2008年10月18日

Eddie Palmieri『Unfinished Masterpiece』

創作意欲に満ちていたCoco時代のラスト作。グラミー最優秀ラテン・レコード受賞作☆Eddie Palmieri『Unfinished Masterpiece』
アンフィニッシュド・マスターピース(紙ジャケット仕様)
発表年:1975年
ez的ジャンル:プログレッシヴ・へヴィ・サルサ
気分は... :サルサでマインド・リセット!

今朝は寝坊してしまい、スケジュールの変更を余儀なくされ少しイライラ気味...
こんな時はサルサでも聴いて気分をリセットしようかな。

ということで、ニューヨーク・サルサの巨人Eddie Palmieriの登場です。
今日紹介するのはCoco時代の最終作『Unfinished Masterpiece』(1975年)です。

Eddie Palmieriの紹介は、Harlem River Drive名義の『Harlem River Drive』(1971年)、『Vamonos Pal Monte』(1971年)に続き3回目となります。

Eddie Palmieriについては、ここ1年ほど『Sentido』(1973年)、『Sun Of Latin Music』(1974年)、『Unfinished Masterpiece』(1975年)といったCoco時代の作品がお気に入りです。

本当は一番のお気に入り作『Sentido』を紹介したかったのですが、Amazonにジャケ画像がなかったので、『Unfinished Masterpiece』をセレクトしました。

『Unfinished Masterpiece』は、前作『Sun Of Latin Music』に続き2年連続グラミー賞の最優秀ラテン・レコードを受賞した作品です。

タイトル(未完成のマスターピース)が気になりますね。
創作意欲に満ちていたPalmieriの常にサルサを進化させるという意気込みかもしれませんし、実際の未完成部分に関してのレコード会社に対する皮肉かもしれません。

後者に関して、Palmieriは本作収録の「Kinkamache」の出来に不満を持ち再レコーディングを望んだものの、レコード会社側に受け入れられず、そのままリリースされることに...それが引き金となってCocoレーベルを去ったという経緯があった模様です。

まぁ、そんなことは脇に置いといて、ハードドライヴィングなへヴィ・サルサを楽しみましょう。特に最初の4曲はかなりテンション高くていいですよ!

Lalo Rodriguez(vo)、Alfredo De La Fe (vln) らがバックを務めます。「Resemblance」のみEddie Martinez(el-p)、Jeremy Steig(fl)、Mike Lawrence(flh)、Ron Carter(ds)、Steve Gadd(ds)といったジャズ系ミュージシャンをゲストに招いています。プロデュースはHarvey Averneが務めています。

全曲Palmieri自身の作品です。

全曲紹介しときヤス。

「Puesto Vacante」
哀愁モードのメロディとサルサらしいリズムの洪水が絡み合う、まさに"へヴィ・サルサ"な仕上がりです。ご機嫌なホーン隊と乱れ打つNicky Marreroのティンバレスがサイコーです!

「Kinkamache」
前述のように問題のトラックです。Palmieri本人は不満だったらしいですが、個人的はかなり気に入っています。Palmieriの鋭角なピアノ・プレイ、Lalo Rodriguezの初々しいヴォーカルが印象的な腰にズンズン響いてくるサルサ・グルーヴです。

「Oyelo Que Te Conviene」
スピード感がとにかくカッチョ良いですね。特に中盤のパーカッション隊とPalmieriのピアノの絡みはテンション高くなりますね。10月なのに熱くなりすぎて汗が滲んでくる...

「Cobarde」
10分を超えるデスカルガ。きっちり構想された楽曲も悪くはないですが、ラテンの熱い血を堪能するにはデスカルガ(サルサのジャム・セッション)やライブがいいですね。本曲ではサルサならではの醍醐味に加えて、ジャズやファンクをも呑みこんだフリーキーな演奏を聴くことができます。

「Random Thoughts」
これまでのハイテンションなへヴィ・サルサ・グルーヴとはうって変わり、現代音楽風の(殆ど)ピアノ・ソロです。途中微かにラテンの香りもしますが、何の先入観もなく聴いたらラテン・ピアニストの演奏だとわからないのでは?Palmieriの幅の広さを感じます。

「Resemblance」
前述のようにジャズ系ミュージシャンをゲストに招いた曲です。Palmieri自身はプレイするというよりも楽曲/コンセプト提供といった役割なのだと思います。Eddie Martinezのアレンジは見事ですし悪くはありませんが、まんまジャズな演奏はアルバムの中で少し違和感を感じますね。

『Sentido』(1973年)、『Sun Of Latin Music』との3枚セットでどうぞ!
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2008年10月17日

Pink Floyd『Ummagumma』

馬熊って何よ?☆Pink Floyd『Ummagumma』
Ummagumma
発表年:1969年
ez的ジャンル:トリップ系プログレ・ロック
気分は... :馬熊?

