2008年10月30日

Jason Champion『Reflections』

元Men at Largeのメンバーによるシルキーなコンテンポラリー・ゴスペル☆Jason Champion『Reflections』
Reflections
発表年:2008年
ez的ジャンル:シルキー系コンテンポラリー・ゴスペル
気分は... :幸福モードになれるアルバム!

今日は新作ラッシュが続く男性R&Bの中で大穴の1枚Jason Champion『Reflections』です。

Jason Championという名前でピンと来る方はかなりの90年代R&B好きかもしれませんね。

Jason Championは、故Gerald Levertのバックアップでデビューした巨漢R&BデュオMen at Largeの元メンバー(もう一人のメンバーはDave Tolliver)。

デビュー・アルバム『Men at Large』(1992年)からは「So Alone」「Use Me」といったR&Bヒットも生まれました。Jason Champion自身は2ndアルバム『One Size Fits All』(1994年)を最後にグループを離れますが、Men at Large自体は新メンバーEdgar "Gemini" Poterを加え、その後も『Love Struggle & Progress』(1999年)、『Back On Top Couzan』(2007年)といったアルバムをリリースしています。Jason Champion自身は、最近はKirk Franklin等の仕事に関与していたらしいです。

僕もデビュー・アルバム『Men at Large』は当時よく聴いていました。いかにもGerald Levertな感じですよね。しかしながら、メンバーの名前までは正直インプットしておらず、本作を購入してから家の『Men at Large』で再度確認した次第です。

Men at Large
Men at Large

でもって本作『Reflections』ですが、一応コンテンポラリー・ゴスペルというカテゴリーになるんですかね?

Mary Mary、Men of Standardを手掛けるプロデューサーWarryn Campbelが全10曲中7曲を手掛けており、確かにコンテンポラリー・ゴスペルという仕上がりなのかもしれません。ただし、本作にグッとくるのは80年代アーバン・ソウルがお好きな人や、美メロR&Bを聴きたい人なのでは?という気がします。

個人的には勇気や元気が湧いてくる幸福モードの美メロ・チューンにグッときます。

世知辛い今の世の中で、一服の清涼剤のようなアルバムに出会った気分です。
サイコー!これで今日も頑張れるぞ〜!

全曲紹介しときヤス。

「Always」
オートチューン使いの爽快アップ・チューン。アルバムからの先行シングルにもなっているみたいですね。

「Find A Reason」
僕のイチオシ!もしかしたら今年聴いた新作男性&&Bの全楽曲の中で一番好きかもしれません。メロディ良し!歌&コーラス良し!サウンド良し!聴いていると天国へ昇天しそうな、シルキーなメロウ・チューンに仕上がっています。嫌なこと、辛いこと、後悔していること...そんなマイナス・モードを全て忘れさせて幸福モードにしてくれます。名曲!

「Friend Of Mine」
80年代アーバン・ソウルがお好きな人は気に入るであろうメロウ・チューン。無理していない自然な優しさに溢れています。この曲も幸福モードですな!

「The Life」
コンテンポラリー・ゴスペルらしいポップな部分とホーリーな部分のバランスが絶妙ですね。特に後半のゴスペルらしい盛り上がり方はいいですね。

「I'm Sorry」
胸に染み入るスロウ。こういった曲を歌っても仰々しくなりすぎないのがいいですね。

「For Better Or For Worse」
アーバン・メロウしているAOR好きにはグッとくるメロウ・グルーヴ。でも単にメロウってだけじゃなくて、何か元気が沸いてくるのがいいですね。デュエット曲ですがお相手はPaula Championとなっています。名前からするとJasonの奥方又は親族なのでしょうね。

「Reflections」
タイトル曲は正統派スロウ。風貌からは想像しづらいハイトーン・ヴォーカルを聴かせてくれます。

「Father You」
「Find A Reason」、「Friend Of Mine」、「For Better Or For Worse」と並ぶ僕のお気に入り。体の中からポジティブな気持ちが湧いてくる美メロのミディアム・チューンです。

「He Is The Way」
アルバムの中で一番ゴスペルらしい仕上がり。素晴らしいJasonのヴォーカルと感想的なピアノが暫し神聖な気持ちにさせてくれます。オー!ジーザス!

「Ain't So Bad」
正直、アルバムの中では一番印象が薄いかも?

