2008年12月29日

David Bowie『Young Americans』

プラスティック・ソウルだからこそ魅力的な1枚☆David Bowie『Young Americans』
ヤング・アメリカンズ
発表年:1975年
ez的ジャンル:プラスティック・ソウル系UKロック
気分は... :ガス欠&二日酔い(泣)

土曜から日曜にかけて約10時間飲み歩いていたら、さすがに昨日はガス欠&二日酔いで1日中寝ていました。

そんな二日酔いモードの状態でセレクトした1枚がDavid Bowie『Young Americans』(1975年)です。本作からはシングル「Fame」がBowie初の全米シングル・チャートNo.1となりました。

David Bowieの紹介は、『Scary Monsters』(1980年)に続き2回目になります。

当時UKでは既にスーパースターの地位を確立していたDavid Bowieでしたが、USマーケットでは必ずしも大成功を収めている状況ではありませんでした。そこでアルバム『Diamond Dogs』(1974年)リリース後、大規模な北米ライブツアーDiamond Dogs Tourを開始します。

結局、過度のプレッシャーの中でBowieはコカイン中毒に陥ってしまい、ツアーは中断してしまいます。しかし、このツアーの中でBowieはソウル・ミュージックへの興味を深めていきます。中断前のツアーの模様を収めたライブ・アルバム『David Live』(1974年)でもEddie Floyd「Knock On Wood」のカヴァーを収録しています。おそらくBowieは、プレッシャーから自らを解き放つ手段としてソウル・ミュージックへ急接近したのではないでしょうか。

そして、ツアー中断の間にBowieがフィリーソウルの本拠地であるSigma Soundスタジオへ乗り込み、ソウル・ミュージックへアプローチした作品が『Young Americans』(1975年)です。前述の『David Live』もフィラデルフィアのライブを収録したものであり、この時期のBowieにとってフィラデルフィアというのは特別な地だったのでしょうね。

実際にはフィラデルフィアのSigma Soundスタジオでの録音(1974年11月)が6曲、ニューヨークのElectric Ladylandスタジオでの録音(1975年1月)が2曲収録されています。

Sigma Sound録音はTony Viscontiがプロデュースを務め、Carlos Alomar(g)、Mike Garson(p)、David Sanborn(s)、Willie Weeks(b)、Andy Newmark(ds)、Larry Washington(conga)、Pablo Rosario(per)、Ava Cherry(back vo)、Robin Clark(back vo)、Luther Vandross(back vo)といったメンバーが参加しています。

Electric Ladyland録音はDavid Bowie/Harry Maslinがプロデュースを務め、John Lennon(vo、g)、Earl Slick(g)、Carlos Alomar(g)、Emir Kassan(b)、Dennis Davis(ds)、Ralph MacDonald(per)、Pablo Rosario(per)、Jean Fineberg(back vo)、Jean Millington(back vo)といったメンバーが参加しています。

N.Y.録音ではJohn Lennonの参加が目立ちますね。No.1ヒット「Fame」をBowieと共作し、Beatles時代の名曲「Across the Universe」を共演しています。

Sigma Sound録音では名うてのミュージシャン達ががっちりサポートしています。個人的にはLuther VandrossDavid Sanbornの参加が興味深いですね。

あと忘れてはいけないのがギタリストCarlos Alomarですね。
長年Bowieのパートナーとして欠かせない存在であったCarlos Alomarの初参加作品が本作です。

発売当時イギリスのメディアから"プラスティック・ソウル(ソウルの薄っぺらな物真似という意味)"と酷評される一方、アメリカのメディアは"Bowieの最高傑作"と絶賛されました。

個人的にはここで聴かれるのは、白人による本格的なソウル・ミュージックというよりも、ソウル・ミュージックのフェイクという気がします。その意味で"プラスティック・ソウル"という表現はあながち間違いではない気がします。

でも、その"プラスティック・ソウル"が実に魅力的です。
バックで流れるサウンドは本格的なソウル・ミュージックでも、David Bowieのクセのあるヴォーカルが入るとソウル・ミュージックのフェイクになってしまうのが面白いです。それだけDavid Bowieというアーティストの放つ個性が強烈だという証拠だと思います。そして、このフェイク感の持つカッチョ良さがたまりません。

