2008年12月09日

Kanye West『808s & Heartbreak』

またもや進化した蟹江氏恐るべし!☆Kanye West『808s & Heartbreak』
808s & Heartbreak
発表年:2008年
ez的ジャンル:スーパー・クリエイター
気分は... :蟹江&蟹工船

Kanye Westの新作『808s & Heartbreak』です。

既に様々なブログでレビューされ、賛否両論巻き起こっている作品ですが、一応当ブログでも触れておきたいと思います。

1st『The College Dropout』(2004年)、2nd『Late Registration』(2005年)の2枚でスーパーHip-Hopクリエイターの地位を確立し、3rd『Graduation』(2007年)で従来型Hip-Hopから卒業した蟹江氏ですが、本作『808s & Heartbreak』は遂に歌モノ・アルバムになってしまいました。もはやHip-Hopアルバムとは呼べないかもしれません。

3rd『Graduation』を踏まえれば、エレクトロ・サウンドに支配されている本作の流れはさほど驚くものではないかもしれませんね。ただし、ここまでオートチューン使いまくりの歌モノに徹するとは予想外でした。T-Painも真っ青ですな。

タイトルの"808"はTR-808(1980年代に発売されたローランドのリズム・マシーン)を指しているようですが、80年代テイストのエレクトロ・サウンドとオートチューンの組み合わせがなかなかグッときます。また、本作は貫く哀愁モードはKanyeの母親の死が大きく影響していると思われます。

先に述べたように賛否両論分かれる作品だと思いますが、僕のようにジャンル、年代関係なくいろんな作品を聴くのが好きな人間としては、ジャンルの枠組みを飛び越えて新たな領域に踏み込もうとする蟹江の姿勢を支持したいと思います。ラッパーとしてよりもサウンド・クリエイターとしての蟹江に興味があったので、ラップしない蟹江に全く抵抗感はありません。

また、蟹江本人が意図したことではないと思いますが、本作を貫く美しく、悲しく、虚しい雰囲気は今の時代の空気ともリンクしており、そのあたりも本作を魅力的なものにしていると思います。

本作を聴いて、前作『Graduation』で蟹江が何から卒業したのかが、ようやく理解できた気がします。

蟹江を聴きながら『蟹工船』を読む...2008年らしいのでは?

全曲紹介しときやす。

「Say You Will」
オープニングは本作を象徴する哀愁チューン。オートチューン・ヴォーカルと♪ピコピコ♪ドンドンのチープ・サウンドが哀愁モードを高めてくれます。曲作りにはYoung JeezyやConsequence等も参加しています。

「Welcome To Heartbreak」
Kid Cudiをフィーチャー。深い悲しみと虚しさに包まれるハートブレイクな仕上がり。暗いニュースばかりが続く今の時代の空気感とリンクしていますな。

「Heartless」
アルバムからの2ndシングル。最初はかなり地味な印象を受けるのですが、何度も聴いているとこの哀愁感がクセになります。従来のKanyeと新生Kanyeがうまくバランスしている仕上がりなのでは?Kanyeの師匠であるシカゴHip-Hopのゴッドファーザー No I.D.が共同プロデューサーで関与しています。
http://jp.youtube.com/watch?v=gWzlD7Lc6w8&feature=channel

「Amazing」
Young Jeezyをフィーチャー。前半はKanyeのオートチューン・ヴォーカル、後半はYoung Jeezyはダミ声ラップといった展開です。妄想の世界の虚しいアメイジングといった雰囲気ですな。
http://jp.youtube.com/watch?v=z1nMBeTukY4

「Love Lockdown」
アルバムからの先行シングル。ビルボードHot100で第3位のヒットとなりました。曲自体は10年以上前に書いたものなのだとか。賛否両論分かれているようですが、新生Kanye Westのお披露目という点ではピッタリの楽曲だと思います。個人的には、オートチューン・ヴォーカルとズシリと響くアフリカン・リズムの組み合わせは悪くないと思います。
http://jp.youtube.com/watch?v=ZVZX-W3vo9I&feature=related