恥ずかしながらオートチューンって初めて知りました。今まで声にエフェクトがかかっているのは全部"ボコーダー使い"という説明で済ませていました。楽器や録音技術のようなことは全く疎いので...なので過去記事の中には不適切な説明があるかもしれません。ゴメンなさい。
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2008年10月29日

Kenny Drew『Dark Beauty』

エキサイティング&リリカルなKenny Drewの代表作☆Kenny Drew『Dark Beauty』
Dark Beauty録音年:1974年
ez的ジャンル:エキサイティング&リリカル系ジャズ・ピアノ・トリオ
気分は... :落ち着きませんが...

今週は忙しくて記事投稿する時間が全くありません(泣)
来週前半あたりまでこんな調子かも?ゴメンナサイ...

こんな忙しない時にはジャズ・ピアノが聴きたくなります。
ということで今日はKenny Drewの代表作『Dark Beauty』(1974年)です。

Kenny Drewは1928年N.Y.生まれ。1950年代前半はBud Powellスタイルのピアノを弾いていましたが、脚光を浴びることは少なかったようです。

1961年にパリに渡り、その後デンマークのコペンハーゲンへ移り、有名なCafe Montmartreを活動の拠点にします。ここでNiels-Henning Orsted Pedersen(b)、Albert "Tootie" Heath(ds)と出会い、トリオを結成します。ここでDrewはBud Powellスタイルから脱皮し、より繊細でリリカルな自身のスタイルを確立します。

そして今日紹介する『Dark Beauty』をはじめ、70年代にSteepleChaseでレコーディングした作品で人気が高まりました。

本ブログで紹介した作品で言えば、John Coltrane『Blue Train』Dexter Gordon『Dexter Calling...』でKenny Drewの演奏を聴くことができます。

でも僕が持っているKenny Drewのリーダー作は本作『Dark Beauty』のみです。『Everything I Love』(1973年)、『Duo』(1973年)、『If You Could See Me Now』(1974年)等の作品も聴きたいのですが...

『Dark Beauty』はおそらくDrewの最も有名な作品であり、日本でも本作をきっかけに人気が出たらしいです。

Kenny Drew(p)、Niels-Henning Orsted Pedersen(b)、Albert "Tootie" Heath(ds)というお馴染みのトリオでのレコーディングです。

黒人ピアニストならではのブラック・フィーリングとヨーロッパで培ったエレガント&リリカルな感性を兼ね備えたDrewのピアノを堪能できます。

また、Pedersenのベース、Heathのドラムもかなりインパクトがあります。特にPedersenのベースの存在感は凄いですね。ベースという楽器が脇役ばかりではなく、十分主役になることを再認識させられました。Heathのドラムも全然ジャズ・ピアノ・トリオらしくなくて面白いです。

ジャケの印象からすると「静」のイメージですが、意外に「動」のエキサイティング&スウィンギーな演奏を堪能できるアルバムです。

全曲紹介しときヤス。

「Ran Away」
この演奏はインパクトがあります。この1曲を聴いただけで本作が名盤と言われるのがわかる気がします。主役はKenny Drewと言うよりもベースのNiels-Henning Orsted Pedersenでしょうね。Drewのピアノとの絶妙な掛け合いがたまりません。全体としては小粋なアップテンポのブルースに仕上がっています。Per Carsten作品。

「Dark Beauty」
タイトル曲はKenny Drewオリジナルのバラッド。ヨーロピアンな気品とブラック・フィーリングのコクが同居する美しい演奏がいいですね。ダークな暗闇の中に一筋の光明が....ぐったり疲れている僕の心を癒してくれます。

「Summer Nights」
ポピュラー作曲家Harry Warren作品(1937年の映画『Sing Me a Love Song』の主題歌)。Miles DavisやChick Coreaの演奏が有名かもしれませんね。タイトルとは矛盾しますが、秋の夜長にぴったりなDrewのリリカルなピアノが魅力です。

「All Blues」
名盤『Kind of Blue』収録曲としてお馴染みのMiles Davis作品。Albert "Tootie" Heathのドラムがなかなかスリリングでグッドです。

「Felicidade」
オリジナル未収録曲。フランス映画『Orfeu Negro(黒いオルフェ)』のサントラにも収録されたAntonio Carlos Jobim/Vinicius de Morais作の有名なボッサ・ナンバーです。本ブログでは以前にRamsey Lewis Trioの演奏を紹介しました(『The In Crowd』収録)。ここではそれほど極端にボッサしておらず、それよりもスピード感が目立つ演奏になっています。

「It Could Happen to You」
この演奏をアルバムのハイライトに推す人も多いのでは?全体的に小気味良くスウィンギーな演奏が大好きです。ウキウキ感たっぷりのDrewのピアノがいいですね。ハジけてます!このトリオの個性と魅力が堪能できると思います。Jimmy Van Heusen作品。

「Love Letters」
1945年の映画『Love Letters』の主題歌(Victor Young作品)。この曲は Pedersenの力強いベースと共に、Drewがグルーヴィーなピアノを聴かせてくれます。。

「Silk Bossa」
タイトル通り、ライトなボッサ・チューンです(Thomas Clausen作品)。スタイリッシュな落ち着きがいいですね。永遠のジャス初心者の僕としては、こういった演奏に弱いんですよね。

「In Your Own Sweet Way」
オリジナル未収録曲。Miles DavisWes MontgomeryBill Evansなども演奏しているDave Brubeck作品です。ピアノ・トリオのエレガントな魅力を存分に堪能できます。

「A Stranger in Paradise」
オリジナル未収録曲。1954年のミュージカル『Kismet』挿入曲(Robert Wright/ George Forrest作品)であり、ロシアの作曲家Alexander Borodinの「Polovtsian Dance」がベースになっています。邪道かもしれませんが、僕の一番のお気に入りはこの演奏です。エレガントでありながらスリリングなこのトリオの魅力が凝縮されている気がします。『If You Could See Me Now』(1974年)でもこの曲を聴くことができます。

どうにか今日はさぼらずに記事投稿できました。
明日はどうなることか...
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2008年10月27日

The Flirtations『Sounds Like The Flirtations』

これってモータウン?Supremes好き、Vandellas好きの方にオススメ☆ The Flirtations『Sounds Like The Flirtations』
Sounds Like the Flirtations
発表年:1969年?(自信ありません?)
ez的ジャンル:UK産擬似モータウン・サウンド
気分は... :KFCとノーザン・ソウル!

今日はCDショップでたまたま試聴し、気に入って購入した1枚The Flirtations『Sounds Like The Flirtations』です。

正直、このグループのこと全然知りませんでした。
輸入盤CDに付いていた日本語解説とネット情報をベースに本作までのグループの歴史を辿ると以下のようになります。

The Flirtationsは60年代後半から70年代初めに活躍したガールグループ。メンバーはViola Billups、Shirley Pearce、Ernestine Pearceの3名。

The Flirtationsの前身はサウスカロライナで結成されたThe Gypsiesというグループであり、Ernestine、Shirley、BettyのPearce3姉妹に友人のLestine Johnsonを加えた4人組でした。The GypsiesはN.Y.を中心に活動し、1964-66年の間に数枚のシングルを残していたようです。

その後Lestine JohnsonがViola Billupsに代わり、さらに妹Bettyが脱退した時点でグループ名をThe Flirtationsへ改名しました。

The Flirtationsは数枚のシングルを残した後、1967年末にイギリスへ渡りDreamレコードとの契約に成功します。そこで出会ったのが当時のヒットメイカー(だったらしい)Wayne Bickerton & Tony Weddingtonであり、この制作陣を迎えてレコーディングされたのがグループの代表曲「Nothing But A Heartache」 でした。

「Nothing But A Heartache」は昨年イギリスのケンタッキー・フライドチキンのCMでも使われていたようです。そんな影響でThe Flirtationsへの注目が高まったのでしょうね。

本作『Sounds Like The Flirtations』は、「Nothing But A Heartache」を含む60年代後半から70年代初めのDreamレコード時代のシングル曲が楽しめるアルバムです。

いろんな記事に本作を1969年リリースと書いてあるのですが、70年代初めのシングルも数曲収録されており矛盾している気がします。でもよくわかりません。ゴメンナサイ。

中身はDiana Ross & the SupremesMartha Reeves & The Vandellasとがお好きな方ならば気に入るであろうUK産擬似モータウン・サウンドといった仕上がりです。特にVandellas好きの人はハマりそうな作品だと思います。ここまで徹底していればお見事!という気がします。

ノーザン・ソウル好きのイギリス人が喜びそうなサウンドですよね!

