ヴォイスのギャップが印象的です。
「Lullabye」
タイトルの通り子守歌です。こんなラブリー・ヴォイスで♪close your eyes〜♪なんて歌われたら、あっという間にぐっすり眠ることができるでしょうね。
「Play Around」
Lindaならではのポップ・ワールド全開の1曲だと思います。キャッチーで軽快な感じがいいですね。
「Wise Eyes」
「Play Around」のポップな仕上がりから一転ブルージーな仕上がりです。コクのあるサウンドがいいですね。
「Guffer」
「笑い男」という邦題が意味不明ですね(笑)中身はジャジー&メロウなバックが実に心地好いサウンドです。Youngbloods「RIde The Wind」あたりと一緒に聴きたい感じですね。
「Goodby Joanna」
ラブリーな哀愁モードが印象的ですね。
「On the Stage」
Lindaの全楽曲の中で一番好きな曲。クラブ・シーンでも人気のメロウ・グルーヴですね。Marvin Gaye「What's Going On」系のサウンドとLindaのラブリー・ヴォイスの相性が抜群ですね。Max Middletonのエレピ&クラビネットが大活躍です!ファンタスティックな名曲だと思います。
「Moles」
ラストはLindaの弾き語り。最後にやっとSSWらしくなった(笑)
CDジャケには今回使用しているものの、ダイバー姿のものと2種類ありますね。多分、今回のものがオリジナルだと思いますが...
ちなみに僕は両方のジャケで持っています。