「Paranoid」
Mr. Hudsonをフィーチャー。アルバムの中で一番ポップでキャッチーな印象を受ける仕上がりです。The Neptunesあたりがお好きな人は気に入るのでは?
http://jp.youtube.com/watch?v=-bDJAEJDgcQ

「RoboCop」
本作で最も進化したKanye Westに出会えるのがこの楽曲だと思います。エレクトロ・サウンドとストリングスが見事に融合した完成度の高さに正直驚きました。曲作りにはT-Pain、Consequence、Young Jeezy等も参加しています。Patrick Doyle「Kissing in the Rain」ネタ。
http://jp.youtube.com/watch?v=krxnf4WG4qA

「Street Lights」
この曲も「RoboCop」同様進化した蟹江氏に触れることができます。この美しいけど、どこか物悲しい雰囲気が今の時期にピッタリなのでは?
http://jp.youtube.com/watch?v=xUTq3tHg1eA

「Bad News」
Nina Simone「See Line Woman」ネタのアフリカン・リズムが印象的な哀愁チューン。

「See You In My Nightmares」
Lil Wayneをフィーチャー。Lil WayneとKanyeという豪華な組み合わせですが、ここまでの流れがあまりに素晴らしいので物足りない印象を受けるのは僕だけでしょうか?この曲もNo I.D.が共同プロデューサーで参加しています。

「Coldest Winter」
Coldplayあたりの影響を感じるロック・テイストの仕上がり。Tears for Fears「Memories Fade」ネタ。そう言えば前作『Graduation』にはChris Martinが参加していましたね(「Homecoming」)。

あとボーナス・トラック(隠れトラック)として「Pinocchio Story(Freestyle Live From Singapore)」が収録されています。

そろそろ蟹江にグラミー主要部門をあげてもいいのでは?
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2008年12月08日

Joe Henderson『Mode For Joe』

Blue Noteラスト作もモーダルにキメてくれます!☆Joe Henderson『Mode For Joe』
Mode for Joe
録音年:1966年
ez的ジャンル:新主流派Jazz
気分は... :パッキャオが歴史を変えた!

昨日の記事にも書いたボクシング界注目のドリーム・マッチ「デラ・ホーヤ対パッキャオ」は、大方の予想を裏切りベスト体重で約10kgも下回るパッキャオが圧倒的に攻めまくりTKO勝ちしました。昨日の僕の願望が現実になり、嬉しいですね。

前人未到の6階級制覇を成し遂げたボクシング界のスーパースターデラ・ホーヤが、圧倒的な体格差の優位性を生かせずに敗れたというのは、ある意味ボクシング界の常識を覆すほどのインパクトだったのではないかと思います。

そう言えば、この試合のアメリカ国歌斉唱はKeyshia Coleが歌っていました。
間もなくリリースされる新作『Different Me』も楽しみなKeyshiaですね。

今日はジャズ・サックス奏者Joe Hendersonの4回目の登場です。

『Inner Urge』(1964年)、『Page One』(1963年)、『In 'N Out』(1964年)に続き紹介するのは『Mode For Joe』(1966年)です。

こうやって振り返ると、全てBlue Note時代の作品ばかりですね。
Milestone時代の作品も保有していますが、どうしても紹介するとなるとBlue Note時代になってしまいますね。本作『Mode For Joe』はそんなBlue Note時代の最後の作品です。

メンバーはJoe Henderson(ts)以下、Lee Morgan(tp)、Curtis Fuller(tb)、Bobby Hutcherson(vibe)、Cedar Walton(p)、Ron Carter(b)、Joe Chambers(ds)というなかかなの豪華メンバーです。

三管編成にヴァイヴも加わったことで、かなり厚みのあるモーダル・サウンドを聴くことができます。

他のBlue Note作品と比較して目立った曲はないかもしれませんが、全体のカラフル感、演奏のカッチョ良さ、アンサンブルの美しさはHenderson作品の中でもかなり上位に来るのではと思います。

モーダルなカッチョ良さを堪能したい方にオススメです!

全曲紹介しときヤス。

「A Shade of Jade」
オープニングはJoe Hendersonのオリジナル。摩訶不思議な疾走感がクセになる演奏です。モーダル感はよく伝わってきますね。豪華メンバーの顔見せ的な雰囲気があります。

「Mode for Joe」
タイトル曲はCedar Walton作品。実に洗練された印象を受ける演奏ですね。Henderson独特のクネクネ・フレーズを堪能できます。Fullerのトロンボーンもいいアクセントになっていますね。個人的にはHutchersonのヴァイヴとWaltonのピアノが演奏全体にエレガントな品格を加えているあたりが気に入っています。

「Black」
この曲もCedar Walton作品。僕の一番のお気に入り演奏です。このモーダルな疾走感がたまりませんな。テーマがカッチョ良すぎだし、続くHendersonのソロもばっちりキメてくれます。CDには別テイクも収録されています。

「Caribbean Fire Dance」
Joe Hendersonのオリジナル。タイトル通りのラテン・テイストです。陽気なカリビアンというよりもどこか呪術的な雰囲気が漂う演奏ですね。特にMorganのソロはまさに妖しげなファイアー・ダンス炸裂といった感じです。後半はChambersのドラムが大暴れします。

「Granted」
Joe Hendersonのオリジナル。一気に突っ走る疾走感が魅力ですね。Chambersのドラムに先導され、各メンバーが楽しませてくれます。

「Free Wheelin'」
Lee Morgan作品。リラックス・ムードの小粋な演奏がいい感じです。こういった作品ではHutchersonのヴァイヴとWaltonのピアノが心地好いですね。

次回Joe Hendersonを紹介する時にはMilestone時代の作品をセレクトしますね。『Tetragon』(1968年)、『Multiple』(1973年)あたりかなぁ。
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2008年12月07日

Emotions『Flowers』

Kalimba Production第1弾アルバム☆Emotions『Flowers』
Flowers
発表年:1976年
ez的ジャンル:EW&F系女性R&Bグループ
気分は... :1103回目

いつも100回単位の記事投稿を1つの区切りとしているのですが、気付いたら1100回目の投稿が過ぎてしまい今日が1103回目となります。

よく周囲から"あのスタイルで記事書くの大変でしょ"と言われます。
確かに手間はかかるし、それなりに時間も費やしますが、自分ではかなり楽しみながら記事を書いているつもりです。義務感のみではとても続きませんからね。

楽しみながら記事を書ける理由は、毎回何らかの新たな気づき、発見が自分の中であるからだと思います。次は1200回を目標にコツコツ書いていきま〜す。

さて、久々のEmotionsの登場です。

全米No.1ヒット「Best of My Love」収録の大ヒット・アルバム『Rejoice』に続いて紹介するのは、1976年の作品『Flowers』です。

本作『Flowers』Maurice WhiteKalimba Production制作第1弾アルバムであり、大成功を収める次作『Rejoice』への助走となった作品です。

EmotionsがKalimba Productionに迎えられたのは、Maurice Whiteと同じシカゴ出身ということも影響していたのかもしれませんね。

プロデュースはMaurice White & Charles Stepneyという最強コンビ。勿論Earth, Wind & Fireのメンバーが全面バックアップしています。

Jeanette、Wanda、SheilaというHutchinson三姉妹の抜群の歌唱力&透明感のあるハーモニーと、EW&Fならではのポップなダンス・サウンドとの相性バッチリといった仕上がりですね。

全曲紹介しときやす。

「I Don't Wanna Lose Your Love」
邦題「恋のチャンス」。アルバムからシングル・カットされ、全米R&Bチャート第13位となったダンス・クラシック。EW&Fらしいポップなディスコ・チューンに仕上がっています。Phenix Hornsの盛り上がり等々EW&F好きの方ならば気に入るご機嫌なダンス・チューンだと思います。

IncognitoのMaysa Leak等がカヴァーしたり、Christina Milian feat.Twista「For Real」でサンプリングされたりしています。

「Me for You」
ヴォーカル・グループとしての実力を見せつけてくれるバラード。こういった曲にこそ本来のEmotionsの魅力があるのかもしれませんね。

「You've Got the Right to Know」
EW&F度を少し抑えたミッド・グルーヴ。少し哀愁漂うレトロ感が逆に味があっていいですね。

「We Go Through Changes」
1分足らずのインタールード的なアカペラ。もっとロングで聴きたいですね。

「You're A Special Part Of My Life」
美しいハーモニーに包まれたメロウ・チューン。黄昏時に聴くとピッタリですな。

「No Plans for Tomorrow」
個人的にはタイトル曲と並ぶお気に入り。透明感のあるコーラスとライトなメロウ・グルーヴのバランスがばっちり!EmotionsとEW&F双方の魅力がうまく融合してシナジーを生んでいる気がします。

「How Can You Stop Loving Someone」
キュートなヴォーカルが印象的です。このヴォーカルを聴くと、Stax時代に"StaxのSupremes"と呼ばれていたというのが頷けます。

「Flowers」
僕の一番のお気に入りはこのタイトル曲です。シングルとして全米R&Bチャート第16位のヒットとなりました。フリーソウルのコンピでもお馴染みのメロウなミディアム・グルーヴですね。Emotionsの魅力がこの1曲に凝縮されていると思います。バックのサウンドもサイコーです。Al McKayカッチョ良すぎ!Fai Brownが90年代にグラウンド・ビートでカヴァーしています。
http://www.youtube.com/watch?v=uQW26zy41-0

「God Will Take Care of You」
ラストはゴスペル仕込みの短いアカペラで締めくくられます。

昨晩のK1グランプリ決勝はガッカリでしたが、今日はボクシング・ファン大注目の一戦「オスカー・デラ・ホーヤ対マニー・パッキャオ」ですね。体格差で圧倒的に不利なパッキャオですが、持ち前のスピードで“ゴールデンボーイ”デラ・ホーヤを慌てさせるのではと期待しています。
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2008年12月06日

Lou Reed『The Blue Mask』

充実の80年代を代表する1枚☆Lou Reed『The Blue Mask』
The Blue Mask
発表年:1982年
ez的ジャンル:センセーショナル系ロック詩人
気分は... :カルト・ヒーローから普通の男へ...

今週は忘年会でもないのに毎晩飲み歩いていたため、肝臓が相当ヤバい状態...こんなご時世だからもっと節制しないといけないよなぁ...なんて思っていたら急にLou Reedが聴きたくなってきました。

ということで、我が道を行くロック詩人Lou Reed『The Blue Mask』(1982年)です。

Lou Reedのソロ作の紹介は代表作『Transformer』(1972年)に続き2回目となります。

70年代後半のLou Reedは試行錯誤が続き、トンネルに入り込んでしまった印象でしたが、そこから抜け出した充実の80年代の第一歩となった作品が『The Blue Mask』(1982年)だったと思います。

『The Blue Mask』はAristaから古巣RCAへの復帰第一弾アルバムです。
敢えて『Transformer』のジャケ写真を再び使用しているあたりに、原点回帰しようとしたLouの思いが込められているのかもしれませんね。

レコーディング・メンバーはLou Reedに、Richard Hell & the VoidoidsのメンバーであったRobert Quine(g)、Jan Hammer GroupにいたFernando Saunders(b)、元Jethro TullのDoane Perry(ds)という4人のみ。スタジオ・ライブ風の演奏はシンプルながらもロックの醍醐味を存分に伝えてくれます。特にRobert Quineの存在はLouに大きな刺激を与えたのでは?

サウンドのみならず、やはりLou Reed作品は詩に注目ですね。1980年にSylvia Moralesと結婚し、プライベート面での充実を窺わせる詩が多いのが目立ちます。カルト・ヒーローから普通の男へイメチェン中といった感じですね(笑)結婚と言えば、Louは今年4月に長年のパートナーLaurie Andersonと正式に結婚したようですね。

また、1966年に亡くなったLouの詩の師匠Delmore Schwartzや1963年のJFK暗殺といった、60年代にLouに影響を与えた人物や出来事をテーマにしている作品も興味深いですな。

シンプルながらも凄まじいパワーを感じるアルバムです。

全曲紹介しときやす。

「My House」
オープニング曲はLouの師匠Delmore Schwartzに捧げられたもの。なかなかの名曲だと思います。言葉をかみしめながら歌うLouのヴォーカルからは静かなるパワーが発せられている気がします。♪彼は僕が出会った中で最も偉大な男だった♪とLouに歌わせてしまうDelmore Schwartzという詩人は相当ぶっ飛んだ人だったらしいですね。

「Women」
♪I Love Woman〜♪普通の男性歌手が歌えば当たり前の歌詞ですが、バイセクシャルであるLouが歌うと意味深ですよね(笑)こういう歌詞を歌うということは奥さんのSylviaと幸せな結婚生活を過ごしていたのでしょうね。

「Underneath the Bottle」
酒に溺れた男の歌。今週飲み過ぎで反省中の僕には耳が痛い歌詞ですな(笑)

「The Gun」
銃を持ち、いまにも引き金を引こうとしている男を歌ったもの。穏やかなサウンドと穏やかなLouの語り口が逆にテンションを高めてくれます。

「The Blue Mask」
タイトル曲は激しく狂ったロック・チューン。このメンバーによる演奏の魅力を堪能できます。今にも暴発しそうな張り詰めた空気感がたまりません。

「Average Guy」
♪俺はどこにでもいる普通の男♪と全然普通の男ではない歌い方で歌うところが実に面白いですね。聴けば聴くほど、アブノーマルな雰囲気が漂ってきます(笑)

「The Heroine」
最初タイトルを見た時はVelvet Underground時代の名曲「Heroin」の再演だと勘違いしてしまいました(笑)虚しい空気感がいいですね。

「Waves of Fear」
骨太の演奏を堪能できるロック・チューン。「The Blue Mask」と同様に激しく凶暴なロック・サウンドを堪能できます。

「The Day John Kennedy Died」
タイトルの通りJFK暗殺の日を歌ったもの。♪僕はアメリカ大統領になることを夢見ていた♪という歌詞をLou Reedが歌うというのが興味深いです。

「Heavenly Arms」
聴いていればわかると思いますが妻Sylvia Moralesのことを歌ったもの。LouにとってSylviaは天国からの贈り物だったのでしょうね。男気のあるラブ・ソングにかなりグッときます。

本作で弾みをつけたLouは『Live in Italy』(1983年)、『New York』(1989年)といった作品を含む充実の80年代を駆け抜けていきます。個人的には『New York』がイチオシですね。
posted by ez at 03:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 1980年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年12月04日

Sounds Of Blackness『Time for Healing』

愛と希望と勇気に満ちたコンテンポラリー・ゴスペル☆Sounds Of Blackness『Time for Healing』
Time for Healing
発表年:1997年
ez的ジャンル:コンテンポラリー・ゴスペル
気分は... :12月はゴスペルが聴きたくなりますね!

そろそろ忘年会シーズンですね。

昨夜はちゃんこ屋でちゃんこ鍋をつつきながら一杯やっていたのですが、すぐ後ろの席でどこかの会社の忘年会をやっていました。まぁこの宴の騒がしさの凄まじいこと...関係ない僕にまで会社の実情が筒抜け状態でした(笑)やはり、忘年会は個室でやらないとねぇ...

Gary Hinesを中心としたゴスペル・グループSound Of Blackness(SOB)の3回目の登場です。

『The Evolution Of Gospel』(1991年)、『The Night Before Christmas: A Musical Fantasy』(1992年)に続き紹介するのは1997年リリースのアルバムSounds Of Blackness『Time for Healing』です。

以前にも紹介したように、Jam & Lewisが1991年に旗揚げしたPerspective Record 第一弾アーティストとして、本ブログでも紹介した『The Evolution Of Gospel』(1991年)で注目を集めました。