相変わらず『夢をかなえるゾウ』の水川あさみ&古田新太コンビはサイコーですな。
古田演じる人間の体にゾウの鼻を持つ関西人の神様"ガネーシャ"が面白すぎ!

でもって、唐突にPink Floydです。

『Dark Side Of The Moon(邦題:狂気)』(1973年)、『Wish You Were Here(邦題:炎)』(1975年)に続き3回目に紹介するのは4thアルバム『Ummagumma』(1969年)です。

ガネーシャは「人間+象」の神様でしたが、"Ummagumma"は「馬+熊」の仏様のことです...というのは大嘘で(笑)、『Ummagumma』とはヤバい系のスラングです。

個人的にはPink Floydの永遠の名作『Dark Side Of The Moon』が生まれるスタート地点に位置するアルバムが本作だと思っています。

オリジナル・アルバム、CD共に2枚組です。Disc1は1969年6月のバーミンガムおよびマンチェスターでのライブ録音、Disc2がスタジオ録音という構成になっています。

Disc1のライブ録音は、この時代にこれだけのトリップ・ミュージックをライブで演奏していたという事実に驚きですね。このサウンドを聴きつけて、Syd Barrettも月の裏側から顔を覗かせている気がします(この頃のSydはまだ音楽活動を行っていましたが)。

Disc2のスタジオ録音は曲名と共にメンバー名が記され、役割分担が明示されています。Roger Waters(b)、David Gilmour(g)、Richard Wright(key)、Nick Mason(ds)という4人のメンバーの個性が浮き彫りになり、興味深いですね。

『Dark Side Of The Moon』にヤラれた方は、その原型を本作『Ummagumma』に見出すことができます。乱暴な言い方をすれば、『Dark Side Of The Moon』の世界を5つのレイヤー(ライブとメンバー4人のリーダー・パートの5つ)に分けて聴かせてくれた作品という印象を受けます。

Pink Floyd作品ではお馴染みのアート集団Hipgnosisによるジャケも相変わらず素晴らしいですね。

全曲紹介しときヤス。

「Astronomy Domine」
1967年のデビュー・アルバム『The Piper at the Gates of Dawn』のオープニングを飾っていた曲ですね(邦題「天の支配」)。しかもSyd Barrett作品です。Syd作品をアタマに持ってくるところにグッと惹かれます。

『The Piper at the Gates of Dawn』での"ペインテッド・サウンド"とは多少雰囲気が異なりますが、このライブ・ヴァージョンもコズミックな音世界へ誘ってくれます。

「Careful With That Axe, Eugene」
「ユージン、斧に気をつけろ」という邦題でお馴染みの曲ですね。元々は1968年のシングル「Point Me at the Sky」のB面としてリリースされた楽曲です(David Gilmour/Roger Waters作品)。

Disc1のライヴの中ではこの曲の人気が高いのでは?妖しく不穏な静けさに包まれた前半から、狂気の雄叫びと共に激しくスリリングな中盤へなだれ込みます。David Gilmourのギターがいいですねぇ。この妖しくダイナミックな展開こそがSyd亡き後のPink Floydの魅力であり、Sydの幻影があるからこそ一層魅力的に映るという複雑な結果になっている気もします。

「Set the Controls for the Heart of the Sun」
2ndアルバム『A Saucerful of Secrets』(1968年)収録曲(邦題「太陽讃歌」)。個人的にはDisc1ではこの演奏が一番好きですね。スリリング&コズミック&ミステリアスな演奏がたまりません。アヴァンギャルドな映画のサントラにぴったりなインスト・チューンですね。

「A Saucerful of Secrets」
2ndアルバム『A Saucerful of Secrets』(1968年)のタイトル曲。アヴァンギャルドなPink Floyd全開といった感じです。しかもこれがライブというのが凄いですね。ライブ会場にいたら、Sydがいるかもしれない月の裏側の世界へとトリップしてしまいそうです。David Gilmourのスキャットは『Dark Side Of The Moon』を予感させますね。

ここまでDisc1(ライブ録音)です。

「Sysyphus」
ここからがDisc2(スタジオ録音)です。「Sysyphus」はRichard Wrightがリーダーの作品です。作品はさらにPart IからIVまでの四部構成となっています。クラシックと現代音楽の影響が強く反映されています。特にPart IIIには本ブログでも紹介した『猿の惑星(Planet of the Apes)』(1968年)との共通点を見出すことができ惹かれますね。

「Grantchester Meadows」
この曲の主役はRoger Waters。70年代以降の諸作で聴かれるようなフォーキーなテイストです。Watersがグループの主導権を握るに従い、Pink Floyd作品に占めるこのフォーキー感覚のウェイトは高まっていくことになりますね。

「Several Species of Small Furry Animals Gathered Together in a Cave and Grooving with a Pict」
このやたら長いタイトルの曲もRoger Watersがリーダーです。これは演奏というよりもサウンド・コラージュですね。

「Narrow Way」
この曲のリーダーはDavid Gilmour。Part IからIIIまでの三部構成となっています。アコースティック・サウンドとアヴァンギャルド・サウンドのコラボといった趣ですな。『Dark Side Of The Moon』収録曲のプロトタイプと思われる演奏ですね。その意味では最もPink Floydらしい仕上がりかも?

「The Grand Vizier's Garden Party」
最後はNick Masonが主役。この曲もPart IからIIIまでの三部構成となっています。現代音楽の要素が強い内容ですね。正直僕には理解不能です。でも聴いていると明和電機が思い浮かぶのは何故だろう(笑)

多分、次にPink Floydを聴くのは1年くらい先でしょうねぇ。
こんな音楽ばかり聴いていたら、知らぬ間にあっちの世界へいるかもしれないから...
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2008年10月16日

The Tony Rich Project『Exist』

フォーキーなR&Bが秋によく合う☆The Tony Rich Project『Exist』
Exist
発表年:2008年
ez的ジャンル:大人のフォーキーR&B
気分は... :まぁ、長い目で見ましょ!

秋の男性R&Bシンガー新作ラッシュの中で地味ながらも結構気に入っているのがThe Tony Rich Projectの5thアルバム『Exist』です。

Tony Richは1971年デトロイト生まれのR&Bシンガー/ソングライター/マルチプレイヤー。父が音楽家であった影響で幼少の頃から音楽に慣れ親しみ、10代の頃になると様々なバンドで活動していました。Pebblesへ楽曲提供したことがきっかけでL.A.Reid & BabyfaceのレーベルLAFaceでソングライターとして活躍するようになり、4.0、Boyz II Men、Johnny Gill、Toni Braxton等への楽曲提供しました。

1995年には自身の1stソロ・アルバム『Words』をリリース。アルバムからのシングル「Nobody Knows」は全米ポップ・チャート第2位の大ヒットとなり、アルバムは1997年グラミー賞でベストR&Bアルバムを受賞しました。

その後地味ながらも『Birdseye』(1998年)、『The Resurrected』(2003年)、『Pictures』(2006年)といったアルバムをリリースしています。

Tony Rich Projectと言えば、やはりアルバム『Words』、シングル「Nobody Knows」の印象が強いですね。LAFaceということもあって、Babyface系のシンガーというイメージでしたね。

当時の僕の嗜好で言えば、正統派、ポップ寄りのTony Rich Projectよりも、新感覚・個性派のD'AngeloMaxwellEric Benetあたりに心惹かれていましたね。

『Words』以降すっかりその存在を忘れていましたが、先月CDショップの視聴コーナーで久々に再開!Eric BenetRaphael SaadiqJoe等の新作を聴いたついでに聴いてみると、オーソドックスな作りが逆に新鮮な印象を受け、気に入ってしまいました。

少しフォーキーな彼のスタイルが秋の季節や今の僕の気分にマッチしているのかもしれません。

Eric Benetあたりもそうですが、自分のやりたい音楽をやりたいように創っているのが伝わってきていいですね。

こういった地味でオーソドックスなアルバムって、なかなか曲紹介するのが難しいのですが頑張ってみます(笑)でもいい曲揃ってますよ。

全曲紹介しときやす。

「Part The Waves」
アルバムからのリード・トラックはセクシーな大人のミッド・チューン。色気がありますな。

「It Would be A Sin」
少し気だるい感じの哀愁スロウ。男の哀愁が漂ってきます。

「Jordan」
Tony Richらしい美メロのフォーキー・ソウル。僕の一番のお気に入り。オーガニックな中にメロウな味わいが染み渡ってきます。

「According To You」
パーカッシヴな展開がいい感じです。それにしてもTony Richのヴォーカルには色気がありますな。

「Sugar Hill」
憂いのある大人のウエット感がいいですね。抑え気味のバックが逆にいいですね。

「Sweet Addiction」
良質のフォーキー・ソウルに仕上がっています。

「I Wanna Be」
「Jordan」と並ぶ僕のお気に入り。この曲はTV番組のエンディング曲で聴きそうな美メロ・チューン。Babyface好きの人は気に入るのでは?

「Anymore」
じんわりと心に響いてくるスロウ。聴いていると和の心を感じてしまうのは何故だろう?

「Oh Baby」
ロマンティックなラブ・ソング。抑えたフォーキー・サウンド&ヴォーカルが逆に愛情の深さを表現している感じですね。

「I Already Know」
ロックっぽいアレンジが加わったミッド・チューン。

「With You Through It」
ダーク&クールな雰囲気で決めてくれます。

昨日のサッカー南アフリカW杯アジア最終予選、対ウズベキスタンは消化不良の試合でしたね。でもこれが最終予選なのでは?勝てる試合だったとは思いますが、引き分けで大騒ぎするほどのこともないと思います。

マスコミはこれまで2戦2敗のウズベキスタンに勝って当たり前だったといった論調ですが、最終予選に出ている他国と日本との間に大きな実力差など存在しないと思います。

特にアジア各国はホーム/アウェーの有利/不利の差が欧州、南米に比較して少ない気がします。逆に考えれば、アウェーでも勝ち点3を十分狙えると思います。アウェーで狙って引き分けに持ち込むほどサッカーが成熟していないとも言えるかもしれませんね。

まぁ、長い目で見ましょ!
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2008年10月15日

Milton Wright『Friends And Buddies』

マイアミ・ソウルの裏人気盤☆Milton Wright『Friends And Buddies』
フレンズ・アンド・バディーズ(紙ジャケット仕様)
発表年:1975年
ez的ジャンル:T.K.系メロウ&グルーヴィー・ソウル
気分は... :マイアミが熱い!

まずはNFL情報から...
我がマイアミ・ドルフィンズはテキサンズにゲーム終了残り3秒での逆転を喫し惜敗してしまいました。う〜ん、残念!

昨日TVの録画放送で試合内容をチェックしましたが、数日前に書いた必殺"ワイルド・キャット"から「ブラウン→ペニントン→レシーバー」というスペシャル・プレーがついに飛び出し、守備でもポーターが大活躍するなど見所はありました。

マイアミと言えば、先週よりWOWOWの人気海外ドラマ「CSI:マイアミ」のシーズンVIがスタート。鬼チーフ、ホレイショ・ケインが帰ってきました。

マイアミが熱い!

ということで今日はマイアミ・ソウルMilton Wright『Friends And Buddies』(1975年)をセレクト。

今夏に1stアルバム『Friends And Buddies』(1975年)が再発され、間もなく2ndアルバム『Spaced』(1977年)もCDリリースということでMilton Wrightへの関心が高まっているかもしれませんね。

今日紹介するMilton Wrightの1stアルバム『Friends And Buddies』は、Timmy ThomasLatimoreLittle BeaverBetty Wright等でお馴染みのマイアミ・ソウルの名門T.K.傘下のAlstonからリリースされました。当時はあまり注目されることがありませんでしたが、レア・グルーヴ〜フリーソウルの流れで再評価が高まった1枚ですね。

特に日本のフリーソウル・ファンからの支持は高かったのでは?
僕もそんな流れで本作を購入した記憶があります。その時のライナーノーツで初めてMilton WrightがBetty Wrightの兄だと知りました。

本作を購入する方の多くはレア・グルーヴ〜フリーソウル・クラシック「Keep It Up」が目当てだと思います。僕も正直そのパターンでした。しかしながら、アルバムを聴いてみるとなかなか良質の曲が揃っており、「Keep It Up」抜きでも十分に楽しむことができる内容になっています。

今回記事を書くに際して初めて知りましたが、オリジナルの1stプレスは「Keep It Up」未収録で、2ndプレスから「Keep It Up」が収録されるようになったそうです。

