2008年11月10日

John Legend『Evolver』

伝説第3幕は"進化"☆John Legend『Evolver』
Evolver
発表年:2008年
ez的ジャンル:"進化中"コンテンポラリーR&B
気分は... :進化はいいけど、劇的変化は...

今日はJohn Legend待望の3rdアルバム『Evolver』っす。

John Legendの紹介は『Once Again』(2006年)に続き2回目になります。

今秋〜冬の男性R&B新作ラッシュの中でも、Musiq Soulchildの新作と並んで最も心待ちにしていた1枚です。

グラミー3部門を受賞したデビュー作『Get Lifted』(2004年)、さらに自信に満ちた2nd『Once Again』(2006年)と今時珍しいくらいに正統派のコンテンポラリーR&B/Soulを聴かせてくれていたJohn Legend

個人的な希望を言えば、この人には流行に左右されずに、いい曲を書き続け、いい歌を歌い続けて欲しいというのがあります。

なので、伝説第3幕となる3rdアルバムのタイトルが"Evolver(進化するもの)"になると聞き、少し不安な気分になりました。"進化はして欲しいけれども、劇的に変化はして欲しくない"というのが本音ですね。

しかも、アルバムからのリード・シングル「Green Light」OutkastAndre 3000を迎えたエレクトロ・ダンス・チューンだったので余計に不安になりました(笑)

そんな複雑な思いで聴いた3rdアルバム『Evolver』でしたが、結果的に変化はしたものの、劇的には変わっていなかったという気がします。新しい試みに取り組みつつ、今までの路線をちゃんと残しているのでホッとしました。。

個人的にはまずまずの内容に納得!といった感じです。
多少不満を言えば、『Once Again』収録の「Heaven」のようなミラクルな1曲がないのが残念ですね。

ゲストには前述のAndre 3000以外にもKanye WestBrandyEstelleといったアーティストが参加しています。プロデュースはMalay & KP、Kanye West、Midi Mafia、Will.I.Am、Supa Dups、Dave Tozer、Trevor Horn等が努めています。また、ソングライティングにはPharrell WilliamsNe-Yoも関わっています。

みんなで伝説第3幕をじっくり聴き込みましょう。

全曲紹介しときやす。

「Good Morning (Intro) 」
アルバム全体のイントロです。

「Green Light」
アルバムからのリード・シングル。OutkastAndre 3000をフィーチャーしたエレクトロなダンス・チューン。今流行のサウンドで仕上がっています。John Legendらしくはありませんが、Andre 3000と一緒にやるならばこれぐらいご機嫌なノリでいいのではと思います。Malay & KPプロデュース。

「It's Over」
Kanye Westをフィーチャー、Pharrell Williamsがソングライティングという豪華なメンバーが関与した1曲。出来もかなり僕好み!本ブログでも紹介したFreedom「Get Up And Dance」のホーン部分がサンプリングされており、これがかなりグッド!Malay & KP/Kanye Westプロデュース。

「Everybody Knows」
これぞJohn Legend!って感じの美メロのミッド・チューン。アコースティックな響きの中でJohnのヴォーカルがジワジワと心に染み渡ってきます。Malay & KPプロデュース。

「Quickly」
Brandyをフィーチャー。久々にBrandyの歌声を聴けるということで大喜びの方も多いのでは?僕もそんな一人です。そういったことを抜きにしても僕好みのキャッチーなミッド・チューンに仕上がっています。Midi Mafiaプロデュース。12月発売予定のBrandy久々の新作『Human』も楽しみですね。

「Cross The Line」
Will.I.Amプロデュースの哀愁スロウ。アルバムの中では少し地味な存在かも?

「No Other Love」
Johnが立ち上げたレーベルHomeschool Recordsの第1弾アーティストEstelleをフィーチャー。彼女の2ndアルバム『Shine』は本ブログでも紹介しましたね。レゲエ/ラガのテイストが強いEstelleに合わせてレゲエ・チューンを披露してくれます。Estelle『Shine』にも参加していたBlack ChineyのSupa Dupsプロデュース。

「This Time」
ストリングスをバックにした美しく壮大なバラード。Dave Tozer/Trevor Hornプロデュース。Buggles、Art of Noise、Yes、Frankie Goes to Hollywood等の作品で一世を風靡したかつての人気プロデューサーTrevor Hornの名をこんなところで目にするとは意外ですね。

「Satisfaction」
Will.I.Amプロデュース。近未来的な仕上がりが印象的ですね。僕がJohn Legendに望むスタイルではありませんが、これはこれで面白い試みだと思います。

「Take Me Away」
Ne-Yoがソングライティングに参加。ボッサ・フレイヴァーがかなり心地好いです。『Once Again』にもボッサ・チューンが収録されていましたが、アルバムに1、2曲このタイプの曲があるといいですね!

