2009年01月25日

The Cyrkle『Neon』

ソフト・ロック/ソフト・サイケ好きには外せない1枚☆The Cyrkle『Neon』
ネオン(紙ジャケット仕様)
発表年:1967年
ez的ジャンル:ソフト・ロック/ソフト・サイケ
気分は... :ドリーミーなコーラスでリフレッシュ!

何故だか今日はお疲れモードでなかなか起床できず(泣)

そんな時にはソフト・ロックが聴きたい気分!ということでThe Cyrkle『Neon』(1967年)をセレクト。

The Cyrkleは1960年代に活動していたN.Y.出身のフォーク/ソフト・ロック・グループ。オリジナル・メンバーはDon Dannemann(vo、g)、Tom Dawes(vo、g、b)、Marty Fried(ds、per)の3名。

当初グループはThe Rhondellsと名乗っていましたが、BeatlesのマネージャーBrian Epsteinに認められ、レコード会社との契約に成功し、グループ名も"The Cyrkle"(John Lennonが発案したのだとか)となりました。

そして1966年にPaul Simon作のシングル「Red Rubber Ball」でデビューします。当時Tom Dawesがベース奏者としてSimon & Garfunkelのツアーに同行しており、その縁でこの曲がシングルになった模様です。

「Red Rubber Ball」は全米シングル・チャート第2位の大ヒットとなり、その勢いでデビュー・アルバム『Red Rubber Ball』をリリースします。さらにはBeatles最後の全米ツアーのオープニング・アクトを務め、2ndシングル「Turn-Down Day」も同16位のヒットとなりました。

1967年には2ndアルバム『Neon』をリリース。しかし、デビュー作のような成功を収めることができず、さらにはBrian Epsteinの死という不幸も重なります。そしてそのままグループは解散してしまいます。なお、1970年に映画『The Minx』(B級エロ映画)のサウンド・トラックを何故かCyrkle名義でリリースしています。

このように商業的には失敗に終わった『Neon』ですが、その後再評価が高まり今日ではソフト・ロック/ソフト・サイケの名盤の地位を不動のものにしています。

60年代ソフト・ロック好き、Pizzicato Five等"渋谷系"好き、Baetkesファンなど間口の広いアルバムですね。多くの人がポップなメロディ&ドリーミーなコーラス&お洒落なアレンジ&サイケなスパイスに魅了されるはずです。

本作からMichael Losekamp(key)が新たにグループに加わっています。プロデュースは1stに続きJohn Simonが務めています。サウンド面での彼の貢献度はかなり大きいのでは?

サポート・ミュージシャンの中にはラテン・グルーヴの帝王Ray Barrettoの名を発見してニンマリしてしまいました。どうでもいい話ですが...

聴きどころ満載のソフト・ロックで胸キュン・モードになりましょ!

全曲紹介しときやす。

「Don't Cry, No Fears, No Tears Comin' Your Way」
オススメその1。再評価で人気となった曲ですね。60年代らしいメロディ&ハーモニーにグッときます。シタールの響きとカッチョ良いオルガン・ソロもグッド!Pizzicato Fiveの"お葬式"ライブのタイトルにもなりましたね。
http://jp.youtube.com/watch?v=l93qHXw6Ykc&feature=related

「The Visit (She Was Here)」
オススメその2。ボッサかつ幻想的な仕上がりがたまりません。Millennium/Curt Boettcherあたりがお好きな人は気に入るのでは?A Tribe Called Questファンの僕としては「Get a Hold」(アルバム『Beats Rhymes & Life』収録)のネタとしても見逃せません。Bodie Chandler/Edward McKendry作品。
http://jp.youtube.com/watch?v=Ll_Jsko95Gg&feature=related

「Weight of Your Words」
ソフト・ロック好きにはたまらないメロディ&サウンド&コーラスなのでは?個人的にはコーラスに相当グッときます。

「I Wish You Could Be Here」
オススメその3。シングルにもなったPaul Simon/Bruce Woodley作品。爽快なフォーキー・チューンに仕上がっています。パーカッシヴな仕上がりが僕好み。

「It Doesn't Matter Anymore」
オススメその4。Burt Bacharach & Hal David作品。Pizzicato Fiveのお気に入り曲だったみたいですね。小粋なアレンジが光ります。
http://jp.youtube.com/watch?v=FJWsfhPmgws

「Two Rooms」
メロウ&プリティな仕上がりがいいですね。エンディングは少し呆気ないですが(笑)

「Our Love Affair's in Question」
Beatlesっぽい雰囲気がする仕上がりです。

「I'm Happy Just to Dance With You」
オススメその5。こちらは正真正銘Beatlesのカヴァーです。オリジナル(『A Hard Day's Night』収録)はGeorge Harrisonのヴォーカルが印象的でしたね。こちらのカヴァーは幻想的な仕上がりです。ビミョーに外れた感じがたまりません。

「Problem Child」
フォーキーな仕上がりと思いきや賑やかな展開に...

「Please Don't Ever Leave Me」
オススメその6。爽快なメロディ&コーラスが炸裂するソフト・ロック好きが歓喜する仕上がりです。ハープシコードの響きもグッド!Susan Haber作品。

「I'm Not Sure What I Wanna Do」
オリジナルの最後はほのぼのフォーキー・チューンで締め括られます。Chip Taylor作品。

CD(2006年発売盤)には18曲ものボーナス・トラックが収録されています。正直、通しで全部聴いたことは一度もありません(笑)。
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2009年01月24日

Meta Roos & Nippe Sylwens Band『Meta Roos & Nippe Sylwens Band('80)』

一生聴けるエヴァー・グリーンなヴォーカル・アルバム☆Meta Roos & Nippe Sylwens Band『Meta Roos & Nippe Sylwens Band('80)』
メタ・ルース・アンド・ニッピ・シルヴェンス・バンド(1980)
発表年:1980年
ez的ジャンル:北欧系女性ジャズ/ポップス・シンガー
気分は... :一生聴けるエヴァー・グリーンな1枚!

スウェーデン生まれの女性シンガーMeta Roosの2回目の登場です。

今日紹介するのは3rdアルバムMeta Roos & Nippe Sylwens Band『Meta Roos & Nippe Sylwens Band('80)』です。前回紹介した2ndアルバム『Meta Roos & Nippe Sylwens Band('78)』同様クラブ・ジャズ系リスナーから人気の高い作品ですね。

2枚とも同じタイトルなので、ファンの間では2ndは"茶盤"、3rdは"白盤"と呼ばれています。

前回紹介した2nd『Meta Roos & Nippe Sylwens Band('78)』(茶盤)は、"これを聴かなきゃ一生後悔する1枚"として紹介したほどお気に入りの作品でした。今日紹介するMeta Roos & Nippe Sylwens Band『Meta Roos & Nippe Sylwens Band('80)』(白盤)も茶盤同様Nippe Sylwens Bandとの共演です。

ただし、茶盤の方がBilly Joel、Jorge Ben、Roberta FlackMarlena ShawAlessiDinah Washington、Neil Sedaka、Fairport Convention、Carole Kingの楽曲をセレクトした全曲カヴァー作品であったのに対して、本作はStevie Wonder作品「The Real Thing」以外はオリジナル中心の構成です。

その結果、前作ほどボッサ/ブラジリアン・テイストは強くなく、ジャズ/ポップ・ヴォーカル作品らしい仕上がりになっています。基本はジャズ・ヴォーカルの人ですからね。

白盤については、以前に出たオリジナル全曲+追加トラック5曲(白盤から4曲+1曲)の"お得用"茶盤で済ませている方もいるかもしれませんが、白盤を全曲通しで聴いてみると"北欧ボッサ・ジャズ"だけでは括れない、本来のMeta Roosに出会えると思います。

10曲というボリュームも最適だし、曲順の妙も楽しめる作品です。

全曲紹介しときやす。

「Oh, Mr Music」
北欧というよりアメリカ西海岸という雰囲気の開放的なポップ・チューン。洒落たハーモニーとファンキーなベースラインもグッド!

「25 Words Or Less」
スウィンギーな4ビートに乗って、ジャズ・ヴォーカリストらしい歌を披露してくれます。この小粋な雰囲気こそが本来の姿なのでは?

「There's A Reason」
しっかり聴かせる正統派ポップ・バラード。奇をてらわないオーソドックスな作りが逆にホッとします。いかにもなギターソロにグッときます。

「The Real Thing」
オリジナル曲で勝負の作品ですが、アルバムのハイライトということになれば、やはりStevie Wonder作品の本曲になってしまいます。茶盤の流れを引き継いだこのブラジリアン・フレイヴァーのカヴァーはファンの間でも特に人気の高い1曲ですよね。
https://www.youtube.com/watch?v=djMEG88VpXw

以前に紹介したSergio Mendesのカヴァー(アルバム『Sergio Mendes & The New Brasil '77』収録)とセットで聴くとサイコー!です。
http://jp.youtube.com/watch?v=LHasd7tVNB8&feature=related

「A World For You And Me」
じんわり胸に染み渡るバラード。70年代王道ポップス・ファンの方はグッとくると思います。この甘酸っぱさがたまりませ〜ん!

「Give A Little Love」
フリーソウル・ファンの方が喜ぶであろう黄昏メロウ・チューン。思わず胸キュン・モードになってしまいますね。茶盤がお好きな方は絶対に気に入る1曲。

「Unspoken Words」
ソフト&メロウな王道ポップスという点ではこの曲が一番なのでは?メロディ、ヴォーカル&ハーモニー、アレンジ三拍子揃っています。前曲でグングン急上昇した胸キュン・メーターがさらに上昇し続けます(笑)。

「Comza」
茶盤のブラジリアン・フレイヴァーを期待している人にとっては歓喜の1曲。正統派ジャズからこういったブラジリアン・フュージョンまでこなすバック陣はなかなかのものです。

「Don't Try」
ブラジリアン・フュージョンから一転してスウィンギーな4ビート・ジャズです。このギャップに相当ヤラれます。曲順の妙ですな。この技は僕も今度使ってみます(笑)。ジャズとポップスが見事なバランスで共存しているところが素晴らしいですね。

「Summersong」
ラストは感動的なバラード。バックはシンプルにして、ヴォーカル&ハーモニーをしっかり聴かせてくれるところにグッときます。

茶盤について"これを聴かなきゃ一生後悔する1枚"と書きましたが、この白盤は"一度聴いたら一生聴けるエヴァーグリーンな1枚"ではないかと思います。
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2009年01月23日

Outkast『Stankonia』

僕が選ぶ彼らの最高傑作はコレ!☆Outkast『Stankonia』
Stankonia
発表年:2000年
ez的ジャンル:ファンク系サウスHip-Hop
気分は... :なぜこのアルバムが思い浮かんだのか?

昨日更新をサボってしまったため、今更といった感じですが一昨日のオバマ大統領の就任式は印象的でしたね。TVを観ていてもテンション上がってきました。

この歴史的瞬間を観ていたら、頭の中を3枚のアルバムが過ぎりました。
 Donny Hathaway『Extension Of A Man』(1973年)
 Public Enemy『Fear of a Black Planet』(1991年)
 Outkast『Stankonia』(2000年)

ニューソウルを代表する『Extension Of A Man』、体制との対峙を示した『Fear of a Black Planet』というのは納得できるのですが、『Stankonia』だけは何故思い浮かんだのか自分でも説明できません。

バックに星条旗が写っているから?それだったらSly & The Family Stone『There's A Riot Going On』だってあるし...わかりません。

そんな流れで今日はOutkast『Stankonia』(2000年)です。

Big BoiAndre 3000の二人による強力Hip-HopユニットOutkastの紹介は、『Idlewild』(2006年)に続き2回目となります。

『Stankonia』(2000年)はOutkastの4thアルバムです。どうしてもメガヒットした5thアルバム『Speakerboxxx/The Love Below』(2003年)の印象が強い彼らですが、Hip-Hopがお好きな人ならば3rd『Aquenami』(1998年)か本作『Stankonia』を最高傑作に挙げるのでは?

個人的にもOutkastの凄さを最初に実感したのが『Stankonia』です。

本作『Stankonia』は、(サンプリング・ネタという意味ではなく)音楽的にファンクを感じさせてくれるHip-Hopアルバムですよね。特にP-FunkSly & The Family StonePrince等の影響を感じます。音楽的な進化を遂げると同時に、商業的にも大成功を収めたという点で歴史的なアルバムだと思います。

プロデュース体制はOrganized Noize中心からセルフプロデュース(厳密にはBig Boi、Andre 3000の二人にMr. DJを加えたEarthtone III名義)中心へと移行しています。

Dungeon Familyの仲間であるGoodie Mobのメンバー(Big Gipp、Khujo、T-Mo、Cee-Lo)やSleepy Brown(Organized Noize)、Andre 3000の元カノErykah Badu、B-Real (Cypress Hill) 、Gangsta Boo(元Three 6 Mafia)等がゲスト参加しています。

Sly & The Family Stone『There's A Riot Going On』Prince『Sign O' The Times』、そして本作『Stankonia』の3枚を続けて聴くと興味深いと思います。

言い換えれば、『There's A Riot Going On』『Sign O' The Times』と肩を並べる名盤といえるのでは?

オススメ曲を紹介しときやす。

「Gasoline Dreams」
Khujo Goodieをフィーチャー。ロッキン・フレイヴァーなギター・サウンドが印象的です。Boobie Knight & the Universal Lady「Flaming Youth」ネタ。

「So Fresh, So Clean」
僕のお気に入りその1。シングルになりました。この曲はOrganized Noizeプロデュースです。Joe Simon「Before the Night is Over」ネタのメロディを奏でるSleepy BrownのフェンダーとPreston Crumpのベースがいい感じです。
http://jp.youtube.com/watch?v=RTtfBJiVVfo

「Ms. Jackson」
僕のお気に入りその2。Outkast初の全米シングル・チャートNo.1ヒットですね。70年代ソウルと2000年代Hip-Hopが見事に融合した仕上がりだと思います。印象的なフックの♪I'm sorry,Ms.Jackson♪I am for reeeal〜♪が僕には♪サミュエル・ジャクソン〜♪と聴こえてしまい、俳優のサミュエル・ジャクソンの顔が思い浮かびます(笑)。The Brothers Johnson「Strawberry Letter #23」ネタ。
http://jp.youtube.com/watch?v=x0Vy8PywZTM

「Snappin' & Trappin'」
Killer MikeとJ-Sweetをフィーチャー。本作ではローファイ感のあるトラックが数多く聴かれますが、これもそんな1曲です。

「Spaghetti Junction」
Organized Noizeプロデュース曲。Organized Noizeによるソウルフルなトラックにスパゲティのように絡みつく(?)Big BoiとAndre 3000のフロウがいい感じ。

「I'll Call Before I Come」
僕のお気に入りその3。P-FunkSly & The Family Stoneからの影響を感じるこの曲も聴きモノですね!ローファイなシンセ・サウンドのピコピコ感ととぼけた雰囲気がたまりません。Gangsta BooとEcoをフィーチャー。
http://jp.youtube.com/watch?v=qxlnd1O-H0I

「B.O.B.」
僕のお気に入りその4。「Ms. Jackson」と並ぶクラシック。ファンの方はご存知の通り、"B.O.B."とは"Bombs Over Baghdad"のことであり、Andre 3000がホテルでバグダッドへの爆弾投下のニュースを聞きインパイアされた楽曲です。全米No.1となった「Ms. Jackson」とは対照的に、あまりに過激な内容のため多くのラジオ局で放送制限されてしまいました。

音楽的にもインパクト十分!Hip-Hopの枠組みを軽々飛び越え、ファンク、ドラムンベース、ロック等の要素がカオス状態となったハイパー・ミュージックです。
http://jp.youtube.com/watch?v=-XBgXBvI8a0&feature=related

「Xplosion」
B-Realをフィーチャーしたシンセ・ファンク。そのせいかCypress Hillフレイヴァーの仕上がりになっています。

「We Luv Deez Hoez」
BackBoneとBig Gippをフィーチャー。Allen Toussaint「Worldwide」ネタのイナたいファンキー感が面白いです。

「Humble Mumble」
僕のお気に入りその5。Erykah Baduをフィーチャー。パーカッシヴなトラックにのったErykah & Andreによるフックが大好きです。
http://jp.youtube.com/watch?v=aMcXKvSHSR4

「Gangsta Sh*t」
Slimm Calhoun/C-Bone/T-Moをフィーチャー。ローファイな音空間を駆け巡るファズギターが脳の奥まで響いてきます。

「Toilet Tisha」
トイレで流産した少女のことを歌ったシリアスな1曲。Princeをスペイシーにした感じのサウンドがグッド!
http://jp.youtube.com/watch?v=vlU7na2-xpk&feature=related

「Slum Beautiful」
僕のお気に入りその6。Cee-Loをフィーチャー。妖しく危険な香りの仕上がりがいいですね。またCee-Loのクセのある声質がマッチするサウンドです。聴けば聴くほどクセになる1曲。
http://jp.youtube.com/watch?v=6VwBKoIGfLY

「Stankonia (Stanklove) 」
僕のお気に入りその7。エンディングを飾るタイトル曲はBig RubeとSleepy Brownをフィーチャー。「B.O.B.」に負けないハイブリッド・サウンド。レゲエ/ダブ、ファンク、ソウル、ブルース、スティール・ドラム等が闇鍋状態で妖しい音空間内に漂っています。。
http://jp.youtube.com/watch?v=BjEG5B5hDAY

やはりグループ内別居状態ではなく、Big BoiAndre 3000が二人一緒のラップを聴きたいですよね!
posted by ez at 05:49| Comment(2) | TrackBack(0) | 2000年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年01月21日

Steely Dan『Katy Lied』

Steely Dan好きはこのアルバムに行き着く?☆Steely Dan『Katy Lied』
Katy Lied
発表年:1975年
ez的ジャンル:豪華ゲスト系クロスオーヴァー/ロック
気分は... :やさしい嘘は許してね...

久々にSteely Danの紹介です。

これまで当ブログで紹介してきたSteely Dan関連作品は以下のとおりです。

 『Pretzel Logic』(1974年)
 『Aja』(1977年)
 『Gaucho』(1980年)

 Donald Fagen『The Nightfly』(1982年)
 Walter Becker『11 Tracks Of Whack』(1994年)

今日紹介するのは4thアルバム『Katy Lied(邦題:うそつきケイティ)』(1975年)です。

次作『The Royal Scam』(1976年)から、一流ミュージシャンを豪華に使った完璧なレコーディングにより、都会的なスタイリッシュ・サウンドを聴かせてくれる後期Steely Danが本格的にスタートしますが、グループをそうした方向へ導く布石となった作品が本作『Katy Lied』だと思います。

前作『Pretzel Logic』のメンバーからJeff Baxter(g) 、Jim Hodder(ds)の二人が抜け、新たにJeff Porcaro(ds)、
Michael McDonald(back vo)が加わりました。

結果、Donald Fagen(p、key、vo)、Walter Becker(b、g、vo)、Denny Dias(g)の3人に新加入の2人を加えた5名が(形式上の)バンド・メンバーということになります。実質的には、『Pretzel Logic』の時点でバンドとしてのSteely Danは崩壊していましたが...

プロデューサーGary Katz、 エンジニアRoger Nicholsはいつも通り。ゲスト・ミュージシャンは、Larry Carlton(g)、Rick Derringer(g)、Hugh McCracken(g)、Dean Parks(g)、Elliott Randall(g)、Michael Omartian(key)、David Paich(key)、Wilton Felder(b)、Chuck Rainey(b)、Hal Blaine(ds)、Jimmie Haskell(horn)、Bill Perkins(horn)、Phil Woods(sax)、Myrna Matthews(back vo)、 Sherlie Matthews(back vo)、Carolyn Willis(back vo) といったメンバーが名を連ねます。

まだまだ曲によって仕上がりにバラツキがありますが、後期Steely Danを予感される楽曲、サウンドを数多く聴くことができます。過渡期の面白さこそが本作の魅力なのでは?

この気色悪い昆虫ジャケもSteely Danらしいですね。
ちなみにこのジャケを手掛けたのは当時FagenのガールフレンドDorothy White。

ファンの方はご存知の通り、本作のミックス・ダウン時にトラブルが発生し、リリースされた作品は必ずしもメンバーの満足するサウンドではありませんでした。そうした経緯もグループをより完璧なレコーディングへと向かわせたのかもしれませんね。

一般的には印象の薄いアルバムかもしれませんが、Steely Dan作品を一通り聴くと最終的にこのアルバムあたりに行き着くのではと思います。

全曲紹介しときやす。

「Black Friday」
僕のお気に入り1。アルバムからの1stシングルにもなりました。タイトなロック・チューンながらも、後期Steely Danを予感させる洗練された仕上がりになっています。Jeff Porcaroによるタイトなリズム、Walter Becker驚きの(?)ギター・ソロ、Donald Fagenのヴォーカルに絡むMichael McDonaldのコーラス等々聴きどころ満載のオープニングです。
http://jp.youtube.com/watch?v=Y6FzvWjQ_A0

「Bad Sneakers」
僕のお気に入り2。この曲もシングルになりました。Steely Danらしく、親しみやすいやすいけど軽くひねりが効いてメロディがいい感じですね。ここでもWalter BeckerがMichael Omartianのピアノの従えてギター・ソロをばっちりキメてくれます。Beckerやるねぇ!Fagenも字余りヴォーカルに絡むMichael McDonaldのコーラスもグッド!
http://jp.youtube.com/watch?v=R_fdJNeLlIs

「Rose Darling」
Steely Danらしいクセのあるメロディ&ヴォーカルが魅力の1曲。この曲で聴けるギター・サウンドはDean Parksによるもの。

「Daddy Don't Live in That New York City No More」
僕のお気に入り3。洗練されたブルース・チューン。ブルースが苦手な方もこのサウンドならばすんなり聴けるのでは?後期Steely Danを予感させる完成度の高い仕上がりですね。Larry Carltonのギター・プレイに耳を傾けましょう。
http://jp.youtube.com/watch?v=2Imdl_Qmt-o&feature=related

「Doctor Wu」
僕のお気に入り4。アルバム・タイトルにもなっている"Katy lied"という歌詞が登場する曲。この曲をハイライトとして挙げる方も多いのでは?僕も一番のお気に入り曲です。ちなみにDr. Wuとは当時Walter Beckerが診てもらっていた東洋医学の先生のことなのだとか。この曲もSteely Danらしいメロディを堪能できますし、サウンドも後期Steely Danの原型といった感じがします。Phil Woodsが素敵なサックス・ソロを聴かせてくれます。
http://jp.youtube.com/watch?v=ofhDF9ltv0M&feature=related

「Everyone's Gone to the Movies」
トロピカル・モードの仕上がりはアルバムの中でも少し異質な感じですね。

「Your Gold Teeth, Pt. 2」
2ndアルバム『Countdown to Ecstasy』収録の「Your Gold Teeth」のパート2です。レコーディングにかなり苦労した曲のようですがね。ワルツ調のリズムが実に小粋です。ここではようやくDenny Diasのギターがスポットを浴びます。俺だってSteely Danなんだぞ〜!

「Chain Lightning」
思い切りブルースしている曲なのですが、Fagenのヴォーカルが入ると都会的な雰囲気に聴こえてしまうから不思議ですね。ここではRick Derringerがギター・ソロを聴かせてくれます。

「Any World (That I'm Welcome To) 」
ここではHal Blaineがドラムを担当しています。この曲は初期〜中期の雰囲気がする仕上がりですね。そのせいかMichael McDonaldのコーラスが目立つのにあまり都会的な雰囲気を感じません。

「Throw Back the Little Ones」
(良い意味で)ヘンテコな雰囲気の仕上がりですね。説明するのが難しいけど面白い展開です(笑)

新加入のJeff Porcaro
Michael McDonaldは共に本作1枚のみでグループを去ります。

そして次作『The Royal Scam』(1976年)からグループは本格的にDonald FagenWalter Beckerによるレコーディング・ユニットへ変身していきます。

間もなくオバマ大統領の就任式ですね。
歴史的出来事ですから生放送で就任式から就任パレードまで見届けようと思います。
posted by ez at 00:04| Comment(2) | TrackBack(1) | 1970年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年01月20日

Keziah Jones『Blufunk Is A Fact』

Blufunkって何?衝撃のファンキー・ミュージック☆Keziah Jones『Blufunk Is A Fact』
Blufunk Is a Fact!
発表年:1992年
ez的ジャンル:ブルーファンク
気分は... :スティーラーズ対カーディナルス!

NFLもいよいよ大詰め!
昨日カンファレンスチャンピオンシップ2試合が行われ、AFCはスティーラーズ、NFCはカーディナルスが勝ち上がり、スーパーボウル進出を決めました。

AFCチャンピオンシップ「スティーラーズ対レイブンズ」は戦前の予想通りの守備合戦は見応えがありましたね。勝負を決定付けたのがSポラマルのインターセプトTDというのが象徴的でした。レイブンズはQBフラッコの力量不足を露呈してしまったのでは?

NFCチャンピオンシップ「カーディナルス対イーグルス」は前半終了時点でカーディナルス楽勝だと思ったのですが、後半イーグルスが巻き返し、最後はドキドキしながら観ていました。それにしてもカーディナルスのWRフィッツジェラルドのポストシーズンにおける活躍ぶりは凄いですね。

注目のスーパーボウルは、守備のスティーラーズと攻撃のカーディナルスというわかりやすい構図になりました。個人的にはカーディナルスを応援したいのですが、客観的に考えると総合力でスティーラーズが一枚上でしょうね。

今年は試合時間帯に仕事の予定が入っており、生放送で観戦できないのが残念なのですが....

さて、今日はKeziah Jonesのデビュー・アルバム『Blufunk Is A Fact』(1992年)の紹介です。

Keziah Jones(本名Olufemi Sanyaolu )は、1968年ナイジェリアのラゴス生まれのシンガー/ギタリスト。父親はヨルバ族の酋長であり、ナイジェリアでも有数の資産家なのだとか。

8歳の時にイギリスへ留学。10代半ばでギターを独学でマスターし、18歳の頃にはロンドンでバスキング(路上・地下鉄構内などで演奏すること)するようになりました。1991年にはレコーディング契約に成功し、さらにはLenny Kravitzのヨーロッパ・ツアーをサポートします。

そして、1992年に衝撃のデビュー・アルバム『Blufunk Is A Fact』をリリース。その後、『African Space Craft』(1995年)、『Liquid Sunshine』(1999年)、『Black Orpheus』(2003年)、『Nigerian Wood 』(2008年)といったスタジオ作をリリースしています。

ギターを打楽器のように弾く独特のスタイルは大変ユニークでインパクト十分でした。また、自らの音楽を"Blufunk"(BluesとFunkの合成語)と呼んだように、シンプルながらもブルース、ロック、ソウル、ファンクの要素が入り混じり、さらにはアフリカ人のDNAが組み合わさったサウンドは、Keziahにしか出せないファンキーさがありましたね。

ただし、あまりにもユニークな存在ゆえに、当時はリスナー側が戸惑っていたのかもしれません。ソウル/ファンク・ファンが聴く音楽ではないし、ワールド・ミュージック・ファン向けでもないし...結局聴いていたのはロック・ファンだったのでは?

我が家のCD棚でもどのコーナーに収納するか迷った記憶がありますね。結局、90年代ロックのコーナーにLenny KravitzFishbone、Living Colour、Bad Brains、Eye & Iといった黒人ロック・アーティストらと一緒に収納されています。サウンド的には全然まとまりのないエリアなのですが(笑)

さて、『Blufunk Is A Fact』ですが、やはりインパクトという点ではこの作品が一番だと思います。音楽的な幅が広がったその後の作品も悪くはないと思いますが、Keziah Jonesというアーティストの本質が一番反映されているのが、デビュー作『Blufunk Is A Fact』だと思います。

Keziah本人(vo、g)、Soul(b)、Richie Stevens(ds)というシンプルな編成での演奏が中心ですが、変に流行のサウンドを取り入れていない分、今聴いても全然古さを感じないのがいいですね。

必ずしも時代とリンクしたサウンドではありませんでしたが、この個性は再評価されてもいいのではと思います。

全曲紹介しときやす。

「Wisdom Behind the Smile (Cash) 」
小難しいことを考えず、素直にカッチョ良いファンキー・ロックとしてグッとくるオープニング。野暮ったさの無くなったLenny Kravitzってイメージでしょうか?

「Walkin' Naked Thru' a Bluebell Field」
僕の一番のお気に入り。Blufunkとは何ぞや?といった疑問に明確な回答を示してくれる曲。今聴いても鮮度抜群のタイトなファンキー・ミュージックです。この曲を聴くと、CD棚のロック・コーナーからR&Bコーナーへ移動させたくなります。

「Rhythm Is Love」
シングルにもなった人気曲。このコクがあるグルーヴ感はR&B/ソウル・ファンの方も気に入るのではないかと思います。
http://jp.youtube.com/watch?v=-xkmBfYCmMk

「Runaway」
Keziahならではの躍動感で突っ走ってくれます。聴いていてアドレナリンが出まくりのテンションの高さです!

「Where's Life」
この曲もシングルになりました。キャッチーな分、インパクトは少ないですが程よくブルージーな味わいがいい感じです。
http://jp.youtube.com/watch?v=DIkyJdcC1-w

「The Funderlying Undermentals」
リラックスしつつもタイトな感じがカッチョ良い仕上がりです。

「Frinigro Interstellar」
スリリングなブラック・・ロックに仕上がっています。バタバタ感が少し気になりますが...

「Free Your Soul」
バスキング時代を想像させてくる感じがいいですね。ラップ風のヴォーカルも聴かせてくれます。
http://jp.youtube.com/watch?v=nLG48aIvge4

「Curious Kinda Subconscious」
「Waxing and the Waning」
アフリカ人のDNAを感じさせる仕上がりの2曲です。Keziah自身が当時ワールド・ミュージックをどの程度意識していたのかは知りませんが...

「The Invisible Ladder」
シンプルな弾き語り。全然分野が違うのかもしれませんが、Jack Johnsonあたりに通じるフォーキー感がグッド!

「Pleasure Is Kisses Within」
ギターとピアノのシンプルなバックによる素朴な演奏が味わい深くていいですね。

ナイジェリアのミュージシャンと言えば、ワールド・ミュージックの先駆け的アーティストKing Sunny Ade『Synchro System』(1983年)を最近聴き直しています。
posted by ez at 02:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 1990年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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