全曲紹介しときヤス。

「Nothing But A Heartache」
前述の通り1968年にリリースされたグループの代表曲。今聴いてもグッとくるノーザン・ダンサーはKFCのCM曲になるのも頷けますね。UK産擬似モータウン・サウンド恐るべし!
http://jp.youtube.com/watch?v=39SjyMvBbk4

KFCのCMに触発されたのか、昨年Freemasonsによるディスコ・ハウス調のリミックスもリリースされています。

「This Must Be The End Of The Line」
この曲はSupremes「Baby Love」に通じるプリティ&ポップな魅力を持った曲です。イントロを聴いただけで甘く切ない気分になりますね。

「I Wanna Be There」
「Momma I'm Comin' Home」
パンチの効いたノーザン・ソウルに仕上がっています。

「Stay」
「Someone Out There」
ポップな哀愁チューン2曲。バックの少し大袈裟な感じがグッドですね!

「How Can You Tell Me?」
僕のイチオシ曲。ノーザン・ダンサー好きの方はかなりテンション上がる仕上がりなのでは?思わず踊りたくなりますよ!

「Need Your Loving」
この曲は「愛の灯をつけて」の邦題で日本でもヒットしたらしいです。この曲もご機嫌なノーザン・ソウルに仕上がっています。

「South Carolina」
彼女たちの故郷サウスカロライナがタイトルになっています。まさに望郷モードの仕上がりです。

「Once I Had A Love」
実に雰囲気のあるミディアム・チューン。アレンジが秀逸ですね。

「Love Is A Sad Song」
哀愁ポップ・モードのミディアム・スロウ。

「What's Good About Goodbye My Love」
軽快なポップ・ダンスに仕上がっています。昔のTVの歌番組のテーマっぽい?
http://jp.youtube.com/watch?v=pHxcH3XNhEg&feature=related

CDはボーナス・トラックとして 「Christmas Time Is Here Again」 「Keep On Searching」 「Everybody Needs Somebody」 「Can't Stop Loving You」 「Give Me Love」 の5曲が追加収録されています。

懐かしいサウンドですが、実に新鮮な気分で聴くことができました。

探せばこうした擬似モータウン・サウンドってまだまだあるのでしょうね。僕の場合、それ以前に60年代の本家モータウン自体をきちんとフォローできていないので、そちらを先にすべきかもしれませんが(笑)
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2008年10月25日

A Tribe Called Quest『People's Instinctive Travels And The Paths Of Rhythm』

Q-Tipの新作が無事リリースされることを祈って...☆A Tribe Called Quest『People's Instinctive Travels And The Paths Of Rhythm』
People's Instinctive Travels and the Paths of Rhythm
発表年:1990年
ez的ジャンル:Native Tongues系ニュースクールHip-Hop
気分は... :これぞQ-Tipの原点!

90年代Hip-Hopシーンを大きく変えたグループA Tribe Called Quest(ATCQ)のフロントマンQ-Tipの久々の新作『Renaissance』が来月発売される予定らしいです。

ATCQの大ファンである僕としては、期待しつつも実際に店頭で手に取るまでは安心できないといった心境ですね。

『Renaissance』が無事リリースされることを祈って、久々にマイ・フェイバリットHip-HopグループA Tribe Called Quest(ATCQ)を取り上げます。

これまでATCQについては以下の3枚を紹介してきました。

 『The Low End Theory』(1991年)
 『Midnight Marauders』(1993年)
 『Beats Rhymes & Life』(1996年)

4回目となる今回はデビュー・アルバム『People's Instinctive Travels And The Paths Of Rhythm』(1990年)です。

この1stの時点ではJarobiも在籍しており、Q-TipPhife DawgAli Shaheed MuhammadJarobiというオリジナル・メンバー4人全員が参加した唯一のアルバムです。

ATCQの代表作と言えば、『The Low End Theory』または
『Midnight Marauders』のいずれかを選ぶ人が多いと思いますが、Hip-Hopシーンに与えたインパクトという点では『People's Instinctive Travels And The Paths Of Rhythm』も負けてはいないと思います。

De La Soul『3 Feet High And Rising』(1989年)と並んでHip-Hopに対するイメージを大きく変えたアルバムと位置づけられるのでは?