バックにはPhillip WrightBetty WrightというMiltonの兄妹をはじめ、Timmy ThomasLatimoreLittle BeaverといったT.K.の主力メンバーが参加しています。

"王道ソウル"とは異なる作品ですが、今ジャストな70代ソウルだと思います。
かなり僕の嗜好にフィットしている1枚です。

全曲紹介しときやす。
※僕が持っているのは97年発売の盤です。

「Friends And Buddies」
躍動するグルーヴ感が心地好いオープニング。ドルフィンズ"ワイルド・キャット"のような痛快さがありますな(意味不明でゴメンナサイ)。

「Brothers & Sisters」
ディスコ・モードのグルーヴィー・チューン。スペイシーなシンセとアコギの組み合わせが不思議とマッチしていて、気持ちよく踊れそうな曲です。T.K.系らしく開放的な感じがいいですね。 今回の再発でボーナス・トラックとして収録されている「Ooh Ooh Ooh I Like It」とのカップリングで12"でもリリースされていたようです。

「Get No Lovin' Tonight」
聴けば聴くほどカッチョ良く感じる曲ですね。フルートの調べも印象的ですが、アコギのフォーキー感とうねるベースラインが一体化したリズムがサイコー!

「Po' Man」
格好良いグルーヴィー・チューン三連発の後は、ミステリアスなミッド・グルーヴ。スペイシーなキーボード・サウンドは本作の大きな特徴ですね。

「Keep It Up」
本作のハイライト曲。レア・グルーヴ〜フリーソウル・ファン必聴のメロウダンサー!アコギによるメロウ・ソウルがシンセによるスペイシー・サウンドと見事に融合しているところが素晴らしいですね。セクシーな雰囲気が漂うところも大好き。

MCM vs. Si Spex「Back Again」等のサンプリング・ネタにもなっています。

「My Ol' Lady」
僕の一番のお気に入り曲はこの込み上げソウル。Miltonのヴォーカルとバック・コーラス隊のコンビネーションがサイコーです。聴いているとハッピー・モードになるのがいいですね。エヴァーグリーンな魅力に満ちた仕上がりだと思います。

「Black Man」
この曲も素晴らしい。哀愁モードの美メロ・フォーキー・ソウルです。「My Ol' Lady」と並ぶ隠れ名曲という気がします。

「The Silence That You Keep」
この曲も人気高いでしょうね。みんなが大好きであろうサンセット・メロウ・グルーヴ。フルートの音色に、心地好いパーカッションのリズムがメロウ・モードも盛り上げてくれます。

ホント、捨て曲なしですな。

今回の再発に際しては「Nobody Can Touch You」「Ooh Ooh Ooh I Like It」(2ヴァージョン)がボーナス・トラックとして追加されています。
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2008年10月14日

Michel Petrucciani『Michel Petrucciani』

奇跡のジャズ・ピアニストの代表作『赤ペト』☆Michel Petrucciani『Michel Petrucciani』
Michel Petrucciani
発表年:1981年
ez的ジャンル:奇跡のジャズ・ピアニスト
気分は... :情熱的に生きる

今日はフランス人ジャズ・ピアニストMichel Petruccianiの代表作『Michel Petrucciani』(1981年)です。

僕の中ではMichel Petrucciani(1962-1999年)ほど"奇跡のジャズ・ピアニスト"という形容が似合う人はいないかもしれません。

先天的な骨形成不全症(グラス・ボーン病)という障害を背負って生まれ、身長は1mに満たず普通に歩くことさえ一苦労のPetruccianiですが、一度ピアノの前に座ると、信じられない音を奏でてくれます。

Michel Petruccianiは1962年にフランスのオランジュでイタリア系フランス人の家庭に生まれます。前述のような障害を持っていたにも関わらず、幼少時からピアノを習い、13歳で最初のコンサートを開催し、1980年には初のレコーディングを経験しています。

1981年にはCharles Lloyd(ts)と運命の出会いを果たします。当時引退中だったLloydはPetruccianiのピアノに惚れ込み復活を決意し、Petruccianiと共にニューグループを結成します。このグループでの活動によりMichel Petruccianiの名は一躍ジャズ・シーンに知れ渡ります。

その後も意欲的に作品をリリースし、"フランス最高のジャズピアニスト"といった評価まで得ますが、1999年に急性肺炎のために死去しました。享年36歳。

Petruccianiに魅了されるのは、障害を抱えているにも関わらず演奏しているからではありません。全体重をのせて鍵盤をたたくという個性的な演奏スタイルが生み出す独特の伸びやかで強靭なタッチの中に、生きることへの情熱と喜びを見出すことができるからです。実際にPetruccianiは生まれた時から20歳位までの命と告げられており、明日をも知れぬ命の中で演奏していました。

そんなPetruccianiの魂の演奏を堪能できる作品が『Michel Petrucciani』(1981年)です。ジャズ・ファンの間で通称『赤ペト』と呼ばれている作品です。

『Michel Petrucciani』は1981年4月3日、4日にオランダで録音されたもので、実質的なPetruccianiの1stアルバムです。本作以前の録音としてMike Zwerin(tb)との双頭リーダー作『Flash』(1980年)がありますが、リリースは本作より後だった模様です。

本作のメンバーは、Michel Petrucciani(p)、J.F.Jenny-Clark(b)、Aldo Romano(ds)というトリオ編成。当時18歳だった若手天才ピアニストPetruccianiをJenny-Clark、Romanoというベテラン・サイドメン二人がサポートするといった感じですね。

若手といっても明日をも知れぬ命であり、当時はまだ無名であったPetruccianiの演奏には"この1枚に懸ける"といった強い思いが伝わってきます。その一方で、Bill Evansあたりに通じる叙情性が実に味わい深く聴くことができます。

いろいろな意味でインパクトがあり、サプライズな作品だと思います。

全曲紹介しときやす。

「Hommage A Enelram Atsenig」
まずはこのオープニングで驚かされます。ジャケの風貌とはあまりにギャップのある力強いタッチと疾走感はハードボイルドの世界のような男臭さに溢れています。いやぁ、この燃焼度の高さはハンパないです!Petruccianiのオリジナル。

「Days of Wine and Roses」
超有名なHenry Mancini作品。Jack LemmonとLee Remickが主演した映画『酒とバラの日々』の主題歌であり、アカデミー賞映画主題歌賞、グラミー賞ベスト歌曲賞を受賞しました。このスタンダードをPetruccianiは彼ならではのロマンティックかつ鮮やかな演奏で聴かせてくれます。この1音ごとの抜けの良さはPetrucciani独特ですよね。

「Christmas Dreams」
個人的にダントツのお気に入り曲。このロマンティックなワルツを聴くたびに胸が高鳴り、目がウルウルしてきてしまいます。 この演奏を聴いて感動しなければ嘘でしょう!と言うくらいにご執心の美しく、感動的な演奏です。Petruccianiの真髄ここにあり!ちなみにドラムのAldo Romano作品です。

「Juste un Moment」
この曲はPetruccianiのオリジナル。冒頭のJenny-Clarkのベース・プレイにPetruccianiのピアノが加わる瞬間のスリリングな感じがいいですね。Petruccianiの強靭なタッチが推進力となって、演奏全体のテンションがどんどん高くなっていきます。実にエネルギッシュ!

「Gattito」
Aldo Romano作品。「Christmas Dreams」もそうですが、実に美しい曲を書く人ですね。そんな美しい曲に相応しい、落ち着きと品格のあるPetruccianiのピアノ・プレイにうっとりです。秋に聴くにはピッタリの演奏かもしれませんね。

「Cherokee」
Ray Nobleが1938年に書いたIndian Love Songの副題を持つスタンダード。Charlie Parkerの十八番として有名ですし、本ブログでは以前にClifford Brownの演奏を紹介しました。

演奏の豪快さと激しさで言えばアルバム中一番ですね。ハイ・スピードで切迫した演奏に人生を一気に駆け抜けようとしたPetruccianiの生き方を重ねてしまいます。Jenny-Clark、RomanoもPetruccianiの情熱に負けじと激しく応酬します。特にRomanoのドラムはど迫力ですね。聴き終わった瞬間、Petruccianiのやりきった満足感が聴き手にも伝わり清清しい気分になるのがいいですね。

タイトルのCherokeeとはインディアンのチェロキー族のことですが、本作のリリースと同じ1981年にPetruccianiはインディアン・ナボホ族出身のErlinda Montanoと結婚しています。そんな流れで考えても興味深い選曲ですね。

聴けば何かを感じずにはいられない、奇跡のアルバムだと思います。

ぐだぐだ言わず今日を精一杯生きるべし!
そんな事を教えられるアルバムです。
posted by ez at 14:54| Comment(3) | TrackBack(0) | 1980年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする