発表年:1975年
ez的ジャンル:ブラジリアン・クロスオーヴァー
気分は... :リズムシャワーを浴びて前向きになろう!
毎年恒例になっている「今年の漢字(日本漢字能力検定協会)」が12日に発表されますね。
予想では「変」「乱」「崩」といった字の前評判が高いようです。
予想ではなく、実感という意味で個人的には「弱」という字を推したいですね。
今年ほど日本社会・経済が抱える問題のしわ寄せが社会の「弱者」に回ってきた年はなかったのでは?高齢者の医療制度・年金記録、金融機関による中小事業者への貸し渋り・貸しはがし、新卒者の内定取り消し、派遣労働者等の雇用問題など苦しむのは社会の弱者ばかり...世の中何かがおかしいですよね。
日々暗いニュースばかり目にしていると気持ちが塞ぎこんでしまうので、こんな時にはブラジル音楽でも取り上げましょう!ブラジル音楽って、聴いていると生きる勇気と喜びが湧いてきますからね。
と言うことで、ブラジル人ドラマー/パーカッション奏者Airto Moreiraの2回目の登場です。
『Samba de Flora』(1988年)に続き紹介するのは、1975年の作品『Identity』です。
プロデューサーはHerbie Hancock。Airto(per、ds、vo)、Hancock(key)以外のメンバーは、Flora Purim(vo)、David Amaro(g)、Robertinho Silva(ds、per)、Raul de Souza(tb)、John Heard(b)、John Williams(b)、Louis Johnson(b)、Ted Lo(org)、Wayne Shorter(ss)、Egberto Gismonti(g、key、arr)といった布陣です。
中でもブラジル音楽の鬼才Egberto Gismontiの全面参加が目立ちます。ソングライター&アレンジャー&プレイヤーとして大活躍であり、ある意味AirtoとGismontiのコラボ・アルバムと呼べるのかもしれませんね。
タイトルの通り、ブラジル人としてのアイデンティティを強く意識した作品に仕上がっています。具体的にはブラジル北東部独特のリズム/ダンスなどを取り入れた多彩なリズム・シャワーを聴かせてくれます。
このリズムシャワーを聴いて、前向きに日々頑張りましょ!
全曲紹介しときヤス。
「The Magicians (Bruxos)」
いきなり一番のお気に入り曲です。AirtoとGismontiががっぷり四つに組んだ白熱のブラジリアン・グルーヴ。特に後半のテンションの高さは格別です。Airtoのヴォーカルはご愛嬌ですが、本職のパーカッションでは活気に溢れた豊かなリズムを聴かせてくれます。負けじとGismontiのギター&ピアノも絶好調です!土の匂いが感じられるのがいいですね。
「Tales From Home (Lendas)」
めまぐるしく変化する展開が印象的です。プログレとフュージョンとブラジル音楽がカオス状態になっている濃密な仕上がりです。
「Identity」
タイトル曲はビリンバウ(ブラジルの伝統的な打弦楽器)を駆使し、まさにアイデンティティを全面に打ち出した仕上がりです。
「Encounter (Encontro no bar)」
「The Magicians (Bruxos)」と並ぶ僕のお気に入り。クラブ系のブラジリアン・グルーヴがお好きな人は気に入る曲だと思います。凄まじいリズム・シャワーに圧倒されてしまいます。リズム大国ブラジルのアイデンティティを感じずにはいられません。Gismontiのピアノもテンション高いです。
「Wake Up Song (Baiao do acordar/cafe)」
Gismonti作品のメドレーです。前半はブラジル北東部の伝統的なリズムを打ち出した軽快なグルーヴ。中盤はHerbie Hancockのアープ・ソロ、後半はWayne Shorterのソプラノ・ソロを堪能できます。正直、AirtoとGismontiだけで十分なのでHancockやShorterのソロではどうでもいい気もするのですが、アルバム中のアクセントとして楽しむことにしています。
「Mae Cambina」
Hermeto Pascoal作品。ビリンバウも入って、どことなくMilton Nascimentoテイストな仕上がりです。大地の歌って感じがいいですね。
「Flora On My Mind」
最後はロック・テイストのクロスオーヴァー・チューン。
このジャケのAirtoはかなりハンドパワーがありそうですね(笑)