僕の場合、ATCQは『The Low End Theory』から入り、『People's Instinctive Travels And The Paths Of Rhythm』を少し遅れてゲットしたというパターンでした。

かなり完成度の高いジャジーHip-Hopを完成させた『The Low End Theory』を聴いた後に『People's Instinctive Travels And The Paths Of Rhythm』を聴くと、かなり初々しい印象がありましたね。

僕の場合、ATCQは無条件に何でも好きなので、かなり偏った意見になるかもしれませんが、「Luck of Lucien」「I Left My Wallet in el Segundo」「Bonita Applebum」「Can I Kick It?」「Description of a Fool」といったクラシックを含めて全曲楽しめます。

ネタ師としてJungle Brothers等と付き合いのあったThe Beatnutsも<おそらくサポートしていたのでは?また、当時Deee-LiteのメンバーであったTOWA TEI(テイ・トウワ)も楽しい日本語を聞かせてくれます。

Q-Tipの原点ここにあり!

全曲紹介しときヤス。

「Push It Along」
ミステリアスなSE&赤ちゃんの鳴き声に続き、Junior Mance「Thank You (Falettinme Be Mice Elf Agin)」ネタのドラムブレイク、さらには Grover Washington, Jr.「Loran's Dance」ネタの上モノが重なった後にQ-Tipが登場!それまでのHip-Hopに無かった脱力系ラップを聴かせてくれます。

「Luck of Lucien」
本作のクラシックその1。 Billy Brooks「Forty Days」のブレイクにのって、ルシエンの幸運?がQ-Tipらしいリリックで語られてます。

「After Hours」
夜遊びモードの仕上がりがいいですな。Aliのスクラッチが印象的です。Sly Stone「Remember Who You Are」等がサンプリングされています。

「Footprints」
いきなりStevie Wonder「Sir Duke」ネタで始まり、すかさずDonald Byrd「Think Twice」へなだれ込む展開がサイコーですね。Cannonball Adderley「Walk Tall」が声ネタで使われています。

「I Left My Wallet in el Segundo」
本作のクラシックその2。シングルにもなりましたね。The Chambers Brothers「Funky」ネタのトラックがメキシカン・テイストのほんわかムードを醸し出してくれて好きです。The Young Rascals「Sueno」もサンプリングされています。ATCQが明らかに他のHip-Hopグループと異なる個性を持っていたことが実感できる1曲なのでは?

Beats InternationalのNorman CookがリミックスしたVampire Mixも好きです。

「Pubic Enemy」
タイトルを当時人気だったHop-Hopグループの名と同じ「Public Enemy」と間違えている人がいますが、"Public"ではなく"Pubic"です。それにしても一字違うだけで硬派から軟派へ一変してしまうのが面白いですね。スピード感のあるトラックにのったLuther Ingram「Pity for the Lonely」ネタの上モノが印象的です。Billy the Baron & His Smokin Challengers「Communications is Where It's At」、Vaughan Mason & Crew「Bounce, Rock, Skate, Roll」、Rufus Thomas「Do the Funky Penguin」ネタ。リミックスのSaturday Night Virus Disco Mixも好きでした。

「Bonita Applebum」
本作のクラシックその3。シングルにもなったATCQを代表する名曲ですね。とぼけた軽さがサイコーですな。僕もボニータの恋人リストに載りた〜い!

Ramp「Daylight」、Rotary Connection「Memory Band」を使ったオリジナルも大好きですが、この曲といえばやはりThe Isley Brothers「Between The Sheets」ネタのHootle Mixですよね。数ある「Between The Sheets」ネタの曲の中でも最高峰だと思っています。さらにCarly Simon「Why?」ネタのWhy? Remixもありましたね。これらを聴き比べるのも楽しいと思います。

「Can I Kick It?」
本作のクラシックその4。「Bonita Applebum」と並ぶ人気曲ですね。シングルにもなりました。この曲と言えば、Lou Reed「Walk on the Wild Side」ネタのベースラインですよね。初めて聴いた時にはかなりのインパクトでした。他にもDr. Buzzard's Original Savannah Band「Sunshower」、Lonnie Smith「Spinning Wheel」がネタとして使われています。

♪Can I Kick It?♪とコールされたら、みんな大声で♪Yes,You Can!♪とレスポンスしましょう!

「Youthful Expression」
Reuben Wilson「Inner City Blues」モロ使いのトラックですがATCQならば許せちゃう!ファンキーなテイストがいいですね。

「Rhythm (Devoted to the Art of Moving Butts) 」
日本人にとって、この曲はかなり聴きものですね。なんとTOWA TEI(テイ・トウワ)がQ-Tipに向かって"でもさでもさQちゃん"と日本語で話しかけるのです。さらに"J.B.'s(Jungle Brothers)とかうちのDeee-Liteとか...70年代のP-Funkがさぁ....いけそうな気がするんだよね。なんちゃったりして..."と延々日本語で喋り続けます。サイコー!トラックもハウスのテイストも加わったスペイシーな仕上がりで好きです。Funkadelic「Get Off Your Ass and Jam」ネタ。

「Mr. Muhammad」
みんな大好きEarth Wind & Fire「Brazillian Rhyme」ネタで始まるラブリー・チューン。Kool & The Gang「Electric Frog Pt 1」ネタの使い方もカッチョ良いですね。この曲でも"Weather Reportのレコードだ!"という(意味不明の)日本語が挿入されていますが、ネタ元Weather Report「Vertical Invader」の日本語紹介部分をサンプリングしたものです。

「Ham 'N' Eggs」
コレストロールが高いからハムエッグは食べない!というメタボ対策の曲(笑)Freda Payne「We've Gotta Find A Way Back To Love」のリズムとFunkadelic「Nappy Dugout」ネタのベースラインがマッチしています。最後にEugene McDaniels「Jagger The Dagger」ネタも聴けます。

「Go Ahead in the Rain」
Slave「Slide」を使ったトラックがカッチョ良すぎですね。脱力系ラップとのマッチングもグッド!

「Description of a Fool」
本作のクラシックその5。ATCQの記念すべきデビュー・シングルです。Roy Ayers「Running Away」ネタの疾走するトラックが初々しいですね。トロい奴と呼ばれないためには...

個人的には本作とセットで『Revised Quest For The Seasoned Traveller』(1992年)を聴くことをオススメします。『People's Instinctive Travels And The Paths Of Rhythm』と2ndアルバム『The Low End Theory』(1991年)収録曲のリミックス集です。

曲紹介で書いた「Bonita Applebum」のHootle MixやWhy? Remix、「I Left My Wallet in el Segundo」のVampire Mix、「Pubic Enemy」のSaturday Night Virus Disco Mixなどを聴くことができます。

リヴァイズド・クエスト・フォー・ザ・シーズンド・トラヴェラー
リヴァイズド・クエスト・フォー・ザ・シーズンド・トラヴェラー
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2008年10月24日

Stanley Cowell『Musa・Ancestral Streams』

ソロ・ピアノによるスピリチュアル・ジャズの名作☆Stanley Cowell『Musa・Ancestral Streams』
Musa Ancestral Streams
発表年:1974年
ez的ジャンル:ルーツ回帰系スピリチュアル・ジャズ
気分は... :輪廻転生...

NHK-BS1でMartin Scorsese監督によるBob Dylanのドキュメンタリー映像『No Direction Home:Bob Dylan』(2005年)を観ながら記事投稿しています。

単にDylanのキャリアを振り返るのではなく、Dylan自身へのインタビューや同時代に生きた人々の声を通じて当時の空気感や時代の流れが伝わってくるのが興味深いですね。

なかなか面白いので、改めてじっくり観たいですね。

ということでBob Dylanの作品...といきたいところですが、全く関係ないStanley Cowell『Musa・Ancestral Streams』(1974年)の紹介です(笑)

Stanley Cowellは1941年オハイオ州トレド生まれのジャス・ピアニスト。1960代後半にMax Roachのグループへ参加し、注目を集めるようになります。そして、Max Roachのグループで活動を共にしたCharles Tolliver(tp)と双頭ユニットMusic Inc.を結成します。

さらにCowellとTolliverは1971年に自身のレーベルStrata-East Recordsを設立し、アフリカンアメリカンの自立、ジャズの再生といった視点からスピリチュアルな作品を数多く残しました。

知性派ピアニストと知られているStanley Cowellの代表作と言えば、『Illusion Suite』(1973年)、『Musa・Ancestral Streams』(1974年)、『Regeneration』(1975年)あたりになると思います。特に人気があるのは『Musa・Ancestral Streams』と『Regeneration』の2枚でしょうね。僕もCowell作品と言えば、この2枚が真っ先に思い浮かびます。

ソウルフルなヴォーカルをフィーチャーした"壮大なスピリチュアル・ジャズ作品"『Regeneration』も大好きですが、今の季節にはソロ・ピアノの名盤として名高い"静かなるスピリチュアル・ジャズ作品"『Musa・Ancestral Streams』が似合うと思いセレクトしました。

全9曲のうち1曲を除いて過去にレコーディングした曲であり、それらをソロ・ピアノで再演したものです(「Travelin' Man」のみエレピ+親指ピアノ)。

本作のタイトルになっている"Musa"とはCowellのアフリカン・ネーム(Musa Kalamula)からとったものであり、サブタイトルの"Ancestral Streams(先祖からの流れ)"も含めて考えると、アフリカ回帰をかなり意識して制作されたアルバムであるといえます。

また、本作のリリース年と同じ1973年にCowellの良き理解者であった父親が69歳で亡くなっており、そんな父への想いも込められた作品なのでしょうね。

芸術の秋に相応しい、アーティスティック&スピリチュアルな1枚だと思います。

全曲紹介しときヤス。

「Abscretions」
Charles Tolliverとの双頭ユニットMusic Inc.のアルバム『Music Inc.』(1970年)収録曲。壮大なスケール感のある演奏にアフリカ回帰の流れを強く感じます。

「Equipoise」
CowellやCharles Tolliver(tp)、Gary Bartz(as)らが参加したMax Roach『Members, Don't Git Weary』(1968年)で初レコーディングされた楽曲です。個人的には一番のお気に入り!瞑想モードのひたすら美しいスピリチュアル・チューンです。目を閉じるとそこに映るものは...

Pharcyde「On The DL」でサンプリングされたり、Build An Arkがアルバム『Peace With Every Step』(2004年)でカヴァーしていますね。

「Prayer for Peace」
この曲のみ本作が初披露です。「Equipoise」とは対照的に力強い躍動感を感じる演奏ですね。平和を祈るCowellの強い思いがよく伝わってきます。

「Emil Danenberg」
『Illusion Suite』(1972年)収録曲。少しアヴァンギャルドな雰囲気が漂うアーティスティックな演奏です。

「Maimoun」
「Emil Danenberg」同様に『Illusion Suite』(1972年)収録曲。タイトルは本作の共同プロデューサーであるViki McLaughlin女史のことだそうです。"Maimoun"はカタカナ表記すると"マイムーン"となりますが、曲の出来は"Maimoun"というより"My Moon"といった趣のエレガントな演奏です。

CowellがMJQ解散後のPercy Heathと組んだユニットThe Heath Brothersのアルバム『Marchin' On』(1975年)でも再演しています。また、J Dilla「Trashy」のサンプリング・ネタにもなっていますね。

「Travelin' Man」
Cowellの代表作といえばこの曲ですね。本作以外に『Blues for the Vietcong』(1969年)、『Regeneration』(1975年)でも演奏されています。

ここではエレピと親指ピアノを使ったアフリカ回帰モードのスピリチュアルな演奏を堪能できます。

この名曲はPharcyde「On The DL」や以前に紹介した『Kero One Presents:Plug Label』収録のAloe Blacc & King Most「With My Friends」でネタとして使われたり、Sound Directions(Madlib)によってカヴァーされたりしています。

「Departure No. 1」
「Departure No. 2」
『Blues for the Vietcong』(1969年)やMusic Inc.『Music Inc.』に収録されています。にジャズ・ピアニストStanley Cowellのピアノ・プレイを存分に楽しみましょう。

「Sweet Song」
『Blues for the Vietcong』(1969年)収録。スウィートというよりもビューティフルな仕上がりですね。心洗われる清らかな1曲。

個人的には曲紹介の中でも触れたMax Roach『Members, Don't Git Weary』Music Inc.『Music Inc.』、同『Live at Historic Slugs'』The Heath Brothers『Marchin' On』あたりもちゃんと聴いてみたいですね。

Members, Don't Git Weary
Members, Don't Git Weary

Live At Historic Slugs
Live At Historic Slugs
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