「Good Morning」
オープニングのロングバージョン。清々しいけど、まだ少しおねむって雰囲気がいいですね!

「I Love, You Love」
Will.I.Amプロデュース。悪くはないけど、もうひとひねりが欲しいですね。Dire Straits「Tunnel Of Love」ネタ。

「If You're Out There」
シングルにもなったスケール感の大きなバラード。バラク・オバマ氏のサポート・ソングです。曲の良し悪は別にしなければいけない曲かもしれませんね。

本作と並び大いに期待しているMusiq Soulchildの新作『On My Radio』が待ち遠しいです。
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2008年11月09日

Massive Attack『Blue Lines』

その後のUK音楽シーンの流れを変えたデビュー作☆ Massive Attack『Blue Lines』
Blue Lines
発表年:1991年
ez的ジャンル:ワイルド・パンチ系トリップ・ホップ
気分は... :陰鬱なメランコリック・ワールドがクセになる...

今日はMassive Attack の衝撃のデビュー・アルバム『Blue Lines』(1991年)です。

Massive Attack の紹介は2ndアルバム『Protection』(1994年)に続き2回目になります。

音楽シーン全体の大きな転換期となった90年代前半は各ジャンルでインパクトの大きな作品が続々とリリースされましたが、本作『Blue Lines』もUK音楽シーンに多大な影響を与えた1枚ですね。

伝説のDJ/サウンド・システム・ユニット Wild Bunch のメンバーでもあった 3D (Robert Del Naja)、 Daddy G (Grantley Marshall)、 Mushroom (Andrew Vowles)が生み出した、"トリップ・ホップ "と呼ばれるトリップ感覚とダウナー感覚を持つブリストル発のクラブ・ミュージックはかなりのインパクトがありましたね。

ブリストルのジャマイカ移民文化に根付いたダブ/レゲエ、ブリストルの先輩The Pop Group譲りの実験的・前衛的なアブストラクト・サウンド、時代の閉塞感を反映したメランコリックなダーク・ソウルをベースにテクノ、ロック、ジャズ等さまざまな音楽要素を取り入れたハイブリッド感は、この時代、この地( ブリストル )でしか生まれ得ない音だったのかもしれませんね。

最初は陰鬱なメランコリック・サウンドに戸惑いを覚えましたが、繰り返し聴いているうちにダウナー感覚に違和感がなくなり、ハマっていった感じでした。自分でもこうしたダークな音に魅了されるのは不思議な気分でしたね。

そうしたMassive Attackの魅力を最も純度が高い状態で堪能できるのがデビュー・アルバム『Blue Lines』だと思います。当時は2nd『Protection』(1994年)の方が好きだったのですが、今聴き直すとやはりこの1stのインパクトは凄いなぁという気がします。

本作ではShara Nelson、Tricky、Horace Andy、Tony Bryanといったヴォーカリスト/ラッパーを迎えています。この後Massive Attackに続きブレイクすることになる Tricky の名が目立ちますが、本作では Shara Nelson の存在感が抜群ですね。

衝撃のブリストル・サウンドは今聴いても聴き応え充分!

全曲紹介しときやす。

「Safe From Harm」
インパクト十分の地を這うようなオープニング。シングル・カットもされました。Shara NelsonのメランコリックなヴォーカルとTrickyの虚しいラップが独特の雰囲気を醸し出します。Billy Cobham「Stratus」をサンプリング。

「One Love」
Horace Andyのヴォーカルをフィーチャー。ブリストル・サウンドらしい退廃的なムードに包まれたダウナー感覚に充ちています。Horace Andyのクセのあるヴォーカルがいいですね。

「Blue Lines」
タイトル曲はクールなHip-Hopチューン。テンションの低さが逆にトリップ感覚を高めてくれます。

「Be Thankful For What You've Got」
William DeVaughnによるソウル・クラシックのカヴァー。Tony Bryanのヴォーカルをフィーチャー。オリジナルのメロウな味わいを残しつつ、UKらしいクラブ・サウンドに仕上がっています。今聴いてもかなり心地好いグルーヴですね。

「Five Man Army」
ダブ/レゲエ色が強い仕上がり。この頃のUKクラブ・ミュージックはかなりダブ/レゲエの影響が強かったですよね。

「Unfinished Sympathy」
Shara Nelsonをフィーチャーした美しき名曲。当時シングル・カットもされたこの壮大なグルーヴにヤラれた方も多かったのでは?重厚なストリングスをバックに、Shara Nelsonがメランコリックかつエモーショナルなヴォーカルを披露してくれます。聴き終わった後に背筋がゾクゾクしてきます。

「Daydreaming」
アルバムに先立ちシングル・カットされていた曲。Shara Nelsonのヴォーカルをフィーチャー。Wally Badarou「Mambo」をサンプリングしたアンビエントな雰囲気がいいですね。脱力しまくりの囁きラップもグッド!

「Lately」
Shara Nelsonのヴォーカルをフィーチャー。淡々とした無機質なトラックとソウルフルなShara Nelsonのヴォーカルとの対比がいい感じですね。

「Hymn Of The Big Wheel」
Horace Andyのヴォーカルをフィーチャー。ブリストル・サウンドらしい独特の音空間を楽しめます。暗闇の中に一筋の光明が差すような高揚感が湧いてきますね。

この後、PortisheadTrickyも続き、我々はトリップ・ホップの世界へ引きずり込まれることになります。そう言えば、Trickyはまだ未紹介ですね。そのうち取り上げたいと思います。
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2008年11月08日

Stylus『Where In The World』

OZ産ブルーアイド・ソウル、幻の1stが遂に初CD化☆Stylus『Where In The World』
ホェア・イン・ザ・ワールド
発表年:1976年
ez的ジャンル:OZ産メロウ&ファンキーグルーヴ
気分は... :鼻血ブーの大興奮!

今日は70年代に活躍したオーストラリアのグループStylusの1stアルバム『Where In The World』(1976年)です。

StylusはリーダーのPeter Cupplesを中心とした白人OZバンド。70年代に(1976年)、『For The Love Of Music』(1977年)、『Best Kept Secret』(1978年)、『Part Of It All』(1979年)という4枚のアルバムをリリースしています。3rd『Best Kept Secret』は、USでは『Stylus』のタイトル、異なるジャケで発売された模様です。

2nd〜4thアルバムは10年前にCD化されていましたが、1st『Where In The World』はこれまで未CD化のままでした。今回ようやく初CD化が実現し、多くのファンの方が歓喜しているのではと思います。

僕は今回がStylus初体験だった訳ですが、充実のメロウ・グルーヴ系ブルーアイド・ソウルに鼻血ブーの大興奮でした。ホント、僕のど真ん中です。Isley BrothersAverage White Band、シュガー・ベイブあたりがお好きな方は相当ハマる作品ではないかと思います。

本作のメンバーはPeter Cupples(vo、g)、Peter Lee(ds)、Sam McNally(key)、 Ron Peers(g、vo)Ashley Henderson(b)というオリジナル・メンバー5名です。

興味深いのは、プロデューサーとしてPeter Cupplesと共にTrevor Courtney、Mike ClarkeというSkylightのメンバーだった2人の名がクレジットされている点です。Skylightはフリーソウル・ファンにはお馴染みのOZブルーアイド・ソウル・グループですね。人気作『Sky High』は本ブログでも紹介したいと思いながら、Amazonにジャケ写真がないため保留になっている作品の1つです。ちなみにTrevor Courtneyは3rd『Best Kept Secret』ではStylusのメンバーとして参加しています。

StylusもSkylightも洗練されたメロウ&ファンキー・グルーヴながら、オーストラリアという土地柄が生み出す独特のユルさがあるのがいいですね。

オリジナル・アルバムの9曲に加え、ボーナス・トラック3曲も充実しており、まさに捨て曲ナシのミラクルな1枚だと思います。

全曲紹介しときやす。

「World Of Make Believe」
このオープニングを聴いて鼻血ブーになりそうなくらい興奮しました。フリーソウル系の音が好きな人であれば絶対に気に入るであろう爽快メロウ・グルーヴに仕上がっています。晴れた日の朝に聴くと1日気分よく過ごせそうな気分になる曲ですね。いい曲が揃ったアルバムですが、その中でもダントツで好きです。オーストラリアのシングル・チャートで第3位のヒットとなりました。
http://www.youtube.com/watch?v=ngcwW-cv4l0

「All In The Game」
黄昏メロウ・チューン。ゆったり、マイペースで時間が流れていく感じでいいですね。コーラスワークも胸キュンものでサイコー!

「Will This Continue To Be」
「Just Begun」
シームレスに繋がった軽快なファンキー・グルーヴ2曲。Isley Brothersあたりのファンキーなカッチョ良さを上手に吸収し、それを彼らならではの爽快なテイストで仕上げた感じです。

「Summer Breeze」
ご存知Seals & Crofts1972年のヒット曲のカヴァー。Stylusの場合、本ブログでも紹介したIsley Brothersバージョン(アルバム『3+3』収録)のカヴァーから触発されたのでしょうね。その意味ではIsleysバージョンの持つホットなテイストを受け継いでいる感じですが、Seals & Croftsの爽やかなテイストも微かに感じさせるのが彼ららしいのでは?この曲もオーストラリアのシングル・チャートで第3位のヒットとなりました。

「Paradise」
小鳥の囀りで始まるメロウ・ミディアム。この曲もかなりお気に入りです。甘すぎないビタースウィートな感じがいいですね。フルートの音色がアクセントになっています。

「I'm So In Love With You」
Peter Cupplesのハイ・トーン・ヴォーカルの魅力を堪能できるミディアム・チューン。こういう曲を聴いていても痒いところに手が届いていますよね。素晴らしい!

「Where In The World」
タイトル曲はセンチメンタル・モードのバラード。ヴォーカル&コーラスが魅力的なのでバラードも相当グッときます。初めて聴くのに懐かしさが込み上げてくる感じです。

「I'm Going Home」
オリジナルのラストはご機嫌なロックン・ロール。アルバム全体の雰囲気を考えると多少の違和感もありますが...

「Can't Get It Out Of Your Head」
「Funky Fig」
ここからの3曲はボーナス・トラック。本作と同時期にレコーディングされたものらしいです。この2曲はAverage White Bandあたりがお好きな方ならば気に入るであろうファンキー・チューン。

「Feeling Blue」
ボーナス・トラックの目玉はこの曲なのでは?フリーソウル・クラシックとして人気の高いEarth,Wind & Fireのカヴァーです(オリジナルは『Open Our Eyes』収録)。オリジナルの黄昏哀愁テイストを残しつつ、よりファンキーに仕上げています。

CD帯でGreat3片寄明人氏がStylusのことを"ファンキーに進化したFifth Avenue Band"と形容していますが、本曲の作者はそのFifth Avenue BandのメンバーであったKenny Altman、ハマらないはずがないですよね。

こんなに素晴らしいアルバムを聴いてしまうと、Peter Cupplesのソロも含めて他作品も聴いてみたいですね。とりあえずは『Part Of It All』をゲットしま〜す!
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2008年11月06日

The Tony Williams Lifetime『Emergency!』

ジャズ・ミュージシャンによる最強のロック・アルバム☆The Tony Williams Lifetime『Emergency!』
Emergency!
発表年:1969年
ez的ジャンル:フュージョン黎明期
気分は... :Yes,We Can!

米大統領選はオバマ氏の圧勝でしたね。
上下両院選の結果も踏まえて考えると、オバマ氏へのYesもありますが、ブッシュ及び共和党へのNoという米国民が多かったのでしょうね。

オバマ氏が支持を集めた要因の1つに、"empathy(共感)"というワードを挙げることができると思います。異なる価値観を対話ですり合わせようとするオバマ氏と、異なる価値観を武力で排除しようとするブッシュ...とても対照的ですね。

さて、今日は天才ドラマーの名を欲しいままにしたTony Williams(1945-1997年)の紹介です。

シカゴ生まれTony Williamsは、1962年にJackie McLeanのグループへ参加するためN.Y.へ向かいます。そして翌年の1963年には弱冠17歳にして帝王Miles Davisのグループに参加し、Wayne Shorter(ts)、Herbie Hancock(p)、Ron Carter(b)と共に第二期黄金クインテットを形成します(1969年までMilesのグループへ在籍)。

黄金クインテット解散後は、自身のグループLifetimeを結成し、ロック・ビートを取り入れたフュージョンへ傾倒していきます。その一方で、Herbie HancockらとV.S.O.P.クインテットへ参加し、アコースティック・ジャズな演奏も聴かせてくれました。

80年代半ばからは全面的にストレート・アヘッドなジャズに照準を定め勢力的な活動を続けますが、1997年に心臓発作のため死去してしまいました。

僕の場合、やはりMilesの第二期黄金クインテットの印象が強いのですが、Milesのグループ在籍時はで17〜23歳であったという事実に驚かされますね。

そんな23歳のTony Williamsが、"オルガンのColtrane"ことLarry Young、後にMahavishnu Orchestraを率いるギタリストJohn McLaughlinと共に結成したグループがLifetimeです。

今では1stアルバムとなる本作『Emergency!』はフュージョン黎明期を代表する1枚として評価の高い作品ですが、当時のジャズ・ファンからは必ずしも好意的に受け入れられたわけではないようですね。むしろ、Jimi HendrixCreamなどを聴いていたロック・ファンが熱狂していたようです。トリオ編成であったこともJimi HendrixCreamと結びつけやすいですよね。

たしかに、ロック・ビートを大胆に導入したスリリングな演奏はジャズというよりロック寄りの印象を受けますよね。その意味でかなり革新的なジャズ・アルバムだったのでしょうね。

僕がこのアルバムを気に入っているのも、ジャズ界のターニング・ポイント的な作品として、何か新しいものがクリエイトされるエキサイティングな熱気を感じ取ることができるからだと思います。

Lifetimeに強い関心を示したMiles Davisは彼らの演奏に感銘し、『In A Silent Way』さらには『Bitches Brew』とエレクトリック・マイルス路線を突き進むと同時に、John McLaughlinのスカウトに成功します。

本作で超スゴ腕ドラマーであることを再認識させてくれるTony Williamsですが、同時に音楽クリエーターとしても非凡な才能を持っていたことを証明してくれています。また、John McLaughlinという隠れた才能を発掘した眼力も素晴らしいですね。

ジャズ・ミュージシャンによる最強のロック・アルバムをご堪能あれ!

全曲紹介しときやす。

「Emergency」
不穏な雰囲気を掻き立てるオープニング。Milesの『Bitches Brew』をまさに先取りしている感じですよね。動と静のコントラストがいいですね。WilliamsとMcLaughlinの影に隠れがちですがLarry Youngのオルガンがかなりクセになります。『Bitches Brew』を聴く前に本作を聴いたら、今まで体験したことない未開の地に足を踏み入れたような気分になったでしょうね。Tony Williams作品。

「Beyond Games」
Williamsのポエトリー・リーディング的なヴォーカルと共に、不気味かつ退廃的な静けさが支配します。当時の前衛映画のサントラとかにハマりそうですね。Tony Williams作品。

「Where」
この曲もWilliamsの囁きヴォーカル入りです。スケール感の大きいコズミックな演奏にグイグイ引き込まれてしまいます。McLaughlinのギターとYoungのオルガンの絡み合い、別世界へトリップさせてくれる感じですね。ここでもYoungの(ドラッギーな)オルガンに相当ヤラれてしまいます。John McLaughlin作品。

「Vashkar」
Carla Bley作品。この曲は密度濃い感じですね。ハイテンションな三人のバトルを堪能できます。激しい中でも騒々しい感じがしないのが不思議ですね。

「Via the Spectrum Road」
この曲はジャズという雰囲気はなく殆どロックですね。McLaughlinがアコースティック&エレクトリック・ギターを使い分けています。アーシーなロックとプログレが渾然一体となった雰囲気です。John McLaughlin/Tony Williams作品。

「Spectrum」
個人的には一番好きな演奏がコレ。エレクトリック・マイルスが好きな人であれば気に入ると思います。エレクトリック・マイルスに先んじて、エレクトリック・マイルスに負けないカッチョ良さをたった3人のメンバーで実現していることに驚きですね。
John McLaughlin作品。

「Sangria for Three」
張り詰めた緊張感に包まれた三人の壮絶なバトルな展開されます。三人だけでこのカオス状態の雰囲気を出せるのが凄いですね。Tony Williams作品。

「Something Special」
「Spectrum」と並ぶ僕のお気に入り。単に演奏テクが凄いだけではなく、非常に音楽的である点を感じさせてくる演奏です。コクがあるのにキレもある!って感じでしょうか。

テクの凄さをちゃんと説明できない自分がもどかしいですが、どにかく凄いです!

本作に続く『Turn It Over』では元CreamJack Bruce(b)も加入してきます。

今朝はサッカーUEFAチャンピオンズリーグ「レアルマドリー対ユベントス」を生放送で観ていましたが、デルピエロの2ゴールでアウェーのユーべが2対0の勝利!いやぁ、デルピエロはまだまだ凄いですね!
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2008年11月05日

Nicola Conte『Rituals』

クラブジャズのマエストロによる4年ぶりの新作!☆Nicola Conte『Rituals』
リチュアルズ
発表年:2008年
ez的ジャンル:Schema系クラブジャズ
気分は... :クラブジャズの濃縮ジュース

今回はクラブジャズ・ファン必聴の1枚、Nicola Conteの新作『Rituals』です。

Nicola Conteはイタリアの人気DJ/プロデューサー/ミュージシャン。クラブジャズの人気レーベルSchemaを拠点に、ヨーロピアン・ジャズの最重要人物としてシーンを牽引しています。

これまで自身のアルバムとして『Jet Sounds』(2000年)、『Bossa Per Due』(2001年)、『Jet Sounds Revisited(リミックス・アルバム)』(2001年)、『Other Directions』(2004年)といった作品をリリースしています。

前々から『Jet Sounds』を紹介しようと思っていたのですが、そんな間に新作がリリースされてしまいました...

約4年ぶりの新作となる『Rituals』ですが、全13曲中11曲がヴォーカル入りという点が特徴的です。そして、Jose James、Philipp Weiss、Kim Sanders、Chiara Civello、Alice Ricciardiという多彩なヴォーカリストが参加しています。

特にJose Jamesは、あのGilles Petersonに"15年に 一人の逸材"と言わしめた現在大注目のシンガーです。デビュー・アルバム『The Dreamer』は、その絶賛の言葉通りの内容でしたね。

バックのメンバーも豪華です。基本はFabrizio Bosso(tp)、Pietro Lussu(p)、Pietro Ciancaglini(b)、Lorenzo Tucci(ds)というNicola Conteのコンボとその派生グループ(Schema Sextet、LTC、High Five)のメンバーが中心です。Nicola Conte自身もギタリストとして参加しています。

Lussu、Ciancaglini、Tucciの3人が組んだグループLTCは、昨年リリースしたアルバム『A Different View』がサイコーでしたね。また、 Bosso率いるHigh Fiveは以前に本ブログでMario Biondiと組んだ『A Handful Of Soul』を紹介しましたね。さらに今年リリースした『Five For Fun』も大人気です!

その他ゲストとして、"Chet Bakerの再来"と言われる人気のドイツ人トランペット奏者Till Bronnerは前作『Other Directions』に続いての参加です。フィンランドの人気グループThe Five Corners QuintetからはTeppo Makynen(ds)、Timo Lassy(bs、fl)の2人が参加しています。意外なところではアメリカ人アルトサックス奏者Greg Osbyも参加しています。元々M-BASE派の人ですが、どうしても大胆にHip-Hopへアプローチした『3-D Lifestyles』(1993年)の印象が強いですね。

Nicola Conteの作品で、これだけのメンバーが集まれば、悪いはずがありません。クラブ・ジャズ好きの方は曲単位でいろいろ楽しめると思います。

また、クラブ・ジャズをあまり聴かないという方には入門編としても最適だと思います。ヴォーカル曲が多い分、入りやすいのではないかと思います。

2曲のカヴァーを除いて全てNicola Conteのオリジナルです。

全曲紹介しときやす。

「Karma Flower」
Chiara Civelloのヴォーカルをフィーチャー。退廃的な美しさを感じる仕上がりです。少し気だるいヴォーカルと美しく響くハープやフルートが印象的ですね。

「Nubian Queens」
話題のJose Jamesをフィーチャー。ナイル河の上流をさす"Nubian"をタイトルに冠したアフリカン・テイストのディープな仕上がりです。Jose Jamesのブラック・フィーリング溢れるヴォーカルが実にマッチしていますね。Fabrizio Bossoのトランペット、Timo Lassyのバリトンサックスのソロもいかしています。

クラブ仕様という点では国内盤にボーナストラックとして収録されている本曲のリミックスSamba Versionがグッド!。

「Like Leaves in the Wind」
この曲もJose Jamesをフィーチャー。僕好みのラテンタッチの小粋な仕上がりです。このスタイリッシュな疾走感こそがNicola Conteならではのスタイリッシュさが溢れており、クラブジャズを聴いている!って気分になります。Gianluca PetrellaのトロンボーンとPietro Lussuのピアノのソロもサイコー!

「Love In」
Kim Sandersのヴォーカルをフィーチャーした軽快なアフロキューバン・グルーヴ。この曲もクラブジャスならではの疾走感を堪能できます!Kim Sandersとバック・コーラスのPhilipp Weissの絡みがいい感じです。後半の盛り上がりはかなり来ますね。

「Awakening」
Jose Jamesをフィーチャー。スリリングなアップチェーンの後は暫し小休止ということで、ロマンティックかつセクシーなミッドナイト・モードのワルツに仕上がっています。

「Paper Clouds」
Chiara Civelloのヴォーカルをフィーチャー。かなりラウンジ感覚のボッサ・チューンに仕上がっています。オシャレ・モードがお好きな方に!

「I See All Shades of You」
Alice Ricciardiのヴォーカルをフィーチャー。僕の一番のお気に入りはこのスタイリッシュなアフロキューバン・グルーヴです。パーカッシヴかつクールな疾走感がたまりません。Fabrizio Bossoのトランペット・ソロとDaniele Scannapiecoのテナー・ソロがカッチョ良すぎです。

「Macedonia」
旧ユーゴ出身のトランペット奏者Dusko Gojkovicの作品をカヴァー。エスニックかつミステリアスな雰囲気が漂います。

「Song of the Seasons」
Alice Ricciardiのヴォーカルをフィーチャー。「I See All Shades of You」と並ぶ僕のお気に入り。洗練され尽くしたワルツといった感じですね。カフェのBGMにぴったりな仕上がりです。Greg Osbyが短いながらも気の利いたアルトソロを聴かせてくれます。

「Red Sun」
Kim Sandersのヴォーカルをフィーチャーした激シブ・チューン。哀愁モードの仕上がりは秋にぴったりです。

「Black Is the Graceful Veil」
Kim Sandersヴォーカルをフィーチャー。ブラック・フィーリングに溢れたアフリカンな人力ハウスといった仕上がりはクラブ・ジャズのみならずハウス・ファンも虜にするのでは?さり気ないヴァイヴやハープの音色が心憎いですね。

「Caravan」
Duke Ellingtonと楽団のJuan Tizolが作曲したアフロ・キューバン・ジャズ・クラシック。ここではPhilipp Weissのヴォーカルをフィーチャー。この曲の持つミステリアスな魅力を残しつつも、かなりエキサイティングな演奏を聴かせてくれます。特にTill BronnerとFabrizio Bossoという人気トランペッター2人の競演にはワクワクしますね。

「Rituals」
ラストはインスト。ヴォーカルものもいいですが、このメンツならばインストものもいいですね。クールにアルバムの余韻に浸るといった趣です。

本作を気に入った方は参加メンバーの関連作品もどうぞ!
機会があれば本ブログでも紹介したいと思います。

Jose James『The Dreamer』
ザ・ドリーマー
ザ・ドリーマー

LTC『A Different View』
ア・ディファレント・ヴュー
ア・ディファレント・ヴュー

High Five『Five For Fun』
Five for Fun
Five for Fun

The Five Corners Quintet『Chasin' the Jazz Gone By』
チェイシン・ザ・ジャズ・ゴーン・バイ
チェイシン・ザ・ジャズ・ゴーン・バイ

Till Bronner『Rio』
リオ~ボサ・ノヴァの誘い
リオ~ボサ・ノヴァの誘い
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