カメレオン・マンのBowieらしい1枚だと思います。

全曲紹介しときやす。

「Young Americans」
タイトル曲はアルバムからの1stシングルにもなりました。本作を象徴する1曲ですね。真にソウルフルなバックと表層的にソウルフルな Bowie のヴォーカルの組み合わせによる異質感が逆にカッチョ良いと思います。
http://jp.youtube.com/watch?v=QiaoRdOUPI8&feature=related

様々なアーティストがカヴァーしていますが、個人的にはThe Cureのヴァージョンがお気に入りです。またMeat Beat Manifesto「Re-Animator」のサンプリング・ネタにもなっています。
The Cure「Young Americans」
http://jp.youtube.com/watch?v=8uvAUGGCxjs

「Win」
邦題「愛の勝利」。ソウル・ムード満点のバラードです。しかし、Bowieのヴォーカルが入ると100%ソウル・ムードに変化が起こり、プラスチック・ソウルへ変身してしまいます(笑)。それが(いい意味で)本曲の魅力だと思います。
http://jp.youtube.com/watch?v=hZ3nzrvSPwM&feature=related

「Fascination」
僕の一番のお気に入り曲はBowieとLuther Vandrossの共作です。Isley Brothersあたりが演奏するとピッタリなファンキー・チューン。ソウル/R&Bファンの方が聴いて一番しっくり来るのはこの曲なのでは?それにしてもBowieとLuther Vandrossの共作というのは興味深いですね。

「Right」
「Fascination」と並ぶ僕のお気に入り。何処かで聴いたことがあるような(?)メロウ・ソウルに仕上がっています。素晴らしいバック陣を相手に必死に喰らい付いているBowieの頑張りを評価しましょう(笑)
http://jp.youtube.com/watch?v=HABUcnLRcK4

「Somebody Up There Likes Me」
邦題「幸運の神」。本来のBowieらしさとソウル・テイストのバランスが良いですね。イントロのDavid Sanbornのサックスが印象的です。
http://jp.youtube.com/watch?v=PwcyG0Aegjw&feature=related

「Across the Universe」
ご存知Beatlesの名曲カヴァー(Lennon/McCartney作品)。正直、本家Beatlesヴァージョンと比較すると見劣りしますが、その本家のJohn自身が参加している点で聴き逃せない演奏だと思います。
http://jp.youtube.com/watch?v=1ZVOIRnGZ5k

「Can You Hear Me」
邦題「恋のささやき」。エレガントなストリングス・アレンジが光るロマンティックなバラード。Barry Whiteあたりを意識した仕上がりなのでしょうね。
個人的には下記の別バージョンの方が好きですね。
http://jp.youtube.com/watch?v=1tF4n8-V154&feature=related

「Fame」
本作のハイライト。前述のようにBowie初の全米シングル・チャートNo.1となった大ヒット曲です。John Lennon、Carlos Alomarとの共作によるへヴィ・ファンクに仕上がっています。アルバム全体を見渡しても、Bowie本来の魅力が一番発揮できている曲だと思います。David BowieとJohn LennonというUKロック界のスーパースター二人がファンク・チューンで共作・共演するというのも面白いですね。
http://jp.youtube.com/watch?v=J-_30HA7rec&feature=related

様々なアーティストがカヴァーやサンプリング等しています。
ネタ使いの主なところではJay-Z「Takeover」、EPMD「It Wasn't Me, It Was The Fame」、House of Pain「Shamrocks and Shenanigans」、Public Enemy「Night of the Living Baseheads」、Sir Mix-A-Lot「My Posse's on Broadway」、Limp Bizkit「Faith/Fame」あたりが挙げられます。カヴァーではDuran Duranのヴァーションが雰囲気も合っているのでは?

EPMD「It Wasn't Me, It Was The Fame」
http://jp.youtube.com/watch?v=ejH667cPHUY
Duran Duran「Fame」
http://jp.youtube.com/watch?v=W75BJauz8oo

僕の持っているCDにはボーナス・トラックとして「Who Can I Be Now?」「It's Gonna Be Me」「John, I'm Only Dancing (Again)」の3曲が収録されています。最近のCDはさらにボーナス・トラックが増えているようですね。
posted by ez at 00:34| Comment(5) | TrackBack(0) | 1970年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする