発表年:1969年
ez的ジャンル:フュージョン黎明期
気分は... :Yes,We Can!
米大統領選はオバマ氏の圧勝でしたね。
上下両院選の結果も踏まえて考えると、オバマ氏へのYesもありますが、ブッシュ及び共和党へのNoという米国民が多かったのでしょうね。
オバマ氏が支持を集めた要因の1つに、"empathy(共感)"というワードを挙げることができると思います。異なる価値観を対話ですり合わせようとするオバマ氏と、異なる価値観を武力で排除しようとするブッシュ...とても対照的ですね。
さて、今日は天才ドラマーの名を欲しいままにしたTony Williams(1945-1997年)の紹介です。
シカゴ生まれTony Williamsは、1962年にJackie McLeanのグループへ参加するためN.Y.へ向かいます。そして翌年の1963年には弱冠17歳にして帝王Miles Davisのグループに参加し、Wayne Shorter(ts)、Herbie Hancock(p)、Ron Carter(b)と共に第二期黄金クインテットを形成します(1969年までMilesのグループへ在籍)。
黄金クインテット解散後は、自身のグループLifetimeを結成し、ロック・ビートを取り入れたフュージョンへ傾倒していきます。その一方で、Herbie HancockらとV.S.O.P.クインテットへ参加し、アコースティック・ジャズな演奏も聴かせてくれました。
80年代半ばからは全面的にストレート・アヘッドなジャズに照準を定め勢力的な活動を続けますが、1997年に心臓発作のため死去してしまいました。
僕の場合、やはりMilesの第二期黄金クインテットの印象が強いのですが、Milesのグループ在籍時はで17〜23歳であったという事実に驚かされますね。
そんな23歳のTony Williamsが、"オルガンのColtrane"ことLarry Young、後にMahavishnu Orchestraを率いるギタリストJohn McLaughlinと共に結成したグループがLifetimeです。
今では1stアルバムとなる本作『Emergency!』はフュージョン黎明期を代表する1枚として評価の高い作品ですが、当時のジャズ・ファンからは必ずしも好意的に受け入れられたわけではないようですね。むしろ、Jimi HendrixやCreamなどを聴いていたロック・ファンが熱狂していたようです。トリオ編成であったこともJimi HendrixやCreamと結びつけやすいですよね。
たしかに、ロック・ビートを大胆に導入したスリリングな演奏はジャズというよりロック寄りの印象を受けますよね。その意味でかなり革新的なジャズ・アルバムだったのでしょうね。
僕がこのアルバムを気に入っているのも、ジャズ界のターニング・ポイント的な作品として、何か新しいものがクリエイトされるエキサイティングな熱気を感じ取ることができるからだと思います。
Lifetimeに強い関心を示したMiles Davisは彼らの演奏に感銘し、『In A Silent Way』さらには『Bitches Brew』とエレクトリック・マイルス路線を突き進むと同時に、John McLaughlinのスカウトに成功します。
本作で超スゴ腕ドラマーであることを再認識させてくれるTony Williamsですが、同時に音楽クリエーターとしても非凡な才能を持っていたことを証明してくれています。また、John McLaughlinという隠れた才能を発掘した眼力も素晴らしいですね。
ジャズ・ミュージシャンによる最強のロック・アルバムをご堪能あれ!
全曲紹介しときやす。
「Emergency」
不穏な雰囲気を掻き立てるオープニング。Milesの『Bitches Brew』をまさに先取りしている感じですよね。動と静のコントラストがいいですね。WilliamsとMcLaughlinの影に隠れがちですがLarry Youngのオルガンがかなりクセになります。『Bitches Brew』を聴く前に本作を聴いたら、今まで体験したことない未開の地に足を踏み入れたような気分になったでしょうね。Tony Williams作品。
「Beyond Games」
Williamsのポエトリー・リーディング的なヴォーカルと共に、不気味かつ退廃的な静けさが支配します。当時の前衛映画のサントラとかにハマりそうですね。Tony Williams作品。
「Where」
この曲もWilliamsの囁きヴォーカル入りです。スケール感の大きいコズミックな演奏にグイグイ引き込まれてしまいます。McLaughlinのギターとYoungのオルガンの絡み合い、別世界へトリップさせてくれる感じですね。ここでもYoungの(ドラッギーな)オルガンに相当ヤラれてしまいます。John McLaughlin作品。
「Vashkar」
Carla Bley作品。この曲は密度濃い感じですね。ハイテンションな三人のバトルを堪能できます。激しい中でも騒々しい感じがしないのが不思議ですね。
「Via the Spectrum Road」
この曲はジャズという雰囲気はなく殆どロックですね。McLaughlinがアコースティック&エレクトリック・ギターを使い分けています。アーシーなロックとプログレが渾然一体となった雰囲気です。John McLaughlin/Tony Williams作品。
「Spectrum」
個人的には一番好きな演奏がコレ。エレクトリック・マイルスが好きな人であれば気に入ると思います。エレクトリック・マイルスに先んじて、エレクトリック・マイルスに負けないカッチョ良さをたった3人のメンバーで実現していることに驚きですね。
John McLaughlin作品。
「Sangria for Three」
張り詰めた緊張感に包まれた三人の壮絶なバトルな展開されます。三人だけでこのカオス状態の雰囲気を出せるのが凄いですね。Tony Williams作品。
「Something Special」
「Spectrum」と並ぶ僕のお気に入り。単に演奏テクが凄いだけではなく、非常に音楽的である点を感じさせてくる演奏です。コクがあるのにキレもある!って感じでしょうか。
テクの凄さをちゃんと説明できない自分がもどかしいですが、どにかく凄いです!
本作に続く『Turn It Over』では元CreamのJack Bruce(b)も加入してきます。
今朝はサッカーUEFAチャンピオンズリーグ「レアルマドリー対ユベントス」を生放送で観ていましたが、デルピエロの2ゴールでアウェーのユーべが2対0の勝利!いやぁ、デルピエロはまだまだ凄いですね!