Perspectiveからの4枚目となる本作『Time for Healing』は、Ann Nesby、Jimmy Wrightという強力ヴォーカル二人が抜けた後のアルバムであり、Jam & Lewisの制作への関与もなくなるなど不安な要素がいくつか重なりました。

しかし、届けられた作品はそんな不安を一瞬にして掻き消してくれる素晴らしい出来栄えでした。コンテンポラリー感覚とクワイアならではの躍動感、高揚感をうまくバランスさせたSOBらしいゴスペルを聴かせてくれます。

やはり12月はゴスペルが聴きたくなりますね。
特に暗いニュースが続く今日においては、ゴスペルが発する希望、感謝、愛といったシンプルなメッセージが深く心に響いてきます。

人間の歌声の持つパワーってすごい!
改めてそんなことを実感させてくれるアルバムです。

オススメ曲を紹介しときやす。

「Spirit」
Craig Mackのラップをフィーチャーしたこの曲はシングルにもなりました。Hip-Hopフレイヴァーとゴスペル・フィーリングを全く違和感なく融合してしまうあたりが、さすがSOBといったところでしょうか。

「Hold On (Change Is Comin') 」
Betty Wright「Clean Up Woman」、Zapp「Doo Wa Ditty」ネタも交えたSOBらしいスケール感の大きなコンテンポラリー・ゴスペル。生きるパワー湧いてくる曲ですよね!

オリジナルも素晴らしいですが、Zapp/Roger好きはRoger Troutman自身がリミックスを手掛けたトーク・ボックス炸裂しまくりのRoger Troutman Remixがよだれモノですね。
http://jp.youtube.com/watch?v=rxNod_dizD8

「Love Will Never Change」
個人的にはアルバムのハイライト。愛に満ちた感動の仕上がり!素晴らしいの一言に尽きます。悲しみ、苦しみ、不安、不満...あらゆる悩みを包み込んでくれる包容力を持つミラクルな1曲です。愛があれば全て乗り越えることができるさ!

「Love Train」
O'Jaysの大ヒット曲のカヴァー(Kenny Gamble/Leon Huff作品)。オリジナルに慣れている方が聴くと、かなり新鮮な印象を受けると思います。偉大なオリジナルに敬意を払いますが、僕の感性にはSOBヴァージョンがフィットします。

「God Cares」
「Love Will Never Change」と並ぶ感動曲。聴いていると自然に心が穏やかになります。

「Hold On (Don't Let Go) 」
Salt-N-Pepaのラップをフィーチャー。キャッチーな美メロ・グルーヴに仕上がっています。

「Crisis」
ゴスペルらしいクワイアを聴くことができます。ホーリー気分な仕上がり。

「You Can Make It If You Try」
Sly & The Family Stoneのカヴァー(オリジナルはアルバム『Stand!』収録)。『The Evolution of Gospel』では「Stand!」もカヴァーしていましたし、Gary Hinesは『Stand!』が相当お気に入りなのでしょうね。

「The Blackness Blues」
スウィンギーな仕上がりです。クワイアの魅力を堪能するには、こういった感じもいいですね。

「A Spiritual Medley」
黒人霊歌のメドレー。本当にゴスペルがお好きな方は、こういった曲にゴスペルに醍醐味を見出すのではと思います。お見事!の一言です。

「So Far Away」
Antonio Carlos Jobimの名曲「Garola de Ipanema(イパネマの娘)」のエッセンスを取り入れた"ボッサ・ゴスペル"。ゴスペルをボッサ・テイストで聴かせてしまうという柔軟さがSOBらしいですね。かなりのお気に入り曲です!

「Time for Healing」
この曲もコンテンポラリー・ゴスペルの魅力を堪能できます。この力強さ、躍動感、歓喜こそがゴスペルの魅力だと思います。

「Kwanzaa-Umoja-Uhuru(Swahili)」
ボーナス・トラック。母なる大地アフリカへの想いに満ちています。

Jam & Lewisが1999年にPerspective RecordsをA&Mへ売却したため、SOBにとって本作がPerspective最後の作品となりました。
posted by ez at 10:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 1990年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする